ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 偽りの中の輪舞曲
- 日時: 2011/05/22 01:16
- 名前: 遮犬 (ID: KnqGOOT/)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=L0gYBduknLI&feature=player_embedded
クリックありがとうございまするw遮犬ですw
またお前かとか言わないで、どうかw
毎回完結出さずに何ボンボン作品出してやがるという感じで申し訳ございません;
どんどん物語書いていきますぜw連続投稿とかしちゃいますぜw出来る限り、ですがw
それと、グロ描写もありますのでお気をつけて><;無理な方は読まれないほうがよろしいかと…。
なので普通にコンビニにある雑誌のように適当に手で取って読んでみてくださいという感じで作りました!
もち、他作品の方にも力を入れますので!応援宜しくお願いいたします!
〜立ち読みお客様一同〜
Nekopanchiさん
狂音さんこと夜坂さん
樹梨さん
月兎さん
紅蓮の流星さん
夜兎さん
イメージソング「ワールドエンド・ダンスホール」(参照にて)
〜目次〜
プロローグ…>>1
第1話:存在してはならない人種
♯1…>>11 ♯2…>>12 ♯3…>>13 ♯4…>>14
第2話:望む日常、怪しき依頼
♯1…>>15 ♯2…>>16 ♯3…>>20 ♯4…>>24
第3話:神の子、罪の子、禍神の子
♯1…>>25 ♯2…>>26 ♯3…>>27 ♯4…>>28
第4話:不完全な神、禍々しき神
♯1…>>29 ♯2…>>30 ♯3…>>33
- Re: 偽りの中の輪舞曲 3話完結 ( No.29 )
- 日時: 2011/01/05 02:58
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: zWHuaqmK)
巨大な腕が次々と壁を抉る。
それは壁を狙っているわけではなく、大太刀と大剣を持った冬音を狙っているのだが一向に当たらない。
当てるどころか、隙あらば冬音は攻撃を幾多と仕掛ける。
冬音の宣言通りに幾度と黒服は死亡し、そのたびに生き返っていた。
それがずっと引き続き、かれこれ何度死んだか数え切れないほどになる。
「はぁ……はぁ……」
冬音の方に疲れが見え始めた。
副作用は多大な能力を与える変わりにデメリットというものがあった。
それは、体の負担である。
肉体的疲れや精神的疲れなど、数多の体に対する負担が強くなる。
その遺伝子の副作用に不完全な神の体でどこまで耐えれるのか。
一方、黒服の方は全く疲れを見せないどころか、息切れもしない。
あれだけその見るからに豪腕な腕を振り上げては振り落とし、壁を抉りを続けているというのに。
いくらクローンでもそれだけの行動を見せて疲れが出ないはずがなかった。
「普通に戦っていては倒せないのか……?」
冬音はそう呟き、黒服を睨んだ。
一歩ずつ確実にこちらに向かってくる黒服の男。
人間の気配が確かにこの黒服には感じたはずだ。それにこの黒服の男は、"喋る"はずだ。
だが一向に口を開かない。最初の機械的な感じの口調で消滅宣言をした時以来何も口を開かないのだ。
(単に無口なだけなのか、それとも……)
思考が定まらないまま、気付けば黒服は既に豪腕を振り上げていた。
咄嗟に剣でガードしようとするが、足が耐えられなかった。
——足の限界が早くもきそうなのである。
「ッ!!」
そのまま豪腕によって突き飛ばされ、壁に激突する。
背中から全身へと痛みが走る。黒服は無表情で一歩ずつまた近づいてくる。
「足が……!」
足の震えが先ほどよりひどくなる一方でもあった。この状態ではあの豪腕の餌食になるのも時間の問題だろう。
この足の震えを失くすには遺伝子の突然変異をやめさせる。つまりは能力の低下を意味する。
能力が低下した状態でも多少戦闘力はあるが、到底今さっきまでのような動きは出来ない。
全く、不完全な神というのはその名の通りだと思った。
「……?」
黒服が一刻と近づいてくる中、気付いたことがあった。
まず一つ。夏喜がここらへんで倒れていたというのに既にいないということ。
何をどうしているのか少々広いが、薄暗いこの通路ではあまり分からない。
そして次に二つ目の疑問。それが一番気になることだった。
——どうして黒服は服まで元通りになる?
一見、何にもないようには見えるが服まで元通りになるのはおかしなことであった。
遺伝子の突然変異により、能力が開花されて瞬間再生をするというのに遺伝子に関係のない服までが元通りになっている。
一度、夏喜が黒服を木っ端微塵にしたはずだが、それでも直っているのである。
「もしかして……瞬間再生能力では、ない?」
すぐに元通りに回復するところを見て瞬間再生能力に捉われていたがそれが違うとなると……。
黒服は既に冬音の目の前まで来ており、再び腕を振り落としてとどめをささんとしていた。
「——ふっ、随分と幼稚な能力だな」
冬音がそう呟いた瞬間、通路に光が灯っていく。
それは夏喜がバッテリーなどを組み替え、薄暗い通路を明るくしたのである。
明るくした途端、黒服がもがきだす。
ぐるぐると肉体が混ざり、そして人の形をなくした瞬間、弾けて消えた。
「実体分身能力。実体とは違う分身を作りだす能力。その実体は自分の細胞の一部を与え、それによって再生可能になる。ただし、その細胞が光源体となるために反射すべきものは、自分。つまりは映像を見せるように自らを映像化して見せる。細胞の効果により、触った感覚もありその細胞次第で強さがまた違う……」
ベラベラと普段は気弱で大人しめの冬音が人が変わったように話し出す。
その様子を夏喜は見て、苦笑しながら一つため息を吐き、続きを言う。
「細胞自らが光源体となるわけだから体自体も細胞そのもの。それより強い光を当ててしまえば消滅するってわけだね」
夏喜がそこまで言い終えると、消滅していった黒服実体分身の細胞が残る。
細胞核たるものは他の生物を使い、行うのだがこの黒服実体分身はどうやらトカゲでやらせていたようである。
トカゲは"本物の黒服"の細胞に食い尽くされてほとんど形を失っていた。
それを見下すように見つめる冬音の目がふっと灯火が消えたかのようにして目の色が通常に戻る。
夏喜はとっくに元の状態に戻っていたのはわけがあった。
「あ——」
冬音はフラリと地面に膝を落とした。副作用がまだ通常にまで影響を出し、力を抜けさせたのであった。
眩しい光の中で冬音の細い体を夏喜は抱きかかえるようにして掴む。
「大丈夫? 冬音お姉ちゃん」
「う、うん……ちょっと力を使いすぎちゃった……かな?」
微笑を浮かべて冬音は言った。
これが"人間である時の冬音"である。能力を発動しているときとは全くの別人であった。
微笑を浮かべる冬音に自らの頭を抱えて夏喜は呟く。
「冬音お姉ちゃんはまだいいよ。私は能力を使いすぎたら……"他の人格に支配されるんだから"」
しかし、その夏喜の言葉を冬音は疲れのためか目を閉じて眠っていた。
その姿を見て、夏喜は安堵するのもまた確かだった。
カタカタと慌ただしい連続のキーボード音が鳴り響き、ようやくその音が終焉を向かえる。
モニター一面に赤い文字で【パスワード解除完了】と、大きく出た。
「よし……!」
そのままキーボードを扱い、操作していくとこの研究所の全てが分かった。
この研究所はやはり死刑などを宣告された者や、病院でもう治らないとされた患者などで実験が行われていたようだった。
その実験室はこのまた奥の上階にあるようだった。
流都はそのころを記憶すると他に重要なことはないか調べをあげていった。
すると、一つ気になる項目が取れた。
「……禍神ノ実験?」
聞いたことのない実験名に興味をそそられた。
それも随分とセキリティが厳重だったのでますます気になる。
難なく厳重なセキリティを解き、その事件の内容を調べて見た。
"世紀に初の両眼開眼が誕生した。異なった協力な何重にも重ねた遺伝子を集めに集め、それを凝縮したものにより生み出された災厄の人種。名づけて『禍神』。全世界に轟かせることが出来るほどの最強のクローンとなり得るものである。神を作る実験に成功した例はないが、この禍神はもしかすると神をも超える災厄かもしれない。異常な能力に知能をつけた最凶といえる災厄に違いない"
長々と記された機械的な文字を読み上げ、感づいたことがある。
「ここにその禍神がいる……?」
そう呟いた直後だった。
モニターが新たに切り替わり、真っ白で四角いものが現れる。
そこに次々と文字が書かれていく。
「……禍々しき神は、神を恨み、拒み、呪う。この奥に隠された真実に辿りつくまでに、禍々しき神に捕まれば——?」
文面はそうつづられていた。
この文章から分かることは禍神がここにいるということ。
そして、これはまさに鬼ごっこということなのだろうか。
「禍神に捕まれば……死ぬってか?」
不敵に流都は笑った。
目がだんだんと色を変わっていき、赤色に変わる。
「どこにいるか知らないが、禍神とやら。不完全な神は神になり得ない。俺たちは——人間だ」
銃を取り出すと、モニターに向けて放つ。
液晶が割れ、辺りに激しく飛び散る。
「神なんて、存在しない。俺たちにとっての真実がここに隠されているというのなら……見つけてみせる。
——この悲しき世界の終わりを見るために」
流都の目は赤く、赤く、血ではない真っ赤に燃えあがった炎のように決意の込めた目をしていた。
- Re: 偽りの中の輪舞曲 参照300突破ッ! どこで終ろうかな… ( No.30 )
- 日時: 2011/01/22 14:11
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: .pwG6i3H)
ノアは一人、不敵に笑っていた。
今までの相手とは違う手ごたえのようなものを感じていた。
自らの瞳を前にすると、たちまち相手は怖がり、恐れ、逃げ出す。
その様を冷静沈着に見つめ、一瞬の内に殺す。その爽快感。
だが、今回の相手は爽快感とは別のものを得れそうだった。それはノアにとってかなり期待出来るものとしてみていた。
「さてと……」
ノアはゆっくりと腰をかけていた椅子——いや、死体と化したクローンから降りる。
椅子代わりとなっていたクローンは見るも無惨な形へと変形しており、血という血は全て流れ落ちて体は青白い色をしていた。
「お前らには同じ神の名がつくものとして知ってもらわないといけないことがあるんだよ……」
目の前の大きなモニターを見ながら呟くようにしてノアは言う。
外壁などは研究室のようなところで壁の色は白かったはずだが、今ではクローンの血だろうか、真っ赤に染まっている部分がある。
その赤と白のコントラストの中でノアはただ笑っていた。
この状況を、鬼ごっこを楽しもうと心から、憎悪を込めて。
数分後、流都は冬音と夏喜らに合流する。
傷を負っている夏喜を見て流都は驚く。
「大丈夫か!?」
「あーうん。ちょいとドジっちゃったんだ」
ためらうような感じで頭を掻きながら夏喜は言う。
ドジるといっても夏喜が本気を出せば無傷でも勝てると思う。そのためには代償たるものが必要なわけなのだが。
だが、使わなくてよかったとも思える。夏喜の"あれ"を止めるのはかなり厄介なことだからである。
「流都は何もなかったの?」
冬音はもう大丈夫なようで、普通の様子で流都のことを心配する言葉を口に出した。
「うん。大丈夫だったよ。でも——」
流都は、それから単独行動をして分かったことを二人に話す。
ここで自分達が求めている世界の本当の姿が少なくともあること。
ここは元々実験所兼研究室だということ。そしてここは自分達の故郷ともいえる場所の一つだということ。
最後に、禍神と呼ばれる最凶のクローンがここにいること。さらにそいつは自分達と鬼ごっこをするつもりだということ。
色々と要約した部分はあったが、二人に分かりやすいように流都は説明をした。
黙って聞いている二人の顔は少し神妙な様子であった。
「——私達の目的より先に捕まったら負けっていうのは、挑戦状と見ていいわけ?」
いや、違った。
この二人はノアの言葉を買ったのだ。つまり、ケンカを買ったのと同じようなこと。
「鬼ごっこっていっても、鬼は指定されてないよね?」
ニヤリと夏喜は表情を笑みへと変える。
どうやら逆に狩る、そんなことを考えていることが容易に考えられた。
流都はその案にあまり乗気ではない。
何せ相手の実力というものをこの目で見ていない。つまり、相手がどんな能力、行動を取り、武器すらも分かっていないのだ。
それはさすがに無謀なことだと思えたのである。
「とりあえず、相手の出方を見よう。俺達はひたすら前へと突き進めばいいだけだ。——この先に何が待ち構えていようとも」
流都の言葉に二人は頷く。そして三人は奥へと繋がる闇の中へと走っていく。
奥へと進むたびに何らかの重圧が重くのしかかっていっているような気がする。
この感覚は、三人にとっては初めてのことでもあった。
「ッ!?」
冬音がいきなりその場で立ち止まる。
何かの気配を感じたのか、周りを見渡している。
そこは薄暗い闇の中で、周りの風景などがよく見えない。なので、戦闘には不向きな場所なのだが——
「走ってッ!」
冬音の厳しい一言と共に流都と夏喜は走り出した。
原因、それは耳で分かった。
左右から壁を削っているような音が聞こえる。何かが三人に近づいているということは確かであった。
左右からだんだん近づいてくる音を懸命に払いながら走り抜ける。
そして、ようやく先の方で少し光が漏れているのを見つける。
三人は飛び込むようにしてそこに入る。それから戦闘態勢にすぐさまとって構える。
それから少しの間、無音になり——いきなりそれは現れた。
「ギャアアアアッ!!」
人の甲高い悲鳴のようなものが三人に襲う。
それは、人ではなかった。
顔は人だと何とか判断できるが、姿形はカマキリのような化け物。先ほどの壁を削っていた音はこいつのせいであることを確定する。
悲鳴をあげて鋭利な腕を三人に振り落とす。が、三人はすぐさま横へと飛び去り、それを避けた。
鋭利な腕が直撃した床は抉り取られたかのようになっていた。
この化け物はクローンからして生るものであった。
クローンが、自身の遺伝子膨張に堪えられずに、体の内部が破壊、変形されて生る恐ろしい化け物である。
それを総称して——グノアと呼ばれている。
「やるしか、ないかな……」
流都の言葉につられたかのようにして冬音が目を黄色に染める。
すぐさま太刀を抜き、鋭い腕と交わる。鋭利なもの同士がぶつかる音が響く。
大剣をそこからまた引き抜くと、カマキリグノアの腹部に当てようとするが——もう一つの腕で弾かれる。
「ギャアアッ!!」
甲高い悲鳴と共に、カマキリグノアはもう一度振りかぶって鋭い腕を下ろそうとする。
その刹那、冬音は瞬時に太刀を横で払い、切り傷を負わせる。緑色の血が飛び散っていく。
「グギャアアッ!!」
カマキリグノアはその悲鳴と共に後ろへと飛び去る。
かなり装甲が堅いようで、切り傷といってもあまり致命的なものでもないかすり傷程度のものに過ぎなかった。
流都はよく部屋の中を観察していく。その中で一つ、焼却炉のようなものを見つけた。
部屋の中は広く、焼却するために大きい生物が優に入れるぐらいの大きさを誇る焼却炉を備えていた。
この焼却炉は恐らく失敗クローンなどを燃やすことに使っていたのだと推測できる。
「夏喜っ! 冬音姉さんと協力してあの焼却炉の中までそいつを押し込んでくれっ!」
「分かったっ!」
夏喜は黒い手袋をはめ、眼を青色に変化させる。
その間も冬音はカマキリグノアと対戦を繰り広げていた。
「ッ!!」
カマキリグノアが意外にもその巨体でサマーソルトを冬音に仕掛ける。持ち前の戦闘能力で瞬時にそれを避ける——が
「ギャアアアアッ!!」
第二撃目が頭上から襲ってきていた。両方の鋭い腕が冬音を襲う。
サマーソルトで仰け反った冬音はさすがにそれを受けることは出来ない。
バンバンバンッ! その刹那、銃声が三度ほど鳴り響く。
どれも的確に鋭い腕の根元を打ち抜いていた。あまりの痛さのためかカマキリグノアはそのまま下へと倒れこんでくる。
この速さならば冬音は容易に避け、カマキリグノアを十字架のように十字に切り払った。
そこにすかさず夏喜が近づき、右手を振りかざした。
「——お前の中身、もぎ取ってやるよ」
その瞬間、カマキリグノアの分厚い脇腹が抉り取られる。
「ギャアアアアッ!!」
その衝撃と共に巨体が宙へと浮く。
そして、冬音がそこで渾身の力を込めて横へと押し切るようにして——切り払う。
「はぁぁぁぁっ!」
そのまま流れるかのようにして焼却炉の中へと上手く入り、流都がすかさず焼却ボタンを押す。
ドアは瞬時に閉まり、赤い赤外線のようなものが縦横無尽に焼却炉の中を駆け巡る。
「ギャッ! ギャッ! ギャアアッ……!」
断末魔が、虚しく響いた。
- Re: 偽りの中の輪舞曲 はい、しばらくお休みしますw ( No.31 )
- 日時: 2011/03/17 13:59
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Q2XZsHfr)
はいw戻りましたw遮犬ですw
葛藤の日々を乗り越えて、再び更新再開したいと思いますっ!
駄作を生み出すのが得意な駄犬ですが、宜しくお願いいたしますっw
- Re: 偽りの中の輪舞曲 ( No.32 )
- 日時: 2011/03/17 22:14
- 名前: 翡翠 (ID: qHa4Gub8)
こちらでも初めまして。
全部通して読ませていただきました。
神…という言葉にも惹かれました。
冬音さんに流都君に夏喜ちゃん三人とも個性的でそれぞれ強かったりして大好きです。
クローンや禍神などいろんな言葉がでてきてますがそのどれもが話に関連しててとても続きがきになります。
これからも、応援させていただきますので頑張ってください。
翡翠
- Re: 偽りの中の輪舞曲 ( No.33 )
- 日時: 2011/05/22 01:15
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: KnqGOOT/)
- 参照: 何か更新したくなったのでしますw
既に灰となり、焼却炉の中は肉体が燃やされた独特に臭みを持つ匂いが充満している。
中へ入っていたカマキリグノアの肉片は勿論、一つも残ってなどいなかった。
「ひどい匂いだな……早く進もう」
流都の発言に冬音と夏喜はほぼ同時に頷く。
三人はそのまま、研究室を抜けて次のドアを蹴破った。ドアノブが外れていたため、蹴破ることにしたのだ。
その奥はまた闇。しかし、所々ついている電球のおかげで何とか目の前の道がパラパラと見える。
「どうやら、階段があるようだな。上に行く階段と、下に行く階段」
流都は試しに、銃を取り出して前方へと撃ってみた。すると何かに当たった音がして、やがて電撃が走る音がその後に続いた。
「これは……奥に何か仕掛けがあるな」
「わ、私が行こっか?」
冬音が何故かオドオドしながら流都に提案した。すると夏喜も「私が行く!」と言い出し始める。
「いや、待って二人共。確かここは……モニターで見た気がする」
流都は瞬時に自身の能力を発動させる。次第に目が赤くなり、脳内に映像が浮かんでいく。
そう、確かここは——
「姉さん。頼みがあるんだ」
「え、え? 何?」
以前としてオドオドしている冬音に流都は唯一の光原体である電球へと指を差した。
「あれ。あれを破壊して欲しいんだ」
「え? でもそんなことすれば、目の前の道が分からなくなって逆に危険なんじゃ……」
「いや、破壊しないほうが危険だ。確かあの電球が——トラップの発動装置なんだ。人間探査機が中に仕込まれていて、電球の下を通ると、その奥にあるトラップが発動する仕組みになってる」
それが先ほど銃弾を飛ばした理由。確かめは十分だった。
思った通り、銃弾が階段付近に到達した後に電撃音が鳴った。つまり階段の方で電撃が作動するようになっているのだろう。
唯一の光原体であるこの電球を破壊するのは無謀。普通ならそうだ。だがその裏がある。破壊しなければならない、こしゃくな理由が。
「お願い出来る?」
流都の言葉に、冬音は頷いた。そして大太刀を取り出す。大きく振り上げ、旋回させて一気に飛び立つ。
鎌を振るように、三日月を描き刀を振り落とした。
ザスッ! という綺麗に斬れる音がしたかと思うと、電球がバリバリと音を立てて落ちる。地面とぶつかり合う金属音がその後に続いて聞こえた。
しかし、その代わりに視界は闇に遮られる。前が何も見えなくなった。
「こんなこともあろうかと、ランプを用意してきてる」
流都が自前のポシェットの中からランプを取り出して、マッチで中に火を灯そうとする。暗いため、何回か失敗したが、何とか成功させる。
周りに視界がボンヤリと復活していく中、流都は顔を上へとあげた。
「——やっと会えたな」
「ッ——!」
そこは、建物の中ではなかった。ランプの小さな光が、周りだけを包んでいる。
暗闇の中にポツンと一人。いや——二人。目の前にいる、目の色がどちらも違っている。これが、禍神。こいつが、禍神。
「さぁ、これからだよ? ゲームの始まりは」
静寂の闇の中、聞こえる禍神の声。
それが、あまりにおぞましく聞こえた。
「ん……」
冬音が目覚めた場所は、とある研究室だった。
そこは先ほどの焼却炉があった場所ではなく、全体が白で統一されており、特に装置が多いというわけではない。
だが、冬音はその場所を知っていた。そこがどういう場所なのかさえも。
「ふははは!! 神の子だ!!」
そして聞こえる、もう二度と聞きたくない声。
"私達を作った"、研究員。私達を、作ってしまった。
——殺したい。そんな気持ちがふつふつと込み上げてくる。
研究員は冬音に気付くこともせず、優々と目の前を通り過ぎて行った。
「待てっ!!」
いつの間にか、冬音の目は黄色に染まり、狂ったように笑いながら去っていく研究員を追いかけて行った。
夏喜が目覚めたのは、どこかの建物の屋上だった。
「ここは……?」
不思議と違和感がない場所だった。来たことがあるのだろうかと、自分の記憶の中で探してみるが、一向に見つかる気配がなかった。
「うわぁああ!」
誰かの叫ぶ声が聞こえた。その方へと夏喜は足を進める。
「や、やめてくれ……!」
怯えながら目の前に立っている——そう、それは夏喜自身の姿だった。
夏喜が目を青色に染めて、ニヤリと笑っている。
夏喜はゆっくりと怯える男の手に触れる。すると、ゴキッ! という惨い骨が折れる音がした後に肉が裂ける音もほんのすぐ後に続いた。
「ぎゃああああっ!!」
男の叫び声が聞こえる。だが、夏喜は一向に止めようとしない。表情も笑ったまま。
これは、夏喜であって夏喜ではない人格。別の人格だった。
「……痛い?」
「ぎゃああっ! ぐぅうっ! うぅっ!」
痛みでもがくのに必死で、男はポツリと呟いた別人格の夏喜の言葉に答えることが出来なかった。
「ふふ。ふふふふ。ふふふふふ!!」
笑い声が胸の中に気持ち悪いほど響いてくる。途端に、その状況を見守っている夏喜の胸が痛くなってきたのだ。
夏喜は、そんな残虐行為を犯している夏喜を止めようと足を一歩進める。しかし、胸の痛みが取れない。
(——お前も、混ざりたいんだろ?)
「ッ!? 誰だッ!?」
夏喜の脳内の中に響いてくる誰かの声。しかしその声は夏喜の声帯と同じ声。だが、どこか喋り方などが微妙に違った。
(——殺したいんだろ? お前は)
「だ、黙れっ!!」
(——楽になれよ。お前は、人殺しの道具に過ぎない)
「黙れ黙れ黙れェェッ!!」
夏喜は頭を抱えて苦しむ。何かが沸騰するように吹き上がるこの感情。一体自分は——どうしたというのだろうか。
(——お前はいつだって、狂気を求めてる)
そんな心の中の言葉に揺らされながら、夏喜の視界は閉ざされていった。
神は孤独。
それは心の中で、何かを求めている。
誰にでもある、心の狂気。
——輪舞曲は止まらない。
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