ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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禁断の箱
日時: 2012/08/05 21:03
名前: メゾ (ID: vKymDq2V)

こんにちわ。メゾです。
何個目になるのかはわかりませんが、なんだか軽ーいノリでこれを書こうと思い、書かせていただくことにしました。

よくわからない部分が多いと思いますが、読んでいただけると幸いです。
それでは、『禁断の箱』、始まります。

*人物紹介*
〜アイリス〜
イヴァン 16歳
「時」の「禁断の箱」保持者。母親が自殺、父親が行方不明のため、叔父と叔母に引き取られた。右目を母親に潰され、眼帯をしている。周りの人々に危害を与えないようにするため、アイリスに入ることとなる。また、己の目的の「過去を知る」ためにアイリスに居座ることを決めた。禁断の箱の別名、「王」と呼ばれる。本人はまだ知らない。叔父から銃や体術、剣術などを教わっていた過去があり、戦力になると期待されている。
リザ   13歳
兄、イヴァンに付き添い、アイリスに入ることとなった。「擬似核」と契約を行い、核によって強化された「ランドル」と名付けられた狼を召喚する能力を手に入れる。母親により視力を失った。通常の核からもらう能力とは異なり、分身を作るため、「赤目」ではないかと疑われている。
カーフェク 45歳
アイリスの一員。虚空からあらゆる武器を取り出すことができる能力を持つ。イヴァンとはなかなか肌が合わず、良く腹を立たせる。左顔を隠している。こう見えて、アイリス内では最強らしい。見た目は契約当時の28歳。
シャネット 28歳
アイリスの一員。相手の心を読むこと、自身の心を相手に送ることができる能力を持つ。おとなしそうな外見であるが、怒ると相当怖いらしい。見た目は契約当時の20歳。
レイチェル 18歳
アイリスの一員。超加速、超運動神経を持つ。右手右足、左のひじから下が義手義足。明るい性格で、カーフェクのことを「兄さん」と呼ぶ。見た目は契約当時の16歳。
アーネスト 16歳
「影」の「禁断の箱」所持者。一見硬そうな顔をしているが、実は仲間思いの優しい男の子。世話を焼くのが好きらしい。禁断の箱の別名、「死神」と呼ばれる。
ツィエン  16歳
「空間」の「禁断の箱」所持者。すぐさま能力を使えるようになった別の意味で恐ろしい少年。思いやりのある、優しい子。最近、前の「空間」の禁断の箱によく話しかけられている。禁断の箱の別名、「断罪者」と呼ばれる。
リエラ   11歳
「命」の「禁断の箱」所持者。生まれつき声が出ない。少し控え目な性格。少し人見知りらしいが、イヴァンにはすぐになついた。赤目のについて知っており、アイにある提案をされ、彼女の器となることを決める。禁断の箱の別名、「創造主」と呼ばれる。
ファニエル 35歳
アイリスの一員。責任感が強く、周りから慕われている。まだ能力に関しては不明。見た目は契約当時の25歳。
キル   年齢不明 
アイリスの一員で、研究員。噂では百年以上生きているという。能力に関しては不明。赤い瞳を持っているが、赤目とは呼ばれていない。見た目は20代。
少年    15歳
アイリスを率いるボス。能力は不明。名については何かある問題を抱えているようで、知りえることができない。見た目は契約当時の10歳。
アイ    年齢不明
リエラに器になることを求めてきた女性。リエラの条件をのみ、彼女の体に宿っている。「弟」の目的を阻止するのが目的らしい。弟の目的に関してはまだ不明。百年前にいきていたらしく、「影」の前の禁断の箱。「死神」の力を利用し、魂をこの世に残した、と本人は言っている。赤い瞳を持っているが、赤目のように恩恵は受けていない。


〜リスリアン〜
ルカ    百二十三歳(見た目は二十歳)
リスリアンの一員。百年前に一度この世を去ったが、再び蘇る。能力は不明。
スネリ   百九歳  (見た目は九歳)
リスリアンの一員。百年前にこの世を去る。ルカと同様、蘇った。能力は不明。
ミラ・ヴィンセント
ルカとスネリの会話に出てきた人物達。リスリアンと何らかの関わりがあると見える。会話の内容からして、しばらくリスリアンの方に帰ってきていない。

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Re: 禁断の箱 ( No.15 )
日時: 2012/04/03 21:25
名前: りる (ID: qcI1n3YR)

 お久しぶりです。リルです。
 『カキコ』に来てないうちに沢山「メゾ」さんが更新されていて、頑張って読んだところです。
 内容が進むごとに1つの謎が解けて、また1つ(いや2つ、3つ?)謎ができる。といった感じなので頭を使いながら読ませていただいております。♪
 ・・・長々とすみません。えっと、これからも頑張ってください。応援してます。

Re: 禁断の箱 ( No.16 )
日時: 2012/04/05 19:05
名前: メゾ (ID: MSa8mdRp)

コメントありがとうございます。とっても嬉しいです^^

まだまだ内容は濃くしていくつもりですので、また続きを読んでいただけると幸いです。どうぞよろしくお願いしますね。

これからも頑張って書いていきたいと思います。
ありがとうございました〜。
                      メゾ

Re: 禁断の箱 ( No.17 )
日時: 2012/05/03 20:35
名前: メゾ (ID: MSa8mdRp)

第十一話  「謎の夢」

『また来たか、貴様。珍しい。このような禁断の箱は初めて見る』
まただ。この夢。
真っ暗な空間に一人、右も左も、前も後ろも、何もないような不思議な場所。足は着くので、下はある。地面には水が広がっていたが、濡れるような感覚はない。歩けば水面に波が広がる。夢のはずなのに、まるで現実のような錯覚に陥りそうだった。
「そろそろ目、覚めてくれないかな…」
一人つぶやく。ここは嫌いだった。なるべく周りは見ないようにしている。自分の周囲には鎖に繋がれ、すでに白骨化した屍が広がっていた。それが見たくなくて、目を正面には向けない。恐怖に支配されそうだから。
ふと、低い声が空間内に広がる。前回と同じ、声。
『目をそむけるな。貴様も我々と同じ力を継いだ。貴様は「断罪者」として「核」の力の恩恵を受けた裏切り者を裁かなければならぬ』
「僕に話しかけないで!僕はそんなの知らない。そんな力なんてなかった!勝手に僕自身を決めつけないで!」
うるさい。うるさい。話しかけないで。僕を決めるな。僕は僕だ。
『己の定めから逃れることは出来ぬ。お前がどんなに足掻こうがその力をふるうべき時が来る。大切なものを守るとき、お前はその力を利用し、我々の助けを必要とするだろう』
気付けば背後にぼんやりと影が浮かんでいた。顔も形もはっきりとはしていないが、何かがそこにあるのは分かる。同時に、恐ろしいものだと。
「前は姿を見せなかったくせに…」
冷汗をかきながらゆっくりと振り返る。視界には屍たちが入った。すっぱいものが出てきそうだった。何とか抑え、そいつを睨みつける。
『拒絶するのは構わん。しかし、お前が己の力を否定し続け、「王」に刃を向けるようなことがあれば、我々は躊躇なく貴様を殺す。この力は「王」を守るために存在している。お前が迷うことがないよう、しばらく見守っておくことにしよう』
ぼんやりとした影はすうっ、と姿を消した。また空間に取り残される。全身の力が抜け、膝をつく。水が少し撥ねた。両手を水につけ、己を顔を映す。
「もう嫌だよ。勝手に僕の運命とか、決めつけないで。勝手に人に干渉しないで。僕は…」
自然と涙が出た。水には歪んだ自分の顔が映っている。
「僕は、人を裁けなんかしないよ…?」
手で顔を覆った。そこで、ふと気付く。
「なんで…?」

*

「うわあああ!!」
がばっとベットから跳ね起きた。周りをぐるぐると見渡す。自分に用意された部屋。真っ黒くない。あの空間ではないことはすぐに分かった。安心する。
「あ…」
手を見る。いつも通りの、少し白い、男にしては小さな手。自分の手だった。ほっと息をつく。

ガチャッ

扉が開く。
「どうしました?そんな大声出して」
カーフェクだった。
「……なんでも。ないよ?…」
「なんでもない人が、いきなり大声を出したり、そんなに顔色が悪くなるものですか」
正論を言われ、口ごもる。なんて言おうか迷っているかと、先に言われてしまった。
「まあ、言いたくないのなら、無理には聞きません。ですが、決して一人で抱え込むことのないように。では」
にこりと笑って彼は出て行く。

ここ最近の、夢。謎の人ではなさそうな者に話しかけられる。怖くなって、逃げようとしても、逃げることは叶わない。
「断罪者」
これが「空間」の禁断の箱のもう一つの名である。また、「時」が「王」。「命」が「創造主」。「影」が「死神」。それぞれ、「禁断の箱」ともう一つの名を持つ。
「断罪者」が守るべき「王」とはおそらく「時」の「禁断の箱」のことであろう。
「どうして、僕がイヴァンと戦うことになるのさ。そんなの、あるわけないのに…」
唸りながら、ツィエンは頭を抱え、言った。






*後書き*
ツィエン君が中心の今回でした。
今度はたぶん、リエラちゃんが中心となると思われます。
また読んでいただけるといいです〜^^
ありがとうございました〜
                      メゾ

Re: 禁断の箱 ( No.18 )
日時: 2012/05/13 20:01
名前: メゾ (ID: MSa8mdRp)

第十二話  「干渉」

『誰?私の中に入ってくるのは?』
リエラが見えない人影に向かって話しかける。
人影は答えず、彼女の次の言葉を待っていた。沈黙に耐えきれず、言葉を発する。
『これは私の心。誰にも干渉されたくなんかない。出てって!』
正しく言えば、声は聞こえない。しかし、相手には伝わっているようで、少し影が揺らいだり、言葉に反応を示したりする。
しばらくすると、やっと声が返ってきた。

「私に、協力してくれないか?」

よく通る、女性の凛々しい声だった。次第に影がはっきりしてきて、女性の姿が見えるようになる。
美しい浅黄色の髪を腰まで伸ばしていた。飾り毛は全くなく、右側の方で前髪をかけている。身長は高く、スタイルがかなりいい。深紅の瞳は輝いていた。光の具合で明るくも暗くもなり、コントラストが非常に良い。
『協力?』
「そう。私の弟の野望を阻止するため、お前の体に私の魂を宿らせてほしい」
やはり聞こえていた。聞こえていなければ、このように反応できるはずはない。女性はうっすらと微笑み、リエラを見る。
「私の名はアイ。百年前に生きていた人間だ」
赤色の目が怪しく光る。ふと、彼女にある記憶がよみがえってきた。

『赤目…?』

すると、アイは少し驚いて、目を見開く。やがて表情を戻すと、
「知っているのか?」
と言った。コクリと頷く。

赤目。この世では、どちらかと言えば、嫌われているものを示す。
生まれたころから人間の理を離れた者。「核」の恩恵を受けた者であった。
リスリアンの者は、生まれたころから、左の頬に契約を意味する刺青が入っている。しかし、一方でリスリアンの中にも刺青が入っておらず、力を受けることができなかった者もいた。それらの人間は一族から追放され、追い出されてしまう。その者たちが子孫を残していき、やがてリスリアンの血を濃く受け継いだ子供が「赤目」として生まれてくるのだ。
赤目はリスリアンの唯一の弱点である刺青が存在しない。彼らは刺青に少しでも傷が入ると不死ではなくなり、死亡してしまう。つまりその刺青が存在していない赤目は、異常なまでの治癒能力が備わっており、また死ににくいということになる。だが、いくら「赤目」と言っても、不死ではない。寿命がくれば、あっけなく死んでしまう。また、ある一定の限度を超え、治癒能力を使うと、恩恵が受けられなくなり、死んでしまう、というリスリアンとは違う条件もあった。
「赤目」は、リスリアンと変わらない能力を持って生まれてくる。また、彼らが受けることのできない特殊なものであった。たとえば、リザのような分身を作り、自分自身は戦うことのない能力。自分自身の肉体を異質なものへと変化させ、人間離れした異常なまでの力を得ることのできる能力。
リザは、分身を作ることから、「赤目」の可能性があったため、色々と検査を受けていた。しかし、目が機能していない以上、どうしても分からずじまいだったらしい。
彼らは「核」や「擬似核」の近くにいると、恩恵をたくさん受けるようになり、力を増幅するようになる。それは、いいように聞こえるが、実は真逆だった。
恩恵を受けすぎると体の中に力を蓄積できないようになり、死んでしまう。いわゆる、オーバーヒートを起こすのである。そのため、「死」を速めるのを防ぐために、リザは検査を受けたのであった。
「核」によって生まれた、「呪われし子」とも呼ばれる彼らは、死んだら「生みの親」である「核」のもとへと帰り「核」の一部となる、と聞いたことがある。つまり、蘇ることはない。

そんな「赤目」の者が、何故?
蘇り、どうして干渉してくるのだろう。

「混乱しているな。知ってのとおり、私は赤目だ。だが、恩恵は受けていない」
『?』
思わず首をかしげる。それを見て、彼女は笑った。浅黄色の髪も揺れ、優美だった。
「生まれつき、赤色の目をしている、それだけだ」
しかし、そう言った後、頬に手を当て、うーん、というような表情になる。
「それだけではないな。私もお前と同じ、「禁断の箱」の持ち主だ」
『?!禁断の箱は、すでに四人いる。五人目は存在しないはずだよ』
「うん。そう。簡単にいえば、お前たちが生まれる前の禁断の箱。その腕に刻まれている、刻印によって殺されたけど」
『……』
「ついでに、私は「影」だ。お前をは異なる」
アイと喋ると、なんだか不思議な感覚になる。見かけによらず、横暴な喋り方。動作は喋り方とは違い、優雅で美しい。まるで女神のようなその様子から、百年前に生きていた人とは、嘘ではないような気がするようになり、彼女が言うことをすべて信じてしまいそうだった。
『どうやって、蘇ったの?』
沈黙が嫌になり、尋ねた。
「影の能力は、「死神」と呼ばれている。死神とは、魂を肉体から剥がし、冥土へと送る者。私は、死ぬ間際に己から魂と肉体を放し、冥土へとは送らず、この世へととどめた。まあ、死神の力を少し応用させただけだから、蘇ったとは少し違うな」
彼女は、手を広げ、くるりと一回転。アイの周りの空気だけが和らいだ、そんな気がした。彼女がいるだけで、周りが華やかになっていく。
「で、どうする?お前がどうしても嫌、というのなら、別の宿主を探すまでだが」
笑顔を崩さず、アイは言う。リエラは迷っていた。
正直言って、自分はアイリスの中で、弱い方だと思う。土や、水、瓦礫などに「命」を宿し、分身のようなものにして戦うことはできるが、体力の消耗が激しくて、あまり活用できない。リザのように、常日頃から分身を出すことは絶対できないし、カーフェクのように剣ができるわけでも、レイチェルのように体術ができることもない。役に立てないのだ。みんなに守ってもらうばっかりは嫌である。だから、アイを己の器に入れておくことで、もし戦闘などになったとき、出てきてもらい、戦ってもらおうと考えていた。しかし、
『身勝手だよね…』
「ん?何がだ?」
思わず呟いてしまった。はっと、口を押さえる。アイは大きな目でこちらを見ていた。次の言葉を待っているようで、視線はずっと自分の方を向いている。
『アイ』
「何?」
『一つだけ、お願いがあるの』
「聞こう」
リエラは、自分の考えを彼女に言った。
最後まで言うと、アイは少しだけ息を吸い、こう言った。

「いいだろう。構わない。その願い、聞こうじゃないか」

びっくりして、目が大きく開く。まさか、受け入れてくれるとは思わなかったのだ。彼女はその反応が意外だったらしく、
「なんだ?嫌なのか?」
と聞き返してきた。すぐさまゆるゆると首を横に振りる。
『本当にいいの?』
返事はなかった。が、
「では、お前と私の契約は成立した。よろしく、リエラ」
と、言われた。
その刹那、アイは消えた。まるで花が散るかのように、一瞬にして。
『…?!』
意識はそこで、切れた。





*後書き*
長かったです。読みづらい部分が多々あると思われます。申し訳ありません…。
付け加えますと、イヴァン君は戦えます。叔父さんに銃術を教わってた、ということなので。リザちゃんはもちろん無理です。ランドルに戦ってもらいます。
「赤目」に関して今回は語った部分があります。設定の中で、キルが「赤色の瞳」となっていますが、残念ながら彼女は「赤目」ではありません。あの子にも色々事情があり…。まあ、後々になってそれに関しても書いていきます。
でわでわ、もう体力が限界を迎えたので、この辺で。ありがとうございました^^
              メゾ  

Re: 禁断の箱 ( No.19 )
日時: 2012/05/09 15:40
名前: メゾ (ID: MSa8mdRp)

第十三話  「目的」

「おお、お前から来るとは思っていなかったな。呼ぶ手間が省けたからよしとしよう」
扉を開けると、彼が椅子に腰かけて優雅に紅茶を飲んでいた。イヴァンはそれを見て、少し眉をひそめる。
「……話がある」
「…いいだろう。座れ」
ソファに腰掛けた。彼はその正面に座る。真っ直ぐに見詰めてくる瞳が少し怖く感じた。

*

「話とはなんだ?」
「…アイリスの目的について聞きたい。それなしでは、俺は命をかけようとは思わない」
間を置いて、彼は答えた。
「それについては、この組織の上部の者しか知りえることはできない。よって、答えることはできない…、と答えたいところだが、お前はこの中でも有力な戦士となるだろう。答えないわけにはいかない。
リスリアンの滅亡、核の破壊——。
それが我々の目的だ」
「……何故、攻撃もされていないリスリアンを殺そうとするんだ?」
目線を下げたまま問う。彼は眉間にしわをよせ、言った。
「リスリアンは、今、密かに動いている。己の目的の邪魔となる僕たちアイリスを潰そうとね。この間も、何人か潜入に行かせた隊が殺されたよ。ご丁寧にメッセージを残してね」
「メッセージ…?」
「ああ。『王の血と共に、アイリスの滅びをここに誓う』とね」
イヴァンは黙った。何故、リスリアンはアイリスを狙うのか、そして、アイリスもリスリアンを狙うのか。
「仲間や国民が殺される前に、我々が動き、危険因子を潰す。それが、僕たちが守るべき王からの命令だ」
「命令…。禁断の箱もそう言われているのか?」
禁断の箱は、核から生まれたともいえる。生みの親を殺すようなことに自分は手を貸そうとしているんじゃないだろうか。
この間から、そのようなことばかりを考えていた。何故、自分はこいつらに協力をしなければならないのか。関係ないじゃないか。見知らぬ人のために、自分が犠牲になる必要性はない。リザを危険にさらす必要も、何もない。時を止める力だって、何かのトリックで、仕組まれているだけかもしれない。冷静になれば、そんなことをしてもあいつらには何もメリットがないことに気づけたが、今はそんなこと全く気付けていない。冷静になれ、冷静になれ———。
彼はイヴァンのその迷いにあふれた目を見て、
「迷うのは分かる。だが、お前が戦わなければ、大切なものが消えて行く。それでもいいのか?リザ、叔父、叔母それらが失われてもいいのか?」
「………」
と、言った。イヴァンは答えない。
しばらくして、やっと口を開いた。
「………………俺は、お前たちの隠していることについては、知らなくてもいい」
「…」
「俺は、お前たちとは目的が違う。それでも、いいのか?」
「目的?」
彼が聞いた。イヴァンの目からは、すでに迷いはなくなっていた。真っ直ぐに、覚悟を決めた目で正面を見据えている。

「俺の目的は——、自分の過去を知ることだ」

何も反応はない。しかし、続けた。

「何故、親が目を取ったのか。リザが光を失わなければならなかったのか、その理由を、知りたい。もし、母親が死んでいなければ、そいつを探し出して、聞きだしてやる。死んでいれば、何としても真相を探る。俺は自分の目的を果たすためにここにいる。もちろん、ここに居させてもらうから、それなりに協力させてもらう。それで、いいか?」

彼はそれを聞き終えると、長いまつげを伏せて、少し考えた。イヴァンは自分の心を鎮めるため、冷静になれ、と自分に言い聞かせ続けた。こんなの、自分らしくない。少し熱くなりすぎた、と、後悔する。
やがて、口を開いた。
「ふはっ。面白い。そんな迷いにあふれたやつ、即刻追い出すつもりだったが、思ったより愉快だった。取り消そう。いいだろう。それで構わない。僕も君のために最善を尽くしてやろうじゃないか。その代わり——」
「俺もこの組織に協力してやる」
彼の言葉をさえぎって、続きを言ってやる。彼はニヤッと笑って、紅茶をすする。イヴァンは大きく呼吸をして、深くソファに腰掛けた。
良かった、そう思った。もし彼が答えてくれなかったら、自分は迷ったまま、この組織に居座ることになったはずだ。そんな状態では、きっと足を引っ張るだけ。彼と協力関係を結ぶことができて、気持ちに踏ん切りをつけることができたので、本当に良かったと思った。
いささか緊張していたようで、しれっと汗をかいていたらしい。それを見て、彼が笑う。

空気が和んできたので、イヴァンは、前々から聞こうと思っていたことを聞いた。
「お前、一体いくつなんだ?ずいぶん、見た目と比べて大人っぽいが」
それを聞いて、少しだけ笑顔がひきつる。まずいこと聞いたか、と一瞬不安になったが、その心配は不要だった。
「僕は十五歳だ。お前とは一つしか違わん。契約したのが十歳だったから、見た目はそのままだがな。契約すると、体の成長が止まるんだ。レイチェルやシャネット、カーフェクも似たようなものさ」
反応に困る。じゃあつまり、彼らは見た目以上に年をとっているんだな?レイチェルに関しては、俺よりも年上なんだな?
などと考えていると、急に彼が席を立った。
「気持ちの踏ん切りはついただろう。僕は忙しいものでね。出て行ってもらってもいいか?」
「あ、あと一つ」
身を乗り出して聞いた。

「お前、名前は?」

それを聞いた途端、彼の動きがピタッと止まる。瞳が冷たくなり、表情が固まった。聞かれたくなかったようで、右半身が振り返った状態のまま、睨みつけられるように見られる。その視線が恐ろしかった。

「……僕に名前なんかない。二度とそれに関しては聞かないでくれ」

まずいことを聞いた。そう思う。イヴァンはとりあえず、席を立つ。彼はもうすでにこちらのことは気にした様子もなく、机に向かっていた。とりあえず、何も言わずに部屋を出た。







*後書き*
イヴァン君と、ボス君が中心でした。
レイチェルちゃん達の年齢については、人物紹介の方に書いておきたいと思います。
次回は、ちょっとした戦闘を入れたいと思っています。
では、今回はこの辺で。ありがとうございました^^
                         メゾ


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