ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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僕が空を飛ばない理由。 【完】
日時: 2011/11/04 23:46
名前: あやの (ID: 7cAswSvJ)

あの、空を飛ぶ鳥の様に、

自由になる。


いつかきっと、

叶うと信じて..............................

僕は今日も、この道を歩く。

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Re: 僕が空を飛ばない理由。 ( No.15 )
日時: 2011/11/04 22:40
名前: 刹那 (ID: 7cAswSvJ)

「仕事に行ってきます」

僕は、朝ご飯を運びに来てくれた彼女に、声を掛けた。


こうして毎日、彼女は料理を持って来てくれる。



「いってらっしゃい」

笑顔で言う彼女に、僕は笑顔を返せなかった。







.........................ホントにこれでいいのだろうか?





その思いが、ずっと心に引っ掛かる。





「酒井さん。大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」


PCに向かって、顔をしかめている僕に、上司の木村さんが言った。


「止めて下さいよ。木村さんだけですよ。僕を酒井さんなんて呼ぶの。」

部下にも、上司にも、琉さんと呼ばれている僕。


酒井さんと呼ぶのは、この世で木村さんだけだ。


ちなみに、木村さんのあだ名は、オバサン。



「悩んでる」


「はぁ?」


「青春ねぇ・・・・・・」




.....................僕の青春は終わりましたが。



「私もさぁ、頑張ってみるよ。旦那と上手くいってないから」


北村さんは、ウインクを僕に投げ掛けると、仕事場を出て行った。

Re: 僕が空を飛ばない理由。 ( No.17 )
日時: 2011/11/04 23:05
名前: 刹那 (ID: 7cAswSvJ)

「ただいまぁ」

家の玄関を開けると、彼女の靴がきちんと並んでいた。

「ただいまぁ.................」


返事が無く、電気が消えている。

電気を点けてから、奥の部屋に向かった。


「いるのか................?」

戸を開けると、アルバムを抱えている彼女が目に飛び込んだ。


その彼女の周りでは、写真がばら撒かれている。



「これ......................」


僕は黙って、その写真を見つめる。




その写真には、彼女にそっくりな子が写っている。



「私...............中学の時、琉さんと会いましたっけ」

写真だけを見つめて、彼女は僕に問いかけた。


「..................ごめん」



「謝らないでくださいよ」


下唇をかみながら、彼女は写真から僕に視線を移した。



「ホント...............そっくりですよね」


写真を一つ一つ見つめる。

どれも、僕と、死んだ真希の写真。


「琉さんって.............私のどこが好きなんですか?」


「それは.....................」


「顔ですか?声ですか?体系ですか?名前ですか..............................」

僕は、声を出さずに首を振った。


「貴方は誰が好きなんですか?私ですか?それとも..............」

「...................ごめん」

でも、彼女は言葉を続ける。








「貴方が好きなのは.......................この彼女ですか?」




「ごめん」







「私は.................この彼女の代わりだったんですね」


彼女は、鍵を足元に置いた。


「貴方は、この子を引きずってるだけ」

「ちがう」

「貴方は、自由になれないのじゃない。自由になろうとしないの」

「..............ちがう」

「空を飛べないんじゃない」

「............ちが...............う」








「................飛ぼうとしないのよ」




そう言って、彼女は玄関を飛び出した。




机の上には、寂しく冷めた料理が並んでいた。


肉じゃがの横には、メモが置いてある。








『大好きでした』



...と。

Re: 僕が空を飛ばない理由。 ( No.18 )
日時: 2011/11/04 23:21
名前: 刹那 (ID: 7cAswSvJ)

朝起きると、誰もいない部屋に、少し遅れて目覚ましが鳴った。


ケータイを取り出して、呟いてみる。



『だれも幸せに出来なかったなう』



少しすると、


意味わかんね..と言う返事が戻ってきた。




....だろーな。



静かにケータイをポケットに入れた。





あの時の彼女の言葉を思い出す。




「飛べないんじゃない。飛ばないんだ..............か」




臭い事言うんだな.....................


そうからかってやりたいのに、僕は部屋に一人。




僕は、頬が濡れていることに気がついた。


「雨漏りかよ..................」



大きな声で、強がりを言ってみたりする。



「...................誰か答えてくれよぉ...............」



僕は、いつまでも泣き続けた。





..............この、誰もいない寂しい部屋で。





Re: 僕が空を飛ばない理由。 ( No.19 )
日時: 2011/11/04 23:39
名前: 刹那 (ID: 7cAswSvJ)

「僕さぁ、振られちゃった」


真希の墓に、水を掛ける。


「独りぼっちになっちゃったよ」


....ここでも、独り言。


いつも、いつも、いつも、いつも。


僕は一人。



「バカみたいだよな」


僕は、笑いながら花を添える。



そして、墓に背中を向けた。







「あのっ.........................」





背中に言葉を掛けられる。




聞いた事のある声。

懐かしい声。

....................大好きな声。




振り返ろうとすると、彼女は僕を止めた。


「そのままで....................聞いてください」


僕は静かに頷いた。





「やっぱり.................好きなんです。忘れられなくて..................。

自分勝手だと思うんです。

勝手に人の事振っておいて.................

でも、忘れられないんです」


そこで彼女は、言葉を止めた。




「それだけ...............ですか?」




「私も、正直信じてませんでした。琉さんの事。

空を飛ぼうとしなかったのは、私の方です」



「何が言いたいんですか?」



「私..................片思いします。届かないってわかってるから.............




私.................琉さんに、片思いします」




「僕だって好きですよ」


気付くと口を開いている。






「貴方が好きです」

Re: 僕が空を飛ばない理由。 ( No.20 )
日時: 2011/11/04 23:46
名前: 刹那 (ID: 7cAswSvJ)

「僕のどこが好きなんですか?」

「全部です」


即答で答える、彼女。




「じゃあ、私の好きなところは?」






正直になろう。


正直に生きよう。



そして僕は、空を飛ぶんだ。

勇気を出して.......................


僕は真希に誓った。





「................全部だよ」







この子を............幸せにします。




        

              【完】


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