ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- “幸せ”の意味(※タイトル変更)
- 日時: 2011/05/15 22:35
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
初めましてこんにちは^^
アメブロの方で「てんとう虫ノート」やらせてもらってます、さぼてんと申します。
どういう人間かは、ブログを見ていただければわかると思いますので省きます(笑
本当はブログの方で終わらせようと思ったんですが、急遽こちらでやらせていただくことになりました。
ブログの方で言っていた通り、この話は「ふたごの死神」の番外編ということになります。
単品でも読めないことはないと思いますが、人物に関して全く説明していませんので、わからない方・詳しく知りたい方はお手数ですがブログまでご訪問頂き、頑張ってキャラ紹介のページをご覧下さい。
※ちなみにカテゴリ・「創作」のところであさってもらうか、ブログ内検索で「ライア・ウィンドリア」と検索すれば出てくると思います。お手数おかけします;
まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします^^
誤字脱字? 通常運転ですが何か。(笑
- Re: 人々を変えた存在 ( No.11 )
- 日時: 2011/05/09 21:30
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
第4話終了ですー。
今回シナさんが意味深なセリフを吐きましたが、彼の真意、ライアの過去が明かされるのは4、5話後になりますので、ちょっとずつヒントを与えていく形になります。焦らしてるつもりはないのよ!
・・・まぁ、今回の冒頭を読むとなんとなくわかりそうなものですが。
てかわかりそうですねー私の馬鹿!
けどあの場面はどうしても入れないと私の気が済まなかったのです。
あ、そうそう、この話、8話程度を予定していたのですが、予想を遥かに超えるかもしれません。15話くらい? そんないかないか。
次回はフォアさんしっかり登場〜。
- Re: 人々を変えた存在 ( No.12 )
- 日時: 2011/05/11 20:24
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
−第五話−
ぴく、と両名の動きが固まる。シナは全く進んでいない仕事を認識して。ライアは突然現れた女性を見て。
女性は純白のローブ、外套を纏い、紫がかった銀髪をなびかせて、こちらへ歩み寄ってくる。ティアラとカチューシャを足して2で割ったような装飾品の金具が澄んだ音を響かせる。
群青色の深い視線が、2人を射貫く。
「フォ・・・、ア・・・」
心なしかシナの血の気が引いているような気がするのは気のせいか。
しかしライアはそんなこと眼中に無いようだ。
「すっげぇ美人さんですね! オレ、ライア・ウィンドリアっていいます!」
「えぇ、存じ上げています」
「・・・へ?」
フォアと呼ばれた女性は、既に知っているようニュアンスで、にこり、と綺麗な笑みを浮かべた。
すっと右手を胸に当て、ローブのスカート部分を左手で抓むと、優雅に一礼。
「お初お目にかかります。私(わたくし)、天空界の頂点を務めている、天空神・フォアロシェス・ヘルカネスと申します。
貴方のことは、2席兼任の新構成員として話を聞いていました。
よろしくお願いいたします」
あまりの清楚さに、思わずライアも目を奪われた。
たどたどしく「よ、よろしくお願いします」と挨拶するのがやっと。
「——で、何の話をしていたのですか? シナ」
「・・・神族が人間の真似事をするのかどうか、ですよ」
どうせフォアに誤魔化しは通用しない。ばつの悪そうに言うシナに、成程、と呟く。
「それを貴方が全力で拒絶していた、と?」
「・・・ええ」
「いいじゃありませんか。私前から思っていましたもの。きっと人間の皆さんが召し上がる食べ物は美味しいのでしょう、って。
“ぱふぇ”あたりとか、見た目から美味しそうでしたよ」
「やっぱそうっすよね!」
「・・・太りますよ」
「あら。神族の体内粒子変換能力を忘れたわけではないでしょう?」
「・・・・・・・・・」
フォアがあちら側についてしまっては、こちらの不利は明らかで。
わーいわーいと喜ぶライアの姿が腹立たしい限りだ。
普段なら他人に口論で負けることなどないのに、この女性は何か苦手である。決して悪い人間ではないのだが。
「では私は、天空界の皆さんに“物を食べる”習慣をつけろと言えばよろしいのですね?」
「・・・ええ。まぁ、そうですね」
シナは一向に減らない業務にげんなりしながらその中の1つを手に取り、目を通しつつフォアに訊ねる。
「ところでフォア、貴女一体何をしに来たんです?
用も無しにこんな所へ来ないでしょうし」
「そう。本題はそちらなのです」
穏やかな、優しげな雰囲気を、厳かなものへと変貌させた。ピリピリと、圧迫するような感覚が突き刺さる。
自分の目から見ても、この2面性は巧みだ。さしずめ“権力者”としての彼女と、“癒し”としての彼女、か。
- Re: 人々を変えた存在 ( No.13 )
- 日時: 2011/05/11 20:26
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
「近頃、人間、それに神族までもが悪行を行うようになってきました。・・・暴徒と、化しているのです。
原因として考えられるのは、秩序の乱れ。即ち、“管理塔”の管理が、隅まで行き届いていないためと思われます」
す、と宙に円を描き、どこかの場所を映す。背景からして、人間界だろう。そこで、死神が任務無しに狩るべきでない生身の人間を殺している。・・・無論、許されているわけがない。
「・・・フォアの言うとおりね。“管理塔”の管理不足が招いたことだわ。弁解する余地がない」
いつの間に来ていたティナに、シナは頷く。
だが、ライアは1人、口には出さないものの、そうだとは思っていなかった。
フォアは原因を秩序の乱れだと言うが。そもそもの根源は、それとは全く違うところ、むしろ逆にあるのではないか?
「やはり、彼では力不足だったのでは?」
「その可能性も、無いとは言い切れません。
ですから・・・」
フォアはライアの瞳を見据え、
「貴方が何故、人間でありながらこの“管理塔”に入ることが出来たのか、話してくれませんか?」
彼に一瞬、迷いが見えた、ような気がした。
だがライアはあははははと能天気に、無邪気そうに笑った。
「オレは“管理塔”の試練にたまたま偶然、まぐれで通っただけっすよ。ご三方が期待するような事情は抱えてません! 2席兼任も、ただの穴埋め用だと思いますよー」
「・・・・・・・・・」
3人共、大きく纏めれば「疑わしげな」目でライアを見る。誰一人として、言い分を認めていない。
理由は簡単だ。“嘘だから”
嘘だと、わかりきっているから。
(・・・また、ですか)
ほんの数10分前に訊いた質問に答えた時のように、どこか作った・・・、中身の無い印象が拭えない。否、作っているという確信はあっても、違和感を感じるのだ。
いくら“作っている”とはいえ、何故こんなにも“笑って”言えるものなのか?
「それより、オレ、思ったんですけど」
にへー、と、影の無い緩んだ、人受けする笑顔。(頬を掴んで思いっきり引っ張りたくなった。そうしたら痛いと言うのだろうか)
「神族とか人族とかが悪さしてる原因に、何となく心当たりがあるんすよ」
軽薄な感じのする、声。口調。言葉選び。
「だからこの件は、オレに任せて欲しいんです」
仕草、言葉、その他のすべてが、この男を“いい加減”な風に見せている所以なのか。
そしてそれは・・・、彼の計算の内なのか。それとも天然故なのか。
一見単純馬鹿なのに、彼の本心は窺い知れない不気味さを漂わせている。
「任せてほしいと言われてもね。貴方一人に任せられるほど、この問題は軽くないのよ?」
「オレ一人って言っても、オレは2席兼任です。構成員2名分の希望があれば通らない提案ではないと思います。
それに、フォアさん達に任せたら、多分武力行使とか規制追加するでしょ? そんなの一時的な間に合わせにすぎません。かえって不満を増幅させることになりかねない」
ライアの言い方は珍しくも正論で、ティナは黙ってしまう。
これまでになく冷静な眼で見られては、尚更に。
「そんなことを続けていても、何の解決にもならない。
この問題に求められているのは、上からの抑圧ではなく彼らの思想を変えることだとオレは思います。彼らだって本心から他人を困らせたいとは思っていないはずです」
別人と見紛うような、言葉の重さ。根拠の確立。
本当に、一番この問題を重要視していたのは、彼だったのだろう。
フォアさえも呆気に取られ、そしてくすりと笑った。
「面白い御方」
それは稀な、フォアが“認めた”相手にしか言わないセリフ。
フォアは2人を見、
「1度、任せてみてはいかがですか? とりあえず1ヶ月間程。
その頃の状態次第で、継続させるか否か、判断すればいいでしょう」
「・・・・・・そうですね」
「まぁ・・・、それなら」
2人はいまひとつ賛成的ではないが、「はい」と言った以上、ライアがこの問題に任命されたのは決定事項だということだ。
ライアはぱっと目を輝かせるが、すぐにハッキリしない色へと変える。
「・・・何か言いたいことでもあるんですか?」
「うー・・・。・・・えぇと、その」
人差し指をぶつけ合いながら、実に言いにくそうに、ライアは明後日の方向を見て言う。
「ある程度の法律・及び規制の改正許可がほしいなぁ—、なんて、思ってたりしてるんすけど・・・」
—5話END
- Re: 人々を変えた存在 ( No.14 )
- 日時: 2011/05/11 20:33
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
第五話終了ですー。
今回はー、どうすれば事件?問題?が収まるのか、ちょっとした伏線が張られているところでした。
なんで理を変える必要があるかっていうと・・・、まぁそのへんは後々。「何故」悪行が増えているのか、を考えるとわかる・・・かも?
フォアさんとっても書くの楽しかったです^^
昔は、フォアさんあまり好きじゃなかったんですよ。むしろ嫌いだったんです。
なのにここまで好きになるなんて予想外・・・。
フォアさんいい人だからさ。うん。だからだろうね。えぇ。
次回は新キャラみたいなのが出ます。
- Re: 人々を変えた存在 ( No.15 )
- 日時: 2011/05/14 01:09
- 名前: さぼてん (ID: /.uLOIob)
- 参照: http://ameblo.jp/tentoumusino-to/
−第六話−
さすがにその一言は無視できないもので。
ライアの意見に概ね同意してくれていたフォアも、どうしたものかと困った笑みを浮かべている。
その反応が「No」なのだと思ったライアからは落胆の色。
「・・・駄目、ですよね・・・」
「駄目、というより・・・」
うーんと、と助けを求めるようにシナやティナに視線を送るが、2人は何も言う気配が無いため仕方なく説明する。
「それですと、私の許可の他に、人間界の頂点ゼオ、夜交界の頂点メローネの許可も必要なのです。
今、そうでなくとも不仲な三界ですから・・・。果たして協力して貰えるのかどうか・・・」
お役に立てなくてすみません、と謝る彼女に、立ち上がって肩を掴む。怒られて当然だと思っていたフォアだったが。
「それだけで、許可が下りるんですか?」
ライアの口から紡がれたのは、“なんだそんなこと”という言葉に出ない響きを纏ったもの。
「それだけ、と仰いますが・・・。・・・メローネは気まぐれでよく分からない人なのでともかく、ゼオは相当な堅物です。“管理塔”の権限なんて振りかざして許可を貰いたいと要求しますと・・・、死にますよ?」
冗談でなく真剣に忠告するフォアに、ライアはにっと笑い。
「大丈夫ですよ。元から“管理塔”だと知らせて会うつもりはしてなかったですし」
「なら、どうやって許可を得ようというの?」
「そりゃあ勿論、“変えるべきだ”っていう意識を持たせることで、ですよ」
さらっと言いのけたその一言。確かに、最も有効的な手段だ。
しかし、それを実際にやるのはとてつもなく難しいことを、ライアはわかっているのだろうか。
わかっていて、自信が充分にある上、なのか。
「・・さっきからやけに強気で正当法ですね」
「そうでもなきゃ、人々も世界も変わりませんから」
皮肉で言ったつもりが通じていなかったらしく大真面目に返され、言いようの無い居心地の悪さを味わう。こんなはずでは、と言い訳するように内心で呟いたものの、逆に悲しくなった。
「・・・貴方にどこまで“意思”が変えられるのか。期待していますよ、ライア」
「驚いて腰ぬかさないでくださいよ?」
不敵に構える2人。
フォアにこれほど強気で向かっていけるのだ、相当な大物である。
真っ直ぐに気持ちを伝えるライアの背中が、刹那あの人に重なる。
シナは頭を振って、そんなはずがない、と自分に言い聞かせた。
正体を隠し、まずはメローネに協力の要請をしに言ったライア。
初めて夜交界に来た彼は、思いがけず綺麗なその景色に目を奪われ、しばらくの間立ち尽くしていた。
宙にズレなく陳列した青白く光る水晶。漆黒の大地は、進むごとに、まるで水面のような波紋と共に発光する。
そして、一段と存在感を示す——、月。
死神が行き交う世界らしく、実にシンプルで、それでいて人の心を掴む魅力が漂っていた。
「・・・世界は、広いなぁ・・・」
感慨深げに呟けば。
「そんなに珍しいかい?この“夜交界”が」
「ッ・・・!?」
突然後ろから聞こえた声にばっ、と振り返って臨戦態勢を取ると、銀に煌く木の枝に堂々と腰掛ける長い黒髪の女性が見えた。
やたらと肌を露出した黒い服—・・・、喪服を纏ったその女性は口元を吊り上げにたり、笑う。紅玉の瞳の奥は読めない。
敵意か。好奇心か。判断はつかなかったが、ライアは夜交界の土地勘など一切無い。
とりあえずこの人に案内を頼んでみよう、と思ったライアは、臨戦態勢を解き、親しげに話しかけてみた。
「オレはライア・ウィンドリア! 人間界から来たばかりで勝手がわからないから、できればこの世界のトップの所まで案内してほしいんだけど、どうかな?」
この世界の頂点、という言葉にぴくりと反応した女性は、ふぅ〜ん、とさぞ面白そうに足をブラブラさせる。
「メローネに用があるんだ?」
「そう!」
「よし、わかった。いいよ。メローネのトコロに連れてったげる」
早くも案内人を確保したライアは、内心歓喜していた。
身なりこそ死神らしくなく怪しいものの、トップを呼び捨て出来るということはつまり、それなりに地位が高いということだ。
よっ、と掛け声が聞こえたと同時に女性の姿が消え、ライアの隣に現れる。
「・・・凄いな」
「の、割にあんまり驚いてる風じゃないケド」
「そんなことない。あれも魔術なんだなぁ、って思っただけ。
あ、そうそう」
歩き出した女性に、すっかり忘れていたことを尋ねる。
「貴方の名前は?」
女性はくつりと笑い、
「アタシはロアリケイト。ロアって呼ぶといいよ」
「うん。よろしく、ロア」
「ヨロシク」
ロアが差し出した手を躊躇い無く握り、互いに握手を交わす。
あぁ、見かけはアレだけど、普通にいい人なんだなぁ、と彼女のことを見直した。
瞬間。
しゃらん。まるで鈴の音が鳴るように涼やかな空を斬る音がしたかと思うと、気付いたときには既に背後をとられ、首元に漆黒の大鎌をつきつけられていた。手は握手した際に両方拘束され、動かすことは出来ない。
だが、危機的状況にも関わらず、ライアは落ち着き払い、動揺や抵抗といった色を見せなかった。
「なァライ。アンタ、本当は“普通の人間”じゃないんだろう?
とは言っても、聖神や死神の波形でもない。有神血人族のような微弱な神力すらも、感知出来ない。
ともすれば残る選択肢はたったヒトツだ」
ぎらり、と大鎌がロアの顔とライアを映し、鈍く光った。
「“管理塔”構成員。—ソレがアンタの正体。違うかい?」
紅の、血を思わせる瞳が艶かしく彼を見据える。
ライアは暫く沈黙すると、ふぅと溜息を吐く。
「—正解。いつから?」
「強いて言うなら最初から、カナ」
「どうして?」
「夜交界に有神血人族以外の“人間”が来れるわけがないじゃないか。死神なら黒服着てるし、聖神なら属性の関係でわかるし・・・、ていうか、今は来てないしネ」
言われてみれば、確かにそうか。気付かなかった自分が馬鹿らしい。
これでは、詳細を明かさずにメローネと会おうなど到底無理な話だ。そこまで思い至らない自分の頭の弱さを呪う。
シナあたりなら、抜け目無いのだろうが。
まぁ、今更である。
切り替えの早さには自信のあるライアだ。ころっと気分を入れ替えて、さっき気になったことを問うた。
首元の大鎌は、既に眼中に無いらしい。
「な、『今は来てない』ってどーゆーことなんだ?」
「は? ・・・存在の危機なのに、悠長だねぇキミ」
よっこらせ、と大鎌を首元から話、肩に担ぐと、てくてくと前を歩いていく。
ぽかんとしてどうすればわからないでいるライアを肩越しに振り返ると、手招きする。
「付いて来るといい。メローネのトコロに行きながらでも話しは出来るから」
今度は、怪しい笑みでなく純粋に、ロアは笑った。
—第6話END