ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ABILITY 知らない間に参照100越え
日時: 2010/09/26 13:04
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

お久しぶりです。弥一です。
こっちを書くのは一ヶ月ぶりですか……読んでいる人がいたならすみません(>人<;)

さて、久しぶりに書いた為に少しキャラの性格が変わったり、文体が変わったりしてるかもしれないし、してないかもしれない

まぁ、そんな事はどうでもいい(よくないけど

本音を言うと
読んでくれ!!




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Re: ABILITY第8夜 ( No.8 )
日時: 2010/07/18 14:42
名前: 弥一 (ID: vKymDq2V)

7月25日 私立月城学園高等部 放課後

「やっと終わったぁぁぁああああ」
そう、終わったのだ。学園と言う名の地獄が、いま終わりを告げたのだ。
「さて、帰るとするか」
そう言い残し帰路に付こうとすると。

「おぉ、よかったよかった。まだ帰ってなかったな。」
教師がそんなことを言いながら俺に近づいてくる。
「なっなんすか?俺なんかしました?」
すると教師は
「いや、むしろ何もしてないのが問題なんだ」
何言ってんだ?ぼけてんじゃねぇのか?

「数学の追試、やらずに帰っただろう」
「あっ」

忘れてた。
「進級できなくてもいいのか?」
「いや、それは流石に困ります」
「なら、きちんと追試を受けてから帰れ。昨日より少し簡単にしてやるから」

と言う訳で、
「え〜と、「【問1】xの角度を次の図を見て答えよ」て、図なんざどこにも無ぇじゃねぇか。印刷ミスか?」
こんな問題できるかぁぁぁあああ。

そんじゃあ、まぁ。
「帰るとするか」
と、言って教室を出ると葵がいた。

「遅かったね。30分くらい待ったよ」
「待っててくれ、なんて言ってねぇよ」
「ハイハイ。じゃあ、行こっか」
「行くって、何処へ?」
葵にそう聞くと振り返って言った。

「【世界保安機関】」
そうして、俺たち2人は【世界保安機関】へと、歩みを進めた。



7月25日 場所 不明

獅王院 牙は大量の死体の上に立っていた。
「ふぅ。そんじゃまぁ、吸わしてもらうぜ」
その言葉と同時に、死体がだんだんと痩せ細って行く。
「はぁぁぁあああ」
獅王院 牙の体を包んでいる魔力が、一気に増幅した。
そんな彼の下に、人の影が近付いて行く。

「気は済んだ、牙。」
その声の主の姿は、はっきりとは見えず、身長が150cm前後くらいだと言う事しか分からない。

「まだだ。この程度で、俺の気が済む訳ねぇだろ」
「あらそう?Bランクの能力者ばかり集めたんだけど」と、少女が言うと。
「Bランク如きで、俺が満足するわきゃねぇだろが!所詮カスはカスだってこった」
吐き捨てるかのように牙が言う。

「流石は四大宗家の一家、獅王院家の現当主。なら1つ仕事をあげるわ」
「仕事?どんな」
牙の問から間をあけて、答えが返ってきた。

「【世界保安機関】関西支部を、壊して来なさい」

Re: ABILITY第9夜 ( No.9 )
日時: 2010/07/18 17:12
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月25日 【世界保安機関】関東支部

学園から出た所で車が止まっており、その車に乗り込むと20分足らずで、目的地についた。

「ついたわよ。ここが【世界保安機関】関東支部」
「関東支部?他にも支部があるのか?」
「えぇ、他にも5つあるわ。まぁ、そう言う話しはまた後程。いまは挨拶が先よ」
「あぁ、わかった」

今日から俺もここで働くのか。なんか、変な感じだ。
「なあ、葵。ここって表向きには、どんな所なんだ?」
「へぇ、そんな所に目を向けるなんてすごいね。私が入った時はそんな事を気にもしなかったのに」
「いや、隠さないと「能力者がいますよう」て言ってるようなものだろ」
「まっ確かにね。表向きには、保険会社になってるわ」
保険会社ねぇ。大丈夫か、ここ?

社内のエレベーターに乗って最上階へ向かう。エレベーター内で、会話は無い。
チーン。
沈黙を破るように音がなった。エレベーターが最上階へついた。
廊下を真っ直ぐに進んで行く。
ドアの前で立ち止まった。
コンコン
葵がノックをする。

「失礼します。会長、新入を連れて来ました」
すると、ドアの向こうから優しそうな声が返ってきた。
「入りなさい」
ガチャ
ドアを開け会長室に入る。

「会長、月城学園で覚醒した能力者を連れて来ました」
「ごくろうさまでした」
「和志、この方が関東支部に所属する能力者の中で、2番目に高い能力値を持っている方よ」

そう言われ、会長と呼ばれている男性を見てみるが、痩せ細っており、お世辞にも強そうには見えない。

「いま、私の事をあまり強そうで無い、と思いましたね」
「!いっいえ、そんな事は」
心を読まれた。一体どんな能力なんだ。

「構いませんよ。しかし、水見君。すみませんが、私はこれから関西支部へ行かなければなりません。和志君の正式な入社は、また後日という事で構いませんか」

「あっはい。構いませんが、関西支部で何かあったんですか」
すると、会長は悩んだ末に口を開いた。
「実は、関西支部の能力者が何者かによって、襲撃されたそうです。死者39名、重傷者27名、軽傷者2名。無事だったのはSランクの武神だけです。恐らく襲撃犯もSランクでしょう。ただ、気になるのは関西支部内のものが、全て枯れ落ちているそうなのです」

枯れ落ちてる!まさか…….
「……牙」
「えっ、和志。なんて言ったの」
「獅王院 牙。昨日、学園で戦った奴だ。多分そいつの仕業だ」
すると、会長が顔をしかめた。

「獅王院……。和志君、なぜ君は今回の襲撃が彼だと思うのですか?」
「牙の能力です。彼は自分の能力を枯渇だと言っていました」

「枯渇ですか。聞き覚えの無い能力ですね。剣神がいてくれれば良いのですが。どういう能力か分かりますか?」
「たしか、自分を中心に半径5m以内にあるもの全ての生命力を吸い取る能力だったと思います」
「半径5mですか……。まぁ、関西支部へ行けば分かりますか。水見君、すみませんが和志君をお借りします。和志君、一度家に帰ってからまた来て下さい」

「はぁ。分かりました」
「水見君、和志君を家まで送ってあげて下さい」
「分かりました」
「では、後程」

そして、俺は葵と一緒に会長室から出た。
エレベーターを使って1階に下り、外に出るとリムジンが待機していた。
「水見様、和志様、お乗り下さい」

「なあ、葵」
「なに、和志」
「俺さ、いま最高に気分が良い」
「そっか」
葵は微笑みながら和志と車に乗り込んだ。


40分後 再び【世界保安機関】関東支部

「来ましたか。準備は良いですか?」
「はい」
そう言うと会長は笑いながら
「そうですか。では、私の能力をお見せしましょう」
会長が手を前に出すと、
ヴォン
という音と共に空間が歪み始めた。

「これが私の能力【断界】です。まぁ、見ての通り空間を歪ませる能力です」
すげぇ。これが関東支部会長の能力。

「ここを通れば、すぐに関西支部に着きます。行きましょうか」
「私も行きます」
声の主は葵だった。

「水見君ですか。まぁ、良いでしょう。あなたなら」
「ありとうございます」
「では、改めて。水見君、和志君、行きますよ」
「「はい」」

そして、3人は時空の狭間の中に消えて行った。




Re: ABILITY第10夜 ( No.10 )
日時: 2010/07/18 18:41
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月25日 【世界保安機関】関西支部

「ウップ、気持ち悪い」
「どうやら、酔ってしまったようだね。初めて時空を潜るときはよくある事だよ」
会長は話しながら背中をさすってくれた。

「しかし、思った以上に酷いですね」
葵が関西支部を見て言う。
「あぁ、ここまでとは。もしも襲撃犯が牙なら、月城学園の時よりも数倍ひでぇな」
和志も葵に続く。
すると、そこに一人の男が近付いて来た。

「久しぶりだな、久遠寺。元気か」
すると、会長が、
「あぁ、元気だよ武神。いや、今は切柄と呼んだ方が良いかな」
「どちらでも構わん。お前の後ろの2人は誰だ?」
急に話を振られ戸惑っていると
「彼らは私の付き添いだよ。水見君と和志君。和志君は、今回の襲撃犯について知っているかもしれないから、私が連れて来たんだよ」

「なるほど。自己紹介をしておこう。武神あらため、切柄 隼人(きりづか はやと)だ。よろしく」
「水見 葵です。よろしくお願いします」
「仙堂 和志です。よろしく」
武神の顔が和志の名前を聞いた途端に変わった。

「仙堂と言ったな。お前に兄はいるか?」
なんでそんな事を聞くんだ?
「いえ。いません」
「そうか。いや、すまない。まぁ、疲れただろうから、今日は休んで、明日から調査してくれ」
そう言い残すと、切柄は去って行った。

「会長、久遠寺って言うのは、もしかして」
「あぁ、私の本名だよ。さて、今日はもう遅いから休むとしようか」
和志と葵は部屋に向かう会長について行き、その日は眠りについた。


一方同時刻 関西支部から2kmほど離れた裏路地にて、異変が起きていた。

「くそがぁぁぁぁああああ!あの野郎、俺の枯渇を受けておきながら、この俺を斬りつけやがった。赦せねぇ!」
牙の怒りに呼応して、周りにあるものが全て枯れ落ちてゆく。
「どうだった、武神の実力は」
闇の中かで女の声が響く。
「んだよ、姫か。まぁ確かに、強かったさ。だが、俺は全力じゃなかった」
そう言いながら掌に黒い塊を創り出す。そしてそれを、近くのビルに投げつける。すると音も無く、ビルが消えた。

「月城学園付近の民家で試しときは7割程度だったが、もう完璧だ」
「そう、よかったわ。じゃあ術を解くから、明日の10時までには帰って来なさいよ」
「了解了解。分かりましたよ」
「そっ。じゃあね」
その声を最後に女の気配は消えた。

「さて、そんじゃあまぁ行くとしますかね」
そう言うと、牙は闇の中へ消えていった。

Re: ABILITY第11夜 ( No.11 )
日時: 2010/08/13 18:03
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日 【世界保安機関】関西支部

ドンドンドンドンドンドン
「和志。起きて。和志」
なんだよ、うるせぇなぁー。もう少し寝かせろ。

「和志君、起きて下さい。和志君」
「どけ、久遠寺。蹴破る」
バーン!

大きな音が響き和志は目を覚ました。
「なんだよ。まだ深夜の2時半じゃん」
すると葵が
「それどころじゃないの。獅王院 牙が関西支部を攻撃してるの」
「なんだって!」

「久遠寺。悪いが俺は六神衆の1人だ。先に行くぞ」
「あぁ、気を付けろよ。切柄」
俺は状況が分からず、葵に詳しい状況を聞いてみる。

「なんで今更来るんだよ。昨日、十分打撃を与えたはずだろ」
「分からないわ。けど攻撃されてる事実は変わらないわ」
「その通りです。早く行きましょう」



【世界保安機関】関西支部内 広場

「弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱過ぎる!さっさと武神を出しな!あいつ以外じゃあ俺の相手はできねぇよ!」
叫びながら周りにいる者たちの命を例外なく摘み取って行く。

だがその行為は終わりを告げた。
1人の男の存在によって。

「そんなに俺と殺りたいのか。獅王院 牙」
その姿を見た瞬間、牙の興奮は最大に達した。
「やっと来やがったか!待ってたんだぜ!ゴミを始末しながらなぁぁ!!」
彼がゴミと言っているのは、皆Cランク以上Aランク以下の者たちばかり。たとえSランクが相手でも、死なぬ様に戦えば、必ず生き残る事のできる者ばかり。
それをゴミと言うか。

「来るがいい。貴様の人生はこの場で終わりを迎える」
「ハッ。そりゃてめぇの事なんだよ!第一に俺は死なねぇ。いや、死ねねぇの間違いか」
「貴様なにを言っている」
「殺り合ってりゃあ、いずれ分かる。だからよ、今は……今だけは……」
「ムッ!」
まずい。

「皆、離れろ!」
「俺と踊ろうやぁぁぁあああ!!!」
「クッ。仮にもAAランクということか」

この瞬間、武神は完全に牙を怒らせた。
「まただ…なんでだ…今の俺は呪具との同調率も最大だ…なのになんで…なんでてめぇは怯まねぇんだよ!!!」

「なに!」
武神は驚愕した。バカな。ありえん。それは六神衆にのみ許された、いわば禁術のようなものだぞ。

一方の牙はそんな事は気にもかけない。力が手に入るならば、なんの犠牲も厭わない。それが獅王院のあるべき姿。

「枯渇。我は汝が忠実なる僕。汝が願いは我が願い。汝が仇は我が仇。我は汝が望みし希望の権化」

「こうなっては、俺も使うしかあるまい」
武神はそう呟くと、詠唱を始めた。

「終焉。我は天を裂き、地を砕きし破壊の権化。その憤慨は、数多の痕跡を削り取りし最悪」

「「顕現」」
2人の声が重なり合う。

「枯渇せし非情なる世界」
先に顕現を終えたのは牙だった。本来枯渇の能力は同調率がどんなに高まろうと半径25mが最大だった。
しかし、牙の第二解放は世界自体の在り方を変えたために、物理的な距離の制限が無くなった。
この事から導き出される答えは…

「グアァァァ!」和志は悲鳴を。
「う…そ。あり…え…ない」葵は現実を認めようとせず。
「これは…危険ですね」会長もどこか苦しそうな声を上げる。

一歩遅れて武神の顕現が完了する。

「終焉を刻みし最悪」
武神の本来の能力は【宣告】カウントが60から始まり、対象が攻撃を受けるたびに1ずつ減少して行き、0になった時、生命活動を停止させるというもの。
しかし、武神の顕現は対象に触れる事で、触れた部分の活動を停止させる。顕現の場合、カウントは無く触れるという行為のみで、対象を停止させる事ができる。

「こうなっては加減がきかんぞ!」
「こいよぉ武神!!お互い全力中の全力だぁぁぁあああ!!」
牙が武神に接近しようと駆ける。しかし、

「怠慢。それが貴様の敗因だ」
武神が牙の左腕と右足を掴む。
「止まれ」
「なっ!」

牙の左腕と右足が動かなくなる。しかし、この程度で負けを認める男では無い。
「舐めるなよぉぉ武神!この程度で勝ち誇ってんじゃねぇぞぉ!」

そう、この男はこの程度では負けをみとめない。自らが最強であると信じて疑わない彼は、何があろうと倒れない。

「あああぁぁぁぁああああああ!!!」
「…バカな」
牙は動く右腕で止められた左腕と右足を引き千切る。だが、牙は笑っている。
次の瞬間、武神は相手を侮った事を後悔する。
千切れたはずの左腕と右足が再生し始めている。

「なんなんだ、こいつは。まるで狂神のようだ」
「ひゃはあぁぁぁ!朽ちろ朽ちろ朽ちろ朽ちろおぉぉ!」

「ならば、再生が追いつかなくなるまで、何度でも止めるまで…」
武神が牙を迎い撃とうとした時、

「そこまでだ。これ以上、顕現した状態で戦うな」
上空を見上げるとそこには、かつて最強と呼ばれた男がいた。




Re: ABILITY第12夜 ( No.12 )
日時: 2010/08/04 13:51
名前: 弥一 (ID: QxAy5T6R)

7月26日 【世界保安機関】関西支部

その頃、和志たちは、

「ッ、まだ少し虚脱感が残ってるな」
「ええ。会長の能力で今は助かってるけど、いつまでもここにいる訳にはいかないわ」
「そうですね。私も能力の長期使用で、少しばかり疲れてきました。ですが、それは相手にも言えることです。」
3人はいま、会長の能力で創り出した次元の狭間の中にいた。会長はいつもと同じ様に見せているが、明らかに疲れているのが分かる。

「会長、大丈夫ですか?」
心配そうに葵が声をかける。
「……少しばかり疲れましたね。やはり歳は誤魔化せない。昔なら、もっと持ったのですが」

そこへ、和志が話しかける
「質問なんだが、能力の使用に限界はあるのか?」
葵が応える。
「あるわ。能力を維持する為に必要な【魔力】が尽きれば、魔力が回復するまで能力は使えないわ。ただ、魔力は能力を使っていくと増加するから、獅王院の限界は分からない」

使えば使うだけ長期使用が可能てことか。
「彼は恐らく、能力を出力最大で能力を使っても5時間は持つでしょう」
会長の言葉に2人は絶望する。

「という事は、今から最低でも4時間以上は能力が発動されたまま、てことですよね」
「私の感が正しければ」
なんてことだ。このままじゃあ、関西支部の人たちが全員死ぬことになる。
和志がそんな事を考えていると、
「ッ、懐かしいですね」
「う…そでしょ」
会長と葵が突然、言葉を漏らす。

「どうしたんですか会長?葵まで」
すると、会長は口を開き震えながら言った。

「六神最強が帰ってきました」


その頃、牙は考えていた。
(この俺が、姿をあらわすまで気付かなかった。)
牙にとっては初の経験だった。牙にここまで接近できたのは、今まである1人の女を除いて彼が初めてだった。
(チッ、全力で行かねえとかなり危険だな。武神目当てで寄ったんだが、かなりの大物が釣れたみてえだ)

武神の方を見てみると、彼も牙と同じく臨戦態勢を取っていた。

「おい、あんた。何者だよ」と牙か、聞く。
すると、空中の男はこちらを向き、
「元、獅王院家当主、影獅子 統夜(かげじし とうや)今は、獅王院家直属の実行部隊【影獅子】の頭と、六神衆の剣神をやっている」
男が言い終わると、牙の顔が明らかに変わった。

「…影…獅子…だ…と?んな訳あるかよ。影獅子は俺たち獅王院が潰したはずだ」
そう、今から3年前に影獅子は1人残らず殺したはずだ。なのに何故。

「ああ、確かに潰された。俺以外の奴らは全員殺された。だが、お前の目の前に、生き残りがいるんだよ」
話し終わると同時に、月の光によって作られた彼の影から、獅子の形をしたものが出てきた。

「本来なら殺したい所だが、殺すなと釘を刺されているからな。殺しはせん」
「誰から言われたんだよ、そんなこと」
すると、彼は笑みを浮かべながら

「お前の主からだ」
そう言い終えると、彼の影から生み出された獅子が襲い掛かって来た。
「何言ってんだ!訳わかんねえぞ!なんで姫がそんなこと」
「知ったことか。俺は金を受け取り、殺すなと言われただけだ。それより、隣のお前。お前からは武神の波動が伝わって来るが、俺はお前など知らん。どう言うことだ」

すると、今まで沈黙を保っていた武神が口を開いた。
「俺は、5代目武神だ。先代は戦死した」
「なるほど。4代目は死んだか……。この枯渇は武神、お前の能力か?」
「いや違う。これは獅王院の能力だ」

「獅王院の能力か。……まあいい。武神、お前今から獅王院と組んで俺と戦え。ただし、お互いに顕現は禁止だ。もし顕現を解かないなら、こちらも全開で行く」

武神は獅王院と顔を合わせ、アイコンタクトを取る。
獅王院は剣神が創り出した獅子と戦っていたが、武神の視線を感じ取り直ちに結論を出す。2人共同じ結論を。
((今この場で、こいつは殺す))

意見があった所で、2人共顕現を解く。そして考える。
もし今この場に他の能力者がいるなら、誰もが剣神の勝ちを想像するだろう。牙も武神も決して弱いわけでは無い。むしろ彼ら2人はランクはAAランク。ハイランカーの内の2人だ。
しかし、目の前にいる剣神のランクは最低でもSはある。
(勝てる可能性は3割くらいか。生き残る事を最優先に考えるなら、この場は逃走した方がいい。100人いれば100人が逃げるだろうが……)
牙がそんな事を考えていると、剣神が我慢の限界だと言わんばかりに声を上げた。

「もういいわ。お前ら2人が来ないなら、こっちから行くぞ」
そう言うと、剣神はまたも影から獅子を創り出し命じる。
「喰らえ!黒獅子!」
ガアアアアアアア!
漆黒の獅子が絶叫を上げながら、2人に近付いてくる。

「そこまでにしてあげて下さい、剣神」
剣神は声のする方を向いてみる。
「久遠寺か。なんだ、邪魔しないでもらいたいな」
「なぜ、貴方がそんな事を…。姿を消した3年間の間、何があったのですか?」

「貴様がそれを言うか。だが、今回は見逃してやる。少し時間をかけ過ぎた」
既に時刻は4時30分を過ぎていた。
「この状態では、獅子の形成を維持する事が厳しい。今は引くが、次は無いぞ。それに、個人的に興味がある奴がいるからな」
剣神は言い終わると、そのまま何処かに消えて行った。

「なんか白けちまったな。俺も帰らせてもらうぜ」
牙もそう言うと、何処かに消えて行ってしまった。



剣神は、電話をかけていた。
「ああ。あの様子なら、なんとか間に合うだろう。これで役者は揃った。後は舞台を用意しないとな」
「………、…………………」
「了解。こっちは俺がやっとく。そっちの方は狂神か死神にやらせとけ。じゃあ、今から1度そっちに戻るわ」
「……………、………」
「じゃあな」
電話を切り溜め息をつきながら、小さな声で呟く。

「早く育てよ、仙堂。期待してるぜ」






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