ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ABILITY 知らない間に参照100越え
日時: 2010/09/26 13:04
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

お久しぶりです。弥一です。
こっちを書くのは一ヶ月ぶりですか……読んでいる人がいたならすみません(>人<;)

さて、久しぶりに書いた為に少しキャラの性格が変わったり、文体が変わったりしてるかもしれないし、してないかもしれない

まぁ、そんな事はどうでもいい(よくないけど

本音を言うと
読んでくれ!!




Page:1 2 3 4



Re: ABILITY第13夜 ( No.13 )
日時: 2010/08/13 17:52
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日 【世界保安機関】関西支部

剣神と牙の去った後、久遠寺は周りに聞こえない声で呟いていた。
「……剣神は生きていた。という事は、そろそろ始まるか。なら少し予定を早めて……」

「なにブツブツ言ってるんですか会長?」
和志が久遠寺に問いかけると、
「ああ、いえ。なんでもありませんよ。それよりも、貴方は水見君を気にしてあげて下さい」
「?何故ですか」
「剣神……いや、統夜は……水見君の育て親ですから。水見君も義理とはいえ、自分の親があの様な事をすれば精神的にくるでしょうからね」
「……わかりました」

「そうですか。さて、私は被害の確認へ行ってきます。切柄。ここは任せますよ」

「ああ。お前に命令されるのは癪だが、まあいい。任せておけ」
切柄との会話が終わると、久遠寺は逃げるかの様に、どこかに行ってしまった。



「危ない、危ない。危うく聞かれるところだった。<奴>と同じ血を引いているだけの事はある」
久遠寺の言葉にいつもの丁寧さはない。決して乱暴と言うわけではないが、会長としての彼しか知らない人はとても驚くだろう。

「しかし剣神が生きていたとは思わなかったな。さて、どうするべきか……」
少しの沈黙をおき、久遠寺は決意した様に1人呟く。
「仕方ない。こっちから動くか。知らない所でいろいろ喋られても困るからな。まあ今は、被害確認が先だな」


「葵。ちょっといいか?」
「なに?どうしたの」
葵は平静を装いながら和志の言葉に答える。
「いや、あのさ。……剣神て、葵の育て親なんだって」
「……会長から聞いたの」
「……ああ、そうだ」
葵は下を向いて話し始めた。
「昔はちゃんと父親も母親もいたよ。でも、私が能力に目覚めた事を知った親が私を捨てたの。「化け物が私たちの子どもの訳が無い」て言って。その後、保安機関に拾われて、お兄ちゃんに面倒をみてもらったの」
和志は暗い話の中で、1つおかしな所を見つけた。

「葵。…お兄ちゃんてなに?」
すると葵は平然とした声で和志に言った。
「えっ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。」
「いや、普通はお義父さんて言わない。お兄ちゃんじゃなくて」
「だって、お兄ちゃんが『俺の事はお兄ちゃんと呼べ!』て言ってたから」
「……さいですか」
そしてまた葵が話し始めた。

「お兄ちゃんに面倒をみてもらい始めたのが5歳のときで、13歳までの7年間育ててもらったの」
「13歳まで?そこからはどうなったんだ」
和志が聞くと葵は首を横に振りながら「わからない」と口にした。
「『仕事が入っちまったから、1週間くらい家を空けるな。留守番宜しく』て言って帰って来なかったから」
「…そっか。じゃあ、これでこの話は終わりな。かたづけ手伝おう」
和志の言葉に葵は頷き2人で切柄の所へ向かった。


「切柄さん。この辺りはどうするんですか?」
葵が切柄に問いかける。
「そこら一帯の物は捨てるから適当に集めておいてくれ」
「わかりました。ほら和志君、頑張って働いて」
葵に応援されながら瓦礫やカラスの破片を運ぶ。

「こんなことしねぇで、丸ごと壊せば良いんじゃね?どうせもう、ここには居れないんだし」
和志の言葉を聞いた関西支部の人間が和志に怒気を飛ばしてくる。
「あれ、なんかまずい事言いました」

すると、切柄が、
「ここは関西支部の人間にとって第2の故郷なんだよ。それを自分たちの手で壊すなんざ出来るかよ」
「………すいませんでした」
そのやりとりの中、久遠寺が顔を歪めながら帰ってきた。

「久遠寺。被害の方はどうだった」
「かなり酷いですね。死者29人、意識不明13人、行方不明24人。行方不明になった24人は、恐らく獅王院の枯渇で死んだものと考えられます」
「死者と行方不明者を合わせて53人。無事なのは俺を含めて6人だけか。
やられた、としか言えんな」

「どうします。私たちは関東支部に帰って他の支部へ報告をしますが、貴方たちはここに残りますか」
切柄は少し間をおいて言い放った。
「いや、ここの後始末は9割方終わった。後は瓦礫やガラスの破片を捨てるだけだから、他の支部の奴らにでもやらせればいい。まず今は、怪我人を治療できる施設へ行きたい」

「わかりました。では、行きましょうか。……そうだ。後、関東支部に着いたら和志君と水見君、それに切柄は会長室へ来てください」
そう言われ、和志は戸惑いながら返事をした。
「?…わかりました」

すると、久遠寺は少し不機嫌そうに、
「返事をしてくれるのは和志君だけですか。悲しいでしね」
葵は下を向いたままなにやら1人で、考え事をしている様だ。

「どうでもいいから、早くゲートを開けろ」
と言う切柄の言葉に久遠寺は「わかりましたよ」と言いながら、ゲートを開く。空間が歪み始め、段々と大きな穴になる。

「さあ、開きましたよ。では帰りましょうか」

和志たちはゲートに向かって歩いて行った。




牙は必死に怒りを抑えていた。
「姫!どういう事だ!殺さない程度に俺をやれだと!ふざけるなよ!今回の行動に関しては、姫も同意したはずだ」
牙の言葉に対して彼女は何も答えない。

「なんとか言えよ!いくらあんたでも、殺しちまうぜ!」
その言葉に対し彼女は笑みを浮かべながら言った。
「殺れるなら、殺ってみなさい。まあ、どんなに頑張っても貴方には無理だけどね」
「……ッ」
牙も心の中では分かっていた。彼女が自分よりも上である事を。六神衆が相手でも殺り合う事は出来る。剣神を除けば勝つ事さえ可能だ。しかし、

(姫には、剣神と同じ様な空気がある)
その空気に牙は屈した。
「……分かった。だが、こんな事は今回限りにしてくれ」
「ええ、もうしないわ。さてと、じゃあ私はそろそろ行くわ」
彼女はそう答えると、どこかへ行ってしまった。


コツコツコツコツ
「はぁー。統夜。着いて来てるんでしょ。出て来なさい」
彼女の声に応じる様に、統夜は《彼女の影》から姿を現した。

「よく分かったな、姫。それとも、姫野 月(ひめの つき)て呼んだ方がいいかな」
その姿は、関西支部での姿とは違い黒装束に身を包んでいた。
「貴方には月と呼んで欲しいわ。貴方は特別だから。それと…」
彼女は統夜の手を掴みながら続ける。

「関西支部の統夜は影武者でしょ。あの時間私は貴方と居たもの」
そう言う彼女の手を統夜は払い歩き始めた。
「約束は守れよ。もし破ったら…」
「分かってるわ。貴方を敵に回す気は無いわ。安心して」
その言葉を聞くと統夜は自らの影の中へ消えてしまった。



Re: ABILITY第14夜 ( No.14 )
日時: 2010/09/26 10:40
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日 【世界保安機関】関東支部

「ウッ、ギモチワルイ」
「……またですか。二回目なので大丈夫だと思ったんですが…」
その言葉を聞いた和志は、できる限り平静を装い言った。

「だ、大丈夫です。このくらい、全然いけますよ!」
「そうですか。では、和志君と水見君、それに切柄は私と一緒に会長室へ行きましょうか。人を待たせてますしね」
「人?誰を待たせてる?」
切柄がそう言うと、久遠寺は「秘密ですよ」と言って先に行ってしまった。

「和志。心当たりあるか?」
「いいえ。葵はどうだ」
「私も分からないわ。誰かしら」
3人は仕方なく久遠寺の後を追いかけ、会長室へ向かった。

コンコン
「入りますよ」
ガチャ
扉を開けると会長がいつも座っている椅子に1人の男が後ろ向きに座っており、その左右には身長190cmはあると思われる筋肉質な男と、モデルの様に美しい女が立っていた。

「遅ぇんだよ、久遠寺。バカみてぇに待たせやがってよ。」
「全くよ。私はわざわざドイツからここまで来たのよ。くだらない事なら、いくら貴方でも容赦しないわよ」
左右に立つ男女が口々に言う。

「だいたい、何で俺がこんな劣等と同じ部屋に居なくちゃならねんだ。吐き気がするぜ」
隣の女に向けて吐き捨てる様に言う。
「あら、それは私に喧嘩を売ってるの?」
すると、またも男は女に向けて蔑むかの様に言い放つ。
「なんだ、自分が劣等だっつう自覚があんのか?」
その言葉を聞いた女が収めていた銃を抜いた。
「そんなにも死にたいのなら、私が殺してあげましょうか?」
「殺れるもんなら殺ってみろよ。劣等が」
和志たち4人はいま起きている事態を把握するのに精一杯だった。
だがそこへ、椅子に座っている男が口を挟んだ。

「やめろ。みっともない。仮にも元六神だろう。恭志朗は仕方ないとしても、咲夜までそんな事でどうする」
「俺は仕方ないってどういう事だ!」
「そのままの意味だ」
「チッ」
「ごめんなさい…」
咲夜と呼ばれた女が謝ると、久遠寺は座っている男に話しかけた。

「すみませんね、わざわざ呼びたしてしまって。さぞ疲れたでしょう」
「大丈夫だ。それより、何か話があるんじゃないのか」
「はい。その通りですよ、剣神」
剣神と呼ばれると、椅子に座っている男は180度回転し前を向いた。

「なら早く話をしよう。俺は早く家に帰りたいんだ。何しろ3年ぶりだからな。それに葵の顔もみた…い…」
統夜は久遠寺の後ろにいた葵の姿をみて、大声で叫んだ。

「あーおーいーー!!会いたかったぞーー!!」
統夜は椅子から立ち上がると葵に駆け寄る。その姿を見た和志と切柄は心の中で呟いた。
((関西支部で見たのと全然違う!))

「何も無かったか。ちゃんと飯は食べてたか。危ない事はしてないだろうな」
「だ、大丈夫だよお兄ちゃん。何も無かったし、ご飯も食べてるし、危険な事は何もしてないよ」
「そうか。良かった」
一部始終を見ていた全員が、統夜の近くから一歩下がった。
それに気付いた統夜は、ゴホンと咳払いをしてから話し始めた。

「で、話はなんだ」
「え、ええ。まず1つ目はこの子、和志君に能力についての詳しい話をして欲しいんです」
その言葉に恭志朗と呼ばれた男が文句を言う。
「はあ!?。んなもん、お前らだけで十分だろが。なんで俺まで…」
「話は最後まで聞いて下さい。2つ目は和志君と水見君の鍛錬。最後に《執行機関》になんらかの形で潜入すること。以上の3点です」
(《執行機関》?なんだそりゃ)
そこへ、咲夜が真剣な顔で話を始めた。

「…1つ目と2つ目は当たり前だけど大丈夫よ。けど最後の……かなり危なくない」
「咲夜。まずは1つ目を終わらせよう。葵と和志君が理解してないようだ」
統夜の言葉に咲夜は頷く。
「では、和志君。君はまず統夜に能力について詳しい話を聞いて下さい。私たちは別室で執行機関についての話をしてますので」
「まて久遠寺。なら葵もここに居た方がいいだろう。葵もまだ執行機関については知らないからな」
「そうですね。分かりました。水見君はここに残って下さい。他の方は別室へ」
そう言い残すと久遠寺は3人を連れて部屋を出て行った。

「さてと。和志君は能力についてどこまで知ってるんだ?」
「えっと、自分の能力と魔力が必要なことぐらいです」
うん。そのくらいのはずだ。
それを聞いた統夜は苦笑いしていた。
「あらら。なら結構時間かかるな。今が朝の11時か。もう昼前だな。じゃあ、まず歴史について話した後、昼食べながら他の話を終わらせるか」
「はい。分かりました」
「おう。あっ、葵はお兄ちゃんの横に来なさい。和志君はそこでいいから」
それを聞いた葵は「は〜い」と言いながら、統夜の横へ椅子を持って行き座る。
「……仲いいすっね。統夜さんと葵」
「当たり前だ。葵は世界で1番可愛いぞ。それに優しい。葵は最高だ」
うわ〜、すっげえノロケ。
統夜は葵の頭を撫でながら話し始めた。
「じゃあ、始めるか」
「お願いします」


「まずは歴史について。初めて能力が誕生されたとされているのが2068年の2月だ。この時に生まれた能力者のことを《第1覚醒者》と言う。まあ、そのままだけどな。その後、2074年と2099年に数多くの能力者が生まれたことから、2074年に生まれた能力者を《第2覚醒者》2099年に生まれた能力者を《第3覚醒者》と呼ぶ様になった。ここまではOK?」
「はい、大丈夫です」

「よし、なら続きだ。それ以外の年にも能力者は生まれているが、覚醒期と呼べるほどの多くの能力者が生まれてない。だから、現段階では覚醒期は3つだけだ。ちなみに、これは能力者にとっての最低限の常識だからな」
マジかよ!これだけでも結構ヤバイぜ、俺。

「…なんか『俺もう無理です!』顔してるな。まあ、これだけでも覚えてりゃあ大丈夫だから、安心しろ」
「そうなんですか。よかったあ〜」
「ちなみに歴史は古代ギリシャまで遡るからな」
それを聞いた和志は、力の篭った声で「無理です!絶対に!」と言った。
「そ、そうか。まあ、歴史はここまでにして飯食いに行こう。続きはそこですればいい」
「分かりました」
そう答えると、和志と葵は統夜に連れられて近くのファミレスへ向かった。

Re: ABILITY第15夜 ( No.15 )
日時: 2010/08/15 14:41
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日 ファミレス

「そういえば、モグモグ……お兄ちゃん。お兄ちゃんはなんで、モグモグ……関西支部に来た時に武神と戦ってたの?」
葵がハンバーグセットを食べながら、疑問を口にする。
「ああ、あれは能力で創り出した俺の影武者だ。多分、影武者の方も影から獅子を出したりしてただろ。あれの応用だ。それと、食べながら喋るのはやめなさい」
統夜はステーキセットを食べる手を止めて答える。

「そんなことが、モグモグ……できるんですか?」
和志もステーキセットを食べながら、統夜に聞いてみる。
「…まあ、結構難しいが慣れれば出来る。創ろうと思えば他人でも創れる。ただ、その場合は相手の事を詳しく知らなきゃならないがな。てか、お前も食べながら喋るのはやめろ」
そう答える統夜はまたステーキセットを食べる手を止めて質問に答える。
「と言うか、俺にステーキを食べさせてくれないかな」
「あっ、ごめんねお兄ちゃん」
謝る葵を見た統夜は優しい声で言った。

「お前が謝る必要なんてないぞ、葵。謝るのは和志君だ」
「ゴホ、ゴホ。なんで俺なんですか」
理不尽すぎる!
「さあ?てか、なんで俺はお前のこと『和志君』て呼んでんだ?」
「あ〜、なら『和志』でいいですよ」
そっちの方が気が楽だしな。
「そか、なら和志。そろそろ話始めたいんだが、いいか?」
和志は「いいですよ」と言うと、統夜はステーキを口の中にかきこんで食事を終わらせた。

「モグモグ…ゴク。ふう、食った食った。じゃあ、話を始めるか。歴史は終わったから、能力の種類と《宝具》について話そうか」
「お願いします」

「よし。まず始めに能力と宝具には深い関係性がある。能力を使うためには宝具が必要不可欠。宝具が無ければ能力は使えない」
話を聞いた和志は統夜に宝具について聞いてみる事にした。
「宝具てなんなんですか?」
「それは後でまた説明する」
統夜の答えに「はあ、分かりました」と和志は答える。

「まずは能力の種類。種類は6つある。まず1つ目は『強化型』。名の通り、自身の身体能力を向上させる基本的なタイプだ。恭志朗はこのタイプだな。2つ目は『特性付与型』。強化型の様に強化するのでなく、自身に特性を付与するタイプ。これに当てはまるのは葵の《節制》だな。3つ目は『展開型』。周囲を自身の能力の管理下におく事が出来る。獅王院の《枯渇》は多分このタイプになる。ここまでの話で分からない所はあるか?」
「だ、大丈夫です。……たぶん」
あんまり自信ねえけど。

「…………あ〜。まあ、大丈夫だ。最低限自分の能力の種類だけでも覚えてれば」
葵も統夜の言葉に続き、和志を励ます。
「そうそう、大丈夫だよ。私も基本的な知識しか知らないから」
いや!俺、基本的な知識だけでキツイんだけど!

「あ〜、とりあえず続けるな。4つ目は『対象能力低下型』。能力の発動条件は全部違うが、当たればあらゆる能力が低下する。身体能力に魔力、体力、精神力などなど。面倒なタイプだな。咲夜はこのタイプに当てはまる。5つ目は『強制型』。当たればなんらかのルールに縛られる。例えば『その場から動けない』とか『使用者を倒すまで出られない』とか、まあいろいろある。今の武神がこのタイプだ」
統夜は話が終わった所で和志をみてみると。
「あー、すいません。理解は出来るんですけど、頭が悲鳴あげてるんで、早くして下さい」

「あ、ああ。分かった。6つ目は『特殊発現型』。他のどのタイプにも当てはまらない珍しいタイプだ。俺や久遠寺がこのタイプになる。ただし、他の5つのタイプと違って発動条件が厳しいものが多い」
「へえー、意外と能力について分かってるんですね。もっと謎が多いと思ってました」
和志は言葉の通り、意外そうな顔をしていた。

「まあな。さあ、次で能力については最後だぞ」
それを聞いた和志は今までしたことがないくらいの笑顔になっていた。
「すごく嬉しいです。こんなにも嬉しいのは久しぶりだ」
統夜は呆れた声で「んな、大袈裟な」と言ったが、和志には聞こえなかった。

「まあいいか。最後は《真名》について話そう。真名は能力者の命とも言えるものだ。これを相手に知られた場合、相手に自分の能力に宝具、そして弱点までしられることになる」
「それは誰にでもあるんですか?」
その質問に葵が答えた。

「能力者なら誰にでもあるよ。ほとんどの場合は利き腕のどこかにあるんだけど……」
「ちょうどいい、和志。見てみろ」
そう言われ、和志は服の右袖をめくる。すると、二の腕に『Afthartos aspida』と書かれていた。
「うわ!なんだこれ!」
その文字をみた統夜は和志にかろうじて聞こえる声で言った。
「Afthartos aspida。直訳すると、『不滅の楯』か。てことは、和志の能力は不動だろ」

「は、はい。なんで分かったんですか」
統夜との会話に葵が入ってくる。
「お兄ちゃんが言ってたじゃない。《真名》はその能力者の能力に宝具、それに弱点までしられることになる、て」
ああ、なるほど。だからか。

「……なるほどね。不動か。これは鍛えるのが楽しみだな。まあ、最低でも1週間以内に不動を使いこなしてもらわなきゃな。それまではずっと実戦だな」
統夜の言葉に和志が反応する。
「……それって、明日からですか」

「当たり前だろ!葵と一緒に和志も鍛錬するんだ。1週間な」
統夜はコップに中に残っていたコーヒーを飲んだ後、和志と葵を連れて店を後にした。

Re: ABILITY第十六夜 ( No.16 )
日時: 2010/09/26 11:14
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日【世界保安機関】関東支部 会議室

「いま帰ったぜ」
統夜は会議室のドアを開けると、恭志朗と咲夜に何やら見取り図の様な物の配置を説明していた久遠寺に声を掛けた。

「お帰りなさい。意外と早かったですね」
「お帰り、統夜君」
「おせぇよ。こちとら退屈な話を永遠聞かされてたんだぜ」
久遠寺、咲夜、恭志朗の三人が統夜に言葉を返す。

「ああ、ただいま。…恭志朗は口を閉じてろ」
「ふざけたこと言うんじゃねえ。殺すぞ」
言葉と同時に鋭い殺気が部屋を包む。

「はいはい。二人とも落ち着いて」
咲夜が仲介に入ると、統夜は「…そうだな。すまん」と言って落ち着いた。

しかし、恭志朗は違った。
むしろ更に好戦的になっていた。
「んなことはどうでもいい。何年間待ったと思ってんだ。今、ここで、殺ろうぜ」

「お前のその戦意を生かせる仕事がある。だから今は落ち着け」

統夜そう言われると恭志朗は舌打ちをした後、先ほどまで部屋を包んでいた殺気が消え失せた。

「何処まで話しましたか?」

「能力の歴史、種類、宝具。それに真名。それぐらいだな」
それを聞いた久遠寺は日常生活で崩れることがない笑顔を崩していた。

「……執行機関についてはどうしましたか?」

「あっ!」
統夜の言葉を聞いた久遠寺はため息をつきながらイスに座り

「もう構いません。私が教えます」
少し怒った様な久遠寺の声に統夜は謝っていた。

「和志君に水見君。まずは執行機関について知っておいて欲しい事が3つあります」

「何でしょうか」
俺よりも先に葵が久遠寺さんに言葉を返した。

「まず一つ目は、執行機関の能力者にAAランク以下が一人もいない事です」

「ウソ!」
葵は驚いた様だが俺は違った。
(牙みたいなのが大量にいる………うぇ、想像しただけでも死にそうだ)

「執行機関は強さこそが全てだと考えています。何せ上位十四名はSランク以上しかいませんから」

久遠寺の話に興味を示さなかった恭志朗が突然話に割り込んできた。

「最高じゃねぇか。強さこそが全て。その通りだ。その上位十四人とぜひ殺りたいねぇ」

「そんな事ばかり言って、返り討ちにされたら笑いものにされるわよ」
咲夜が笑いながら冗談の様に言った。しかし恭志朗は違った。

「俺が負ける訳ねぇだろ」
その声を聞いた咲夜は恭志朗を見ながら固まっていた。そう言う俺も驚いていた。

「そう言う事を断言できる強さ。私、それだけは認めてるわ」
「ハッ!当たり前だ。己を疑う奴は強くねぇ。そんな奴らはゴミだ!」
咲夜と恭志朗の口論が終わったところに久遠寺が文句を言い始めた。

「私が話していたんですがねぇ。次からは気をつけて下さい」
笑いながら怒っている久遠寺はとても怖かった。


「では、続きです。二つ目は人数です。執行機関の中に第一機構から第六機構までの部隊があり、それぞれの部隊に十三人の能力者がいます。その部隊内での上位二名が幹部。そして全六部隊の幹部を合わした十二名と執行機関のNo1とNo2。この十四名達は皆、Sランク以上です」

「Sランク以上が十四人も……」
葵は驚きを通り越して恐怖していた。
恭志朗は興味が無いせいか寝ており、咲夜も寝ていた。
統夜は、早く次行けー、と言っており緊張感の欠片も無い空間が一部出来上がっていた。

「……、分かりました。では最後。近々、執行機関が他の組織を襲うと言う噂が広がっています。なので、我々保安機関だけでなく他の組織を守る意味でも何とか執行機関を無力化したいんです」

俺は久遠寺さんの言葉の意味を理解した。
「潜入は無力化の為なんですね。そしてなおかつ目的は無力化であり、殺しはしないと」
俺の言葉に久遠寺は頷いた。

「そして、潜入は今ここにいるメンバーのみで行います」

「分かった。潜入は久遠寺の能力で行い、潜入後は執行機関の能力者を片付けて行く。図面その為か」
統夜は頷きながら一人話を進める。

「なら、さっさとこの二人を使える状態にしないとな」
その時の統夜さんの顔を俺は一生忘れないだろう。

Re: ABILITY 第17夜 ( No.17 )
日時: 2010/09/26 14:44
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月30日 世界保安機関 地下


突然だか俺は今………
「オラオラ!どうしたぁああ!その程度か!和志!!」

死にかけています。



事の始まりは26日。潜入の話をした後、俺は統夜さんに連れられ統夜さんの家に行く事になった。
うちの学校は既に夏休みに入っており、学校へ行く必要がないと統夜さんに話した。
すると統夜さんは突然俺に、「しばらくお前保安機関の地下に泊まれ。もちろん葵や俺も一緒だ」と言われ仕方なく次の日の朝早くに地下へ。

保安機関の地下には巨大な訓練室がありそこへ着くなり「訓練開始」と統夜さんに言われ仕方なく訓練を始めた。
始めの三日間は基礎の魔力の扱い方などを教えてもらった。

しかし、四日目である今日。
突然、会長や恭志朗さん、それに咲夜さんが来て三人揃って「ここからは実戦あるのみ」と言われ、こんな事態になった。


「どうしたよぉおお!それぐれぇでこの先やっていけんのか!?ああ!!」
ドゴォォオ!!
恭志朗さんの拳を俺は避けた。拳は壁に当たったので、確認してみると……

「…………」
何の言葉も出なかった。先ほどまで壁があった場所は大きな穴が空いており完全に粉々になっていた。
「た、タイム!タイムお願いします!」
俺は統夜さんにタイムを要求し、休ませてもらった。

「ほら、水だ。飲んどけ。後三日でお前を、最低でも能力無しの俺たちと互角まで持ってく」

「無理ですよ。恭志朗さんめちゃくちゃ強いじゃないですか。能力無しであんなに強いなんて、まともに戦える気がしませんよ」

「まぁ、そう言うな。見ろ。葵だって頑張ってるんだぞ」
俺は言われた通り葵のいる方を見てみた。そこでは葵が咲夜さんと戦っている姿があった。

「行きます!咲夜さん!」
「ええ、かかって来なさい。葵」
話しているが葵の攻撃はどれも全力で放たれており、葵自身は話している余裕など何処にも無い。
それに葵の攻撃は訓練が始まってから当たってはいるが決め手に欠けていた。
結果、葵の訓練が終わるまで咲夜さんは終始笑顔だった。



「「ありがとうございました!」」

俺と葵は声を揃えて今日訓練に付き合ってくれた恭志朗さん達に別れを告げて直ぐに自室に戻り統夜さんが用意してくれていたご飯を食べて風呂に入って寝た。
次の日に備えて……


Page:1 2 3 4



この掲示板は過去ログ化されています。