ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 妖センチメンタル
- 日時: 2010/06/14 17:50
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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未熟者っすが、どうぞよろしく(@_@;)
──これは、ぼくが笑わない鬼嵜さんを笑わす話……じゃあないよな。
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- Re: 妖センチメンタル ( No.19 )
- 日時: 2010/06/24 13:53
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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「あのさ、一つ思ったんだけど」
「なんだ?」
「他の四家……、零国とか愁乱とかって、どこにいるんだ?」
鬼嵜は少し微妙な顔をして、レモンティーを飲みほしていた白刃が、顔を上げる。
「修羅なら、昨日連絡がつきましてよ。 一人暮らしの準備も終わって、顔を出すと言っていましたわ」
「……しゅら?」
随分イザコザの起きそうな名前だな。
「零国家の先祖返り。 四家の中で、一番起床が荒いと言われる一族ですのよ」
「久しぶりに会うな。 ……5年ほどか」
零国 修羅。
うーん、どんな奴なんだ?
ヤローなのか?
ヤローなのか??
「ヤローですか?」
「はい?」 「は?」
白刃は眉をひそめ、鬼嵜はポカンとしている。
「男……だな」 「ですのよ」
「はー、男かぁ」
せっかくハーレム的展開を期待してたのに。
こういう思考に陥る自分がちょっと哀しいけど。
「あら……あらあらあら、テル殿〜」
「なんだよ、白刃」
ぼくの目の前に座る金髪ロリ少女は、ニヤニヤとこれまた嬉しそうに口角を上げている。
「もしかして……“そっち系” でしたの? 気づきませんでしたわ」
「……………おい、おいおいおい。 なにかぼくを変な人種の部類に入れようとしてないか?」
危険だ! 危険すぎるこの子!!
「そうとも知らず私ったら……、ごめんあそばせ。 そう言う事でしたら、修羅を紹介してもよろしくてよ?」
「お前は何を聞いてたんだ! ぼくがホモなわけないだろーがッ! 純情男子になんちゅー疑いかけるんじゃッ」
店員にジロリと睨まれ、口を閉じる。
鬼嵜はぼんやりとぼくを見て、
「………ホモ、なのか」
「ねえ、黙ろうか鬼嵜。 頼むから黙ってて下さい!!」
そんな哀れ目で見ないでほしい。
健全な男子だから、ぼくは。
可愛らしいアニソンが流れて、白刃がピンクの携帯電話を取り出す。
アニメグッズなのか、キャラのストラップがついている。
「あら、噂をしたら修羅からですわ」
言って。
「はいはい、アニメ大好きBL大好きの季節でございますのよ」
とんでもない自己紹介を堂々としやがった。
周りの人がギョッとした目で白刃を見る。
「ああ、和笑? 今隣にいますわ。 えっと、駅の近くにあるファミレス……え? あ、その近くにいるんですの? じゃあ来てくださいませ」
電話をきり、白刃が微笑む。
「修羅……来るのか?」
「ええ。 近くに居たようですの」
- Re: 妖センチメンタル ( No.20 )
- 日時: 2010/06/26 09:05
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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零国 修羅。
そいつは一目見てチャラそうな、少しヤンキーっぽい感想を抱く奴だった。
なんつーか。
髪が、赤い。
血の色というか、真っ赤なのだ。 とにかく。
体格もデカイし、二十代かなーとか思ってたら。
「ちーっす。 零国 修羅、16デス」
「じゅ、じゅうろく??」
ぼくより年下?
この体つきで?
嘘だろ!!
年上としての品格失うわッ。
「修羅、こちら日照 雨乃くん。 和笑と同じクラスですの」
「ど、どうも……」
「ああ、タメでいいっすよ。 俺の方が年下だし」
見た目はアレだけど、笑う表情は柔らかい。
妹とかいそうだなー。
「んで、久しぶりだな。 和笑」
名前を呼ばれ、鬼嵜は軽く会釈する。
余所余所しいなと思ったけど、鬼嵜にしていれば、それが精一杯なのだろう。
嬉しいという感情が、無いんだから。
「5年ぶりだな、修羅」
「だな。 にしてもメッチャ綺麗だなー」
べしり。
白刃が思い切り修羅の頭を殴った。
「ってぇ……、にすんだこのバカッ」
「再会早々セクシャルハラスメントをするなんざ、どういう神経してますの? 考えられませんわっ」
「セクハラって言えよ! 長すぎんだよッ」
白刃は修羅より年上だけど、どうやら白刃に対しての礼儀は皆無みたいだ。
「なんか、雨乃さんって、名字と名前矛盾してねーですか?」
「ああ……昔から言われるんだ。 あと、ぼくも敬語を使われるとアレだから……、タメでいいよ」
「ぬ? あーじゃーそうさせてもらうわ」
切り替え早ッ。
「修羅、これから頼むな」
「おーう、鬼姫様の護衛だろ? まかせとき」
「ん、護衛?」
分からないぼくに、白刃が説明してくれる。
「和笑は鬼嵜家最後の鬼ですの。 彼女を狙って、影鬼と呼ばれる異形の鬼が襲ってくるんですわ」
「………敵、出現っすか」
鬼嵜家と四家が昔設立していたのは、その影鬼を滅する為らしい。
鬼嵜の生まれである鬼嵜が眠っている間は、姿を見せていなかったのだが、彼女が起きてから、襲うようになってきているらしい。
「……見た事ないけど」
「影鬼は和笑と、四家の先祖返りしか狙わないのですわ。 一番危険なのは和笑……ですから、私たちは和笑を護るのですの」
それが役目だ、と白刃が付け足す。
和笑はぼんやりとどこかを見ている。
「まあ、俺はそれだけの理由で和笑と居るワケじゃねーけどなっ」
修羅が言って、
和笑に抱きつく。
なッ!!
「セクシャルハラスメントでしてよ、修羅!」
「いーじゃん。 5年ぶりのハグ〜♪」
「警察を呼びましてよ? もうっ」
鬼嵜はどこか困ったように、修羅を見るだけだった。
- Re: 妖センチメンタル ( No.21 )
- 日時: 2010/06/27 08:02
- 名前: 風水 (ID: PA3b2Hh4)
季節ちゃんのキャラが、最っ高にうけます(^'^)
修羅くんもかっけーですね。
- Re: 妖センチメンタル ( No.22 )
- 日時: 2010/06/27 08:22
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
季節ちゃんは危険な子です☆笑
時折ぶっぱなすような発言もしますが、大目に見てやってください(>_<)
- Re: 妖センチメンタル ( No.23 )
- 日時: 2010/06/27 08:59
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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第2章
影鬼、出現
どうしても解さない事がある。
こればっかりは、ぼくが生まれて17年間必死で訴え続けた事。
「なんでぼくの名前は名字と矛盾してるんだろうな」
「そんな遠い目をして聞くもんじゃないぞ、テル」
昼休み、ぼくの隣には鬼嵜。
教室の隅で固かたまるぼくらに、周囲からの視線は熱い。
無理もないか。
この前まで鬼嵜は一人だったんだから。
「日照ってなんで雨なんだよ……。 世の中間違ってる」
「そうか? 良い名前だと思うけどな」
「いやいや実際この名前で生まれてきて、ぼくは得をした事がないよ」
「……名前で得する事って、あるのか?」
ごもっともな意見を無視。
「それはともあれ鬼嵜。 お前の弁当、ちっさいな」
「そうか? ……そうか?」
鬼嵜が黄色の弁当箱を持ち上げる。
まじまじと見て、
「いや、フツーだ」
「ならいいけど。 小食なんだな」
「私は草は食わんぞ」
「それは草食」
なんだこいつ。
面白いぞ。
「そういえば、鬼嵜の名前もキレイだよな」
「……和笑、か?」
「ああ」
言うと。
鬼嵜は遠くを見ながら。
「季節が、つけてくれた」
「ん、そうなんだ」
「ああ。 あいつは私の名付け親だ」
……白刃がねぇ。
大方どっかのキャラの名前か?
「どういう意味でつけたのか、教えて欲しいな」
「笑える人になってほしい、らしい」
「………………」
和笑。
和、笑。
和やかに笑えるようになってほしい。
そうか。
白刃は鬼嵜に笑って欲しくて、そんな名前をつけたのか。
キャラの名前とか思って、悪かったか。
「いい奴じゃん」
「………感謝してる。 こんな私と、居てくれて」
言って。
鬼嵜はまっすぐにぼくを見た。
初めて会話した、あの放課後のように。
目は金色ではないけれど、一瞬動きが止まった。
綺麗すぎる。
目を逸らそうと思っても、出来ない。
「お前もだ、テル」
「え?」
「お前も、鬼である私と居てくれる。 ありがたいと思う」
笑っていはいないけど。
コレはたぶん、嬉しいと思ってるんじゃないか?
「鬼嵜……ぼくは……」
「???」
ぼくの手が、そっと鬼嵜に伸びる。
「意味分かりませんのッッ」
「!!!」
突然甲高い声がして。
ぼくの頭を思い切り殴りつける奴がいた。
誰だと説明しなくても分かる。
白刃 季節だ。
「なにテル殿までセクシャルハラスメントをしようとしてるのですかっ」
「だから略せよ! 面倒くさいッ。 てかしてねーわ」
「いいえ。 徹底的瞬間を捕らえましたのよッ」
白刃はピンクの携帯を取り出し、ぼくに見せる。
そこには、ぼくが鬼嵜に手を伸ばしている所が映っていた。
「スクープでしてよッ。 これを校内の壁に貼って貼って貼りまくりですのッ」
「お前は記事が無い新聞部かッ」
教室でギャアギャア言ってるから、みんなの視線がそれなりに痛い。
え。 え? って感じで見てる。
………なんかぼく、くじけそう。