ダーク・ファンタジー小説
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- 怖い恐い話
- 日時: 2017/07/06 13:54
- 名前: 兎妬 (ID: 2XDHCgd7)
『 窓 』
私は換気以外、窓はあんまり開けない方だ。
なぜかというと、怖いのだ。窓を開けると入ってくるのは風だけではないから。霊感がある私にとって、窓を開けると入ってくるのは空気だけではなく、もう人間ではないものが入ってきてしまうだ。私は今まで、そういうものを何度も見てきている。ほとんどは何かを語りかけてきたり、記憶を見せてくるだけだが、襲ってきたりするのもいた。
その時から、私は窓を換気をするとき以外は絶対に窓は開けないようにしていた。すると、人だったものは全く入ってこなくなった。それで安心していた。
それでいいと思っていた。
それで解決したと思っていた。
私は浅はかだった。
幽霊と名前は変わっても元は「あれら」も私たちと同じ人間だったのだ。
窓をほとんど閉めきるようになってから入ってこなくはなった、けど窓の前に佇んだり窓を叩いたりとしてきた。でも、そんなことは予想の範囲内なのでこちらが気にしなければ全然問題なかった。窓に佇んでいるならカーテンを閉めればいいし、叩いてくるならばイヤホンを付けて音楽を流せばいいだけだった。これで問題はなかったのだ、なかったはずなのだ。でも、その日はいつもと違った。
その日の夜、私はいつものように服を寝巻に着替え布団に入った。窓の外に何かの気配を感じつつも、窓は開けずにそのまま眠りについた。
その夜、私は夢を見た。夢の中で私は自分の部屋にいて、まさに寝る直前だった。まるで巻き戻したビデオを見せられている感覚だった。布団に入り、寝ようとする。けど、夢の私は違うことをした。寝ようとしていたのになぜか起き上がって、おもむろにカーテンを開けた。カーテンを開けると窓にはある一人の女性が立っていた。その人物を見て私は目を見開いた、そんなはずはないと思いたかった、でも目の前にはなんど目をこすってもそこには同じ人物がっていた。母さんだ、あれは間違いなく私の母さんだった。窓の外に立って自分を見ているのは忘れもしない、私の母さんだった。
母さんは四年前に病気で亡くなっている。昔から体が弱かった母さんには病気なんて耐えられるはずがなかった。母さんは生前と変わらず優しい笑顔を私に向けていた。久々に見る母さんの笑顔に目が熱くなり、少し泣きそうになる。それが母さんにも見えたのか、母さんは心配そうに私を見ている。窓越しでなく、目の前にいたらきっと私のことを抱きしめてくれるだろうな。母さんはとても優しいひとだったから。
そこで、目は覚めた。
身体を起こし、カーテンを閉めきった窓を見る。まさか、あれはただの夢であって現実に母さんはそこにはいないのだ。母さんには亡くなってから一度も会ってないのだ。だから、いるはずはない。確かに、あの優しい母さんなら霊感がある私のことを心配してきてくれているかもしれない。あの優しい瞳で、また私を見てくれるかもしれない。
でも、亡くなってから一度も会いに来てくれていないのだ。きっと居るはずがない、けど先ほどから何かがいる気配が消えない。きっと違う、そうに違いない。窓から目を離せない。夢に出てきた母さんの優しく、暖かい笑顔が頭に浮かんでくる。
少し開けるだけなら、少しくらいなら大丈夫だろう。母さんでなかったらすぐに閉めればいいのだ。そうだ、少しだけ開けるくらいなら…。ゆっくりとカーテンに手を伸ばし、窓の鍵の部分に触れる。カチャ、と音がしてゆっくりと窓を開けた。するとカーテンの隙間から見慣れた服と肩まで伸ばした髪が少し見え、耐えきれずカーテンを勢いよく開けた。
「 や っ と 開 け て く れ た の ね 」
そこにいたのは母さんではなく、見るも絶えないほど見た目が酷い女だった。
肩まで伸ばした髪はべたべたと粘っていて、ものすごく傷んでいた。そして、母さんと同じ服を着ていたけれど服もしわだらけで、物凄く汚れていた。顔はあの優しい母さんな訳はなく、クマやシミやニキビなどがたくさんある本当に酷く、恐ろしい顔だった。
「 や っ と は い れ る 」
体の中に自分ではないものが入ってくる感覚を最後に、私の意識はなくなっていった。
この物語はフィクションです、またこの物語は自作です。
初めまして、ここまで読んでくださりありがとうございます。この物語を作った兎妬と申します。
ホラー小説や怪談話が好きでして、その手の話をよくネットで漁っています。また、私が言うのも恥ずかしいのですが自分も少々霊感はある方だと思っています。あまりはっきり見える方ではありませんがそれなりの心霊動画や、話を聞いていると頭痛に襲われたりすることがあります。
そんなことはさておき、どうだったでしょうか。初めて書いてみたのですが書いていて、楽しかったです。
一応、短編集ということで合っているのでしょうか。短く、怖い話をちょくちょく書いていくつもりです。
では、ここらへんで今回は切らせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
目次はこちら >>23
- Re: 怖い恐い話 ( No.13 )
- 日時: 2017/05/31 20:47
- 名前: 兎妬(コメ返し) (ID: 2XDHCgd7)
萠さん
コメントありがとうございます。萠さんの解釈もとてもいい恐さを持っていますね。解釈は人それぞれですが、その解釈もとてもいいですね。
楽しんでいただけて何よりです。
- 『しいちゃん』の感想 ( No.14 )
- 日時: 2017/06/01 06:56
- 名前: 萠 (ID: 1ZQMbD0m)
なんか、自分自身の嫌な部分を見せられたような感じです。
そうなんですよネ。
好きな人とか大切に思う人、怖い存在の人なんかには、(自分は)真心のこもった接し方をして、『君はいい人だね』なんて言われるのに、
物や、どうでもいいと思っている人や、いつも無償の愛をくれる人なんかには、(逆に)てきとうな接し方をしたり、平気で酷い事が出来たりするんですよネ。しかもその事を直ぐに忘れてしまったり。
同じ自分なのに… 冷静に考えてると、凄く酷いですネ。
ちょつと考えさせられました。でも楽しいです。ありがとうございます。
- 『 修学旅行 』の感想 ( No.15 )
- 日時: 2017/06/03 05:23
- 名前: 萠(めむぐ) (ID: 1ZQMbD0m)
僕は、生まれ変わり、輪廻転生を信じてるんですね。
実は僕も戦争関連の話では自然に涙が出る事がよくあります。
過去生で戦争に深く関わってたのかなー なーなんて勝手な解釈をしています。
実は実は僕も、自分の話した言葉にビックリした事があります。
会社を辞める辞めないの騒動があり、上司と面接した時に、自分の思いとは別の謙虚で前向きな発言を自分が話していて、そしたら上司の表情が急に穏やかなになり… あれは一体誰が話したのか、今でも不思議です。
なんかいつもまとまらない感想で恐縮です。
- Re: 怖い恐い話 ( No.16 )
- 日時: 2017/06/16 17:47
- 名前: 兎妬 (ID: 2XDHCgd7)
『コインロッカーベイビー』
皆さんは、コインロッカーベイビーという言葉を知っていますか?知らない方の為に簡単にご説明いたしましょう。
コインロッカーベイビーとは、都会の町や駅の中にコインロッカーというものがあります。お金を入れて、荷物を中に入れておけるとても便利なものです。ですが、そのコインロッカーに荷物だけでなく別のものを預けてしまう人がいました。それがベイビー…赤ちゃんです。育てられない赤ちゃんを、狭いコインロッカーに置いて行ってしまう方が実際にいたのです。そして、おいて行ってしまったほとんどの方が、若い女性なのです。今回は、ある若い女性のお話をしましょう。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私は、5年前の冬に許されないことをしました。当時の彼氏との間にできてしまった子供を、コインロッカーに置いてきてしまいました。数か月後に赤ちゃんの死体が見つかったようですが、私は逃げるように遠くへ引っ越していました。そして、社会人になった私は毎日忙しい仕事に追われていて、そのことをすっかり忘れていました。季節は夏になり、暑い日が続いている中仕事が多くなり始めていて、疲労もピークになっていました。
ある日、会社に一人残って仕事をしているとデスクに置いてあったペンが一つ、床に落ちました。落ちたペンを拾うと、また一本床に落ちました。この時点ではまだ気にもしていませんでした。また落ちたペンを拾うと、また一本落ちました。この時の私は、仕事の疲れから違和感を感じることなく、ただイライラしていました。再び落ちたペンを拾うと、今度は隣の机の椅子が動きました。私はイライラしながらも、動いた椅子を直しまた作業に集中しました。それから30分くらい経ったころに、今度は会社においてある電話がなりました。受話器を取り、もしもしと言うとなにも返事がありませんでした。もう一度もしもしと言うと、電話の向こうでこう聞こえました。
「まま、どこ?」
幼い子供の声で、拙い言葉ではっきり聞こえました。私はそれまで忘れていた5年前の、あの出来事が脳裏に浮かんできました。しかし、死んだ子供から連絡が来るなど、到底信じられない話です。きっとこの会社に勤めているほかの社員の子供が、間違えてここにかけてしまったのだろう。そうに違いない、そうに違いないと心の中で唱えながら、電話の向こうの子供に話しかけました。
「ごめんね、私はあなたのままじゃないよ。ままはきっと別の人じゃないかな?」
すると子供はこう答えた。
「まま、どこ?」
子供なので伝わるわけないか、と思いながらごめんねと言って電話を切りました。少し大人げないかもしれないけど、私にはどうすることもできないし、まだやらなければならない仕事があったので、やむを得なかったんです。机に戻り、また作業に向かい始めました。作業をしている間、私の頭の中にはあの5年前のことがずっと離れませんでした。そのせいで、さっきの電話の子供が自分の子供だったのではないか?と考えていました。きっと違う、と否定する自分といや、やっぱりあの子供は私の子供だったのではないか、と思ってしまう自分がいました。そんなことを考えていたら、いつの間にかあんなにあった仕事が片付いてしまっていました。壁の時計を見ると、夜中の2時。何かの不運だと思いながらも帰り支度を済ませ、会社を出ました。
自宅から会社までは徒歩なのですが、途中に駅があり昼間は沢山の人で溢れていました。さすがにこの時間帯だと、人もまばらでした。ぼぅっと駅を見ながら帰ろうとしたその時、私の眼に小さい子供が映りました。その子は小さい手で、おおきいスマホを持って、花壇の淵に座っていました。もしや、あの子が会社に電話を掛けた子供なのかもしれない。そう思って子供に声をかけました。
「ねぇ、君もしかして会社に電話をかけた子?」
そう聞くと、少しうつむきながらうなづきました。よかった、この子はちゃんと実在している子だ。と、ほっと胸をなでおろしました。そして、私は先ほど電話を切ってしまったことを謝りました。今考えてみれば、あそこでしっかりこの子に苗字や親の名前を聞いておけば、この子はこんな夜に駅で待つことはなかったのに。せめてものお詫びとして、私はこの子を親の元まで責任をもって連れて行こうとしました。
「さっきのお詫びに、一緒にまま探してあげる」
すると、子供は首を横に振り、私の目をみてこう言いました。
「もう見つかったよ、まま」
しまった、もうままを見つけてしまっていたみたいだ。ならばしょうがない、今日のところはかえってまた後日、親の方にお詫びをしておこうと思い親の苗字を聞いたら、驚いたことに私と苗字が一緒でした。まぁ、そんなに珍しくはないので、特にこの時は違和感を感じませんでした。その日はその子に別れを告げて、家に帰りました。
後日、同じ会社の自分と同じ苗字の社員を探し、子供がいるかを聞いて回りました。すると、不思議なことに私と同じ苗字の社員は、誰一人子供がいなかったんです。
では一体、あの子はなんだったのでしょう。誰の子でもないとしたら…私の中にある一つのことが浮かび上がりました。やっぱり、5年前私がコインロッカーに捨ててきた、あの赤ちゃんなのか。と、いやな考えが頭の中をぐるぐると回って、段々心臓の音が大きくなっていくのを感じました。自分の中で必死に否定をしても、あのことが離れませんでした。そんなことを考えていたら、同じ会社の同僚の人に私に電話が入ってると呼ばれました。
その相手は…。
つづく
この物語はフィクションです、また自作の作品です。
どうも、兎妬です。まずはここまで長いものを読んで下さり、ありがとうございます。これでも頑張って削った方なのですが、どうしても収まりきらなかったので続編にします(;'∀')
本当に今回はとても長くなってしまいました。いつも、私はなるべく1000〜2000文字くらいで収まるように心掛けていたのですが、今回だけはどうしても収まりきりませんでした。本当に申し訳ないです。ですが、こんなにも長くなってしまったのにもかかわらずここまで読んで下さって、本当にありがとうございます!次からはこのようなことがないように、なるべく読みやすい量にまとめられるように頑張ります。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
- Re: 怖い恐い話 ( No.17 )
- 日時: 2017/06/17 20:13
- 名前: 94虎 (ID: yVTfy7yq)
とても、恐ろしく、でも、読みやすかったです( ^∀^)ホラー系が大好きなので、読まさせていただきました。といっても一人でみるのは怖くて見れないんですけど。全てが本当にあったかのようなお話だったので引き込まれました。続きが楽しみです。これからも頑張ってください!
94虎