ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜
- 日時: 2010/09/11 16:23
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
- 参照: http://ameblo.jp/snowjack/
時間が取れたので小説の投稿を再開しようとした時にここを見つけました、無駄にキャリアだけはあるライトな新人です、よろしくです。
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.14 )
- 日時: 2010/09/28 00:32
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「ああ、悪夢だ……」
「私的に天国ですが……うへへへへへっ、私の自持ちのデータベースに落としたから消せと言われても消しませんよ」
「郁美黒い……個人で楽しむ分にはいいけど、絶対他人に見せたりしたら駄目だからね!?」
「個人で楽しむって……ふふふふふふふ」
綺麗に磨かれた窓から入る朝日も今日は少し鬱陶しい。小夏はこれ以上ないくらいげんなりした顔つきで廊下を歩いていた。そりゃああんな事されたら……個人の趣味(彼女的には使命らしい)のためなら出会って久しいルームメイトとの相性をどん底に突き落とす行動もいとわないその行動力が素晴らしい。
今日の希の一時間目は美術で、これが5組と6組の共同授業だ。小夏は1組で数学、郁美は10組で国語。この話をしたら希は二人から羨ましがられた。
とはいえ希はそこまで絵が上手いわけでもなく、あまり乗り気ではないのだが。でも数学や国語よりは良いのだろう、露骨に美術を嫌がるでもなく、かと言って喜びすぎるでもなく会話をつなぎ、途中まで来て三人は別れた。
ちゃんと道を確認して希は美術室へと向かう。幸いほぼ一本道だった事もあって簡単にたどり着く事が出来た。
美術室と言うと中学校までは汚い場所と言うのが相場だったが、ここはとても綺麗だ。棚には落ちにくそうな油性の画材が一般的な色は全色ずらっと透明な容器にはいって並んでいるし、特別汚れにくい画材を使っているわけではないのだろうから、毎回しっかり掃除をしているのだろう。
希は自分の出席番号と照らし合わせて席に着く。今日は少し早く来たので教科書や指定の用具を取り出して机に並べた。こうすると何だか落ち着く。やはり自分に足りないのは落ち着きか。そんな事を考えてしまう。
外を見ると朝日が植物の葉についた朝露に反射してきらきらと輝いていた。こんなにも幻想的な光景がみられるとは思っていなかった。美術の前から芸術観の補給はばっちりだ。
とっても綺麗で、そしてあたたかくて、静かで、もわもわっと……
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.15 )
- 日時: 2010/10/01 07:41
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「はうっ!」
希が起きたころには大体の人間が着席していた。とりあえず先生は来てない。危なかった……
「おはよ」
「はっ、貴方は昨日の……」
「先生来たよ」
隣の、黒い制服を着た彼の助言に従い希も前を向く。入ってきた先生は銀の髪に瞳のカッコいい先生だった。青い、蒼すぎるTシャツを着ている。何で染めればあんなに蒼くなるのかってくらい蒼い。あれ洗濯したらまずいことになりそうだ。
「あい、授業始めます。てかめんどいから礼とか無しで」
適当だな〜と思いながらも、ちゃちゃちゃちゃっと黒板に文字を書き込んでいく。早い……けど雑だ。少しでも敏腕かと思った自分を恥じる希。
「俺の名前は『萩原銀璽』(はぎわらぎんじ)。『教育委にチクるやつ後で闇討ち』。最初の授業と言う事で、何でもいいので鉛筆で絵を書いてください。ほんとに何でもいいので、今日は自由にやれ。ただちゃんと完成させて出す事。まあぶっちゃけ俺が今日つかうはずだった教材の手配を忘れてただけで、誰のせいでもない」
「先生、それは先生以外のせいではないと言うのが適切でsぐぼあっ!!」
最前列にいた男子(確か希と同じクラス)が至近距離で金だらいの餌食になった。あれ体罰じゃね?とも思ったが、彼に目立った外傷はない……
ってうわっとほぼ全員が頭上の怪しい金属の物体の意図に気がついた。何でこんな下らないギミックに拘って教材の手配を忘れるか。
「それじゃ、別に喋っても良いからちゃんと作品一つ完成させろ。以上っ」
それを境にみんなわらわらしだした。希の隣の彼はさっきの話の続きを切り出した。
「自己紹介してなかったか。俺は『秋原珪』(あきはらかい)」
「秋原君……あのっ、秋原君って変態なんですかっ!?」
「……あい?」
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.16 )
- 日時: 2010/10/09 22:53
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
結構譲歩したリアクションだろう。初対面と言う事もあるだろうけど、普通キレますそんなことを言われたら。
「あ、あのっ……ごめんなさい、昨日挨拶してた江藤小夏さんから、『この時期に灰色じゃない制服を着てるのは生徒会役員か変人か』って聞いて、この時期に生徒会に入る真面目な人が遅刻するわけ無いと思って、だったらもう一つの選択肢を……ああっ私今変態ってっ!!!!」
「……いや、別にいいんだけどもさ。なんて酷い解釈だよ。あの時は生徒会の仕事で出払ってただけで、普通に間に合ってたから」
「あっ……ごめんなさい」
「いいよそんな謝らなくても。さっきからごめんなさいと弁解しか言ってないじゃん」
彼は呆れた顔を笑顔に変える。菫の咲くような静かな微笑み。第一印象と初めての出会い方から勝手に怖い人だと決めつけていたが、今は全然そんなことは無い。
「あの、じゃあどうして私の名前を?」
「いや、生徒会の仕事で職員室に行ったとき、巫上さんの写真がついた名簿見ながら用のある先生が電話かけてねちっこく喋ってたからさ、この人遅刻したんだな〜とか思って」
「そ、そうですか……」
「他にも結構遅刻者いたらしいよ。そりゃまあこの学校広いし、道を間違ったってことも往々にしてあるだろうし」
「そ、そうですよね……」
流石に『集合場所』ではなく『集合時間』を間違ったとは言えなかった。何かどっちもバカっぽいが、訂正することそのものがものすごくバカっぽかったので。
「あの、どう呼んだらいいでしょうか?」
「ん……無難に秋原君でいいと思うけど」
「ですかね……あの、秋原君……やっぱり恥ずかしいです」
「めんど……」
「うっ、ごめんなさい……」
「あっ、ごめんごめん。ちょっと本音が……いや嘘です嘘、そんな悲しい顔をしないd」
「あっ、そうですn」
「長ぇよ桃色トークがよ!」
秋原君(仮)は銀璽先生から出席簿の角で頭をやられた。と言うか指導の動機が明らかに『嫉妬』って教育者としてどうなのだろう。
とはいえ先生に介入されてはこれ以上トークを続けることもできないので二人は前を向いて絵を描き始めた。別に書くものなど無いのだけれど。
だから彼女は十数分前に見た感動を無造作にスケッチする。だが中々うまくいかない。あの瞬間に得た感動は過去のものとなって、現代に蘇らせることはかなわなかった。
希は隣をちらと見る。そこにはそこそこ真面目にキャンパスに向かう彼の姿があった。風で舞い散る葉を広げた静かな風景。ラフなのは仕方ないがこの短時間で外形を書き起こすのは流石に早すぎる。
だがこんなに綺麗なのに……何でこんなに彼の顔は寂しそうなのだろう。そして何故かこの景色は春ではない。少なくとも。多分この景色は……
(秋、なんだよね……)
「はい、終了〜。書き上げてない奴は今日じゅうなら待つから未完成でもとりあえず持ってこい。それじゃあ解散」
あれ、最初『完成させろ』って言わなかったっけかこの人。そんなこんなで出しに行く人行かない人色々いる。
最初の授業と言う事で真面目にやろうとしている人、既に終わった人、終わっていないが適当かましている人、個々の事情は千差万別だが、希はこれ以上時間をかけても変わらないと思ったので提出した。
さて帰ろう……としたとき、珪が先生の所へ行くのが見える。スケッチブックは机の上だから絵の提出ではないようだが、いったい何なのだろう。
思えばそれも、小さなファクターとなって希の思いを掻き乱すのだった……
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.17 )
- 日時: 2010/10/11 05:44
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
数日後。今日はルームメイト三人の一限の教室が同じなので三人で仲良く……と言うわけには行かないが廊下を静かに歩いていた。
「またあんたは私を窒息させようとして……」
「ううっ、ごめんなさい……」
「何で郁美を飛び越えて私のところに来るかなぁ……」
「まあ私はお宝映像が撮れたからOKですが」
小夏と希はため息をついた。今朝の小夏の目覚めは希の豊かに成長しすぎた胸に押しつぶされると言う暴挙によってもたらされたもので、此間の反省を踏まえ間に郁美を挟んでみたのだが希の本能というものは恐ろしい。
「それにしても希さんって……うんうん」
「わひゃっ!!! なっ、そんな……こんなの、あったって何の意味もないよ。別に見せたい相手もいない……じゃないっ、今のストップ!」
「はぁ……希ってさ、持たざる者の苦労を何も分かってない」
郁美が希の背後に回り込みその豊かな胸をこねくり回す。反射的に希は頓狂な声をあげ、すぐさま郁美を振り払い、頬を真っ赤に染めた。そんな希に対して、小夏が真面目な表情をする。この話にそぐわないくらいの真面目ぶり、だが希にとっては本当の事だ。むしろ小夏の方が持って生まれた者の苦悩を分かっていないじゃないかと突っ込みたくなる。
恥ずかしくなった希は鞄で胸を隠しながら顔を赤くして歩く。そして小夏にぼそっと悪態をついた。
「あげられるならあげますよ、こんな胸」
「そんなんじゃないんだって……ほら、私とて学年首席で才色兼備なわけですけども、それを謙遜して一歩引いて、自分より力のない人間が他者を統制する様子には耐えられないわけで」
大仰に聞こえるがそれは客観的な事実だ。昨日の夜、遅くまで仕事をしていた小夏のPCを見せてもらったが、妥協のない綿密な資料がそこにあった。
「爪を隠して生きていくのって性に合わないんだよね」
「……凄いですね、私もそんな風に自信が持てる事、あったら良いのに」
「私は適当なこと言えないけど、探さないと見つからないと思うよ……」
「……はい」
言い方の問題ではない、彼女の激励は希を励ました。小夏のようにいくはずがないと分かっていても、何かを未来に期待してしまいそうな気分になった。
と、希は黒い制服を着た生徒に眼が止まる。そう言えば今週から部活動が正式解禁なのか。この学園は全員部活動制ではないため、どうしてもやる気のない人間が多くを占める文化部を示す白い制服よりも運動部の黒い制服の方が多くなるらしい。
「部活決めてるならそろそろ二人も衣替えした方がいいんじゃない?ここの制服は黒でも夏服は涼しいし白でも冬服あったかいから」
「そう、ですかね……うちの弓道部はあんまりそういう話ないですけど」
「私は写真部ですけども、あの部は明後日新入部員全員で制服を取りに行くイベントがありますので」
なんて話をしながら歩いていると、曲がり角で希は反対側から歩いてきた女生徒にぶつかってしまった。いたたとお尻をさすりながら立ち上がる希。相手は希と目を合わせようともせずその場を歩き去った。
「あっ……」
「何あいつ、別にこっちが一方的に悪いわけじゃないのに……」
「美穂ちゃん……」
ぶつかった相手は希の親友だった。だが彼女は希に気がつかなかった、わざとなのか事情があって気付かなかったのか。そして……
彼女の頬にはあざがあった。まだついて程ない生々しい色彩のあざが。
「う〜ん……」
「知ってる人……ですか?」
「友達なんだけど……」
「もう良いじゃんそんなんいちいち気にしなくても。ほら、ついた」
小夏の言うとおり、そうこうしているうちに教室に着いた。クラスの違う三人はどうしても席もばらばらになるのだが、同じ教室と言うだけで十分に心強いのだった。
その日の放課後、三人の女性徒の元へ同じ手紙が届けられた。『技術室で待ってます』とだけ、活字印刷された手紙が。
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.18 )
- 日時: 2010/10/14 07:38
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「……あれ、今日は休みなんですか?」
放課後、希が弓道部へ向かうと、部室にはアリス先輩しかいなかった。私服で画面が二つあるゲーム機に夢中だ。何か機械に息をフーフーしている、そう言う手のゲームか。この人ホントオンオフが激しいな。
「ああもうこのゲームレスポンス悪いね。てかアンタのせいだからね希」責任転嫁も甚だしい。
「すっ、すみません……じゃない、休みにしろそうでないにしろ、部室でそういうことするのはいけないと思うんですが」
「まあ……ね。今日は技術室で看板を作りなおしてるのね。希のアドレスだけ分からなかったから、後輩に一括送信したメールに『希のアドレス知ってる人には教えといてね』って書いたけど」
ああ、そう言うことか。つまりは誰もが人任せで自分に連絡が回ってこなかったと。まあ良いのだけど。
「まあ来れる人だけって言ってるからほとんど来ないだろうけど。そんなに人要らないしね。ただ来てくれた人にはもれなく美味しいデザートをふるまってあげる予定、って事で行ってきてね」
「はぁ……」
どうせ寮に戻ってもする事ないし(小夏も郁美も普通に部活に出ている)、放課後の暇つぶしに技術室へ出かけることに決めた。先輩に一礼して部室を出ようとすると、不意に先輩が希を呼び止める。
「ああ希、赤ペン貸して」
「ああ、はいはい……ん、あっ、すみません、無いです」
「ちっ……分かったよ、今すぐに必要でもないし」
ちって……とりあえず希には技術室へ行く前にやることが出来た。6限の美術の時間に筆箱を忘れてしまったらしい、それを取って技術室へ行かねば。
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