ダーク・ファンタジー小説
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- ★パンやの剣士さん!★~朋友(パンヤオ)物語~
- 日時: 2015/05/16 22:59
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=3618
↑凛花と恐怖のゲーム(原作?)
●凛花と恐怖のゲームで、連載していた外伝が
遂に、一つの小説にさせていただきました。
●スピンオフ?的なものです。
●題名は、少し変わるかもしれません。
●凛花、外伝だけ読みたいのに、
めんどくさい、という方は、コチラをご利用ください。
題名について
朋友→友達(中国語)
登場人物
●市村紅(雲雀さん)
●千光寺青 (オリジナル)
●飛前緑
紅の、子供時代のお話です。
というわけで、新しく始めました!
温かい目で、ご覧ください。
次回から、スタートです。
よろしくお願いいたします。
また、親小説の『凛花と恐怖のゲーム』も、よろしくお願いいたします。
《目次》
>>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9>>10
3/21執筆開始
《お客様》
とらじ様
裏の傍観者様(凛花での連載時)
雪花菜様(凛花での連載時)
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.5 )
- 日時: 2015/03/26 19:27
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
_____あれから、数年経った。
緑は、努力を重ね、紅に試合を挑んだ。
もう、負けない。
___その気持ちで。
しかし、紅は、暗い顔をして一枚の紙を見せた。
赤い、薄い紙。
黒い文字が、印刷されたモノ。
漢字と、カタカナが混じり、パッと見、何が書いてあるのかわからなかった。
「戦争召集命令」
えっ・・・・
その、6文字は、
瞬時に頭の中の
思考回路をかき乱した。
「俺さ、軍隊に入らないといけなくてさ、
だから、もう・・・無理」
「嘘だろ・・・俺には、
そんな紙届いてねぇ!」
緑は、受け入れたくなかった。
紅が、遠く離れた世界へ行かされるなんて。
俺は、戦争に行く必要が無いなんて。
世界から、見捨てられた気分だ。
俺は___戦力外かよ。
紅は、頭にかぶった『軍人的な帽子』、深く被り直し、歩き出した。
黒いブーツが、砂を蹴散らし道を作っていく。
「おい!逃げるのかよ!」
緑は、
とっさに叫んだ。
こうでも、言わないと、紅は止まらないと思った。
『行くなよ』その、言葉は紅には届かない気さえした。
「逃げるんじゃねぇ!4年後に、帰って来る!」
顔をグッと下に向けた紅は、
どこか悲しげで。
頬を、冷たい滴が流れ落ちていくのが分かった。
もし、死んでしまったら_____________
「死ぬんじゃねぇぞ!」
「俺が、死ぬわけねぇだろ!緑、青を頼んだ!」
緑色、迷彩柄の、服を着た紅は、カッコ良かった。
ライバルだけれども、
カッコ良かったよ。
このことを、青に言うべきだろうか。
青は、紅が、戦争に行くなんて知らないはずだ。
でも・・・知ってしまえば、悲しむ。
「紅___・・・・」
青の、目から滴がこぼれ落ちた。
太陽の光が、反射して、ダイヤモンドのように光る。
紅が、遠くに行ってしまう・・・
辛いよ。
たまたま、青は、この話を聞いてしまった。
聞くつもりはなかったけれども____
というより、聞きたくなかった。
緑は、紅の姿が見えなくなると、
元来た道をセカセカと、歩き出した。
いつもより、ペースが上がる。
今、青と会えば、紅のことがバレる、そう思った。
途中で、ピタリと、脚の動きが止まる。
ザクリ、と草履と土がこすれる音がした。
目の前に_____
目の前に____青がいた。
体が、固まり、身動きの取れなくなった、青が。
ギュッと、手に力を込めて突っ立っている青が。
「聞いてたのかよ。」
怒り……より、悲しみの、こもった声。
「ゴメン・・・聞くつもりは、なかった。」
青も、罪悪感と、悲しみが、心の中で、
渦を巻いているのがわかる。
俺は、青を無視して、家へ走った。
目を、ギュと瞑り、何も見ないようにして。
苦しい………青にだけは、伝えたくなかった。
脚が、棒みたいだ。
痛くて、痛くて、息が苦しいけれど、
俺は立ち止まらない。
立ち止まれば、振り向き、
青の顔を見てしまいそうだから。
俺は、弱気な青を見たくない。
いつも、笑って、
『向日葵のような』青しか、俺は知らない。
涙が、頬を伝い、背後へ消えていく。
服の袖で、涙を拭う。
男が、泣くなんて。
緑は、家に戻ると、屋根裏部屋へ続く階段を駆け上がった。
屋根裏部屋の、扉を固く閉め、ベットへ寝転ぶ。
止まらない涙が、シーツを黒く変色させる。
(なんで、俺が泣くんだよ!)
いつのまにか、怒りの矛先は
自分へと変化していた。
「ああ゛!」
虚しく、その声は、闇の中へ吸い込まれていった。
シーツを、引っかき、羽を飛ばす。
部屋中を、羽が埋め尽くし、別世界に来たようだ。
重力により、落ちる羽は雪のようだ。
(俺じゃねぇよ!1番辛いのは_____)
1番辛いのは、紅でも、俺でもない______
青だよ。
1番辛いのは。
ずっと、身近な存在、だったのは同じ。
皆、幼馴染だ。
けれども、青にとって、紅は、もっと大切な存在だったはずだ__
『ライバル』の俺たちより、もっと失いたくない・・・
『大切な存在』なのは、間違いない。
そう、断言してもいいと思う。
ベットを叩くたび、羽は宙へまた浮く。
いつの間にか、《落ち着き》が戻っていた。
いつもの自分。
毎朝、鏡の前で会う、俺だ。
*・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「紅_____」
青は、道路に突っ立ったまま、
紅の事を想っていた。
静かな道路なら、人目を気にせず、
泣くことが出来た。
涙が、枯れるまで___
泣くことが出来た。
草履の小さな脚を、
動かし、家へ戻り始める。
「青!」
途中で、誰かに名前を、呼ばれた気がして
歩みを止めた。
振り返ったが、誰もいない。
もし、呼んでくれたのが、紅だったらどれだけ嬉しかったことだろう。
青は、俯き、また歩み出した。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「青・・・緑___」
表情は、帽子に隠れて見えないが、
『悔しさ』『悲しみ』『怒り』の混ざった複雑なものだ。
(みんな、元気でな。)
心の中で、
最期になるかもしれない
挨拶を送る。
バスに乗り込み、
赤紙に指定された場所へ向かう。
料金は、後払いでいいらしい。
車掌は、赤紙を見せると、微笑んで、"どうぞ"と手を動かした。
「絶対・・・生きて帰ってくる!」
紅は、前列右側窓席をとった。
お気に入りの席だ。
大きな荷物は、足元に置く。
黒いコートは、隣の席に置かせて頂く。
右手には、しっかりと赤紙が握られている。
『出発いたしまぁーす』
窓枠に肘をのせ、静かに、故郷を離れて行った。
視線の先に、パン屋がある。
美味しそうな香り漂う、帰り道。
___私の家
クラッ___バタッン!
いきなり、
めまいのようなものがして、青は倒れた。
なんだか、吐き気もする。
(疲れているのかな…?)
体を、起こすと全身に、痛みが走った。
「っ!」
顔が、痛さに歪む。
みると、右足から血が流れ出ていた。
流石に、これはおかしい。
さっき、こけたのも、
そこまで怪我するようなものではないはずだけれども。
______
村の、診療所に青の姿があった。
今は、道場の昼休み。
右手に、ビニール製のバックを持っている。
これは、汗を拭いたタオルなどを入れるものだ。
「千光寺さぁん!」
私の、名前が呼ばれる。
ソファーに置いた、バックとタオルを取る。
診療室に入ると、いつもの先生が迎えてくれる。
「おかぁさんは?」
「ナイショ。心配かけたくないから。
お金は、くすねてきたけれど」
青は、右手に小銭を持って見せる。
「ふぅん。んじゃ、今日はどうしたの?」
「貧血・めまい・吐き気・出血がして……」
右足を、上げて見せつける。
「うん・・・ここじゃ、
ワカラナイから、町の大学病院でも行ったら」
「そうする」
医師に、紹介状を書いてもらい、受け取ると、
立ち上がって、診療室を出た。
カウンターを通り過ぎ、外に出る。
私は_______どうしちゃったんだろう。
少し冷たい風が、青を包み込んだ。
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.6 )
- 日時: 2015/03/22 12:35
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
青は、紹介状を机に置いて、居眠りをしていた。
コクコク、と頭が動く。
また、パチっと目があく。
これが、もう10回以上は繰り返された。
明日、病院に行くこととなり、道場を休む、と決まった。
行きたいなぁ〜、そう、思っても、『自分のためだから』と言い聞かせる。
壁にかかった、白い道着が目に入ると、余計に思いが強まった。
でも、診察と検査だけだから………だから、午前中には、終わるよね?
午後から、行っても、間に合うはず。
青は、立ち上がり、バックに道着とタオルを詰め込んだ。
「絶対、行くよ。」
パチンッ
___また、世界から灯りが、一つ消えた。
______________
小鳥の囀りが、青の耳に飛び込んでくる。
朝か……。寝ぼけ眼をこすり、ゆっくりと、体を起こした。
床には、水色のタオルケットが落ち、
昨日の寝相が悪かったことを、暗示していた。
Tシャツと、短パンの姿になった青は、
バックを持ち、リビングに、そぉっと降りて行った。
時刻は、朝の6時30分。
もう、とっくにパンの仕込みが始まっているだろう。
道場、パン屋、
ふたつを掛け持ちしている父親は、凄いと思う。
朝は、パンを作り、昼は母親に店番を頼み、道場へ。
夕方に、戻って来るや否や、2回目のパン作りを始める。
店の、厨房からは、パンの匂いが微かに漂ってきていた。
お腹が、ギュルルルと鳴り、朝食の催促をする。
今日、食べてもいいのかな?
少しだけ、そう思い、出来たてのパンに手を伸ばした。
このパンは、形がおかしくなってしまったものなので、食べてもいいのだ。
ホカホカのパンは、火傷しそう。
「あちっ」
指先を、真っ赤にしながら口の中へ押し込む。
ゴクリ
喉を、パンが通り過ぎて行った。
(美味しかった!)
青は、満足♪と、家を出た。
おっと!!と、一度家に戻り、
母親の財布から、病院代&バス代を拝借した。
病院へは、バスで向かうのだ。
"拝借"したものは、ポケットの中へ突っ込まれた。
草履で、地面をこすりながら、バス停へ向かう。
朝の、空気は冷んやりして、心地良い。
真っ青な空は、青く澄み切り、飛んで行きたいくらいだ。
バス停に着くと、すでにバスが来ていた。
乗り込み、座席を取る。
ハミングで、適当に作曲した歌を、繰り返し歌う。
「フンフフーふふふっふっふっ♪」
ほとんど、客のいないバスは、
プシュー
と排気ブレーキが音を鳴らし、動き出した。
病院までは、1時間もかからないはず。
膝の上に、バックを置き、外の景色を眺める。
クラッ
またしても、貧血のような、症状が出た。
窓に、頭をぶつけ、ジンジンと痛む。
「イタタタ……」
"ドジな自分"は、こんな事でも、怪我をしかねない。
ハハハ、と苦笑いをする。
『次は〜大学病院前〜』
待ってましたぁと、青は立ち上がった。
-----------
目の前に、いきなり青い髪の少女が現れ、
赤い髪の少年は驚いた。
伊達眼鏡をずらし、少女を眺める。
見たことある、そう思った。
「……青」
千光寺青
俺の、習っている道場のムスメ。
パン屋でもある、家庭に育ってか、早起き野郎。
遊びは、4時半でも、俺の迎えに来る。
迷彩柄のキャップを外し、身を乗り出す。
青の背中を、いきなり強く、押した。
よろっ
よろけたものの、
青は、前の座席に掴まり、立ち上がった。
「何スルンデスカァー?……見たことある、赤髪野郎だな。」
赤髪の少年は、ニヤリと笑い、言い返す。
「どっかで、見た覚えのある、青髮野郎か。」
ピキッ、と音を立て血管が10本切れた。
「野郎ではないです。」
そう、言い捨てバスを降りた。
振り返ると、赤髪野郎こと、
『市村紅』が、真っ赤な舌を出して、笑っていた。
紅?戦争に行ったはず………
パチっ
目が覚めた。
青は、バスの中。
前の席には、誰もいない。
(夢か………)
病院に入ると、青の苦手なあの臭いがした。
「ヴッ!」
鼻を摘み、カウンターへ急ぐ。
「はい。どうされましたか?」
「診察をお願いします。」
看護師が、バインダーに紙を挟み、青に渡す。
グイっと、押し付けられ、バシッと受け取った。
バインダーには、体温計ものせられていた。
「その紙に、質問されてること、全部書いて。体温も測って。」
すっかり、看護師の態度の悪さに、膨れた青は、
重い体を、ソファーに投げ出した。
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.7 )
- 日時: 2015/03/23 23:11
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
紙に、ペンを走らせる。
ガリガリガリ………
何なんだよ!
体温計を、脇に差し込む。
・・・・なにこれ。長くない?
何分経っても、音はならない。
気になって、覗いて見ると、
「エラー」の文字が、映し出されていた。
「チッ」と短く舌打ちをして、カウンターに向かう。
交換してもらった体温計を、また脇に差し込む。
ピピピピピピピピ・・・
電子音が、響いてくる。
指先で、体温計を引き抜き、画面を覗く。
「さんじゅう・・・7・7?」
えっと・・・これって、熱あるっけ?
わかんない!
カウンターへ、体温計を返却して、ソファーに戻る。
「千光寺青さん!」
私の、名前が叫ばれた_____
_____
数日後。
病院へ、青は呼ばれた。
今日は、道場の大会練習の日だけれども。
また、薬品のにおいが充満する、病院の中へ潜入する。
練習へ、行きたい。
あの、騒がしく、汗臭く、暑苦しい道場へ。
右手に、下げられたビニールバックが、静かに揺れる。
「千光寺さん。」
私の、名前が呼ばれる。
看護師に、案内され部屋に入る。
椅子を勧められ、会釈をして腰掛けた。
「青ちゃん、あなたの病気はね………」
サッと、青の表情が曇る。
手に、力が自然とはいる。
「あなたはね………『急性リンパ性白血病』だと分かったの。」
青は、バックを床に落とした。
バサリと、中身が床に散乱する。
「白血病_____」
テレビとかで、よく言うアレか。
でも、治る確率は高いらしい。
「でもね、治療しないままで経過をみると急性白血病患者さんは2〜3ヵ月で死亡しちゃうの。
現時点の最良の化学療法を行った時、小児急性リンパ性白血病では、95% 以上が完全寛解となり、
標準リスク群の80%以上、高リスク群 (年齢10歳以上、初診時白血球数3,000/μL 以上、
Ph染色体陽性など)の60%以上が治癒するものと期待されてるのよ。
ただし、成人急性リンパ性白血病では、約80%が完全寛解となるけれど、化学療法だけでは、寛解例の30%程度しか治癒は期待できないわね。
しかし、成人急性リンパ性白血病の約30%を占めているPh染色体陽性急性リンパ性白血病に対して、
イマチニブやダサチニブが著効することが判りましたので、このタイプの急性リンパ性白血病の治癒率も相当向上するものと期待されるわ。
再発しても、亜砒酸やタミバロテンがよく効くから、小児急性リンパ性白血病以上に治癒率の高い白血病になるから、安心して大丈夫よ。
65歳未満の急性骨髄性白血病では約80%が完全寛解となり、寛解例の40%前後が治癒するものと期待されてるわ。
人口の高齢化に伴い患者数も増加しているから、新しい治療法も求めての臨床研究が多数行われており、その成果が期待されてるのよ。
全ての病型で言えることだけれども、年齢が若ければ若いほど、治る確率は高くなるから!
それでも、日本人の平均寿命が毎年延長していることで分かるように、最近では日本人全体の体力の衰えが遅くなってきているから、55歳になっても体力的に元気で通常の移植に耐えることのできる人が多くなったの。
だから、青ちゃんは、治る確率が高いから。大丈夫。ね、治療しよ?白血病の化学療法は、プレドニソロン、ビンクリスチン、ダウノルビシンないしはドキソルビシン、シクロフォスファミド、アスパラギナーゼ
を中心とする併用療法するの。
ね、やろう?長々、話してごめんね。ついいつもの癖が……」
青は、少し俯いて、考えた。
というより、内容を一生懸命に整理していた。
意味わからないよ………
子供に、こんなこと言われても!
「髪の毛、抜けるのよね?」
うん、と医師は頷いた。
自分の髪の毛を優しく撫でる。
この髪も、治るまでしばらくお別れか………
少し、寂しい気もしたが、治るに越したことはない。
「やります。」
青は、髪の毛を離し、また医師の目を見つめた。
「分かった。じゃあ、早速しようかな?あっ、入院してからだよ?」
コクンと、青は頷いた。
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.8 )
- 日時: 2015/03/26 20:14
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
病院の、ベットの上に青はいた。
青には、管が繋がれ、今まさに、抗ガン剤治療が行われている。
枕の上には、青い短い髪の毛が、散乱していた。
最初は、吐き気など体も対応出来ていなかったが、今はもう慣れた。
ベットの上で、雑誌を読んだり(刀雑誌)、見舞客と会話を楽しんでいる。
会話は、感染予防のため、電話で行う。
個室の中に、外と繋がる電話が置かれているのだ。
顔も、見ながら話すことができる。
ガラス張りの部分が、少しだけあるからだ。
ほとんどの時間、青は寝ている。
今日も、また……
『今日は、紅がやってきた。
青は、受話器に手を伸ばす。
紅も、受話器をとった。
『紅!いらっしゃい!』
受話器から、変わらぬ声がする。
『元気か?』
コクン、と頷きながら、会話を進める。
『髪の毛が、ちょっと抜け始めたけれど、
そこまで苦しくないよ!』
受話器を持っていない、左手で頭に被ったニット帽をとった。
『わっ!出家したみたいだな。』
『ハァ!?坊さんってこと?』
ガバッと体を起こし、
顔を真っ赤にして、『坊さん』は怒った。
けれども、楽しそうだ。
この調子なら、治るかもしれない。
青は、ニット帽を頭に戻し、また横になった。
『今日は………ありがとう。もう、寝るよ。』
今にも、消えそうな声を出し、青は目を閉じた。
スースー、と手に握ったままの受話器から音がする。
『おやすみ。』
紅が呟くと、青は小さく頷いた。
受話器を元の位置に戻し、病室を後にした。
「………待ってるからな。」
紅は、小さくつぶやく。
帰ろうと、ロビーに降りた時、入り口から
アイツが入ってくるところを目撃した。
「緑!」
嘘だろ ……………
慌てて、エレベーターに向かう。
青を、取られたくない………
嫌だ………
エレベーターは、まだ来ない。
しまった!
エレベーターの止まっていたのは、青の病室のある階。
きっと、緑だ。
その時は、なぜか、
他の人物という考えが浮かばなかった。
紅は、階段へ向かう。
5段飛ばしくらいで、昇って行く。
急げ……………
途中で、『チンッ!』とエレベーターが、
到着した音が聞こえた。
ヤバイ………
青の階近くからだ!
スピードが、グンと上がる。
パタパタパタパタ………
汗が、吹き出し息切れがする。
残り、13段。
一気に、紅は駆け上がった。
足元に、金文字で『18』と書かれた数字が見える。
ついに、ついた。
遂に!
キョロキョロ、辺りを見渡し、青の病室を探す。
『千光寺青様』
そのプレートを探す。
どこだ………
緑より、先に着くんだ。
確か、角部屋。
日当たりの良い………南か、
その時、一つの病室の前に、
緑が立っているのが見えた。
「緑………」
受話器を、緑は落としそうになった。
「紅………」 』
青は、起き上がった。
寝ぼけ眼をこすり、辺りを見渡す。
さっきまでの、
出来事は、夢だったようだ。
だって、紅が来てくれるわけがない。
寂しさから見た、夢_______
だいぶ、リアルな夢だった。
窓からは、夜景が見える。
もう、夜のようだ。
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.9 )
- 日時: 2015/03/26 19:31
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
膝の上に、置いた本がズルリ、と床に落下した。
普段、青は、本を読まないのだが、
入院中は、することがないので、本を読んでいる。
難しい書籍は、ほとんどなく、ファンタジー系の小説が多い。
どれも、緑が買ってくれたもの。
青は、落ちた本を拾おうと手を伸ばした。
その時、もう一つ腕が伸びてきて、本を拾い上げた。
あっ………私、今クリーンルームにいないのか。
今は、誰でも入ることのできる、病室なんだ。
病院の中では、どこにいても、同じ場所にいるようにしか思えない。
「!?」
青は、体を起こし上を見上げた。
緑。
「ありがと。」
緑の手から、サッと本を奪うと膝の上に乗せた。
「青、こういうの読むんだ。買ったけれど、読むんでくれるか、心配だったんだよね。」
ベットの端に腰掛けた蛇月は、さっき膝の上に置いた本を奪った。
パラパラと、長い指でページをめくって行く。
「返してよ!」
体を起こし、本に手を伸ばす。
指先を、ピクピク動かすが、届かない。
「うぁぁっ!」
手を伸ばしても、
私が数センチ伸ばせば、緑も数センチ離れる。
「返しなさいってば!」
青は、絶叫にも近い声を出す。
パタン!
緑は、本を閉じた。
「分かった。返すよう。」
テーブルの上に、緑は本を置いた。
青は、すかさず手を伸ばす。
ピタッ
青が静止した。
青の額には、緑の爪が刺さっている。
「いっでぇー!」
額を押さえた青は、バフンッとベットに倒れた。
それを見て、緑は笑っている。
「緑ぃ!」
青は、緑の道着の袖をつかんだ。