ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

陽炎
日時: 2015/12/06 19:02
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: y1N6F4if)

初めまして。
小説カキコで今まで何度も小説を書かせて頂いている王様という者です(^^)
この小説は、田舎に引っ越した主人公の、日常を書いた物語です。

極力途中で投げ出さないようにしますので、最後まで見て頂ければ幸いです。

◆第一話◆ ◇別れと新たな出会い
>>1 >>2 >>3 >>4 >>9 >>12 >>15 >>16 >>19 >>20 >>22
>>24 >>26 >>28 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>38 >>39

◆第二話◆ ◇海
>>41 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>58
>>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>64 >>65 >>66 >>67 >>69 >>70 >>71

◆第三話◆ ◇学校
>>74 >>75 >>77 >>78 >>81 >>84 >>85 >>88 >>91 >>93 >>94 >>95
>>96

◆history

□執筆開始 2013年6月23日
■参照300 7月25日
■参照400 8月2日
□参照500 8月15日
■参照600 9月1日
■参照700 10月9日
■参照800 2014年1月2日
■参照900 2月5日
□参照1000 不明(2014年2月6日から2015年1月3日の間)
■参照1100 不明(2014年2月6日から2015年1月3日の間)
■参照1200 不明(2014年2月6日から2015年1月3日の間)
■参照1300 不明(2014年2月6日から2015年1月3日の間)
■参照1400 2015年1月4日
□参照1500 1月15日
■参照1600 2月3日
■参照1700 2月19日
■参照1800 3月14日
■参照1900 5月1日
□参照2000 5月28日
■参照2100 6月15日
■参照2200 7月16日
■参照2300 8月ぐらい?
■参照2400 10月ぐらい?
■参照2500 12月5日

Re: 陽炎 ( No.1 )
日時: 2013/06/27 00:22
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: .2ijTo35)

 学校の昼休み。
 僕、涼野 憐舞(スズノ レンブ)は、学校カバンを教室の後ろのロッカーから取り出し、ゆっくりと教室を出た。
 すると、クラスの皆が教室から出てきて、僕に声を掛けてくれた。聞こえてくる言葉は「また会おうな」とか、「お前のこと忘れないから」とか、よく聞くような無難なものばかりだけど、僕はとっても嬉しかった。
 『....今までありがとう。バイバイ。』
 僕はこう言って、素早くその場から去った。親に早く帰ってこいと言われたのもあるが、一番は、皆に泣き顔を見せたくなかったからだ。
 階段を降りて、靴箱に着いたとき、僕は後ろを振り返った。すると、そこには誰も見えなかった。

 帰り道、僕は涙を拭いてとある家に向かった。最後には彼女に挨拶がしたい。そう思って優香の家に向かった。

 「あれ、こんな時間にどうしたの?憐君。学校あるんじゃないの?」
ドアを開けてすぐに喋ってきた、この娘が小西 優香(コニシ ユウカ)だ。
 優香とは幼なじみで、幼い頃から病気を患っている彼女は学校には行けないので、毎日僕が家に行き、遊んでいた。
 そんな毎日遊ぶ仲だからこそ、彼女には引っ越しの事を言えずにいた。そんな事も知りもしないで、彼女は立て続けに喋る。「どうしたの?なんで黙ってるの?」いよいよ僕は観念して、彼女に言った。

 『俺は、もう優香に会えないんだ....。』

Re: 陽炎 ( No.2 )
日時: 2013/06/30 11:11
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: Jr1Q7MLw)

 『ふぅ。』

 窓の外から流れていく景色を見て、僕は小さくため息をついた。

 言うまでもなく、窓の外から見えるのは、僕には見たこともない、未知の景色だった。
 辺り一面は田畑だらけ。前に住んでいた土地とは、まるっきり違っていた。
 「ほら、海が見えてきたよ。」助手席にいる母さんが口を開いた。
 前の家の近くにも、そういえば海があった。『海?』僕はそう言って、正面の窓から外を見た。
 「前の家の近くの海と、よく似てるだろ。雰囲気とかが。」父さんが言った。そう言うとおり確かに似ていた。そういえば、小学生の時は海で優香とはよく遊んでいたんだっけ....。

 ....夕日に照らされる海の景色の中に、あの時の光景が見えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「え....。」
 優香の表情は驚いていた。
 彼女はいつもなら冗談だと思って笑ってしまうだろうが、僕のこんな真剣な顔を見て察したのだろうか、急に泣き出してしまった。いつも笑っている彼女が号泣する姿は、とても新鮮だった。

 『田舎に引っ越す事になったんだ。優香が聞くと驚くだろうから、今まで言えなかった。ごめん。』
 一々言いたくもない泥みたいな言葉を、脳内から口に出す。それが、僕の胸を締めつける。

 「待ってよ!あと一日でもいいから!!お願いだからどこにも行かないでよ!!!」

 彼女のその必死な顔を見る度、本当にもう二度と会えないんだな、と心から思わされた。

Re: 陽炎 ( No.3 )
日時: 2013/06/25 03:02
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: RXE99ePl)

 優香と出会ったのは、今日のように、陽炎が見えるくらいの暑い夏の日だった。

 その日は夏休み真っ盛りの時期で、時間を持て余していた僕は、親の友達の誘いで海へバーベキューへと繰り出していた。そしてその日は気温が40度近い猛暑日で、海にはやはり人が大勢いた。
 考えてみれば、その日に彼女に会えたことは奇跡なのかもしれない。あの日僕が海に居なければ、僕等は出会ってすらいなかったのだろうから。

 「おい、人混みに紛れるんじゃないぞ。」父さんが言った。
 全く....さっきから何度も聞いてるよその言葉....。『わかってるって。いつまでも俺をガキとして見すぎだよ。』
 この時の僕は、自分ではガキじゃないと思ってても、他人から見れば完全にガキだった。

 まだ幼かった感性で、別れの痛みを知ることなど不可能だと、僕は後に知ることになる。
 だがそんな事気にもかけないで、この時の僕は馬鹿みたいにこの時を過ごしていた。

 だけど、今となってはそんな事も微笑ましく思えてしまうのだ。


     ■


 『優香がそう思う気持ちも分かるし、僕も離れ離れになりたくないよ。だけど、仕方ない運命なんだよ....。』
 僕は脳内から運命共同体などという言葉を投げ捨てた。

 「もういいよ。もういい....。」
 彼女は疲れたようにこう言って自分の家に入っていった。ご丁寧に、鍵まで掛けて。

 『.....はぁ。』
 初めて優香と会った日はあんなにも綺麗な一日だったのに、別れの時は、それと対称的だった。
 後ろで、子供達の無垢な話し声が聞こえてきた。
 ....一体、誰が間違っているのだろうか。

 僕はこの時、この問いに答えを出すことの難しさを、改めて感じるのだった。

Re: 陽炎 ( No.4 )
日時: 2013/06/24 21:00
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: RXE99ePl)

 家に帰ると、もうとっくに母さんは準備を済ませて、僕を待っていたようだ。
 「遅い!昼休みに学校出たって先生も言ってたのに、なんでこんなに時間掛かるわけ!?」
 おいもう勘弁してくれよ....さっき俺の身に何があったのか知ってんのか?

 『...ごめんなさい。』
 母さんは、僕の明らかにいつもと違うこの雰囲気に気づいてくれないのだろうか。
 「まぁいいけど、父さんがいる車に早く乗りなさい。これから行く所もあるし。」
 これから行く所?これからどこに向かうのだろうか。

 外に出ると、外は蒸し暑かった。天気予報では最高気温は35度を越えるらしい。まだ梅雨が明けてあまり経っていないしこれからもっと上がっていくのだろうか。
 車に乗ると、ひんやりとしたクーラーの風が肌に当たって心地よかった。車の中から家を見ると、もうここから離れるのか、と思わされた。だけど、この家に住めないという事よりも、彼女に会えないという悲しみの方が強かった。

 少し遅れて母さんが車に乗った。「よし、行くぞ。」父さんが言った。


 「着いたわよ。」
 そう言われて窓から外を見てみると、そこには海があった。家から近いこの海は、前に結構遊びに来ていた。
 「ほら、この海にも別れを告げてきなさい。優香ちゃんと色々あったんでしょ。」
 僕は驚いた。母さんがどうしてそんな事を知っているのかに。母さんはやっぱり凄かった。

 黙って車から出ると、やはり外は暑苦しかった。
 波が浜辺に何度も何度も、気が遠くなるぐらい押し寄せて、綺麗な音色を奏でていた。
 人がまぁまぁいる。だけどそんな事気にもしないで、海のずっと向こうを見据えた。

 そうしていると、急に肩を叩かれたので、後ろを振り返った。


 すると、そこに居たのは、紛れもない優香だったのだ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。