ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜参照200突破! 
日時: 2011/05/23 16:25
名前: 佑架 (ID: a6Ny8FKk)

初めまして、佑架と申します。

※注意書※
・この話は多少グロテスク・暴力的な表現があります
・大半は日常生活のギャグ系です。
・この話も続くかどうかは分かりません
 ネタが尽きて、書かなくなることもあります

上記のことを理解した上でお読みください。


アドバイス・感想などしてくだされば、踊って喜びまs(殴
下手なりに続くよう、精一杯頑張ります。

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Re: 斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜 ※グロ注意※ ( No.6 )
日時: 2011/01/22 11:07
名前: 佑架 (ID: v1PUoFnc)

「おらおらおらおるぁ!!」
「…くっ…!」

キンッ! カァンッ! ギィンッ!

武器のぶつかり合う音が森に響く。
自分の身の丈以上の大斧を器用に素早く振り回すギロチーヌ。
その速さについて来れず、短剣と鎖で身を守るしか出来ないコーシュジフ。

夜明けまで、あと一時間半。
戦いは、第二ラウンドへ——


    ≪第五話 処刑三人衆流<早朝訓練>開始! 終戦編≫


キィンッ! ガィンッ! ギンッ!

二人の攻防戦が続く。
…が、今この時、余裕の笑みを隠していた者が居た。
今まで防いでばかりだったコーシュジフだ。
彼は己のワイヤーをヒッソリと、気付かれぬ様に周囲の木々に巻き付けていた。
そして今も、短剣や鎖が斧に当たる際にワイヤーが巻かれている。

「どうしたっ!!所詮お前はその程度なのか!?言ってみろ!!」

ギロチーヌが怒鳴る。当たり前だ。
彼女は自分よりも強い者にしか興味を微塵も示さない。
そんな彼女が彼と共にいる“理由”なんて——

——自分よりも遥かに強いから——

それだけ。それ以外無かった。

「もっとアタシを楽しませてみろよぉっ!!」
「!」

ギロチーヌが大斧を高々と振り上げ、勢いに任せて振り下ろす。
その時だった。

殺技—暗—【磔童】

ピイィィィィィィ…ィィイン

「!!」

力なく垂れ下がっていたワイヤーが勢い良く張る。
ギロチーヌの大斧、傷だらけの手足、縫い目だらけの胴体に巻かれたワイヤーが彼女を縛る。
殺傷能力に長けるように作られたコレは触れるだけでも鉄を切り裂く危険物。

「んだよっ…!コレ…!…痛っ!」

抜け出そうともがくギロチーヌ。
無理にもがけばそのワイヤーに切り刻まれる位、頭の弱い彼女でも直に分かる。
服が切れ、肌に当たると血がワイヤーに沿って流れる。
体力の限界か、彼女は足掻くのをやめた。
彼女の手から大斧がずり落ち、大斧はワイヤーをブチブチ切りながら地面へ突き刺さる。

「お前の負けだ、ギロチーヌ。諦めろ。」

武器を持たない傷だらけの彼女に近づくと、静かな声で言い放った。
彼の、生きる者としては冷たく、紅い目が彼女を見下ろす。
彼女の、死に逝く者としては生きた、青い目が彼を見上げる。

「…やな…こった。」

乾いた笑みを浮かべ、血の味のする唾を彼の足元に吐く。
彼女は彼の警告を無視し、最後まで抵抗した。

「ならば、」

ガチャリ

—「死ね。」—

ズダアァァァン!!

銃声が響く森の中心。
そこには血の衣を纏った青年がいた。


    ≪第五話 処刑三人衆流<早朝訓練>開始! 終戦編≫ 完

Re: 斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜 ※グロ注意※ ( No.7 )
日時: 2011/02/19 08:11
名前: 佑架 (ID: vICfGmIs)

「……。」

俺は見つめる。
今まで自分と戦っていたこの女を。

俺は思う。
わざと急所を外し、肩を撃った事にお前は怒るだろうか。
今まで付けてきた傷から、撃ち抜いた肩から紅く黒ずんだ汗が流れる。

そう言っても、俺の身体や顔にも傷がある。
お前に付けられた傷。狙う所は殆どが急所だから大抵の攻撃は防げる。
その傷からも同様に、紅く黒ずんだ汗が流れた。

俺はこの色が嫌いだった。
人間が起こす『惨劇の色』が。
大嫌いだった。

お前はこの色が好きだったな。
『人間の命の色』と言っていたこの色が。


——『だって、お前の眼の色と同じだから。アタシは好きだな。』——

それ以来、俺は嫌いだったこの色が、お前が好きだと言ってくれた
この眼の色が少しだけ好きになれた。


    ≪第六話 処刑三人衆流<早朝訓練>開始! 後編≫


俺は彼女を…世間一般に言う【お姫様抱っこ】とやらで森の入り口まで運ぶ。
大斧は背中に鎖で縛り付けて運ぶ。重い。(斧が)
この運び方が一番だと考えたからだ。
入り口に着いた頃に丁度日の光が見えた。
近くの切り株でライさんが待っていてくれていた。寝起きなのか、欠伸をしている。

「派手にやったな。今日も。」
「…まぁ。」
「ところで朝飯だが…って、オイ、ソイツ、お前、まさか…。」
「…急所は、外しました…。」

ライさんが煙草を吸おうとすると、少し驚いたように、俺の腕の中で
静かにしている彼女を指差す。
急所を外したことを言っても、ライさんは落ち着きがない。

「コーシュ…今すぐ家に帰んぞ。」
「…はい。」

心配なんだと、そう感じた。
やっぱりどんなに悪態をついても、つかれても、育ての親だから。
血の繋がりは無くても、親として心配なんだ。

「おい、コーシュ。テメェ今変な事思っただろ。親がどうとか。」
「……。」

あえて無視。

そうこうやってる内に家の前に着いた。
俺たちの事務所兼家は、あの森から走って数十分程はかかる場所にある。
客を入れる客間や、武器を仕舞う倉庫まで、色々と部屋が多い。

そんな数多い部屋の一つに、医務室の様な所がある。
そこへ彼女を連れて行く。

此処は、俺と彼女が幼い頃から通い続けている場所でもある。
昔から大怪我をしては此処へ毎日のように来ていた。

血だらけの大斧は壁に立てかけ、彼女はベッドへ寝かせると、ライさんは
棚から薬や包帯を出しながら、俺を呼ぶ。

「オメェにゃ悪ぃが、この‘仕事’手伝って貰うぞ。」
「…分かってます。」

ライさんは「よしよし」と言いながら俺の頭をグシャグシャに掻き乱す。
そして、今日もまた一つ増える事となる。


——彼女の“ツギハギ”という名の戦いの証——


俺たちは、彼女が特に大怪我した所を、彼女と酷似した肌色の
‘皮’や‘肉’を縫い付ける。
と言っても、実際に縫うのは俺の役目。
ライさんの仕事は“材料を調達”する。それだけ。

勿論、腐らない様に加工をした“者”を使う。

まだ幼い頃は少し抵抗感があった。が、今はそれと言って気にしなくなった。
彼女は忘れっぽいから「前からあった」と言えば納得する。


——ツギハギ手術から数分後

「ふぃー。終わった終わった。」
「……。」

手術が終わり、張詰めていた空気が緩んだ。
時計の短針は七を指している。

「んじゃ、オレは部屋に戻って寝るから。後、頼んだぞ。」
「……。」

ライさんの頼みに無言で答える。
俺の最後の仕事は『彼女が起きるまで一緒に居る』という事。

それまで俺は少し冷たい彼女の手を握って待つ。
起きるまで一緒に居ないと、彼女はいい歳をして泣き叫ぶ。
まるで赤ん坊だ。


彼女がやっと起きたのは数十分経った頃。
そして決まって俺に言う。

「…お前、最後手ぇ抜いただろ。」
「…さぁな。」

俺が少し鼻で笑うように言うと彼女は青筋を浮かべる。
そして大喧嘩へと発展。
これが俺たちの“ほぼ”日常的な事である。


    ≪第六話 処刑三人衆流<早朝訓練>開始! 後編≫ 完


Re: 斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜 ( No.8 )
日時: 2011/02/19 08:15
名前: 佑架 (ID: vICfGmIs)

「う゛〜。頭痛ぇ。」
「…自業自得だ、馬鹿…。」

リビングに続く廊下を摺足気味で歩くギロチーヌ。
それを、彼女がいつ倒れても良いように後ろを歩くコーシュジフ。
<早朝訓練>と称した<殺し合い>の後、二人は
ライオネルにどうしても謝らなければならない事がある。


    ≪第六.五話 <早朝訓練>その後≫


「お、いたいた。」

「ライ(ジジィ)〜」と呼ぶと、心の声が聞こえたらしくリモコンが彼女の頭にクリーンヒット。

言葉にならない悲鳴を上げ、痛がる彼女を余所に、お目当ての人物がリビングのソファーに
煙草を銜え、横になってテレビを見ていた。
爺臭い光景であr(殴

「ところで、何しに来たテメェ等。」

ソファーで横になっている彼の前で二人は正座をする。
彼が煙草の煙を吐く。その煙にコーシュジフが少し咳込む。

「え〜っと、その、あ〜っと。」
「……。」
「?」

言葉を濁すギロチーヌ。かと思えば黙ってばかりのコーシュジフ。
数分経つと、言葉が見つかった様に土下座をする二人。

「「朝飯調達するのを忘れてスマソ。/すみませんでした。」」
「……。」

二人は戦いに夢中で朝食のことなど忘れていた。
それを謝らないと後が怖いからである。
食べ物の恨みは恐ろしい(…それは違うと思う。by鎖銃の者)

「まぁ、朝飯無くても俺は良いんだわ。別に。」


————  間  ————


「…ハァ!!?」

いつもは、朝飯捕って来ないと自分の食い扶持が無いから電気ショックの刑で怒るのがライオネル。
そんな彼が朝食を要らないと言う。

決死の覚悟で謝ったギロチーヌは怒りを露にしているが、怒っているのは彼女の相棒も同じ。
包帯だらけで見えないが、青筋が浮いている。

「なんたって朝食り○ごヨー○ル○食ったからな。」
「オイジジィ!!よくもアタシらの思い踏み躙ってくれたなぁオイ!!しかも
 ○食りん○ヨーグ○トってアタシのじゃねぇか!!」
「あ、あれお前のだったのか。冷蔵庫の下段に入ってた奴なら全部食ったぞ。」
「テメェ…死ねク○ジジィ!!!」
「あ゛ぁ!?ンだとゴルァ!!」

「……。」

二人のやり取りを遠巻きで傍観しているコーシュジフ。
そんな彼は思う。

「(どうすれば朝食○んごヨ○グル○であんな大喧嘩ができるんだ…?)」

そう思いつつも、彼は○食大つ○ブ○ーベリー○ーグル○を食べていた。


    ≪第六.五話 <早朝訓練>その後≫ 完


作者の反省
伏字が多くて、かえってすんごい読み辛いですね。分かりまs(蹴
いつも書き終わると思います。『一話一話が短くね?』と。
分かっていても改善が難しいので、今後もこんな感じで宜しくお願いしまs(殴

Re: 斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜 ( No.9 )
日時: 2011/01/26 15:53
名前: 佑架 (ID: zjmgeTG7)

「……。」

どうも皆様。【鎖銃の者】改めコーシュジフと申します。
あの○食り○ご○ーグル○大量殺戮事件(※六.五話参照 ギロチーヌ命名)から数日後…
あの二人は未だ仲直りをしていない。

(それと、作者が『話が浮かばない』と嘆いていた。というのは秘密)

なので、今日は俺達の十数年ほど昔の話でもしたいかと思います。


    ≪第七話 昔話〜鎖銃ト斧ノ出会イ〜≫


俺は、もともとアイツとは別の場所で暮らしていた。
けれど6歳の頃だったか、親の転勤で、アイツの隣の家に偶然越した。
アイツとの出会いは、近所に挨拶へ回るときに出会った。

「こんにちは。今日から隣に越してきた●●です。宜しくお願いします。」
「あら、そうなの。私は●●●です。これから宜しく、●●さん。」

目の前の女性が微笑む。髪の色は少し違うが、アイツの母親だ。
アイツの母親は、髪が短く、笑顔が素敵な優しい人だった。

「その子は、●●さんのお子さん?」
「えぇ。こ、こら!■■■!挨拶しなさい。」

母さんは、自分の後ろにいた俺を前へ押した。

「…はじめまして。■■■です。…よろしくおねがいします。」
「しっかりした子ねぇ。うちの子とは大違いだわ。」
「可愛げないってよく言われるんです。」

…ほっとけ。

「うちの子も紹介させるから、ちょっと待ってて。」

そう言うと、アイツの母親はアイツを呼んだ。
アイツとの出会いは衝撃的なものだった。


ズドッス!!!


「かあちゃん、よんだ?」

アイツは降ってきたんだ。空から。
正確に言うと、ベランダから落ちてきたと言った方が良い。
落ちてきたアイツは、いきなり俺の懐に入ってきた。

「はじめてみるかお、はじめてかぐにおいだな、オマエ。だれだ?」
「…■■■。」

アイツの蒼い眼が俺を見上げる。俺の紅い眼がアイツを見下ろす。
「ふーん」と短く言うと、アイツは自分の母親に抱き上げられ、叱られた。

「全く、この子ったら…。御免なさい。いきなりで吃驚したでしょう?」
「…べつに。」
「ありがとう。じゃあ、自己紹介しよっか▲▲。」

アイツは「う」と短い返事をすると、自分の事を話し始めた。

「アタシ、▲▲。すきなものはハンバーグで、だいすきなのは、はしったり、はねたりすること!」
「良く出来たね。▲▲。」
「うんっ!」

アイツが紹介し終わると、アイツの母親がアイツの頭を撫でる。
その後、母親の談笑が長引き、もう夕方になっていた。

「あら、もうこんな時間。挨拶回りまだあるのに…。」
「そうなの?…じゃあ、■■■君私の家で預かろうか?」
「えっ、でも、良いのかしら…。」
「私は構わないわ。」
「じゃあ…お願いしちゃおうかしら。」

その事を聞いた時、俺は内心少し嬉しかったりした。
母さんは七時には迎えに来てくれるそうだ。

「それじゃ、■■■。良い子にしてるのよ。」

———————————————————
——————————————
—————————
————

母さんが迎えに来てくれるまでの記憶が少し曖昧で、思い出せない。

…いや、オもイダしタクなイノか…?
なぜ…?

よく分からない。考えると頭が痛くなる。

…気分が悪いので、次は‘あの人’との出会いでもお話ししましょう。
それでは、また。

…サヨウナラ。


    ≪第七話 昔話〜鎖銃ト斧ノ出会イ〜≫ 完


<反省>
はい、作者です。
続き物の後からまた続き物で申し訳ないです。
さて、幼いコーシュジフ君の身に何があったんでしょう?
まぁ、そんなこんなでお願いしm(殴

Re: 斧と鎖と銃と雷〜処刑三人衆〜 ※グロ注意※ ( No.10 )
日時: 2011/01/27 18:55
名前: 佑架 (ID: XlQIdkGw)

「んだよ!ライのク○ジジィ!!」
「あんだと!もう一回言ってみろ!こんの○ソガキャ!!」
「何ぃ〜!!」
「文句あんのか!!」
「……。」

どうも皆様。コーシュジフです。
冒頭からひどい罵声の嵐ですね。そうですかそうですか。(棒読み)
…と言っても、今日は前回の殺戮事件ではなく…。
我が家にたった一台しかない(地デジ対応済み)テレビの取り合い。
どちらかが録画をすれば済む話…だが、

『『アタシ/オレは、見れるヤツはリアルタイムで見てぇんだよ!!』』

とのこと。
更に、殺戮事件での事もあるので、物が飛んで来ないだけ幸せだ。

…さて、前回の話の続きと行きましょうか。


    ≪第八話 昔話〜血ミドロノ雷トノ出会イ〜≫


アイツの隣に越してきて、半年ほど経った。
俺とアイツはよく遊ぶ仲になっていた。

そんな日々が、続くと思っていた。否、続いて欲しかった。

アイツと一緒に近所の公園に遊びに行った時、あの女に出会った。
腹を抱え、木の幹に凭れ掛かっている女に、アイツは子供らしからぬ質問をした。

「しぬのか、オマエ。」
「…ヒュー…ヒュー…。」

その質問をして、何人の大人が真面に受け止めてくれるだろうか。
今思えば、あの時の女の血の量は半端なものではなかった。
既に大きな水溜りが出来ていたし、腹からも未だに血が流れていた。
息をするのもやっとだったんじゃないかと思った。

「…恐らく…死ぬ…わ…ね。」
「……。」
「でも…もう少し…長生き…した…かった…かな…。」

途切れ途切れに言葉を紡ぐと、赤黒い液体を吐く。
アイツは黙ったまま女の傍にいる。

「…な、■■■。」
「…なんだ。」
「ほうたい…もってる?」
「…たすける…のか?」

アイツは無表情のまま頷いた。
俺は、アイツがよく怪我をする為、包帯やら消毒液やらを持ち歩いていた。
…今現在、包帯は俺の為にある様な物だが…。

「ちょ、ちょっと…貴方達…何を…。」

兎に角、俺達で慣れた手つきで包帯を巻いていく。

「オマエ、『生きたい』っていったでしょ?だからたすけんの。」
「…そゆこと。」
「でも…貴方達で…どうにか…出来る…レベルじゃ…ないわ…。」
「いいからだまれ。くびしめんぞ。」
「…っ!」

アイツが子供だと思えない様な目で睨む。
正直言って、アイツが人を睨むような事は殆ど無いに等しかった。
女が静かになる。俺達は淡々と包帯を巻く。

腹部の他、腕や背中にも傷があった。
身体についた血をアイツがガーゼで拭く。

女を見つけて一時間は経っただろうか。既に日が沈みかけていた。
包帯やガーゼに身体を包まれた女が、優しい眼で俺達を見ていた。
今思うと、薄黄緑の眼が外国の人のように感じさせた。

「ありがとう。手当してくれて。」
「ん、きにすんな!」
「…おうきゅうしょちだから、びょういんいったほうがいい。」

アイツが歯を見せて笑う。女は大人らしく小さく笑う。

「あ、そろそろかえんないと…。」
「…うん。」
「ごめんね。家まで送ってあげようか?」
「「いい!/…。」」

その後、「ばいば〜い」とアイツが女に別れの挨拶をする。
女は寂しそうに笑いながら手を振って俺達を見送った。




その帰り道のことだった。

「…ねぇ、■■■。」
「…なに?」
「あのおねぇさんさ、‘ち’がいっぱいついてたね。」
「…そ、だね。」
「でもね、おなかからでてた‘ち’じゃない‘ち’がね、


——オネェサンジャナイ、チガウヒトノ‘チ’ノニオイガシタ——


「……。」
「なぁなぁ、何で何で?」

アイツはこの頃から嗅覚がずば抜けて良かった。
…と言っても、この頃から頭の弱いアイツは理由なんて知らない。
けれど、この頃の俺はアイツが言っていたことの意味を、俺が知る筈がなかった。
そして、俺はまだ知らなかった。あの女との出会いで自分たちの歯車が狂わされて
行くことを——


————————————————————————————————————


夜中。屋根の上にて。

「あいつら、なかなか勘が鋭いじゃねぇか。」
「そう…ね。」
「特に蒼い眼のあの餓鬼。あの睨みと言い嗅覚と言い、ありゃ大物になるぞ。」
「……。」
「アイツ等の今後が楽しみだなぁ。パラース。」
「あの子たちは、普通の道を歩ませるのが一番よ。ライオネル。」

女が、彼女によく似た眼の色をした男を静かに叱る。

「ククッ、どう足掻いても、アイツ等はいずれ俺達の仲間になる。
 アイツ等には、【殺しの道】以外選択肢なんざ無ぇんだよ。」

男が嘲笑う。刹那——


バチバチィッ!!


青い電気が二人の間で光る。

「貴方、あの子たちは私の恩人よ。」
「だから手を出すなってか。
 ハッ!!だからお前は甘ちゃんなんだよ!!」


    ≪第八話 昔話〜血ミドロノ雷トノ出会イ〜≫ 完


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