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駄菓子屋てる
日時: 2011/09/24 20:00
名前: さゑ (ID: s3nHTWkq)

  

  てるてるぼうずは莫迦な奴、
  金の鈴などほしゅうない、甘い酒などほしゅうない。
  自ら首を掻っ切った、口無し外道に御座います。








こんにちわ、さゑと申します、一スレお借りして小説を投稿させていただきます。
亀更新になりますが、よろしくお願いします<m(__)m>
そして、超短編です。

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Re: 駄菓子屋てる ( No.1 )
日時: 2011/09/24 20:16
名前: さゑ (ID: s3nHTWkq)


「わあ、また奴が街にやってきたぞ」
「嗚呼、口の利けぬ首無し娘じゃ、恐ろしや恐ろしや、なんまいだぶなんまいだぶ・・・」
「かごから甘い匂いがするよう、嗚呼、あの菓子には毒が盛ってあるのじゃ、食ったら気がおかしくなってしまわぁ」

  

  私、てるてるぼうずのてるに御座います
  甘い菓子を鬼子に売り捌く、駄菓子屋のてるに御座います
  この通り、口の聞けぬ畜生に御座います
  猫目で色白でとても美しい娘で御座います
  しかし、口の利けぬ外道に御座います
 

今日も鬼子がやってまいります、乳の味すら舌先に残らぬ、鬼子がやってまいります。

Re: 駄菓子屋てる ( No.2 )
日時: 2011/09/26 16:25
名前: さゑ (ID: s3nHTWkq)

はて、今日は、毎度ごひいきいただいている、双子がやってまいります。
こんぺいとうや水あめやおかきなど、銭のある限り買い漁ります。
「やあ、てるのさげる大きなかごには、甘い菓子がぎっちりつまっている」
こちらは、男勝りな双子の姉、ひなに御座います。
「今日は、私達双子が、血汗にまみれて働いて得た、ちっぽけな小遣いを持って来たのよ」
こちらは、品の良い双子の妹、まいに御座います。
人は、彼女らの事を、双子という物の怪の類、そう呼びます。
この世に二人いるかのような顔、瓜二つの外道に御座います。
「さあ、わぁらに甘い菓子をおくれ、この金が許す限り、わぁらの掌いっぱいの菓子をおくれ」

今日もてるは、双子に菓子を売りつけました。

「嗚!てるの菓子はいつも甘い!わぁの腹がとけるように甘い!」
「姉さん、このお菓子は、ごはんが貰えなかった時に食べるものよ、一度に全部食べてしまったらいけないわ」
「いいぢゃないか、今朝なんか、握り飯の一つもまともに食わせてもらえなかったのだから」
「あすこの婆さんはけちなのよ、朝も明けぬ頃から夜遅くまで、こまのように働かなければ、晩の味噌汁も出してはくれないわ」

彼女らは、母親の腹を裂かせて、おんぎゃあと生まれてきたものですから、乳房にぶらさがる事も出来ずに父に捨てられました。
鬼子たちは、捨てられても尚、地べたを這い蹲り、生きている、不幸な身の上に御座います。

Re: 駄菓子屋てる ( No.3 )
日時: 2011/09/25 01:01
名前: さゑ (ID: s3nHTWkq)


てるの作った特別甘い上等な菓子を買う鬼子は、双子だけではありません。
この雨愉通りの離れに住む盲の幸子、雨愉通りの路地裏でひっそりと隠れ住む潰れ顔の四郎、
悪戯好きの気狂いの綾、臆病者の手無しの平太。
奇怪、且つそれはそれは、愉快な仲間でして、賑やかなものでした。
しかし、ここらを通ったどこぞの金持ちの豚男が、灸のためにと、てるや仲間たちの視界から消えた異形達もおりました。
てるが雨愉通りにやってくるたびに、仲間たちは、菓子を求めて金をてるに突き出すのです。
鬼子はみな、「甘い甘い」と、てるの菓子をその下劣な舌で嘗め回すのです。
今日は、双子の次に、悪戯好きの気狂い、綾がやってまいりました。
「ケケケケケケケケ!どこからあめんぼの煮えくり返る匂いがしたと思ったら、口無しのてるじゃねぇか!」
「今日はな、いつも威張り散らしてわぁらを食い物にする傘屋の正太にな、足を引っ掛けて金を釣り上げてきたんじゃ!」
綾は、悪戯好きで御座います。
事あるごとに、悪戯を仕掛けては、人間を困らせる、外道に御座います。
「バケモンのクセして、てるの菓子はいっちょまえによく出来とるもんなあ、わぁもバケモンじゃ、人の事言えねぇ」

綾は、気狂いの分際で、てるの事を皮肉を込めてバケモンと呼ぶ始末ですから、周りの人間から、一番に嫌われておりました。


切ります——

Re: 駄菓子屋てる ( No.4 )
日時: 2011/09/26 16:34
名前: さゑ (ID: s3nHTWkq)

 さて、今日も雨愉通りでは、死に損ないがよだれを垂らしながら菓子を食べ歩くので御座います。
ここの辺りは、醜い鬼子どもがごろごろと溢れているものですから、
他人の醜態を覗いて周り、美味しいネタを拾う小説家や、法に守られぬ鬼子を攫う悪たれ共もおりまして、
大変治安も悪う御座いました。
今日も、性根を腐らせた大人が、鬼子にたかり、暮らしの支えにもならぬような銭を巻き上げるので御座います。
もちろん、鬼子を庇う者などおりません、法に守られぬ畜生は、大人しく人間様に金を差し出さなければいけませんでした。
綾は、働いていた風呂屋で、悪たれ共に襲われて、気をおかしくした、畜生に御座います。
「カカカカカカカ!てるの菓子は今日も美味い!こんな美味い物、何故人間様は食わぬのじゃろか、
 全くもってわぁには分からん、嗚、もったいね、もったいね」
綾は、人間様と呼ばれた頃の記憶がもはや無いに等しく、下品な体をこき使い、金を稼ぐので御座います。
てるは、そんな下品な綾を、虫でも捕らえたかのような目で見つめるのです、
てるは、鬼子達を、無言のままに、どす黒いきゃめらのような目で、醜態を晒す鬼子共を目に焼きつけるので御座います。


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