ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ホワイトパレット
日時: 2011/11/28 19:06
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)

純白の少年は、運命をも斬り裂いた。

はじめましてな方、お久しぶりな方、こんにちは、こんばんは、おはようございます。
私は涙崎竜胆と申します。
なお、PSPからの為、内容がブツ切りなどご迷惑をおかけします。

Thank you!
紅蓮の流星様 友桃様 朝倉疾風様
その他読んでくださっている方々

ごゆるりと。

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Re: ホワイトパレット ( No.8 )
日時: 2011/11/21 06:13
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため、複数回にわけさせていただきます。

Re:紅蓮様
コメントありがとうございます。
ブラッドエッジ、毎回楽しく読ませていただいています。
描写が丁寧…!初めて言われました、嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

第1話 そのよん ( No.9 )
日時: 2011/11/21 07:11
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため複数回にわけさせていただきます。

「ネロ、俺だけど」
 少年はゆっくりと歩きながら、少し大きめの声で言う。
俺だけど…だけど…けど…、と辺りに反響した自分の声に少年は眉を顰める。
自分の声を聞いて、気持ち良い奴なんているのかよ。
ここに来る度に少年は思う。
「あら、ネージュ。よく来たわね」
 前方に見えた照明と、若い女の声。
照明に照らし出された、さほど大きくないバーカウンター。
引き手のいないピアノ、うつむき加減に酒を飲む客が二人。
カウンターに立ち笑んでいるのは、バーテン服の若い女性。
「ん。今日は休みの予定だったから、表(あっち)で酒飲もうと思ったんだけどな」
 無理だった、残念。
そう言いながら少年は、コートを脱ぎ、当たり前のように真ん中の椅子に座る。
どうやら、少しだけ良い椅子のようだ。
「当たり前でしょう、ネージュは未成年なんだから」
 女はそう言いながらも、少年…ネージュの前にグラスを置く。
ネージュはクッ、と喉を鳴らすと口の端だけで笑う。
「なら、ここでも駄目なんじゃないか?しかも、ビールじゃないし」
「あ、そういうこと言うんだ?下げちゃおうか?」
 意地悪げに言う女に、ご冗談を、と笑ってネージュはグラスに口をつける。

第1話 そのご ( No.10 )
日時: 2011/11/22 07:29
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)

 照明に照らされていても薄暗い店内にクラシックが流れている。
マスターである女の趣味だろう。
ネージュはそれに耳を傾けながら、グラスの中の鮮やかな色をしたアルコールを少しずつ飲んでいく。
 バー、リベルテ
知る人ぞ知る“裏社会”に通じる店。
酒を飲みに来る客はもちろん。
“博打打ち”“クスリ売り”“情報屋”“片付け屋”
様々な目的を持った、様々な職種の人間たちが利用する。
そこはまさに、自由の国(リベルテ)。
マスターは、ネロ。若い女だが、腕の利く一人前の裏社会の住人。
「そういえば、ネージュ?」
「んー?」
「“デウス”の居場所はつかめたの?」
 他の客への対応をしつつも、ネージュがお気に入りらしいネロはネージュにほぼ構いきりだ。
「デウス?まだまだ。遣いすらよこさねぇよ。まだ、足りないみたいだ」
 ネージュは、自分の手を見て小さくため息を吐いた。
雪のように白い、生気を感じさせない小さめの手。
ネロはそんなネージュの手を撫でる。
冷たいな。口には出さないが、ネロは思う。
口に出さないのは、きっと、ネージュ自身も知っているだろうから。
 もう、この少年は、死んでるんじゃないだろうか?
「ネロ?」

第1話 そのろく ( No.11 )
日時: 2011/11/23 05:17
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)

 不思議そうに自分を呼ぶ声でネロは我にかえる。
なにを考えていたんだ、私は。
ネロは自分の考えていたことの恐ろしさに思わずぞっとした。
「ん…。あ、そういえばネージュ。また階段落ちてきたでしょ?」
「……。あぁ、もちろん。あんなとこマトモに下りてきたら足がお釈迦になっちまう」
 まあね、なんて笑いながらネロは内心ほっとする。
ごまかすように繰り出した話題。ネージュはなにも言わずにのってくれた。
「うるせぇっ!」
 穏やかな店内に、怒号が響く。
ネロはびくり、と肩を跳ねさせ驚き、ネージュは目を細めてそちらを見た。
「なんだよ、絡んで来たのはアンタだろ」
「んだと、こら!?この“シトゥ”様を馬鹿にすんのか!」
 何だ、酔っぱらいどもの喧嘩か。と再びグラスに口をつけようとしていたネージュの手が止まる。
「おい、おっさん」
 ネージュは、自らを“シトゥ”と言った男に、頬杖をつきながら話しかける。
「あ?うるせぇ、ガキは引っ込んでろ!」
 男は、ネージュに向けて手をかざす。
能力発動の前動作。
このクソ狭い空間でどんな技を使って来るのやら。
ネージュは緊張感に欠けた態度で、そんなことを考えた。

第1話 そのなな ( No.12 )
日時: 2011/11/23 05:35
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)

「…っ!ネロ、さがれ!」
「え?」
「バカッ!遅いっ!」
 先ほどまで頬杖をついていたネージュは、焦ったように叫び、混乱しているネロを抱えて大きく後ろに飛んだ。
次の瞬間『白い柱状の閃光』が。二人の居た辺りに突き刺さり
コンクリートの床とネージュの座っていた椅子を砕いた。
 あぁっ…、とそれを見たネロは悲しげな声を出す。
それもそのはずだ。
この店の修理や改装は表の店には頼めない。
そうすると必然的に高くて危ない、裏の業者に依託することになる。
それに、ネージュの座っていた椅子は、彼専用の特注品。
「なぁ、ネロ。ここ、喧嘩禁止だったっけ?」
「そう、だけど。なにするつもりなの?」
 ネージュが比較的楽しそうな声でいう。
大体の予想のついているネロはおびえながらネージュに問いかけ、顔を見た瞬間真っ青になり頭を抱えた。
ネージュは笑っていた。それも比較的イイ笑顔で。
「あはは、何って。ネロ、喧嘩は止めないと」
 にこにこと笑いながら、ネージュはコートの裏からナイフを一本引き抜く。
ナイフより大きく、短剣よりはちいさめなそれは、“neige”と彫られた特注品。


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