ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- OOPS!
- 日時: 2010/04/07 00:29
- 名前: egashi (ID: 84ALaHox)
男は目を閉じた。
感覚を研ぎ澄ませていく。ひとつずつ、丹念に。
暗闇の中でにおいがきえる。音がきえる。底のない闇に沈んでいく、この感覚が男は好きだ。
だが、今日はそうのんびりと感傷に浸っている暇はない。
ふいに頬がピリリと痛んだ。
チカ、と暗闇の中で光がはじける。
男は目を開けるよりも早く、右手を後ろへ振りぬいた。
風がやむと、男の姿はなかった。
かわりに少女がひとりたたずんで、じっと目を閉じていた。
- 注意書き ( No.1 )
- 日時: 2010/04/07 00:33
- 名前: egashi (ID: 84ALaHox)
はじめまして、egashiといいます。
少しだけ、注意を書いておきます。
この小説には汚い言葉遣いや、暴力的な表現が多分に含まれます。
生ぬるいとは思いますが、そういうものが苦手な方は、承知の上で読んでいただければ、と思います。
また「ありえねーだろ」っていうこともすごーくあります。
神経質な方はすごくいらいらすると思いますので、注意して読み進めてください。
小説というフィクションですので、少しだけ目を瞑っていただければ幸いです。
長々と失礼しました。
- 01/コアントロー ( No.2 )
- 日時: 2010/04/07 00:36
- 名前: egashi (ID: 84ALaHox)
父の昇進と同時に千里(ちさと)の転校がきまった。
ずっと暮らしてきた土地や、親しい友人と別れるのはつらかったが、同時に千里は新たな出会いに思いをはせていた。
憂うことがひとつあるとすれば、それは──
「ま、男子校だからな、心配するほどでもない。馬鹿ばっかりだから」
担任が笑って言う。
千里の元の学校は共学だった。
高校生にもなれば、そういうことにも興味がわく。
だが転校先は男子校で、千里が思い描いていたようなことは到底おきないだろうと肩を落とした。
意に反し担任は尚も笑いながら廊下を突き進んでいく。すると、ふと思い出したように言った。
「もう自己紹介は考えたか?」
はっとした。何も考えていなかった。
前の学校では、小柄な体と女顔もあいまってみんなに愛されるキャラクターだった。だが、今回もそううまくいくとは限らない。
もともと人見知りの節がある千里にとって、最初の自己紹介は拷問以外のなにものでもなかった。
ああでもない、こうでもない、と考えていると、すぐに一の二と書かれた教室にたどりついてしまった。担任が中でなにやら話をしている。
千里はない頭をひねって何かないか考えたが、あせればあせるほど気の利いた言葉は浮かばなかった。
- -コアントロー ( No.3 )
- 日時: 2010/04/07 00:44
- 名前: egashi (ID: 84ALaHox)
そうこうしているうちに、自己紹介は終わってしまった。「山代千里です」と言っただけのシンプルなものだ。
覚えてもらえただろうか。不安になりながら席につく。
隣の席の男子は、千里のほうをちらりと一瞥するだけだった。つまらなさそうに担任の顔を見ている。
なんとなく挨拶するのも気が引けたので、千里もなにも言わなかった。
昼休みにもなると、千里はすっかり周りになじんでいた。
特に寺井とは席が前後だったこともあり昼ごはんも一緒に食べた。寺井は温厚だがきさくな少年で、野球部のエースなのだという。なぜ坊主でないのか千里がきくと、寺井は「かっこつけだよ」と照れくさそうに答えた。
そういえば、千里が焼きそばパンをほおばりながら思い出す。
(隣のやつのこと、きいとくかな)
あのさ、と千里が口を開くのとほぼ同時に、担任が大きな声で千里のことを呼んだ。
- -コアントロー ( No.4 )
- 日時: 2010/04/07 17:51
- 名前: egashi (ID: 84ALaHox)
(疲れたあ)
ぐいっと肩をまわす。
あのあと、千里は編入の諸々の手続きと、そのついでと頼まれた用事をこなした。
もう昼休みはほとんどない。
急いで戻ろう、と少し早歩きになって中庭にさしかかると、なにやら口論しているような声が聞こえた。
そっと窓をあけて声のほうをのぞく。
(あっ)
思わず声が出そうになるのを我慢して、千里はその光景を凝視した。
気の弱そうな男子生徒を、数人の男子生徒が取り囲んでいる。
その中に、「隣の席のやつ」がいる。
暴行を繰り返している周りのやつと違って、朝と同じようにつまらなさそうな目でその光景を見ていた。
千里はぐっと拳を握った。元来正義感の強い性格である千里は、抵抗もできないまま殴られている男子生徒を目の前にして、見なかったことにできる要領の良さなど持ち合わせていなかったのだ。
「おい! やめろよ!」
気づいたときには中庭に走って、そう叫んでいた。
ギロリ、と物騒な目つきで男たちが千里を見る。
「なんだよ?」
一人の男子生徒が低い声で言った。
千里は震えるからだを叱咤した。ここで怯えては、二人ともまた暴行される。
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