ダーク・ファンタジー小説
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- 異世界に転生したのに死んでいた!
- 日時: 2017/01/13 23:41
- 名前: アンデット ◆IYbi.dCFgs (ID: RwTi/h2m)
”人間なんて嫌いだ。神様も嫌いだ。生きるのなんてウンザリだ”
不幸な人生を送ったアラサーの俺は、最愛だったはずの妻に裏切られ、ついには交通事故で死んでしまった。しかし、ひょんなことから異世界へ転生することになり、今度こそ幸せな人生を満喫してみせる!と意気込んでいたのだが、いざ異世界転生してみると、俺はすでに『死んでいた』——!?
【あてんしょん】
〆小説家になろうに転載中です。
〆ギャグファンタジーな小説です
剣とか魔法とか魔物とかアンデットとか勇者とか死霊術師とか色々ごった返しています。ダーク・ファンタジーを目指そうと思ってたのに筆者がコメディを挟まないと死んでしまう呪いにかかっているせいでコメディちっくな設定になってしまいました。どうしてこうなった/(^o^)\
〆オリジナルキャラクター募集について
ある程度話が進んでなおかつ余裕があれば
目次======================
序 章『転生』>>001->>004
第1章『脱出』>>005->>007>>009>>011>>014>>015>>016>>017>>018>>020>>024>>025>>026
- 不幸話 ( No.1 )
- 日時: 2016/08/08 18:59
- 名前: アンデット ◆IYbi.dCFgs (ID: 3qG9h5d1)
【序章】転生
生まれてから死ぬまで、とにかく俺は不幸だった。
あぁ、どうせこれが最期なんだ。誰でもいい、俺の不幸話をどうか聞いてくれはしないだろうか。
体を襲う痛みが遠のく中、まさに今死のうとしている自分に追い打ちをかけるように走馬燈が駆け巡る。死ぬ前に不幸な人生を振り返ったところで、一体何になるというのだろうか。精神的にも殺しに来ているというのなら、オーバーキルにもほどがある。
しかし、誰かに俺の苦労話を聞いてもらうだけでも、心が楽になりそうなものだ。死ぬ時ぐらい、最後に我儘を言ってもいいだろう。
さて、話を始めるのはいいが、子供の時の話はよそう。病弱体質で外で遊んだりできなかったのもあり、小学生の時から本が友達みたいな人間だった。なので、まぁ、案の定標的にされたわけだ。何のとは言わないが。
辛い学生時代だったけど、大学に行きたかったのでとにかく頑張った。そりゃあ血反吐を吐く思いで頑張った。辛い思いをしながらも、小中高と必死に勉強をしたものだ。
そして入試当日に倒れて病院送りになったり、その1年後の入試当日には居眠り運転の車にはねられたりで、2年浪人の後、良い大学に合格して晴れて大学生になった。
だがしかし、その大学に学生の頃の知り合いが——そりゃあもう顔も忘れられないほどお世話になった男が3年にいたわけだ。しかもその男はしつこくも俺の顔を覚えていたみたいで、あろうことか俺に絡んできたのだった。で、その男に話しかけられた俺は学生時代のトラウマを思い出し、そして同時に心が折れ、引きこもりになった。そして極めつけに、奴が卒業する1年間はとにかくネットゲームにはまりこみ、たった1年でものの見事に堕落したダメなオタクになってしまったのだった。
で、結局大学は中退し、俺が引きこもりのニートに進化した半年後、母親が病気で死んだ。唯一俺の味方だった母親の死をキッカケに、俺はようやく目を覚ました。別の大学を受験して、4年間死ぬほど勉強して、上場な会社に内定を決めたが、入社3年目に会社の上層部が法に引っかかるような事をやらかしたらしく、ガサ入れが入ったり何やらごちゃごちゃしているうちに、俺はクビになっていつの間にか無職になっていたのだった。
30歳手前にして無職。
ちょうどその頃父親が煙草が原因で死に、とうとう俺は首を吊ることも考えた。
が、あの辛い学生時代を生き抜いただけあり無駄に忍耐力はあった。
その時出会った彼女の支えもあり、(長いのでその間の事はすっ飛ばすが)死ぬ気で頑張って何とか転職に成功した。
その頃にはすでに30歳をまたいでいたが、そんなのはもはや気にしない。俺を支えてくれた彼女のため、いや、途中に妻になったわけだが、とにかく愛する人のためにお仕事を頑張った。絶対幸せにするという一心で、お金もかなり貯めていた。
しかし、妻は……いや、あの女は詐欺師だった。
ごっそりお金を持って逃げられ、それが結婚詐欺だという事に気づいたのが、何を隠そう今日。そして警察の方とお話しをして、抜け殻になって帰っていたところ、顔を真っ赤にした男——飲酒運転をしていたトラックにはねられて、今。目の前にタイヤが迫ってきたところで、たった今俺の人生は幕を下ろした。
まぁ、何と言うか。
まるで小説のネタにでもなりそうなほど壮絶な人生だったと思う。
未練は山ほどある。
しかし、今更この事故を無かったことにして生きたいとも思わない。
普通に生きたかった。この世に神様がいるなら何で俺をこんなに不幸にしたのか聞いてみたい。この不幸の半分、いや、3分の1もなくていい。せめて幸福な瞬間があっても良かったんじゃないか? せめて、あの女が詐欺師だと分かる前に死にたかった! だったら俺は最低でも”詐欺に遭った可哀想な男”じゃなかったのに!!
信じてた人に、裏切られた。
努力は実を結ぶと信じてたのに、裏切られた。
不幸なのは今だけだと思って頑張ってきたのに、報われる事などなかった。
もう人間なんて嫌いだ。ついでに神様も嫌いだ。生きるのも嫌だ。
人生イージーモードでなければ、もう生きるのなんてウンザリだ。
さぁ死神でも閻魔大王でもなんでもいい、さっさと俺を地獄に連れていくがいいさ。
(て、あれ)
そこで、俺はふと気がついた。
感覚という感覚はない。しかし、自分の意識はやけにはっきりしている。
耳があるのか分からないが、どこかで誰かが泣いている声がする。
目の前に何かがいた。黒いボロボロの布切れを纏った、白い顔の何か。大げさなほど大きな鎌を持つ手は、恐ろしいほど細い。と、そこまで考えて気がついた。
既視感、というよりもその姿の何かを俺は知っている。こいつは、もしかしなくても——
(死神?)
白い肌だと思っていたそれは、肌ではない。
細い指だと思っていたそれは、指ではない。
すべて骨だ。
そう、まるで絵にかいたような死神が俺の目の前にいた。
>>002
- 奇妙な出会い ( No.2 )
- 日時: 2016/08/09 10:29
- 名前: アンデット ◆IYbi.dCFgs (ID: KG6j5ysh)
その死神は引くくらいむせび泣いていた。
横隔膜など無いであろうに、嗚咽を漏らしている姿はいささかシュールである。
それよりも何だこいつは。
俺の目の前にいるって事は迎えに来たのだろう、なのにさっきから何を突っ立て泣いてるんだ。
(あのー、もしもし)
話しが進まないので、とりあえず声をかけてみることにした。
それが声に出ているかは知らない。口を動かした感覚はない。しかし、その声は死神に届いたようで、死神はボロボロのローブで涙を拭い、ようやく俺に話しかけてきた。
「あぁ、ずびまぜん。貴方の命を刈り取った本人でありながら……。何と言いますか、あまりにも不幸すぎる貴方の走馬燈じんせいに涙が止まらず……」
(えぇ……)
どうやら、この死神は俺の走馬燈見ていたようだ。誰かに聞いて(見て)ほしいと言っていたのは俺だから、特に責めようとは思わない。が、しゃっくり上げて泣くほどだろうか。
しかし、初めて同情らしい同情を受けて、何だかこちらも胸に込み上げてくるものがある。
分かってくれるか、死神よ。俺のこの無念を。この辛さを。
いや、今はそんな事を言っている場合じゃない。
色々どうなっているんだ。俺は死んだはずなのに、なぜ俺は今ここにいる。なぜ意識がある。そもそもここはなんだ? 死後の世界か? それとも地獄か。
そう視線(今の自分に目はあるのかは分からん)を送ると、死神は一礼した。
「申し遅れました。あらかた予想はしていたと思いますが、私は死神でございます。貴方の命が尽きたので、この鎌を使って貴方の魂を体から切り離しました」
それが私の仕事で、と言うと、死神は手にしていた大きな鎌を肩に担いで見せた。
死神、やはりそうか。こうして鎌を構えると結構様になっている。筋肉とか無いのに、ほんとどうなってんだろうね。やや決め顔なのが癪に障る。
そんなしょうもない事を考えていると、死神と名乗った骨は鎌を背負い直して咳ばらいをした。
「さて、おそらく貴方は疑問に思っている事でしょう。なぜ自分がここにいるのか、そもそもここはどこなのか、と」
その通りだ。俺の方を見つめている死神に向かって頷いてみせると、死神はこちらに頷き返しながら話を続ける。
「まず、ここがどこかという話ですが……どういいましょうか。貴方が分かりそうな言葉で言えば、世界と世界の間です」
(世界と世界の間?)
「はい。貴方の住んでいた世界と、冥府の間……此岸と彼岸の狭間です。つまり三途の川ですね。星々をそれぞれの世界に見立てたとすれば、ここはさながら宇宙空間、といったところでしょうか。あぁ、天国や地獄のような場所もありますが、ここではありませんよ」
(は、はぁ……)
死神から噛み砕いた説明を受けるが、正直よく分からなかった。
そもそも冥府って本当に存在するのか(そんなことを言い始めたら死神にも同じことが言えるし、きりがないのだが)。自分で地獄なんて言ったが、そもそも別の世界だとかが本当にあるとは思わなかった。しかし、冥府でも地獄でもない場所って、一体何なんだ?
うーん、と首を捻っていると、死神は困った様に笑った。
「まぁ、普通はそうですよね。分からないのも無理はないでしょう。とにかくここは”色んな世界と繋がってる特別な場所”、と考えていただけえれば良いと思います」
(イマイチ理解はできれないが、そういう事で話を進めてくれ)
とりあえず、自分が人知の届かないような特殊な場所にいる事は分かった。
ここについて深く考えるのはやめよう。それよりも次だ。
俺が死神に視線を向けると、死神は俺の様子を察して頷いた。
「分かりました。それでは次に、なぜ貴方がここにいるか、ですね」
(うん、それが一番聞きたかった)
「そうですね……言ってしまえば、貴方と話しがしたかったので私が連れてきました」
「アンタが?」
「はい」
死神はそう答えると、ふうとため息をついた。
その姿は、どこか憂いているようにも見える。
「いやはや、見させていただきました。貴方の人生、貴方の最期、貴方の思い、そのすべて」
その言葉を聞いて俺はたちまち自分の人生を思い出し、押し黙った。
自分の人生に対する悲愴で心が痛い。
死神の言葉で落ち込んだのを見てか、死神は慌てて、しかしどこか優し気に言葉を紡いだ。
「大丈夫です。私はどうか不幸を全うした貴方に報われてほしいと思って、貴方をここへ招いたのです」
(……どういう事だ?)
「もし……貴方が望めば、の話ですが」
死神は、そう前置きをした上で言った。
「もう一度チャンスがあるとしたら、”転生”してみたくありませんか?」
>>03