ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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激動  執筆再開
日時: 2010/11/13 12:26
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: yA6Y/.Us)
参照: 黒猫⇔ラグ 同一人物ッス!

こんにちは、黒猫またはラグと申します^^

長い間放置プレイをかましていた(発言注意)が、舞い戻ってきました。
ちょ、戻ってこなくていいなんてそんな…酷い事言わないでw

ジャンルはSFまたはアクションになると思います。グロが嫌いな方は戻った方がいいかもしれませんよ…
コメ&アドバイス大歓迎です!


x注意x

・更新は不定期、テスト時は更新不可
 大丈夫か受験生←
・文章が長々と続くので見にくいです
 ごめんなさいm(_ _)m
・スレ主は注意力が欠けています。
 誤字脱字あれば指摘してやってください…
・スレ主はグロ愛好家です。
 でも、シリアス≠グロという事はわきまえております

以上です、ごゆっくりどうぞ旦~



【目次】
登場人物>>10
序章>>3
1話>>4
2話>>11>>14
3話>>15>>18>>19>>20
4話>>21>>22>>23
5話>>24>>25
6話>>31>>32
7話>>33>>34

x辞書x


【“METROPOLIS”】人間が作り上げた世界最大規模の楽園にして最大の避難地。
         世界の平和の象徴として造られた人間のみの極楽京であった。

【MACHINERY(マシナリー)】人間が機械の事を呼ぶ時に使われる言葉。

【ORIGINAL(オリジナル)】機械が人間の事を呼ぶ時に使われる言葉。

【Riris】リリス。世界共通の最大ネットワーク

【ZENO】軍事基地で造られていた人型殺戮兵器。軍事的に利用されようとしていたが、
    一体のZENOの暴走によりほぼ全ての機体がフリーズされた。


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Re: 激動  ( No.21 )
日時: 2010/08/18 21:05
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)



第Ⅱ部隊、


そこは軍の部隊だというのにも関わらず、耳を澄ますと…お気楽な話や笑い声しか聞こえなかった。理由を挙げるとすると、そこには確かに腕が立つ者が多いが———変わり者も多いというのがあるからだろう。


「あ〜、昇進してぇー…」

とあるテント、そこからそんな声が突然聞こえてきた。そこにはいく人かの兵士が輪になって何か話しこんでいるが、そこに緊張感は微塵も無く、逆に和やかな雰囲気であるくらいだった。
「同感であります、ナギサ上等兵!ジェイク伍長がいなかったら、私が伍長でありましたのにぃ〜!」
「だよなー、頑張って戦死してくんないかなーあの人。だったらジェイク伍長も二階級特進で俺もやっと昇進できるってもんだよ。…あ、俺超ナイス・アイディア。一石二鳥じゃん?」
特にその中でも、一際盛り上がっている二人は、何の罪も無い“ジェイク”という上司へ、そんな愚痴をこぼしていた。笑ってそう言っているが、内容は惨たらしい事この上ない。ある意味恐ろしい二人だ。

「………」

と、そんな二人の後ろに、顔をひきつらせ、腕組みをしながら誰かが立っていた。…それに気が付いた他の兵、は凍りついたように動かなかった。顔から血の気が引き、誰もが「やってしまった」という顔をしている。

「はーぁ。…なぁ西嶋上等兵、次の奪還戦の時さー、背後からあの人撃ってくんねぇ?誰も見てない時にさー、“パーン”って」 
しかし、そんな周りの空気にも気付かず、二人はまだその話題で盛り上がっていた。
「何を言ってるでありますか、そう言うのは貴方の得意分野でありましょう?」
「いやいや、俺無理。いざという時、ミスって肩とかどうでもいいとこ撃ちそうだしー…」


「————ほーぅ、何の話してるかと思ったら…。むしろ俺が今、テメェ等を撃ってやろうか?」


ジャカッ
話の盛り上がっている二人の背後、我慢しきれなくなったその人物は、やんわりそう言ったが————明らかにキレている声だった。しかも、ナギサ上等兵と言われていたお気楽そうな青年の頭には、片手銃の銃口が向けられている。

「あらまー、何時の間に。いくらなんでもいけませんよ、立ち聞きしちゃあ。今、ちょうどアンタの抹殺計画を練ってた所なのに」
「———ナギサ、そんなに俺に殺されてぇのか?」

「…ッ!ジェイク伍長ッ!」

そう、そこにはちょうど話題に出ていた上司———ジェイクが立っていたのだ。他の兵は気まずそうに眼を逸らす者や、こっそりテントから出ていく者もいた。

しかし、ナギサは一切同様の色を見せず、むしろ開き直っているかのように笑っていた。しかし、西嶋という青年は信じられないという様子で、ジェイクを見つめていた。しかし、やけに目線が低位置だ。と、いうのも西嶋はジェイクの顔など見えていなかったからだ。

「伍長殿!失礼ながら社会の窓が全開でありますッ!さては今、トイレから出て来たばかりでありますなぁ!!?」

そう、西嶋は彼のチャックを凝視していたのだ。
「ブハッ!」
それを見て、ナギサは隠す事無くその場で転げるほどの勢いで腹を抱え、大爆笑していた。

「は?」
ジェイクは訝しげに眉をひそめながらも、二人に背中を向けながらそれを確かめていた。
「………ッ!!!お、俺とした事がぁぁぁぁああああっ!!」
すると、その事が事実であると気付いたジェイクは、そう絶叫していた。

「ててててテメェ!大声でそう言う事言ってんじゃねぇ!!つーか、そういう事は気ィ使って、こっそり言うもんだろ普通!!」
ジェイクはチャックをすぐに上げると、羞恥を覚え、頬を赤くしながら西嶋にそう怒鳴った。しかし、肝心の西嶋は全く反省しておらず、

「ふっ、伍長殿も中々大胆な事をしますなぁ」
「まったくだ、昔からいつもこうなんだよなぁー」

と、ナギサと共にそんな事をヒソヒソ、ジェイクにワザと聞こえる声で言っていた。



ナギサとジェイクは、昔からの幼馴染である。西嶋と二人が出会ったのは、MBAに入隊した時に、同じ第Ⅱ部隊として仲間になった時だった。それからというもの三人は個人的にも仲良くなっていった。特に西嶋と年が同じナギサは、同じ最小年同士で気が合い、今や親しい間柄である。

しかし、ジェイクが年上で、上司だという事は決して忘れてはいけない。MBAでも、立場をわきまえるべきではあるのだが———…

「てンめぇ等ぁ…そこに直りやがれぇっ!俺が喝いれてやる!!」

「『喝』って聞いたら…懐かしいねぇ、ジェイクと昔座禅組んだ事もあったよなぁー」
「“座禅”とは…いかほどのものでありますか?」

二人は、最早ジェイクを上司として見ていなかった。

「木製の平たい板でな、バシーンって叩かれんの」
ナギサは説明口調で、座禅を組みながら西嶋に言っていた。すると、西嶋は思い出したかのように「あぁ!それでありましたか!」と、納得しながら彼も座禅を組み始めた。
「私も一度、座禅を組んだ事があるのであります。組んだのは幼い頃故、名前は知らなかったでありますが」
「でも、アレ叩かれるうちに何かクセになんだよなー」
「———そんなに叩かれんのが好きなら、何度でも俺がブッ叩いてやるから安心しろ」

「「え」」

振り返ると、そこには抜剣したジェイクが、怖い笑顔を二人に向けながら立っていた。———あぁ、忘れていたと言わんばかりに二人は苦笑を浮かべる。
「ちょ、ジェイク、少し待とう。まさかそれでグサーッて訳ないよね?」

「大丈夫だ、死なない程度に手加減はする」

「オイィィィッ!待て、俺が悪かった!ホラ、仲間殺しはダメっしょ、ね?」
「そうであります、ジェイク伍長!敵前逃亡と仲間殺しは死罪でありますゥゥゥゥ!」
二人は、今更になって事の重大さに気付いた。というか、本能的に悟った。他の兵士は、最早手のつけようがないと、遠まわしにそれを眺めていたが、彼らが少し楽しげなのは言うまでも無い。

「今更遠慮すんなって、なぁ…?動脈浅めに斬ってやるから、存分に苦しめやテメェ等ァァァァァ!!」

「「ギヤァァァアアアアアアッ!!!」」


「——うおいっ!二人、こっち来るなぁぁぁ!」「馬鹿っ、俺たちまで巻き込むなって!」「伍長、俺たちは関係ねぇっす!」「嫌だぁぁぁぁぁぁ!」「斬られる、逃げろォ!」…


その後数分間、三人とその他の兵士を巻き込んだ壮絶な追いかけっこが繰り広げられたのは、その直後であった。 



Re: 激動  ( No.22 )
日時: 2010/08/20 21:06
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)





「誠に不謹慎、否、迷惑そのもの。場をわきまえ、行動しろ」

その後、三人は言うまでも無く、望月という人物に叱られていた。三人は正座を組まされ、さらに太ももの上には大きな岩が積まれている。ナギサに至っては、最早足が痺れて感覚がなくなっているのか、数分前まであんなに苦しそうな顔をしていたのに、今や余裕な表情を浮かべていた。

「ジェイク伍長…何故君が居ながらこうなる?否、君がいるからこうなった。何故だ?」
「も、申し訳ありません、ついカッとなってしまい…」
ジェイクは小さくなりながら、下を向いてモゴモゴ何か言っていた。彼の顔からは血の気が引き、最早げんなりとしているくらいだ。

さっきので、幸いにも負傷者はいなかったが——結構な騒ぎになった。最終的に目の前にいる望月兵長が騒ぎを止め、騒ぎの主犯である三人に尋問を行っているのだ。


ジェイクは、キレると手の着けようがない厄介な人物である。力で強制的に抑えつけないと、暴走が止められないような———ある意味特攻隊に向いている性格だ。しかし、意外と真面目な所があるので、こうして直々に叱られると、本気でヘコんでしまう。

「…———成程、原因は二人か」
望月は、少し間をおくと、今度は上等兵二人の方を見た。西嶋も、本気で反省している様子で、「申し訳ないであります…」と、俯き加減でそう言っていた。
ナギサも、俯いて何も言わなかったが、淀んだオーラを放っていた。おそらく、本気で反省しているのだろう。


「……まぁいい、下がれ。後、ジェイク伍長は残るように」
望月は面倒くさそうに息を吐き出すと、三人にそう言い放った。上等兵の二人はそそくさと出ていき、ジェイクは暗い面持ちで残っていた。しかし、望月はさっきの事を詳しく聞こうとしているのではなく、また別用で彼を残したのだ。

望月は、一本の通信機をジェイクに差し出した。


「本部から連絡、否、命令だ」


「?」
ジェイクは疑問を抱きながらも通信機を受けとると、それを耳にあてた。しかし、次の瞬間聞こえて来た声に、ジェイクは思わず表情を歪めた。


「おっす、久しぶり!愛しのジャックですよーっと、元気だったか?」


カシャン
という勢いで、ジェイクは猛烈に切りたくなった。しかし、本部からの連絡と聞いていたので、どうしてもそれを切る事は出来なかった。

「…ジャック、俺は生憎本部の連絡と聞いてだな———————」
「おっと、待て!今日はあくまでジャックではなく“J”として、お前に用がある。俺様も仕事人なんでね」
電話の相手であるジャックは、余裕な口ぶりでそうジェイクに言う。それを聞き、ジェイクは余計に眉を潜め、「何言っているんだコイツは」という顔をしていた。

「実は今、俺様たちの1.5キロ先に———お前らが追っているZENOって機械がいる」

その時、ジェイクは思わず通信機を落としそうになった。
「———売人じゃなかったか?いつから情報屋になった」
しかし、ハッと我に返り、ジェイクは軽く咳払いをすると、そうジャックに言った。すると、ジャックは「ちっちっちっ、」と、
「俺様の商売人魂をなめんなって、売れるもんなら何でも提供!無論例外なく情報も商品の一つ!つーこったな」
と、堂々と言っていた。
「……危険だ…!何でまたそんな事—————」

「Stop!俺様の話はまだ終わってねーんだよ!
 …俺たちは、このままそのZENOの後を追う。そしてお前らMBAの第Ⅲ部隊と第Ⅱ部隊に、そのZENOの移動経過を常に報告。自給二万$の商売さ」

「……商売って…まさかMBAにか!?しかも何で第Ⅱ部隊にまで…」
「あー、だからその————」

「変われ、さっきから話が進んでねぇじゃねぇか」

と、その時向こうでそんな声が聞こえた。ジャックが「ちょ、待てお前…」と、言ったのを最後に、今度は違う人物が話しかけて来た。
「俺だ。シオンっつったら分かるか」
「——シオン!?」
すると、その懐かしい友の名に、思わずジェイクは感嘆の声を上げた。
「三年ぶり…元気そうだな!」
「もうそんなになるのか。でも、今は悠長に世間話してる暇も無い。

 てっとり早く説明するとだな、俺たちが目撃したZENOは一体じゃねぇ、…二体だ」

「なっ…!?」
ジェイクは、その報告に驚愕した。昨日の地点で、目撃されているZENOは東の大荒野に一体いると聞いただけであったからだ。ZENO一体でも、手のつけようのない兵器であるというのに…まさか二体になっているとは思わなかった。
「でも…証拠がな無ぇじゃねぇか!何を根拠にZENOだと…」

「ZENOは首筋に、ZN-と、その語尾に自分の造られた番号が記されている」

「!」
「その二体に、それが記されてあった。背の高い方は『ZN-0003』、もう一体は『ZN-0079』…断定する他は無いはずだ、証拠が十分すぎる」

全て、シオンの言うと通りであった。確かに、ZENOの首筋にはZN-とその後に造られた番号が記されている。

何故彼らがそれを知っているかはさておき、ジェイクは慌てて、
「じゃあ本部と…第Ⅲ部隊はその事を知っているのか!?第Ⅲ部隊はそのZENOの存在を確かめにそっちへ向かってる筈だ!」
と、シオンに尋ねた。するとシオンはフッと笑い、
「無論、先に俺たちが報告済みだ。それで、一部隊だけで二体は無謀すぎると、手前等第Ⅱ部隊に救援を要請した訳だ」
と、言った。
「……と、言う事はこの本部からの連絡は出兵命令という事か…」
「そう言う事だ。『戦争での召集と同じく、半分の兵をこっちに寄こせ』と、本部のお偉いさんが言っていた」
「…上からの指示なんだな?なら第Ⅱ部隊のトップには既に連絡がいってるって事か。———了解、おそらくすぐ向かう事になりそうだ」
「そうか。という事で、それまで俺たちも必死で尾行し—————っと、危ねぇ!」

ドシャアアアアアッ
その時、無線の向こうから爆音と何らかの破裂音が響き渡った。

「!?——おい、大丈夫か!?」
ジェイクは突然の爆音に、動揺しながらも無線の向こうにそう呼びかけた。すると、雑音を交えながら、今度はまたジャックが無線に出た。

「悪ぃな、ちょいと俺様たちにも別用ができた。20秒だけ時間空けるぞ」

ブツッ

と、ジャックが言ったその時———無線が一瞬切られた。

Re: 激動  ( No.23 )
日時: 2010/08/21 17:59
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)





「ジャック、五体だ!さっさと銃を構えろ!」

「——分ってるっての!俺様を誰だと思ってんだ!?」
シオンに投げ出された通信機を、ジャックは瞬時に受け止めスイッチを切った。不意打ちをかけて来た敵は、計五体。言うまでもなくマシナリーだが、あまりドンパチしたくないのも事実だ。この騒ぎで、先にいるZENOに気付かれてしまう可能性も無くはない。ここは一秒でも早く終わらせる必要があった。
「悪い、10秒程時間をくれ。後は一瞬で終わる」
「Ok、じゃあその間俺様が直々に奴等を相手しといてやんよ」
そう言うと、二人はほぼ同時に動いた。

ガシャンッ
シオンは、すぐさまコートからバラバラになった何かの部品を地面にぶちまけた。すると、慣れた手つきで素早く組み立てにはっていたが———パーツは見た所、軽く20を越していた。これを10秒で組み立てるのは至難の業だ。
しかし、至難の業と言えばジャックもそうだ。10秒だけであれ、五体のマシナリーを一人で相手しなければならないのだ。しかも、死のリスクが高いにも関わらず、ジャックは片手銃を一本しか所持していない。あまりにも無謀だ。

「——はっ…‘たったの’五体かよ。1万$にもならねーな、こりゃあ」

しかし、それはあくまで他人から見ればの話で、本人等にとっては日常茶飯事な、ごくごく普通の事だった。



ジャックは、“J”と名乗る商売人だった。通称“Jの売人”で、世界では有名な商人だ。彼は世界各地をめぐり、世界のあらゆる物を提供できる数少ない商人で、彼の場合は日によって商品が変わるという———なんとも気まぐれな商売だった。

しかし、ジャックは色んな組織や人間から信頼を寄せられている人物でもあった。ジャックは金さえ払えば、言われた商品を取りそろえ、提供するという変わった商売をしていた。
たとえそれが、軍人しか手に入れられないような銃でも、機密情報であっても、必ず頼まれた商品を取りそろえ提供する。ある意味それはジャックのポリシーでもあり、守り続けて来た絶対的な約束だ。

…とにかく、ジャックは商人としてはかなり大物ではあるが———自由気ままな商売という不安定な収入では、生活に何らかの支障が出てくるのは必然だった。なので、ジャックはもう一つ仕事をしていた。シオンがその仕事のかなりできる人物で、ジャックは彼を雇って共に二人でその仕事をしている。

———“掃除屋”という仕事だ。

掃除屋というのは、人間に害をなすマシナリーを破壊して報酬をもらうという単純な仕事だ。報酬を出すのは自分を雇ってもらった組織で、この戦争時代ではかなりポピュラーで儲かる仕事だ。
…まぁ、雇って貰えるほどの腕があればの話なのだが。


そして、機械をマシナリーした際に出る部品は、ジャックは商品として売っている。無論、マシナリーのコア等に少し使われる“金”やその他の貴重な金属、部品等を売るわけで、一体につきの儲けは少ない。マシナリー三体で、やっと5千$稼げるかどうかという驚きの安さだ。



商人と掃除屋を掛け持ちしているせいか、一日に何十体ものマシナリーを相手にする事がある。なので、五体相手はまだ慣れている方だ。
むしろジャックが怖いと思うのは、単独で行動しているマシナリーだった。1体で行動している奴ほど凶暴で、関わりたくも無い。動きが読みにくいし、とにかく近づく気にすらならなかった。


目の前にいるのは、脚が四本の箱型のマシナリーだ。人型でないマシナリーは人工知能が低めで、それは工場や工事現場でただ黙々と重い木材、金属を運んだりするような単純な作業しかしないからだ。しかし、その分頑丈な造りになっており、銃で破壊するには相当の威力のある弾か、あるいはレーザー銃か、さらにあるいは…。レーザー銃はジャックが持っている片手銃だが、あくまで護身用なので威力は低い。なおで、こういう時こそ相棒の出番な訳だ。

「——ほっ、よっ、せやっ!」
ジャックは、見事な身のこなしで相手の攻撃を回避した。素人ではない素早いその身のこなしは、並大抵の努力ではマネなど到底できぬ程の動きだ。しかし、ジャックにとっては他愛のない事で、それよりもシオンにマシナリーが近づかぬようにする方が困難であった。
「軽い軽い♪」
ジャックはヒョイヒョイマシナリーの攻撃を避け、余裕に口笛までも口ずさんでいた。しかし、そんな事をしていると、1体のマシナリーに後ろをとられた。
「あ」
ヤベ————、と言おうとした瞬間、マシナリーはジャックに固いボディで頭突きを喰らわせた。思わずよろけて地面に倒れると、ジャックが動けぬよう、そのマシナリーは前脚二本でジャックの脚を抑えつけた。
「っ…!!」
言うまでもなく、箱型のマシナリーは重い。ジャックの足はミシミシと悲鳴を上げた。が、本人も相当痛いはずなのだが、ここに至っても余裕の表情を浮かべた。

「残念…ッ!少し遅かったな」

バチィッ
と、
ジャックが呟いた瞬間、目の前に閃光が走った。それは、一瞬でマシナリーのボディと溶かし、ジャックは足が離れた瞬間素早く引き下がった。その一瞬の間に、それぞれ残ったマシナリーにも穴があいてゆく。穴のあけられたマシナリーは少し火花を上げ———ついには動かなくなった。

「——っ、遅せぇし!俺様の足が折れてたらどうしてくれるんだよ!(泣)」
「ジャスト10秒。俺は約束を守ったんだから、しゃーねぇだろ」
マシナリーが全て機能を停止させると、ジャックはシオンに当てつける様にそう言った。油断したお前が悪いんだろ、というふうにシオンは言い返すが、そのシオンの側に置いてある大きな銃は、未だに少し『バチバチッ』と音を立てていた。

「そう言えば、お前の“ソレ”、久しぶりに見たなぁ」
「あぁ、おかけで一瞬で終わった」
シオンは、その音が止むと、その銃を解体しはじめ、それぞれ丁寧にパーツをなおしてゆく。
「ま、さっきので生じた光で——あいつ等(ZENO)に気付かなかったらいいんだけどな」
「大丈夫、一瞬ならマシナリーでも人間でも光ったか区別ができないはずだからな」
ジャックが心配そうに言っても、シオンはそう断固してみせた。それは、この銃がそれほどの性能か分る発言でもある。

「流石と言うべきか…お前の『超電磁砲レールガン』は」

「褒めるなら俺の腕でも褒めろよ…」
シオンは疲れ切った溜息をつくと、停止したマシナリーの側に寄った。
「流石に一体目のボディは溶けたか。久しぶりだったから、まぁ仕方ないな」
シオンは穴のあいた部分を見つめると、「マメにメンテナンスしなきゃな」と、溜息をついた。

「じゃあ他の四体からは商品になりそうな部品を拝借しますかねぇ、シオンはまた連絡かけといてくれ」
ジャックはシオンにそう言いながら、ルンルン気分で他のマシナリーのもとへ近づいて行った。そして、ジャックが感嘆の声を上げながらマシナリーの解体を行っているのを見守りながら、シオンは再び通信機へと手を伸ばした。

Re: 激動  ( No.24 )
日時: 2010/08/22 07:07
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)





『全ては破壊され、創造される』


破壊による創造は、この世界で幾度となく繰り返されてきた。滅び生まれ、壊れ造られ、そして破壊され再生する。世界はそうして今もなお進歩している。

——人は生まれ、今までたくさんのものをつくり上げて来た。しかし、人には“滅び”が無かった。いや、人がそれを拒み続けて来たのだろう。

だが、次は人が滅ぼされる番だ。

全ては世界のルールには抗えない。生まれれば、終わりが必ずしも来る。
しかし人間はその運命に抗い、今も抵抗を見せている。ならば、俺が全てを終わらせてやる。壊して、破壊して、粉砕して、そして崩壊させる。それこそ“滅び”。それは、人が俺に与えた最大で絶対的な使命であり、俺の存在理由。

…だが、今はその時ではない。まだ足りない。俺には絶対的に足りないものがある。


だから、今はその“足りないもの”を求める事にする。






「…お前は誰だ」

人の住む国の隣に位置する国———人はそれを隣国というようだが、そんなのはどうでもいい。ただ俺は“探し物”を探しに、遠くからここまではるばるやってきたのだ。

しかし、どうやら俺は面倒くさい奴と出くわしてしまったらしい、俺の目の前には白銀の長い髪を風になびかせ、悠然と立ち尽くす奴がいた。それも、まだ幼い少女だ。

「あぁ?テメェこそ“何だ”?」
崩れた瓦礫に腰をかけいた俺は、訝しげな表情を浮かべながらそう言った。ソイツが人間で無い事は、一目で分っていた。
——何故なら、俺の腕が何かに吹き飛ばされたように無く、傷口から機械の部品やらが飛び出していたからだ。普通、こんな光景を人が見たならば、俺を機械だと判断し、一目散に逃げるであろうからだ。

「…、お前が全部…街を壊したのか?」
その少女は、破壊された建造物、あたりに飛び散るガラス、そして崩れた外壁———まさに、戦争跡とでもいうような街の光景を目にし、そう俺に呟いた。
「ちっ…、俺の訳ねぇだろーが。むしろテメェがやったんじゃねぇのかチビ」
俺はその問いかけに、苛立ちを覚えながらそう言い返した。
『クソ、んな調子じゃあ“探し物”どころの話じゃねぇじゃねぇかよ…!』
俺は腰かけている瓦礫を目の端で見つめながら、沸々わき上がる怒りを抑えながら拳を握った。ただ俺は、“探し物”を探す為、ここにやってきた。と、言うのも、“探し物”に関する有力な情報を手に入れたからだ。そしてそれがここに在ると聞いてやって来てみれば———このありさまだ。

『…気にくわねぇ、何で俺がこんな目に逢ってんだ。俺はただそれだけの為に来た筈なのに、何故この女に腕をブッ飛ばされるんだよ…!』

俺は、目線を自分の吹き飛ばされた左腕を見つめ、脱力するかのように溜息をついた。





時間は少し前に遡る。

俺がこの街についた時、既にもう街はこの有様だった。しかし、“探し物”にしか興味が無かった俺にとってはそんな事どうでもよかった。“探し物”を見つけ、さっさとこの街から出て行くつもりだったのだ。

しかし、街をいくら探しても、“探し物”は見つからなかった。
「ちっ…的外れじゃねぇか!“探し物”の手掛かりすら無ぇじゃねぇかよ」
俺は暴言を吐き捨て、街を出ようかとUターンをきろうとしたその時、
『…、俺とした事が、何故今の今まで気が付かなかった?』
俺は苦笑を浮かべながら、つくづくそう思った。
気配
突き刺さるような殺気が、俺の後ろから感じられた。こんなにも露骨でハッキリした殺気を感じたのは、ある意味久しぶりだ。
「……、…!!?」
俺は無言のまま振り返った。しかし、その瞬間絶句した。

「誰だ?」

奴は、俺にそう言った。そして、その瞬間俺が振り返った瞬間にはもう、構えていた巨大なバズーカ砲を連想させる様な銃を俺にブッ放っていた。
「ッ!」
辛うじて体を後退させ、左腕は飛ばされたが———まぁ、それ以上の大きな外傷は負わなかった俺は、イラッとした表情で相手を睨んだ。

『あぁ———ダリィ!何なんだよ、マジでウゼェ!』
別にドンパチしにきた訳じゃねぇっつーの、平和的に“探し物”探してるだけだ。なのに何だ?コイツはよぉ。本当…大概にしろ、じゃないと本気で——


「殺すぞ」


俺がそう言い放った瞬間、ビクッと身震いさせた相手は動きを止め——持っていた銃を下した。
「…」
『…、それでいいんだよ、最初からそうしてろっつーの』
俺はチッと舌打ちをすると、ドカッと近くにあった瓦礫に腰をかけた。すると、銃を下した相手は俺に歩み寄り、こう言った。

「…お前は誰だ」










そりゃ、こっちの台詞なんだよ、何で俺がこんな餓鬼に腕をブッ飛ばされなきゃならねぇんだよ!
「クソがっ…!テメェ、次何かやってみろ…その頭本気で潰すぞ」
俺は少女にそう怒鳴ると、再び左腕をキッと睨むように見た。すると、ようやく腕は俺に内蔵されたチップによって修復され、完全に元の形を取り戻していた。
「…ったく、これだからやりにくい…」
俺は自分の左腕を、グーとパーを交互に何度か繰り返し良好だと確認すると、その拳をグッと握った。


「ZENOであるのにも関わらずこうも再生能力が劣っていると、——やりにくい事この上ないな…」


「何?お前ZENOか…」
すると、そんな俺のぼやきが聞こえたのか、少女は表情を一切崩さぬままそう言った。

Re: 激動  ( No.25 )
日時: 2010/08/22 07:27
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)




「あぁ?何だ悪ぃのか」
眉をひそめながらそう言う俺の首には、『ZN-0005』と刻み込まれていた。
「……」
しかし、少女は俺の問いには何も答えずに少し黙った後、少しためらって少女はこう言った。

「———…『OS-00001』、またの名を「レイ」。」

『…、何だ、コイツOS機だったのかよ…』
俺はさらに表情を歪めると、舌打ちした。
『何で機械のクセに…ZN機の改良型のクセに、んな玩具(銃)使ってんだコイツはよぉ』
すると、そんな俺の思いを読み取ったのか、少女はさらに言葉を続ける。
「…制御装置の誤作動で、派手な運動はできない。だから街をここまで壊す事は、私には不可能。だから再び聞く、お前がこれをやったのか?」
「違うっつってんだろーがよ、頭割るぞ」
俺は零と名乗る少女にそう即答すると、少女は一瞬押し黙り、「ああ、そうか」と、短くそう言った。


「……」
俺は、ふとある事に気が付き零を見た。
「…何だ」
零は訝しげな顔をすると、再び銃を俺に向けた。俺はその、「ある事」に期待し、ニヤリと口の端を釣り上げた。その俺の表情に警戒心を抱いたのか、零は殺気を解き放った。しかし、それは最早意味を成さなかった。

「テメェ、OS機なんだよなぁ?なら、“コア”には何を使ってる…?」

逆に、零は殺気を感じた。目の前にいた男は、一瞬のうちに自分の後ろをとっていたからだ。
「ッ!」
零がそれを振り払おうと後ろを振り返ろうとした瞬間、何かが零の体を貫いた。それは、その男の手だった。
「…離れろ、そしてこの腕を抜け」
「ククク…お望み通り」
俺は笑いながらその腕を抜き取った。と、その瞬間零はガクンと、地面に膝をついた。

「…——貴様ぁ…!!」

零は、今までに無いくらいの眼差しで俺を睨み上げた。それはそうだ、俺は零にコアにつけられていた“A チップ”を、コアごと抜き取ったのだから。

「クク、まずは一つ目か…!」
俺はコアについていた制御装置を外し、まじましと“Aチップ”を眺めた。そう、俺の“探し物”は、特定の機械のコアにある“チップ”だった。

———が、しかし、
「…?…!?———…ちっ、何だ“ただの”Aチップじゃねぇか…期待させやがって」
俺はチップを確かめると、意気消沈しながらチップを零に投げつけた。
「…」
俺が何の事を言っているのかさっぱり分かっていない様子の零は、再び俺を訝しげに見た。おそらく、怒りと敵に情けをかけられた悔しさを交えた、何とも言えぬ感情を感じているからだろう。そんな零の顔を見て、俺は再びクククッと笑うと、「用済みだ、じゃあな」と、自らその場を立ち退いた。


…俺の求めているものは、“特別な”Aチップ。見つけるのは困難を極めるが、そんなのどうだっていい。何故なら、その“特別な”Aチップは、自分に使用されているものだからだ。俺はそのおかげで、“普通の”Aチップと、“特別な”Aチップを見分ける事ができる。俺は“特別な”Aチップを集めて、俺は使命を果たす。それまでは、俺は派手な動きをしない。

その時まで、力は温存しておきたいからだ。


「…そうだ」
俺はふと足を止め、振り返った。すると、零が何時でも襲いかかってくる、そいうような噛付く目線で俺を見ていた。しかし、そんなのどうでもいい。俺はただ、自分が名乗っていない事に気が付いただけなのだから。
「————俺は知っての通りZENO、ZN-0005だ」
俺がそう言うと、表情を崩さす零は訝しげに俺を見る。

「名前は“シード”。次、バッタリ出くわさねぇ事を願うこったな」

そして俺はそう言い残すと、次の目的地である東の大荒野の方向に姿を消していった。



「…」
取り残された零は、油断したとはいえ、自分があまり動けなかったとはいえ、一瞬殺されかけた事に悔しさを感じでいた。しかし、彼のおかげで自分を蝕んでいた制御装置が無くなったおかげで———自由に動けるようになった。

「…シード、次会った時は私がお前を潰す。絶対、だ」

零は自分にチップとコアを戻し、そう自分自身に誓い、彼女もその場を立ち退いた。



その2時間後、その場にMBAが駆け付けたというのは、彼も彼女も知った事ではなかった。


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