ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ホワイトパレット
日時: 2011/11/28 19:06
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)

純白の少年は、運命をも斬り裂いた。

はじめましてな方、お久しぶりな方、こんにちは、こんばんは、おはようございます。
私は涙崎竜胆と申します。
なお、PSPからの為、内容がブツ切りなどご迷惑をおかけします。

Thank you!
紅蓮の流星様 友桃様 朝倉疾風様
その他読んでくださっている方々

ごゆるりと。

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第零話 終。 ( No.3 )
日時: 2011/11/17 18:20
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため、複数回にわけさせていただきます。

 男は叩き付けられた痛みだけに咳き込みながら身じろぎをして、ひっ、と息を飲んだ。
男の喉に軽く触れたのは、コンクリートに突き刺さった、鉛色のナイフ。
その刃から伝わる異様な冷気と恐怖に男は目を見開く。
 少年はため息を吐きながら、つまらなそうにナイフを引き抜く。
そして、ちらりと男を見る。
しかし、何を言うわけでもなく少年は、立ち去ろうと男に背を向けた。
「待てよ!逃げんのかよ腰抜けっ、おい、“ネージュ”!」
 男は叫ぶ。
否、吠えると言った方が正しいだろう。負け犬の遠吠え、と。
少年はゆっくり振り返ると、さして表情を変えることもなく口を開いた。
「生憎、負けるってわかった瞬間生きるのをやめる奴を殺してやるほど俺は優しくない。
それに負け犬をかまってやるほど暇人でもない
なぁ、逃げんのかよ?腰抜け」
 感情のない声でそれだけ言うと、少年は再び男に背を向け、どこか楽しげな足取りで歩き出す。
男は呆然と、純白の少年…ネージュの黒い背中を見送った。

第1話 そのいち ( No.4 )
日時: 2011/11/19 06:38
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため、複数回にわけさせていただきます。

「ご注文はお決まりでしょうか?」
 朝早くのファミリーレストラン。
さすが、24時間営業の全国チェーン店といったところだろうか、こんな時間帯でも食事をしている客は少なくない。
そんな中、大人数用のテーブルを陣取る少年が一人。
店員は苦笑をうかべながら、少年に声をかけた。
「ビールと唐揚げ」
 少年は迷うことなくそう言うと、脱げかかっているフードをかぶりなおした。
そんな少年に店員は相変わらず苦笑をしながら言う。
「あの、お客様、お酒は…」
「あー…今日はお仕事ナシ。一日休みの日なら、飲んだって問題ないだろ?」
 店員は、そういうことではない、と言いたげに少年を見る。
少年はだるそうに、だらりと背もたれにもたれかかっている。
「そうではなく。お客様は未成年では…?」
「…あー…そうか。表(こっち)じゃ、まだ飲めないのか…?悪いな、忘れてた」
 苦苦しげな店員の表情を見て、少年はもう一度「悪かった」と呟いた。
少年は立ち上がると、今の時期には暑苦しい黒いコートの皺を伸ばした。
そのまま出ていった少年に何だったんだ、と困惑する店員のことなど知るはずもない少年は、どこか楽しげな足取りで街を往く。

第1話 そのに ( No.5 )
日時: 2011/11/20 06:08
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため、複数回にわけさせていただきます。

 他人など興味がないとでもいうように、自分の手に収まる小さな液晶だけを
どこか無気力なようすで見つめる学生らしい若い男女。
どこを見ているのかわからない、焦点の定まらない虚ろな目をしながらも鞄を片手に早足で歩き回るリーマン風の男。
今から帰宅する予定なのか、ヨレヨレの真っ赤なワンピースに身を包み死んだような雰囲気をまとった
奇抜な水商売風の女。
 そんな人間たちで溢れかえる街。
日本の中心。首都、東京。
 これが“生きる街”と呼ばれる街の姿、か。
少年は、街往く人々に冷笑をむける。
「ん、あ。9時だ」
 誰かの呟きに重なり、若い男女の歓声が響く。
だれもかれもが、不必要なまでに高くそびえる高層ビルの一郭に張り付けられた
不必要なまでに巨大な液晶画面を見上げ、瞳を輝かせている。
「国民の皆様、おはようございます」
 液晶に映し出された若い男が、愛想の良い笑みをうかべて挨拶をした。
男が笑む度に、その笑みが自分以外の不特定多数の人間たちにも、むけられているものなのだとは考えず
女たちはきゃあきゃあと黄色い悲鳴をあげる。
男は男でその若い男に思うところがあるのか、じぃと液晶を見つめている。

第1話 そのさん ( No.6 )
日時: 2011/11/20 09:14
名前: 涙崎竜胆 ◆mkO.AgyQJg (ID: khvYzXY.)
参照: PSPからのため、複数回にわけさせていただきます。

 いずれも、少年と同年代に見える若い男女。
しかし、少年は液晶を横目でちらりと見ると、小さく小さく舌打ちをしてから先ほどと同じ
どこか楽しげな足取りで人混みから離れ、狭い路地へと滑り込んだ。
 ビルとビルの間、一見青いごみ箱と少年以外は何もないように見える空間。少年は、ビルの外壁の一郭をそっと押す。
ビルの外壁が動き、そこに現れたのは黒い穴。
先は闇に覆われていて見えない。
ぽっかりと開いたその穴は、少年を食らおうと待ちかまえているようにも見えた。
しかし、少年は何の躊躇いもなく、その穴に飛び込む。
その瞬間、ビルの外壁がまるで、口を閉じるように元に戻っていく。
あとに残ったのは、寂れた路地と青いごみ箱、それから静寂。それだけ。
 一方少年は、落ちていた。
暗い空間をただひたすら、下へ下へと落ちていく。
落ちていく少年はまるで、不思議の国へとつながるウサギ穴を落ちていくアリス。
「おっ…とと」
 少年は小さく声をあげる。
コンクリートの床についた足、よろけた体。着地に失敗した少年は小さくため息を吐いた。

Re: ホワイトパレット ( No.7 )
日時: 2011/11/20 20:39
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: 6iekfOAS)

初コメいただきます、紅蓮の流星と言います。
いきなりなのですが、とてもレベルが高いように感じます。
なんというか、描写がすごく丁寧で、最初から小説全体に雰囲気が出ているというか。
主人公のキャラも立っていて良いと思います。
これからも更新頑張ってください、応援しています。


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