ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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空蝉は啼かない  <参照200>
日時: 2011/09/02 22:25
名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
参照: http://ameblo.jp/kaenclone

「空蝉は啼かない。 啼いてはいけない。
 だからキミも、もう喋るな。」

彼女は彼の腹を抉るように、右手を突き刺した。





先日一瞬鳩を自転車の車輪に巻き込んでしまった紫雨ですコンニチワ。
宿題って一気にやると辛いから気を付けてね。
そして妖怪ものになる気がするようなしないような?



○限りなく駄文
○更新遅め
○荒らし駄目絶対



●本編

prologue『雲間の月はやがて消える』 >>1

第一話『現実を見ろ、前へ進め』 >>4>>9>>17>>24>>32>>33





●登場人物

鬼灯      >>10            篠崎朔乃   >>11
桐野桜和   >>12            執行御代   >>20




●お客様

・王翔さん    ・朝倉疾風さん    ・風猫(元:風さん    ・朔さん

・生死騎士さん    ・比泉 紅蓮淡さん    ・紅蓮の流星さん









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Re: 空蝉は啼かない ( No.1 )
日時: 2011/08/10 12:35
名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)

prologue『雲間の月はやがて消える』




放課後。
とある高校の屋上、少女はフェンスの上に危なげなく座っていた。
右手に持つ大きな飴を不満そうにガリガリと砕く。
黒いパーカを着ていて、表情は伺えない。

「おい、お前、何をしている! うちの生徒じゃないな、どこのだ!」

眼鏡をかけ、教材を左腕に抱えた如何にもお堅そうな教師が屋上へと上がってきた。
少女は大して興味を抱いていないようで、一瞥もくれない。

「聞いているのか!」

怒号を撒き散らし、少女の肩を掴む。
無理矢理振り向かせようと試みるが、彼の手の中に掴んでいたはずの既に少女はいない。
代わりに欠けた飴が無残にも砂を纏い、コンクリートに落ちていた。

「……! どこへ行った!」

周りを見渡すも、少女の姿が視界に映らず屋上から去ろうとする。
すると、突然何かに首を掴まれ、視界には真っ青な空が映っている。
離された瞬間、背中に鈍痛がして顔を歪め、唾液が漏れる。

「がっ!」

抱えていた教材が散らばる。
眼鏡が音を立てて落ちる。
少女の手により体を裏返され、組み伏せられる。

「……お前、さ」

教師のモノではない、透いた声が彼の耳朶を打つ。
背筋が凍ったように寒気が襲い、言い知れぬ恐怖が競りあがる。

「篠崎朔乃って男、知ってるだろう」

疑問形ではなく断定しているところから、この高校の生徒だと分かっているのだろう。
それを態々言わせるとなると、行き着くのは一つ。 脅しだ。

「探しているんだ。 なァ、教えてくれ」

妖艶な声で問いただす。

「……た、助けてくれっ! し、篠崎なら今日は家だろう!」
「ふうん。 だけどね、このまま普通に暮らされてもわたしは困るんだよ」

そう言って裾の擦り切れたワンピースのポケットから小瓶に入った怪しい紫色の液体を取り出した。
コルクを取り、一滴だけ彼の腕に垂らす。 滴の原型をとどめたまま、皮膚に染み込んでいく。
いや、取り込んでいくという方が正しかろうか。

少女はニタリと嗤い、組み伏せていた体を退ける。
彼の体になんら変化はない。 痺れているわけでも、皮膚が変形することもない。

「……失敗作、なのか? つまらないね」

少女の笑みは完全に消失し、立ち上がる。
フェンスの方へ歩み寄る足が無機質な着信音によりピタリと止まる。
携帯電話の液晶には、『鷹取水落』という名前。

『あれ、電話取ってくれるんかい』

茶化すような声が、少女の苛立ちを更に募らせる。

「ちゅーかさ、“アレ”、何も起こらないのだけれど。 失敗作かい?」
『……知らねーです。 うん、朔乃見つかったわけ?』
「めんどくさい、から、止める」
『見つからなかった訳だあ。 まあ偶然にでも見つけたら言ってよう』

妙に語尾を伸ばす言い方が癇に障って、電話を彼方へと飛ばす。
眼を太陽から保護するように手を額に添えて、電話を飛ばした方を見る。

「朔乃は頭キレるから、大丈夫だろう。……多分」

少女はフェンスを飛び越えて、狭い足場に立つ。
蹴りだした瞬間、指を鳴らす。 少女はそこから姿を消した。

一つ残された教師の死体は、小刻みに痙攣しだす。



けれど、空蝉はもう啼かない。




                                     To Be Continued...




Re: 空蝉は啼かない ( No.2 )
日時: 2011/08/09 18:30
名前: 王翔 (ID: IWPIvALs)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_l/view.html?62149

はじめまして、王翔です。
タイトルに惹かれて来ました。
すごい始まりかたですね。
少女は何者なのかとても興味深いです。


更新頑張ってください(^^)

Re: 空蝉は啼かない ( No.3 )
日時: 2011/08/10 11:00
名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
参照: http://ameblo.jp/kaenclone


おおう、最初のお客様ありがたや。
なんか始まり方にいんぱくとがないなと思ってましたが……
大丈夫、ですかね?
頑張ります。

Re: 空蝉は啼かない ( No.4 )
日時: 2011/08/10 21:34
名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
参照: http://ameblo.jp/kaenclone




第一話『現実を見ろ、前へ進め』



放課後。
俺の家で幼馴染の女の子と遊ぶ。
そういう計画だったはずなんだ、俺の脳内では。

「どうしてこんな事になっているのかな。 俺は説明を求む」

笠原実桜は微笑を浮かべ俺を見ている。
但し、彼女はその笑顔のまま石のように固まっているが。
鼓動すら打てていないようで、俺は独り言を言っていることになる。

「おーいー、なにお前シカト決め込むなって冗談激しいよ戻れってなあなあ」

動揺しすぎて訳が分からなくなる。
どうすればいいと思う。 俺は二次元世界に食い込んだ覚えはないぞ。

「……」

後方50センチに気配を察知しました。
きっとそれは酷く危うい気配であり、常人の俺が振り向いた瞬間倒れるくらいに背筋が凍ったわけですが。

今日は本当に、学校にとって災難な日だろうな。
先程友達からの一本の電話で知ったが、国語の教師が屋上に行ったまま行方不明だとかで、
お前も気をつけろよ、とご忠告を頂いたが。

——すでに死にそうなんですけど?

とりあえず、意を決して振り向こう。
ギリギリセーフかもしれない。 セーフであってくれ。

「あああ神様俺に力をくれい!」
「はい?」

……はい? はこっちの台詞なんですけど。
案の定、そこにいたのは色んな意味で恐ろしい「もの」でした。
角が生えていて吊り上った眼、尖った耳。 
色白の肌にそれに映える黒の浴衣、下駄を履いた男の子。
なにかで見た事のある風貌。

「……なんか地獄の……絵に描いてあったような…………?」
「鬼灯、ですが。 何でしょう、正体がばれたからには石臼で貴方をミンチにしないと駄目でしょうか」
「いーよ別にそんな地獄に沿わなくて!」

いやでもなんか違うよ。 凄いお茶目だよ。

「え、てゆーか実桜は? 実桜なんで固まってる?」

色々出過ぎて混乱するわ。
「鬼灯」って閻魔様のお付きとかそんな感じの人ですよね?
それ以前に実桜は? 俺の存在は?

「嗚呼離れた方がいいですよ。 彼女は立派な亡者ですので」
「はああああああ!? ジョーダンきついし、生きてんじゃん!」
「では、」

鬼灯さんは実桜の眼前まで行き、ツインテールにされた髪の先端を少し触る。
いとも簡単にそれは折れ、鬼灯さんの手の中に落ちた。

「これでも生きていると言えますでしょうか」

目が笑ってない。
それはきっと、一本の矢で心臓を打たれた感覚に近い。
俺は膝をついて実桜を見る。 先程と変わらず微笑を浮かべている。
……俺と一緒に家に来た彼女が亡者とか。

「空蝉は啼きませんよ。 彼女はもう、死んでいるのですから」

彼の言葉が刃物として俺に突き刺さる。
俺の存在を否定された気がして、生理的な涙さえ浮かぶ。




「現実を見ろ、愚か者」





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