ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 熱血教師ト死神様
- 日時: 2010/08/04 12:32
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
Crick 有難うございます(´`*)
コレと同じのを作っているんですけど…。
なんか納得いかないんで初っ端から書きます(←
自分勝手でごめんなさい…
ネタばれ防止のため
前の作品とちょっと違う物語にするよう努力しますw
コメントくれると有りがたいです。
††登場人物††
**北条 紫堂(14)♀**
死神の血を持つ中学二年生。
ある事件がきっかけで心を閉ざしてしまった。
**高橋 秀彦(25)♂**
新米教師。
何事にも本気でやり遂げる熱血教師。
**福田 春(14)♂**
大阪弁丸出しで紫堂が好きな中学二年生。
雷神の血を持つ。陽気で綺麗好き。
**後藤 純(14)♂**
春の親友。一見クールだが抜けたところもある。
風神の血を持つ、中学二年生。
**五十嵐・F・輝馬(15)♂**
女の子に見えるが本性は鬼のように怖い執事。
**etc...**
Prologue >>01
第壱話>>02 第拾壱話>>18
第弐話>>03 第拾弐話>>19
第参話>>04 第拾参話>>20
第四話>>07 第拾四話>>21
第伍話>>08 第拾伍話>>22
第六話>>11 第拾六話>>23
第七話>>14 第拾七話>>24
第八話>>15 第拾八話>>25
第九話>>16 第拾九話>>26
第拾話>>17
【読者さま】
○虎王さま ○クロウさま ○AAAさま
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.20 )
- 日時: 2010/05/02 09:37
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾三話
○
ひんやりとした扉を開けると
俺はゆっくり部屋の中を覗き込んだ。
「凜ちゃん、元気にしとる?」
「うん、元気だよ。
久しぶりだね。春君。」
俺は安心してそこにあったパイプ椅子に腰かけるのを
凜ちゃんは静かに見送って、俺に尋ねた。
「ねぇ…お兄ちゃん、みた?」
「純の事?見てないわぁ…。」
がっかりしたような顔で凜ちゃんはうなずく。
どないしたんやろ…。
「なんかあったん?」
「…べ、別に、大丈夫だよ!」
あわてて凜ちゃんは言うと、
林檎の乗った皿を差し出してきた。
「コレ、兄ちゃんがむいてくれたの。
でも一人じゃ食べられなくて…春君に全部あげる」
俺は林檎に手を伸ばす。
林檎は放っておくと色が変わるって聞いたんやけど、
この林檎はまだ色が変わってない。
つーことは、純はさっき来たばっかりなんや。
「春君、どうしたの?林檎嫌いだっけ?」
「そんなことないで!
ちょっと考え事してただけや。」
俺は急いで林檎をたいらげた。
「…春君、お兄ちゃん元気にしてる?」
冷めた顔で凜ちゃんは言った。
「元気というか、…
いつもどうりやで。こないだなんか、——」
アラームの甲高い音が聞こえる。
面会時間10分、もう終わってしもうた。
「…ごめんなぁ、凜ちゃん。もう帰らんと…。」
「…そか、…忙しいのに、ありがとう…。」
凜ちゃんの暗い顔に後ろ髪をひかれながら
沈黙した空気の部屋から出た。
凜ちゃんは純に逢いたいんや。
探して逢わせてあげたいけど…どこにおるんやろ。
…
手当たり次第に探してみても、純は出てこない。
「純——!…」
俺の声はむなしく空へと溶けて行った。
「馬鹿純、アホ純、どこにおるん——!」
そう叫んでやった。
大事な時におらんのんやもん。
するといきなり強い風が吹いた。
その風の正体はきっと
風神の後継者である純の仕業や。
根拠はないけど、そう思った。
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.21 )
- 日時: 2010/07/17 10:28
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾四話 薔薇
○
「…くっ」
氷柱のささった手のひらを見つめる。
溶けてゆく氷の水と血が濁っている。
「あはは!さっきの威勢の良さは!?」
奴は倒れた俺にジリジリと近づいてくる。
こんなつもりじゃなかった…。
「ぉまえ…凜をどうするつもりだ…」
「凜…。あぁ、あのグズな妹ね。
知りたいのなら、大人しくそこを通してよ。」
弱った俺に何かしてくる…、と思いきや
そっぽを向いて向こうへ麟は歩き続けた。
すかさず俺は麟の右足首をつかんだ。
麟の靴が、俺の血で赤く染まってゆく。
「そんな汚い手で触るな!!」
俺は胸倉を掴まれた。
そのまま窓に向かって、投げ捨てられた。
…ガラスが太陽の光にかがやいて、綺麗だ。
あお向けに倒れた俺に、
氷柱をもった麟がのしかかる。
「どうしてお前はあの妹ばかり味方する?
知っているだろう!わが後藤家の掟を!!」
俺は、散らばっているガラスの破片を
手一杯に握った。勿論、これも血でにじむ。
「掟ェ…?俺がそん…なもの守るよぉな
いい子…とでも思っ…たかぁ……?」
麟は一瞬驚いた顔になったが、
すぐに大声で笑い始めた。
「ははははははは!違いないよ!
あんた最高!殺すのにはもったいない!だから、」
笑い声がピタリとやんだ。
麟の手が俺の顔に覆いかぶさる。
「半殺しにさせてもらう。」
薔薇のように赤く染まったガラスは、
俺の手から抜けて行った。
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.22 )
- 日時: 2010/07/17 14:01
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾伍話
○
思えば私、いつもそうだった。
いつもお兄ちゃんに迷惑ばっかりかけてた。
血がつながっているのに、
『お姉ちゃん』と呼ぶのを許してくれない麟さん。
体が弱い私を見放した、厳しいお父さん。
家族の中でただ一人味方してくれたのは、
お兄ちゃんだけだったね。
いっぱい迷惑かけたね…。
いつかお兄ちゃんを安心させるように
強い人間になれたら。…
花瓶から顔を出している薔薇が、
ぼろぼろと堕ちてゆく。
「あ…薔薇が!…」
私はベットから起き上がった。
すると何かが体の奥からこみ上げてくるのを感じた。
「…っ!」
必死で口を押さえる。
急いで棚の上にある洗面器に手をのばす。
意識がもうろうとして、眼の前がぼやけてゆくせいで
私は誤って、洗面器を落としてしまった。
…『自分で拾うのよ。』
自分で自分に言い聞かせた。
こんなこと出来ない奴に、
お兄ちゃんを安心させる事なんでできっこない。
堕ちるようにベットから降りた。
汗が頬をつたる。
病室のドアが開く音がした。
「凜ちゃん!」
…北条先輩?
振り向こうとすると、目の前が真っ暗になった…。
------------
気がつくと、いつものように
古びた天井が私の目に映っていた。
「ぁ…北条せんぱ…」
「よかった…気がついたのね?」
私が起き上がろうとすると、
先輩は私と止めた。
「無理しないで…。
よかったら、何があったか話してくれる?」
私はうつむいて、ぽつぽつとはなした。
急に吐き気がしたこと。
意識がもうろうだった事。…
お兄ちゃんに楽させるために…というのは
あえて言わなかった。
『お前はグズだから、何もできない』
麟さんの声がよみがえる。
なんだか無性に泣きたい気分。
「先輩、ありがとうございました。
もう大丈夫なんで…。迷惑掛けてごめんなさい。」
「でも、ほっとくわけには」
「大丈夫ですから!」
私は叫んだ。
「そっか…。」と先輩は呟いて、
静かに病室を後にした。
涙目で花瓶の方をみた。
赤いバラの花びらは血のように赤かった。
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.23 )
- 日時: 2010/08/01 11:43
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾六話 よそ者
○
凜ちゃんの病室には入れたけど…。
とても私の口からは言えない。
純は、凜ちゃんのお兄ちゃんは、
血だらけで倒れていて今危険な状態だってこと…。
私は、凜ちゃんは自分の病気の回復に
専念してほしいと思う。それはきっと、純も同じ。
悪いけど、純の事については
凜ちゃんには言わないでおこうと皆に約束した。
—…一人を除いて、皆に。
「北条!」
噂をすれば影、だ。
『よそ者』が私を呼んでいる。
「あのさ、さっき、…純がヤバいって…」
息を切らしながら、彼は言う。
「五十嵐さんに聞いて…なんか北条知って…」
「しらない。」
私はそっぽを向いた。
高橋の息が静かになる。
「…知ってても、教えない。」
「…どうして。」
「前にも言ったでしょう!?
アンタはよそ者、関係ない人間!」
それでも私は、そっぽを向いたままだった。
目を合わせずに怒鳴っている私。馬鹿みたい。
「お前、私たちがどんな生物かわかってる?
世間からも国からも認められていない人間!
欲しくもない特殊能力を授かった人間!
人間とは共存してはいけない『神の後継者』!」
彼は唖然とした顔で、私を見てる。
そんな彼に私は背を向けた。
「…そしてお前は、ただの人間。
言ったはずよ、もう関わらないで。
特に私には…『死神の後継者』には。」
「でも、俺は!」
私は退かなかった。
「私は死神様の後継者…。
お前を殺すなんて容易いことだ。」
あの時、私が行った言葉を
もう一度彼に浴びせた。
—…お願いだから、分かって。
「…俺は教師だ。で、北条たちは生徒。」
目を閉じて、聞いていない振りをする。
「教師と生徒。関わっていかないといけないだろ。」
私は黙った。やっぱり、こいつ、分かってない。
「お前が死神だろうが何だろうが、
ゼッテーびびらねぇって、約束するから。」
「信用できるか。」
「信用してもらえるように頑張るから。約束だ。」
「お前の約束は、全部信用できない。」
つくづく思う。私ってまだまだ子供。
それに付き合ってくれるこの人は、立派な大人。
だから、お前は遠い存在な気がして。
なんだか怖い。
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.24 )
- 日時: 2010/08/01 12:11
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾七話 おもいでばなし
私は、ふいに呟いた。
「前に、坂出にいた時の事件。」
私がココに転校してくる前にいた中学校。
高橋もいた、中学校。
その話になって高橋はいつになく真剣に顔になった。
「大量に失神で倒れた生徒がいた事件。
そしてその加害者が私だと言われた、事件。」
思い出しただけで、拳に力が入ってしまう。
私の嫌いな子も、縁のない子も、親友も。
校内のほとんどの生徒が倒れた『坂出事件』。
「あの時、私は何も考えていなかった。
それなのに『神通力』が発動してしまった…。」
右手を開いて、私はじっと見つめた。
「いつ力が発動するか分からない、自分でも。
コントロールできないんだ。純や春みたいに。」
皆ができて、自分だけできない。
私が一番嫌な事で、私に当てはまっている事。
「だから、私はいつお前を殺すか分からない。
関わってて死んでゆくのも、時間の問題。」
私は右手で、背を向けたまま彼に手を振った。
「でも、あれは失神だし。今は全員回復して…!」
「…運がよかったんだ。私は過去に2人殺した…。」
小さい頃、父さんと姉『ざくろ』を殺した。
いつの間にか、私が…。
「特にざくろは私を恨んでる。
きっと憑いているから、お前も…」
「紫堂!高彦さん!」
救われた。もう少しで泣きそうだった所に、
春が首突っ込んできた。
「大変や!凜ちゃんが、…いない!」
「凜ちゃんが!?」
高橋は首をかしげている。
そうだ、こいつは凜ちゃんを知らない。
これはチャンスだ。
「りんって…?純の姉ちゃんの…」
「ちゃう!そっちは麒麟の麟で!
今言ってんのは妹の方のり…。」
私は純の腕を思いっきり引っ張った。
「時間がない、探そう!」
彼から逃げるように走った。
悪いけど、もう首を突っ込まないでほしい。
お前には…高彦には大切な人がいるんだもの。
○
「り…麟さん…。」
気がつくと、鉄のさびたにおいのする
暗闇に閉じ込められていた。
「やっと気付いたのね?やっぱアンタはグズだわ。」
頭に激痛が走る。
きっと、麟さんがわたしを足蹴にしている。
「な、何が目的なんですか…っ」
「アンタが持ってる能力、使わせてもらうだけ。」
「でも私、お兄ちゃん…じゃなくて
純さんみたいな神通力なんて…!」
麟さんが私の頭を強く蹴った。
「自分で気付いてなかったのぉ?ばーか。」
痛い、痛い痛い…!
暗い怖い、誰か助けて!
「アンタにゃ、目いっぱい働いてもらう。
助けを求めたって駄目よ。純は死んだ。」
それはあまりにもあっさりしていた。
『死んだ』。すんなり言われても納得いかない。
「私は見た。アンタのお兄ちゃんはもういない。」
追い打ちをかけられて、やっと分かっていった。
肩の力もだんだん抜けてゆく。
「どうして…なんてことを!」
「私が殺したんじゃないからね。殺したのは…」
私の耳元で、麟さんは呟いた。
「死神の後継者、北条紫堂。」—…
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