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煉獄−業火の女王−
日時: 2010/04/03 22:08
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

紅蓮の炎が燃え盛る地の底の宮殿。
罪人の嘆きと悲愴の混沌とする玉座。
そこには残酷な笑みを湛えた王が君臨していた。

イメージソング>>13
スカーレット>>4


第一話−戯れ−>>1 第十一話−心情−>>14
第二話−出会−>>2 第十二話−信念−>>15
第三話−異質−>>3 第十三話−休息−>>16
第四話−名前−>>5 第十四話−残虐−>>17
第五話−女王−>>7 第十五話−二人−>>18
第六話−通信−>>8 第十六話>>
第七話−学校−>>9
第八話−姉妹−>>10
第九話−家族−>>11
第十話−口唇−>>12

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Re: 煉獄−業火の女王− ( No.1 )
日時: 2010/03/19 19:16
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

第一話−戯れ−

「・・・・・退屈じゃ」
紅蓮に包まれる豪華な宮殿の大広間。
大人二人分もあるソファに少女が寝そべっていた。
「まこと退屈じゃのう・・・・」
頬杖をついて溜め息を吐く姿は憂鬱を漂わせるには充分で。
悩ましげな表情が艶を帯び、大人びて見える。
「おい、ルーヴェン」
少女が呼べば一人の男が姿を現す。
「お呼びでしょうか、陛下」
恭しく頭を下げたその男は片膝をついて話す。
「ルーヴェン、適当な罪人を連れて参れ」
「罪人・・・でございますか。畏まりました。少々お待ちくださいませ」
男、ルーヴェンは少しだけその場を離れたかと思うと、今度はもう一人男を連れて帰ってきた。
首と手を鎖でつないでいる男を、ルーヴェンは少女の前に引きずり出した。
「ほう、そなたのような若人(わこうど)が罪人か?世の中は荒んでおるのう」
くつくつと小さな笑みをこらえながら少女は問う。
「、お、俺は、ただ友達の悪口を言っただけじゃないか!!
 何で罪人なんかにされなきゃなんねぇんだよ!!」
男は必死に少女に訴える。
そんな様子を見た少女は、口の端を引き上げた。
「言っただけ、と申すがそなた、その友がどうなったか知っておるのか?」
「はぁ?!知るかよそんなの!!」
男が疑問符を浮かべる中、少女はさも簡単そうに続ける。
「そなたの悪意なき悪口が、友を絶望のどん底に突き落としたのじゃ。
 哀れよのう・・・。信じていたそなたのせいで周囲の者共に虐められ、挙句の果てには自殺じゃ。
 ・・・・・それでも、そなたのせいではないと言い切れるのかのう?若人よ」
ソファの横に置いてある机から煙管をとり、口に含む。
「難儀なことよ。友が絶望に囚われている傍らで、そなたは色恋沙汰に夢中とは・・・」
ふぅ、と白い煙を男に吐き出す。
いきなりのことだったので、男はもろに吸ってしまいゴホゴホと咳き込む。
「そんな罪深きそなたに、我から裁きを下そうぞ」
そう言って少女はにこりと笑う。
「さ、裁き?!」
男は驚愕に目を見開く。
「ん〜・・・・・何がいいかのう・・・」
「ちょっ、待ってくれよ!!何で俺がそんな目に合わなくちゃいけないんだ!!!!」
男は少女に詰め寄り、襟を掴み上げる。
「・・・・・我に気安く振れるでないわ、この愚民が!!」
少女が男の首を掴み持ち上げる。
「ぅぐぅ、く、苦しい・・・、降ろしてくれぇ!!」
男の懇願に少女はにまりと笑う。
「・・・・・業火に焼かれて灰と化すがよいぞ、罪深き若人よ」
少女の手から炎が燃え上がり、一瞬にして男を包み込む。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
手を離すと床にグシャッ、と音を立てて落ち、ジタバタと転げまわっていたが、直ぐに止まった。
・・・・・死んだのだ。
「・・・・ふ、ふふ・・・あははははははは!!!あはははははははっ!!!!!!!!
 他愛もないわ、この蛆虫がっ!!あははははははははははははははははははは!!!!!!」
手を口元に翳しながら笑い続ける少女は悪逆の王のようである。
「・・・ふぅ。此処も飽きたし、地上にでも参るかの。
 ルーヴェン。留守を任せたぞ」
「仰せのままに、我が女王陛下・・・・・」
そう言って少女は立ち上がる。
「さて、地上の愚民共の頭に刻み込んでやろうではないか」
残酷に、麗しく笑みを浮かべる。
「誉れ高き我が名、煉獄の王<スカーレット>の名をな・・・・・・・」
その笑みはさながら、新しい玩具を探しに行く幼子のようだった。

Re: 煉獄−業火の女王− ( No.2 )
日時: 2010/03/20 14:19
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

第二話−出会−

「茜!あんた今日日直でしょ?」
「え?ぇえ?!そうだっけ??!!!」
「そうよ!何言ってるのよ、もう。本当に少し抜けてるんだからあんたって子は・・・」
「ぅう・・・・仰る通りですぅ・・・」
人の居なくなった三階の教室で二人の女生徒がじゃれ合っていた。
「じゃあちゃんと日誌を先生に届けるのよ?」
「わかってるって!じゃあバイバイ!!笑ちゃん!!」
手を大袈裟にふり、少女、笑に別れを告げたもう一人の少女、茜は日誌を持って廊下を走る。
職員室に行って、担任に日誌を渡せば日直の責務を全うできるからである。
『急いで持って行って、笑ちゃんに追いついて一緒に帰れないかなぁ・・・』
そう考えながら突き当たりの角を曲がる。
するとそこで、不思議な光景を見た。
「・・・ぐにゃぐにゃだ・・・」
角を曲がればそこは一階に続く階段が在る筈だった。
なのにそこにあるのはぐにゃぐにゃの渦。
周りの光景が渦巻いてブラックホールの様だ。
『・・・未来の便利屋ロボットが置いていった異次元に繋がる穴か何かかなぁ・・・・・・』
少し頭の弱い茜はそんな宇宙的考えを巡らせていた。
が。そのブラックホールもどきに異変が起きた。
「?中から音が聞こえる・・・・・・・」
穴の中から何かが這いずり回っているような音が聞こえてくるのだ。
茜がじっと聞いていると、音がぴたりと止まった。
「?」
ずるり。
穴から白くて細い手が伸びてきた。
「っきゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
茜は猛ダッシュでもと来た道を逆走した。
「っな、何?!何なの?!!!今の!!!」
しかし答えてくれる人などおらず、茜は片手に持ったままだった日誌を思い出し、
遠回りして職員室まで言って担任に渡し、すぐに家への帰路についたのだった。



「ふぅ・・・怖かったぁ・・・・・・・・・・。何だったんだろう、アレ」
まだ泣いている心臓を落ち着かせながら自室に入る。
鞄を勉強机にかけ、制服を脱ぎながら私服に着替える。
「・・・・まぁいっか。別に」
そう思っていると、後ろの窓の方からカタカタと音がした。
「?窓閉め忘れてたかなぁ・・・・」
茜が後ろをくるりと振り返る。
窓の向こうに、人がいた。しかしおかしい。
茜の部屋はニ階にあるのだ。地上二階に。ベランダどころか、足場になるようなところもない。
人と思わしきソレは窓に手をつけこちらを見ている、と思う。
髪が顔を覆っていて見えないのだ。
「っ・・・・・・・・・!!!!!!!」
驚きで声が出ない。足が震えて立ってもいられない。
『に、逃げなきゃ・・・・』
床を這って歩き、扉の前までやってくる。
ドアノブを必死に回すが中々開かない。
『何で開かないの?!何で、何で??!!!』
ピキ・・・・・・。
何かがひび割れた音が部屋に響いた。
ゆっくり、ゆっくりと後ろを振り向く茜。
窓の方に視線をやると、人が手をついた所からひびが広がっていく。
ピキ・・・・ビキ!!
耳障りな音がしたかと思った瞬間、窓がもの凄い音をたてて砕け散った。
ガシャァァァァァァン・・・・・・!!!
破片が周囲に飛び散り、その人が無くなった窓の枠から部屋に入ってきた。
「・・・ぅ・・・・ぁあ・・・・・」
歯がかみ合わず、声がうまく出せない。
燃え上がる炎のような赤い長い髪を持ったその人。
赤と黒で彩られたドレスを着こんでいる。
その髪の間から見える金色の瞳が恐ろしい。
「・・・・・・・そなた、人間か?」
その人が茜に向かって話しかける。
「っ、そ、そうですけど・・・・・・・」
扉を背に茜はその人と対峙する。
「ほう・・・・・人間か。こっちも向こうとあまり変わりは無いのじゃな」
キョロキョロとあたりを見渡す。
声の高さと、見た目から判断して、女の子だろう。
「・・・・ところで人間」
「っ!!」
少女は茜の方にぐるりと顔を向ける。
「そなた、我があの穴から抜け出る様を見たであろう?」
「ぅえ?!穴?!」
穴と言われて思い出すのはあのぐにゃぐにゃのブラックホールもどきである。
「ぇ、ええ・・・・みました、けど?」
茜が少し疑問気味に答えると少女はふぅ、と溜め息を吐く。
「そうか。アレを見られるのは非常に困るのじゃ。・・・・・よし人間」
「っはい・・・・・?」
「そなた、口封じのために死ね」
可愛らしく笑う少女の言葉がよく茜には分からなかった。


Re: 煉獄−業火の女王− ( No.3 )
日時: 2010/03/19 21:50
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

第三話−異質−

「ん?どうした人間。我の言葉が聞こえなかったのか?」
少女は笑ったまま茜に近づく。
「ぇ、ぃゃ、・・・ぁ・・・・・・」
カチカチと奥歯が鳴る。
「我が死ねと言ったのじゃ。早う死んで見せぬか」
さも当たり前のように言う少女に、恐怖心は募るばかりだ。
「・・・・・・出来ぬというのか」
急に下がった声色にびくりと肩を跳ねさせる。
「ほんに我の期待を裏切るのが好きじゃのう、蛆虫共が。
 ・・・・・これはキツイ灸を据えてやる必要があるようじゃな」
そう言った少女は茜の首をグッと掴む。
「ひっ・・・・・・・!!」
「光栄に思うがよいぞ、蛆虫。こちらの世界での初めて我の裁きを受けられるのじゃからのう」
こちらの世界・・・?裁き・・・・?
何を言ってるの・・・・・・この子は・・・・・。
「ふふ、死ね。蛆虫め」
『殺される!!!!!!!!』
覚悟を決めてギュッと目を閉じる。が。
『・・・・・・・あれ?』
いくら経っても待っている衝撃が来ない。
目を開くと少女がキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「・・・・そなた、本当に人間か?」
少女が至極不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「はぁ・・・・一般市民、ですが・・・・・・・」
そう答えると少女はふむ。と考え込む。
「こちらの世界では我の力は使えないというのか・・・・?」
一人でブツブツ呟いている。と。
「ミャアァ」
窓の外の塀の上に猫が歩いていた。
「・・・・実験してみるかの」
窓の傍まで寄って、少女はパチンと指を鳴らした。すると・・・・。
「ギニャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
外から断末魔の声がして慌てて身を乗り出す。
「っひぃぃぃいいいぃぃいぃ!!」
さっきまで生きていた猫が焼死体と化していた。
『何なのこの子!?』
怯えていると、少女がくるりと振り返る。
「・・・・・どうやらそなただけが異質な存在らしいのう。
 人間、名は何と申すのじゃ?」
急に尋ねられたので、少しの間が開いてしまう。
「ぅ・・・・ぇと、あ、茜・・・・・・・です」
語尾が小さくなってしまう。
「茜と申すのか・・・・・。良い名じゃのう。我の名と同じ、赤い色じゃ」
そう言った少女の表情が、少しだけ和らいだ。
「我の名はスカーレット。煉獄の王、スカーレットじゃ。覚えておくが良いぞ?茜」
ふふん。と笑った少女、スカーレットに茜はただただ感嘆の息を吐くだけであった。


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