ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 殺人ゲーム
- 日時: 2010/03/17 12:41
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
初めまして、日高薫と申します(*´・ω・)
森ガイやブログなどで多く小説を書かせていただいているものです。
ようやく脱ゆとりではありますが、まだまだ至らない点が多くございます。
何卒よろしくお願いいたします(´・ω・`)
大まかなあらすじ
神力という特殊な魔法を使える「神力者」と、
そうでない普通の「ヒト」。
世界の人間はだいたいこの二種類に別れていて、
神力を悪用して殺人を犯す組織、
神力者を憎んでいるヒトによる殺人組織、
そんな殺人組織を食い止めるための正義の組織などが、
政府を築いていた。
この話は正義の組織「聖騎士」のとある班員たちの、
生と死に向かい合う話しです。
注意書
・カオス!カヲス!
・組織的なものがよく分からず、私自身混乱していますが・・・見逃してくださいorz
それでも全然おk!見てやんよ!という、
心の優しい方は是非お読み下さい!
- 第5話 - Are we ready...? - 1/3 ( No.12 )
- 日時: 2010/03/17 13:00
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
「どう思う?」
「何が?」
「いや・・・影とスペードの動き。
急に2つが動き出すって、おかしくない?」
奏馬とルイの寮で、D班はミーティングを行っていた。
先ほどの緊急ミーティングの内容が深刻だったので、普段流しているミーティングも、緊迫の空気が漂っている。
「同意ー。ボクも変だと思うよ。多分魔王がらみだね」
光輝が腕を組みながら、ベッドの角によっかかって言った。
それに轟も頷く。
「あぁ。ぜってーおかしい。魔王ってそういうときに動くのか?」
「さーね、ボクは女神様オンリーだから」
光輝が首をすくめる。奏馬はため息をついて、二段ベッドの上の段にいるルイに問う。
「実際どうなわけ、ルイ?」
「・・・・・・知らん」
ルイは胡坐をかき、ぶっきらぼうに答えた。
「知らんってお前、“第二の親”だろ?」
“第二の親”・・・それは、神力者にとって、文字通り第二の親だ。
神力を与え、神力者を見守る神々。それが、第二の親だ。
奏馬や轟など、大半の神力者の第二の親は聖神と呼ばれている。
光輝やルイの特殊な神力、光や闇などは、聖神が親ではない。
それぞれ光族が女神、闇族が魔王である。
「第二の親の状況も知らないなんて・・・流石」
「喧嘩売ってんのか」
「全っ然。関わりたくないもん」
「その言葉、そのまま返してやる」
「望むとこだよ」
地味ないい争いに続き、ルイが独り言のように呟いた。
「・・・知るかよ・・・魔王なんて」
奏馬には、その言葉が意味深に感じた。
ベッドの上を見上げてみると、ルイが遠めで窓の外を見上げている。
その瞳はどこか寂しげで、どこか睨みつけてあるようでもあった。
魔王が夜を、闇を支配している存在だという事は、神力者にとって常識とも言える。
魔王は人間の苦しむ顔を見て楽しむ為に生まれてきたような、残忍な神である。
それと同時に、影がもっとも慕う神でもあった。
ルイは、その魔王を親としている。
魔王は神力を与えたものに、莫大な力と共に強力な呪いをも届ける。
彼もまた、厖大な闇神力と共に悲痛な呪いをもって生まれてきた。
呪いは人によって様々だが、ルイにかけられた呪いは上位の方だ。
闇の傷と呼ばれる深い傷が、ルイの頬にはついている。
普段痛みを伴う事はないが、特殊な光を浴びたり、新月の夜になったりすると、この世のものとは思えないほどの痛みとなるのだ。
奏馬はルイと同じ部屋になってから約2回、新月の夜を2人で迎えたことがある。
その日のことは、奏馬の目の奥に、妬きつくように残っていた。
* * *
太陽があるころは、いつも通りだった。
いや、少し機嫌が悪かったかもしれない。
日が沈むと、新月の夜は蝋燭で過ごすという風習が、聖騎士にはある。
蝋燭の灯りが建物を照らし出した頃、呪いは始動した。
いつもは夜更かしをしているルイが、まだ7時だというのにベッドに登り、寝始めた。
気分でも悪いのかと思った奏馬が除くと、ルイは頭まで布団を被って、ごそごそと動いていた。
「どしたの?」
奏馬が声をかけると、ルイは布団から目だけのぞかせ、かすれた声で言った。
「・・・ほっとけ」
「ほっとけってお前・・・大丈夫?顔色悪いぞ?」
「うるさい・・・」
ルイの身体は、震えていた。
それだけではない。
苦痛に歪んだ彼の表情は、奏馬が今まで見たことのないようなものだった。
「どうしたんだよ?!はんぱねぇじゃん!!」
「黙れ・・・!!!」
かなり弱っている。
ここまで弱ったルイを見るのは、初めてだった。
「お前には関係ない・・・さっさと行け」
ルイはあの時、今よりもさらに心を開いていなかった。
そのせいか、ルイは吐き捨てるように言ったのだ。
その後もルイは奏馬に強気な発言をしていたが、
突然苦しそうに咳き込み、血をぶちまけたのだった。
- 第5話 - Are we ready...? - 2/3 ( No.13 )
- 日時: 2010/03/17 13:01
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
「任務って、明日から始まるんだろ?」
「あぁ、とりあえずAランクの任務がね。でもAだったら大丈夫でしょ・・・」
「その甘さが失敗を生むんだ、馬鹿」
「フフ、奏馬、ルイに馬鹿って言われちゃお仕舞いだよ?」
「黙れ」
「嫌だね」
奏馬たちの任務は、明日から始まる。
Aランクの任務は昔から何度もバーチャルでクリアしてきた。
なので明日も大丈夫だろう・・・恐らく。
「まぁとにかく、今日はゆっくり体を休めよう?」
「そだな、たまには休暇も取らなきゃだぜ」
轟がふぁあと欠伸をする。
するとノックもなしに、部屋のドアが開いた。
ビクっとして見てみると、そこには黒衣に身を包んだ怪しげな人が立っている。
彪眼琥珀だった。
「会議の方は順調に進んだか?」
欺くような薄い笑みを唇に浮かべ、彪眼は組んでいた腕を解いた。
そして固まったような空気を楽しむかのように一歩ずつ、奏馬たちに歩み寄る。
「何だ?私がここに来てはいけなかったか?」
彪眼の性別は不明だ。
かすれた少し低めの声も、女と思えば女に聞こえんでもない。
目の下に入っている紫の刻印と、いつも身に纏っている黒いマントのような衣が特徴的だ。
よくフードを被っていて、奏馬も彪眼の顔をはっきり見たことがない。
唯一分かるのは、怪しく輝く紅い瞳だ。
神力は炎神力なのだが、何派の力なのかはまだ分かっていない。
神力を善からぬことに使っているという噂も流れており、
龍宮も、裏で警戒しているようだった。
そんな怪しい人物がなぜ聖騎士にいるんだろうと、奏馬はいつも頭を抱えていた。
明らかに変な人だ。
自分の性別が分からない時点で謎だ。
彪眼は艶やかに微笑むと、空いていた席に腰をかける。
「あ・・・いえ、会議は順調です」
奏馬がたじたじというと、彪眼は馬鹿にしたように笑った。
「ま、駿河とルイが争っていない時点で順調だな」
ルイが彪眼をキッと睨む。
光輝の笑顔にも、亀裂が入った。
彪眼は人の名を苗字で呼ぶ癖がある。
だがルイの事だけは、下の名で呼んでいた。
きっと何かあるのだろう、
闇の世界つながりで・・・。
「ルイ、何だその目は?私に怨みでもあるのか?」
「・・・怨み?そんなもの有りすぎて数えられないな」
「ほう、私に喧嘩を売るとはいい度胸だ」
嫌な空気が流れるのに構わず、彪眼は言葉を続けた。
皮肉な、紅く輝く瞳でルイを見つめながら。
「兄たちにはしばらく会っていないらしいな?」
「・・・・・・!」
発せられたその言葉に、ルイの表情が固まった。
今までにないことだ。
奏馬だけではない。轟もそれを感じとった様だった。
だが、光輝だけは違った。
彼には思い当たる節があったようだ。
笑顔が消え、少し哀しそうな表情で俯いている。
「家が全焼して以来か?」
「黙れ!!」
必死になってルイが怒鳴った。
息は切れていて、肩で呼吸をしている。
こんなに追い詰められたルイを、奏馬は初めて見た。
「いいだろう、止めてやる」
彪眼はそんなルイの表情を味わうかのように微笑み、
咳払いをして本題に話しを捻じ曲げた。
「さて、D班諸君。お前たちに言っておく事がある」
彪眼の声には、鋭く冷たい、氷の様な重みがあった。
ただならぬ雰囲気に、奏馬は唾を飲み込む。
「砂原馨二が消えてから初の任務だな?
聖騎士の任務は5人以上でしか認められていない。お前らはこのままだと4人だろう?
よって助っ人を1人、他の班から連れて行け。誰でも構わない。
明日任務が入っているのは、お前たちとケルベロスだけだ」
ケルベロスとは、天馬率いる聖騎士最強騎士団だ。
どうやらケルベロスとD班以外は、チームワークを高める為に修行をするらしい。
「まぁ誰にするかだけ決めておけ。それだけだ」
彪眼はそれだけ言うと、その場を去っていった。
彼の去った奏馬の寮は、緊迫した空気に包まれていた。
立ったままのルイに、俯く光輝。
轟は耐えられない空気にイライラさせているのか、貧乏ゆすりをしていた。
その場を取り繕うかのように、奏馬が明るい声を出した。
やる気が空回りし、声が裏返る。
「助っ人、誰にしようか?」
一瞬の沈黙の後、轟が救われたような顔をして奏馬を見た。
「そだな、決めなきゃ。・・・どんな任務だっけ?」
「えっと、ゼーネっていう町で、教会にいた人が、
全員血をぶちまけながら死んでるんだってさ・・・。それの調査と解決。多分影だって」
「血・・・?だったら医療関係の子連れて行けばいいんじゃないかな?」
光輝も、気を取り直したように顔をあげたが、その顔色はいつもより少し蒼白だった。
「医療関係か・・・。っていうと、雅とか?」
星華雅。
よく女子と間違えられる、へたれな草食男子だ。
音神力をもっているが自分に自身がなく、任務中には絶対に戦わないとか。
しかし史上最年少で神力医療免許をもつなど、
ずば抜けているところも多々ある。
「うーん、この班はルイ・轟が攻撃で、医療が光輝」
確か、光輝は過去のAランク任務で、馨二が不意を付かれて攻撃されそうになったところに現れ、
光で敵を灼き払っていた。
それを思い出して、奏馬は問う。
「でも光輝、攻撃も得意だよね?」
「ん?得意な訳じゃないよ。でもやれって言われたらできる」
ニコッと光輝が微笑む。
よかった、前の光輝に戻った。
「そっか、じゃあ・・・今回は、攻撃回ってくれる?
俺が守備やるから、雅に医療頼もうか」
「うん、いいよ」
「じゃ、俺様とルイで攻撃な」
さっきから押し黙っていたルイも、皮肉に口を挟んだ。
「星華が医療なら安心だな。駿河がやるんじゃ逆に悪化する」
「カッチーン、怒っちゃったよ、ボク」
「勝手に怒っとけ、カス」
「いいの?久しぶりに暴れちゃおっかなー」
ルイと光輝が皮肉な言い争いを続けるが、本気でやりあう気はないようだ。
奏馬はホッと胸をなでおろすと同時に、明日の任務に対する不安を感じた。
- 第5話 - Are we ready...? - 3/3 ( No.14 )
- 日時: 2010/03/17 13:01
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
5時間に及ぶ特訓を終え、奏馬は食堂に向かっていた。
特訓後は自由時間なので、いつ夕食をとっても、風呂に入ってもいい。
轟はシャワーを浴びに、光輝は教会に、ルイは夜の散歩をしている。
奏馬は3人と違って持久力が無いので、すぐに腹をすかせてしまうのだ。
(あぁー・・・腹減ったー・・・・・・みんなよく平気だよなー・・・)
奏馬が腹をさすってため息をつき、曲がり角を曲がろうとした。
すると。
「あっ・・・」
「うゎっ!」
小柄な少年とぶつかった。
赤毛に近い褐色の髪を痛そうに撫でている少年は、尻餅をついていた。
身長も小さく、年下のようだ。
「あ、大丈夫?ゴメン、俺前見てなくて・・・」
「へっ・・・」
少年が恐る恐る顔を上げる。
その顔に、見覚えがあった。
「お前・・・雅・・・!!」
「あ、な、そ、奏馬か・・・ビックリした・・・」
奏馬は雅に手をさしのべ、立たせた。
ありがとうと呟き、雅はか弱い笑みをこぼす。
「僕も疲れちゃっててさ、ゴメンね」
「ははは、年下かと思ったよ」
「本当?身長、ぜんぜん伸びないんだよね・・・ハハハ」
決して言い返そうとしない雅をみて、奏馬は思い出した。
そうだ、助っ人頼むんだった。
「あ、雅、明日って暇?」
「明日?うん、訓練以外はとくに何も入ってないよ。あ・・・でも」
「ん?なんかあんの?」
「あっと・・・えっとねぇ・・・患者さんがいてさ、うちの班に」
「患者?」
雅たちF班のメンバーは、結構変わり者が集結している。
それに、全員が全員多重人格の持ち主だ。
ナルシストで大金持ちの白井颯、
短気で乱暴、ちょっとツンデレ気味の水城司、
司の兄ちゃんで、打って変わって超優しい、聖騎士の医療副長も兼ねてる水城咲也さん、
大阪弁で、もういいよってほど喋る藍川伊吹。
そして、雅の5人である。
その中に患者がいるだなんて、聞いたことも無い。
「あんまり大きな声では言えないんだけど・・・その、司が」
「司が?」
アイツはF班の中で一番強い。
そんな司に、一体何があったんだ?
「奏馬・・・絶対、言わないでね」
念を押すように雅が言い、奏馬はこくりと頷いた。
そして彼は用心深く周りを見回し、ひっそりとした声で言った。
「実はね、司が今、精神的にキツい病気になってるんだ・・・」
「精神的にキツいって・・・どんなん?」
「大鬱病性障害と、あとは適応障害の行動型。
大鬱病性障害ってのは、世に言う鬱病。
で、適応障害の行動型ってのは、すぐ感情的になって暴力振るう病気」
「鬱病って・・・司、が?」
「うん・・・」
司の精神力は、奏馬より遥かに強く思えた。
そんな司が、鬱病って・・・
「多分ね、司の過去には影が絡んでるから・・・ストレスとか、で」
「影絡み・・・」
奏馬は思わず身震いした。
あんなに強い司の精神まで狂わせるだなんて・・・。
同じD班の轟やルイ、光輝も、なんだかんだ言って影にはかかわりの無い過去をもつという。
自分だって、その1人だ。
「うん・・・心配なんだ。影がどんだけ怖いか、知らしめられているみたいで。
・・・でも慧月さんも咲もついてるし、司は大丈夫だよ。
で、明日なんかあるの?奏馬」
「へ?何だっけ・・・あ、そうだそうだ。
明日・・・俺達の班の助っ人についてくれる?」
「・・・え?」
突如、雅の顔から血の気が引いた。
「え、あの、す、助っ人って、あの、えと、でぃ、D班の・・・?」
しどろもどろになって冷や汗をかきながらいう雅に、奏馬はたじろぐ。
「え・・・あ、う、うん・・・」
「あのっ、死亡率が高いであろうランキング第一位で、
問題児ランキング第3位までの面子が揃いも揃ってる、
そして右を見れば闇、左を見れば光が飛び交って、頭上には雷が轟いてるっていう・・・
・・・あの、D班?」
「雅・・・お前それ、確実に拒否ってるだろ」
奏馬はため息混じりに言った。
まぁ、全部図星なのだが・・・。
半分希望を失いながら呟いた言葉に、雅は突然過振りをふった。
「いやいやいやいやいやいやいや!!!そんなことない!!!」
「えっ?!」
雅は先ほどとは打って変わり、きらきらと輝いた瞳で奏馬を見つめ、その手をとった。
「是非お願いするよ!!僕、ずっと思ってたんだ!!D班の医療がしたい
——って!!」
「お?お?マジで?ありがとう雅!!」
両方が満面の笑みで手を取り合った瞬間に、奏馬は妙に思えた。
雅がこの班の医療やりたい理由って・・・・・・つまり、
S班じゃあんまり医療する必要がないからじゃ・・・
宝石のような瞳で自分を見つめるその小さい少年に、奏馬はそっと、ため息をついた。
- 第6話 - 出発 - 1/3 ( No.15 )
- 日時: 2010/03/17 13:02
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
運の悪い事に、今朝は雨だった。
肌寒く湿った聖騎士本部前のピロティで、D班員と雅は龍宮を待っていた。
久々の任務に落ち着かないのか、いつもより数倍大人しい班員たちを嘲笑するかのように、
雨に濡れた木々がざわめく。
結局なんだかんだ言って、助っ人の雅もついてくれた。
雅は生き生きとした表情で、大量の医療器具を詰め込んだリュックを見直している。
光輝やルイも、珍しく大人しく、轟はさっきからずっとスクワットを繰り返していた。
奏馬はといえば、胸のもどかしさを抑える事が出来ずに、
深呼吸や準備運動を繰り返すばかりだった。
不安ばかりがこみ上げてくる。
期待は一切なく、成功するかという不安が、奏馬を押し流しそうになっていた。
バーチャルでのシュミレーション中の悪夢が、ありありと蘇ってくる。
誰かに期待されて任務をしているわけではない。
むしろ嘲笑されているようなものだ。
だからこそのプレッシャーがある。次こそ勝たなければというプレッシャーが。
ぽんと、誰かが奏馬の肩を叩いた。
顔を上げると、少しやつれた顔に、柔らかな笑みを浮かべている青年——水城咲也の姿があった。
司の兄である咲也は成人で、F班のメンバーでありつつ医療副隊長を兼ねている。
その上清掃や食堂、さらには売店で働くなど、聖騎士を影で支えている人物だ。
弟と違って彼は温厚で、みんなから好かれている。
「さ、咲也さん・・・」
「はは、緊張してる?大丈夫大丈夫、あせりは禁物だぞ」
「あ・・・そう、ですよね・・・」
それでも浮かない顔をしている奏馬に、咲也は語りかけた。
「馨二いなくなってからさ、大変みたいだな」
「はい・・・すごく」
「でも奏馬、すっごい頑張ってるじゃないか?」
「俺の努力は・・・報われないんです」
「そうか?今のお前、誰よりも凄いと思うぞ」
「そ、そんなことないっスよ!」
奏馬は過振りをふったが、咲也の目は真剣で、優しかった。
「・・・上手く、いくんですかね・・・」
「大丈夫、なんだかんだ言って、結局大丈夫なのさ」
咲也の言葉は気楽に聞こえた。だが、重みと確信に満ちていた。
奏馬はその言葉を信じ、こくりと頷く。
「そうですね、頑張ります」
咲也はにこりと笑って、奏馬の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「無理はするなよ」
「はい、ありがとうございます!」
「おっ、悪いな、待たせた」
丁度そこに、ボスである龍宮が到着した。
いつもと同じスーツに、金で聖騎士の紋章が記された黒のネクタイ。
銀の髪は、肩にぎりぎりつかない程度のところでさっぱり切られており、
意志の強そうな瞳は、夜空の藍色に輝いている。
髪の色と眼の色を除いては、龍宮はごく普通の若造サラリーマンにも見える。
奏馬たちは、龍宮が神力を使っているところを見たことがない。
実はただの人間なのでは、という、何の根拠も無い噂も多い。
だが秘めた力は現在、世界一を争うような力なんだとか。
後ろから、彪眼琥珀も何も言わずについてきた。
彪眼もいつものローブに身を包み、顔が半分ぐらい隠れている。
男か女かも分からないその蒼白な顔は、恐ろしいほど美しい。
「欠席を取る。名前を呼ばれたら返事をしろ」
鋭く響く龍宮所長の声に、
はい、と、五人がきっぱりと返事をする。
「矢吹奏馬」
「はいっ!」
「鳴澤轟」
「はい」
「駿河光輝」
「はぁい」
「五十嵐ルイ」
「・・・はい」
「星華雅」
「ははは、はぃい」
雅は声を裏返らせて、飛び上がるように龍宮を見た。
まさか自分まで呼ばれるとは思っていなかったらしい。
「これから聖騎士本隊D班4名、聖騎士本隊臨時D班1名には、
危険を伴うランクAの任務を行ってもらう。
我々最高幹部も、もしものことがあれば援護隊や医療の手当てはするが、
そんなものがないようなことを祈る。以上」
もしものことって——・・・
聞いただけでぞくっとする。
が、こうもなったら不安に駆られている場合でもない。
「了解!」
声を揃えて答えると、龍宮は力強く頷いた。
「——今度こそ不運のないことを祈っているぞ。天気は悪いがな。
だが絶対に無理はするな。いいな」
「了解!」
「よし、行っていいぞ。検討を祈る」
「了解!!」
龍宮と彪眼の後ろから、にっこりと咲也が顔を覗かせた。
声には出さなかったものの、口元が頑張れよと言っていた。
奏馬は笑顔で頷くと、深呼吸をした。
先ほどまでの不安は消えつつある。
「じゃあ、ボクが転送するね」
光輝が先頭に出て、言った。
「あぁ、よろしく」
奏馬が言った瞬間に、視界が真っ白になった。
光輝の光神力による転送——
視界が開けるまで、そう時間はかからない。
期待が、不安を呑み込んだ。
- Re: 殺人ゲーム ( No.16 )
- 日時: 2010/03/17 13:03
- 名前: (*´・ω・) 薫 ◆csrKrKYmRA (ID: fgNCgvNG)
- 参照: http://sukittekotosa.blog.shinobi.jp/
とりあえず、私がもっているHPで公開済みの・・・というより更新済みの話しだけうpしました。
登校するのに夢中で、そんなに考えていなかったんですが、
長っっΣ(゜Д゜lll)
コレでは読む気失せますよね・・・すみませんorz
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