ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 煉獄−業火の女王−
- 日時: 2010/04/03 22:08
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
紅蓮の炎が燃え盛る地の底の宮殿。
罪人の嘆きと悲愴の混沌とする玉座。
そこには残酷な笑みを湛えた王が君臨していた。
イメージソング>>13
スカーレット>>4
第一話−戯れ−>>1 第十一話−心情−>>14
第二話−出会−>>2 第十二話−信念−>>15
第三話−異質−>>3 第十三話−休息−>>16
第四話−名前−>>5 第十四話−残虐−>>17
第五話−女王−>>7 第十五話−二人−>>18
第六話−通信−>>8 第十六話>>
第七話−学校−>>9
第八話−姉妹−>>10
第九話−家族−>>11
第十話−口唇−>>12
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.9 )
- 日時: 2010/03/23 13:28
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第七話−学校−
「もうこんな時間!!早く行かなきゃ遅刻しちゃう!!!!!」
今日は遅刻出来ないのにぃ〜・・・・。と言いながらワタワタしている茜。
時計の短針は8を、長針は真上に向いているので、もの凄く慌てているのだろう。
「?何じゃ茜。何をそんなに慌てておるのじゃ」
モゾモゾと布団の中から這い出てくる暁。
今起きたばかりで眠いのか、目をガシガシと擦っている。
「学校行かなきゃいけないの!赤点取っちゃったから補習に出ないと単位もらえないの〜!!」
制服をせっせと着ていくがボタンを掛け違えた所為でタイムロスだ。
「どうしよう・・・・絶対遅刻だぁ・・・」
留年したらどうしよう・・・・。とぼやきながら部屋を出ようとする茜。
そんな茜に暁が声をかける。
「・・・・・ふむ、良かろう。部屋に泊めてもらった礼じゃ。受け取るが良いぞ」
そういって暁は煙管を口に含み、白い煙をふうっ、と茜に吹きかける。
「うわっ!!何するの?!」
茜がそう言って部屋から一歩外に足を踏み出した。
すると茜の体は傾き、重力に逆らって落ちていく。
部屋の外は階段に続く廊下の筈であったが、そこにはどこまでも続く闇と、穴があった。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
茜の体が穴に落ちていくと、その穴はシュルリと消えてしまった。
「名付けるなら<兎穴>、と言ったところかのう」
暁だけとなったその部屋に、有害物質を含んだ煙がゆらゆらと漂っていた。
「本条さん。正直に言ったらお咎めなしにしてあげるから、ね?」
「ぇ・・・うぅ・・・・・・・」
茜は今数学の担当教師の鮎沢に尋問されていた。
「だ、だから・・・・わからないんです・・・・」
「本条さん良いですか?
人間が空から降ってきて中庭の植え込みに着地したから無傷で済んだ、なんてありえないんですよ?」
そう。確かに茜は空から降ってきた。降ってきて中庭の植え込みに着地したので無傷だったのだ。
『あの穴みたいなのから出てきて気づいたら中庭に居たんだってば〜!!』
「・・・・全く。本条さんは嘘を吐かないことだけが取り柄なんですから、ね?」
嫌味をいってくるが、茜はにこにこしている。
「鮎沢先生」 「何ですか?」
事務員の先生が鮎沢を呼ぶ。
「本条さんの妹さんがいらっしゃってるんですが・・・」
「本条さんの妹?そんな馬鹿な・・・」
事務員の先生が一人の女の子を連れて職員室に入ってきた。
その少女は・・・・・。
「来てやったぞ。茜」 「暁?!」
部屋に居るであろう赤髪の少女だった。
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.10 )
- 日時: 2010/03/23 14:34
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第八話−姉妹−
「暁!駄目じゃない、家に居ないと・・・」
「あんな部屋に一人で長時間居れば鬱になってしまうわ。それにほれ。鞄を忘れておったぞ?」
暁の手には学生鞄が握られていた。
ありがとう〜。と言いながら茜は鞄を受け取る。
しかしそれに対して鮎沢は不穏の表情を見せた。
「本条さん!!本当にその子は貴方の妹さんなの?!」
「ぅえ・・・・え〜と・・・・・はい!」
明るい笑顔でそう答える。が。鮎沢は更に表情を歪めた。
「そんな馬鹿なことがあるわけありません!!だって貴方のご家族は・・・!!」
「まあ良いでは無いですか、鮎沢先生」
暁が鮎沢の前に歩み出る。
「我は本条 茜の妹じゃ。故にそなたに我らの関係に口を挟む権利などないであろう?」
そう言って暁は鮎沢の額に手を翳す。
「・・・そうね、他人の私が貴方達のことに口を挟むのは良くないわね」
鮎沢はそう言ってどこかに行ってしまった。
「すごいねぇ暁。何したの?」
「ふん。ちょっとした催眠術のようなものじゃ」
そう言った暁の服装にハッとする。
「その服どこで買ってきたの?家に無かったよね」
赤いワンピースを着ている暁は可愛らしいなと思った。
「そなたの持っていた服を見てアレンジしたのじゃ。中々良いだろう?」
くるりと回ると、スカートのすそがふわりと舞った。
「そうなんだ。可愛いね!」
「ほほ。当然じゃ。我は煉獄の宮殿の女王じゃ。煉獄美女と呼ばれて居るくらいじゃからのう」
照れているのかいないのか、少し顔が赤らんでいるようだ。
「それより、我はそなたの妹ということになっておるらしい」
「そうみたいだね」
「ならば我はそなたを<姉上>と呼ばなければならぬのう」
「ぇえ?何だか恥ずかしいよ」
しかし暁は呼ぶのをやめようとしない。
「のう姉上。補習とやらは終わったのじゃろう?ならば早う帰ろうぞ」
そして暁は茜の手を握る。
それはさながら本当の姉妹のようだった。
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.11 )
- 日時: 2010/03/23 21:13
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第九話−家族−
手を繋いで茜と暁は家へと帰る。
他愛もない話をしながら、黄昏の空の下を歩くのだ。
「・・・のう茜」
暁は、何かを思いつめたように口を開いた。
「ん〜?どうしたの?暁」
今日のご飯何にしようか。といいながら暁を見つめる。
「茜は、寂しくないのか?」 「何が?」
暁の瞳と茜の瞳が入り混じる。
「父も母も居らぬあの家に独り、何の変哲も無い毎日を送るのは辛くないのか?」
暁の問いに、茜はにこにこしたまま答える。
「さぁどうだろうね。物心ついた時には仕事で帰ってこないなんてざらだったからなぁ・・・・。
寂しいなんて考えたこと無かったよ。でもね、今はすごく楽しいよ?」 「?何故じゃ」
茜は暁の手を強く握りしめる。
「暁が居るから!すごくすごーっく楽しいよ」
えへ。と顔の筋肉が緩み、だらしのない笑顔を浮かべる。
「・・・・そうか。それはほんに良かったのう」
暁も笑い、家への道に意思を向ける。
「これからもずっと暁がいてくれたら私は嬉しいよ!」
その言葉に暁は曖昧な笑顔を向ける。
「・・・・・その答え、我の本当の姿を見ても変わらぬままで居てくれるのかのう・・・・」
茜に聞こえないような声で、暁はポツリと呟いたのだった。
その夜。暁は眠れずにいた。
「・・・・・・・・・・・・・」
<これからもずっと暁がいてくれたら私は嬉しいよ!>
茜の言葉と共に、楽しそうな笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
「・・・・・何を迷っておるのじゃ、我は・・・」
修復し終えた窓を開け、夜風を部屋に招き入れる。
その冷たさは、暖かな布団を一気に冷ましていった。
「我は煉獄の王。願って叶わぬことなど一つとして無かった。しかし・・・・・」
すやすやと眠る茜の顔をちらりと見る。
「・・・・・・・・これだけは、王たる我でも叶わぬ願いやもしれぬのう・・・」
夜の闇に小さな溜め息を吐いたのだった。
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.12 )
- 日時: 2010/03/23 23:13
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第十話−口唇−
「朝じゃぞ。起きるが良い、茜」
朝。暁が茜の上に乗っかっていた。
「ぅうぅぅ〜・・・・・重いよ暁ぃ・・・・・」
茜がゴロリと寝返りをうつと、乗っていた暁も床に叩きつけられた。
「ぁいた!!これ!!何をするのじゃ茜!!」
お尻を打ったのか、さすりながら暁は茜の頭を軽く叩く。
「ぅえ?!あ、ごめんね暁・・・・・。大丈夫だった?」
「大事には至っては居らぬ。平気じゃ」
すくっと立ち上がり、腰に手を当てて姿勢を正す姿は高貴な雰囲気を醸し出す。
「・・・・でもどうしたの?今日日曜日だよ?こんな朝早くから・・・・・・・」
まだ午前5時にもなっていないにも関わらず、暁はもう着替えなどを済ませている。
昨日の真っ赤なワンピースと違い、黒を基調としたゴスロリでカボチャスカート風のワンピ。
・・・・どこかに出かけるのだろうか。
「どこか行くの?そんなに御洒落して・・・・」
「うむ。少し人に会う約束をしておるのでな。帰りは遅くなる故良しなに頼むぞ」
「わかった。気をつけてね〜」
そして茜は暁が出かける様子を見送ったのだった。
家を出てから暁は新宿に来ていた。
新宿と言っても、人通りの多いショッピングモールなどがある場所ではなく、
人気の少ない路地裏を通っていた。人と会うために。
「・・・・・・・・遅いぞ」
急に歩を止め、くるりと後ろを振り向く暁。
そこには二十代前後の女が立っていた。
「お久しぶりですわね。女王陛下。確か最後にお会いしたのは10年前でしたか?」
くすりと手を口に当て、上品に笑うその様子はどこかの令嬢を想像させる。
「10年と4カ月じゃ。愚か者めが。・・・・・して、我の頼んだものは用意できたのか?」
暁はその女に向かって手を伸ばす。
それを見た女は肩を竦め、直ぐに懐から茶封筒を取り出した。
「依頼された通りのものを持って参りましたわ、陛下。
・・・・しかし、一体何故今更になって<その者>を御捜しになられるのですか?
<あの時>ならまだしも、100年も前のことですよ?」
女は首を傾げながら暁に問う。
その問いに暁は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら答えるのだ。
「・・・・煉獄から脱獄者が出たのじゃ。無論、捕えてそれなりの<仕置き>はしてやったがの。
その脱獄者を裏で操っていたのが、<あやつ>だということが判明したのじゃ」
その言葉を聞いて女はまあ!と驚きを隠せない様子だ。
「必ず<あやつ>を捕えて無へと還してくれるわ。・・・・その為に、そなたを呼んだのじゃ」
わかっておろうな。と念を押すように女に言う。
すると女はにやりと妖艶な笑みを浮かべる。
「私の力を存分に発揮せよとの御命令ですわね?嬉しいですわ!陛下のお役に立てるなんて!!」
手を組み、恍惚とした表情を浮かべる女に暁は満足そうに笑う。
「そなたのその口唇の術、楽しみにしておるぞ?我が家臣<イリア>よ」
イリアと呼ばれた女はあら、と暁に跪く。
「陛下、口唇の術ではなく<言霊>ですわ」
「ほう。言霊とな。それはどんなものなのじゃ」
「言葉だけで人を意のままに操れるのです。昔の意味とは違ってきているらしいですが・・・・・」
「ふむ・・・・。奥が深いのう、人間とは」
感心したようにブツブツと何か呟いている。
「では陛下。直ちに御命令通りに行動いたします」
「うむ。良い働きを期待しておるぞ」
イリアは一礼し、闇の中へと走り去っていた。
「・・・・・言霊、のう・・・」
暁はポツリと言ってみる。
「言の葉だけで、人が操れるとは・・・・・脆いのう・・・」
その小さな口唇から紡がれる言葉は、紛れもない事実だった。
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.13 )
- 日時: 2010/03/23 23:50
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
煉獄の華
紅蓮染まりし 裁きの宮殿
渦巻く嘆きは 奈落の喜劇
王の君臨せしその都で
闇のパレードは進行する
逃げたければ お逃げなさい
足掻きたければ 足掻きなさい
貴方は王の籠の鳥
王の為に 歌いなさい
群青侵せし 悲哀の湖水
沈む希望は 劇の幕開け
王の娯楽の玩具箱で
マリオネットは踊り狂う
死にたければ 御死になさい
昇りたければ 昇りなさい
貴方は王の可愛い子犬
首輪の鎖は 王の手中
由縁は 常世の命の道理
砂上の城は 崩れていく
死にたければ 御死になさい
生きたくても 御死になさい
貴方は所詮王の愛猫
王に精々 媚売りなさい
貴方は所詮王のモノ
王の為に 御生きなさい
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