ダーク・ファンタジー小説
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- 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ
- 日時: 2017/02/18 09:34
- 名前: 瀬良真澄 (ID: .ZWwmuJW)
1章 日常
ここは実郷町、埼魂県の端の町だ。
放課後、一人の少年が歩いていた。
髪を後ろで束ねた長髪の少年だ。
「はぁ、寝っむ...」
給食を食べ、5,6時間目が座学だったため、少年は目を擦りながらあくびをして家路を急いでいた。
彼の名は、瀬良真澄、癒剣学園2-3の男子生徒だ。
今日発売の小説の限定版を買うため、いつもなら帰ってすぐ寝てしまうが今日は寝むらず、近場の行き付けの書店へ行くつもりだ。
マンションのエレベーターを使い7階を目指す。自分の部屋の扉を開け自室に行き、今日、購買でパンを買ったときのお釣りと貯金した金を足して本を買っても、お釣りがくる位持って本屋へ向かった。
路地にはいって、駄菓子屋の横に出てそのまま本屋へ続く道を小走りでたどる。が肩に重い衝撃がはしる。
「ッ!?」
見ると金髪の少年が大袈裟に呻いていた。
「あー、痛ってぇー」
「おいおい大丈夫かぁ、ってうわぁ。これ折れてんじゃね?」
ピアスをした男が同意する。そんなに強くあたって無いけどな。
(こいつら確か学校の不良グループの奴等だよな。厄介なことになったな)
「おい、慰謝料払えよ」
凄い一般的なパターンの金の巻き上げ方をしてきた。
「すいません、僕全然お金持って無いんです」
俺はそう言ってその場を後にしようとするが、ガッ と強く腕を捕まれて止められた。
「おいおい何逃げようとしてんだよ、あ?ちょっと面貸せや」
そのまま俺が来た方とは逆の路地へ連れて行かれる。
「本当にすいませんって、でもお金持って無ッ!?」
肺から空気が絞り出される。膝蹴りされたと気付いたのは地面に倒れ付した後だった。
「あぁん、聞こえねえ...なっ!」
倒れた俺におもいっきり蹴りをいれてきた。
「ガハッ、クゥッ」
「おいおいおーい、こっちは骨折してんだぜ?こんなんじゃまだ全然足りねぇぜ。おらっ!」
無理矢理俺を立たせ殴り倒した。すると俺の制服のポケットから財布が滑り落ちた。ピアスをした男が俺の財布を探った。
「なんだ、金持ってんじゃん」
そして俺の財布から本を買うための2300円を取って空の財布を嘲笑うように投げつけてきた。そして不良達は立ち去って行った。
俺はそのまま路地で寝転んだまましばらく力を抜いていたが、しばらくして立ち上がり、路地を出た。
2章 異常
本屋から帰るときは、駄菓子屋の横の路地を抜けると近道なので、路地にはいって行く。もう暗くなって来たのでそわそわと家路を急いだ。
最近何もかもついてない。今日の不良もそうだが、両親が最近離婚して、俺はそれを理由に家を出た。幸いにもバイトでそこそこ貯金はあったし、自炊も出来た。苦では無かったが、仲の良かった両親が離婚したのが衝撃だった。他にも通り魔にあったり、友達が怪我したりで他にも色々ある。正直なところ神を恨んだ。
そのまま路地を出て駄菓子屋の横の路地にはいって行く。こっちの道の方が近道だ。
ふと、小説のことを思い出した。
「そこまで人気じゃないし大丈夫だろ」
明日また行けばいい。そう思った。
そうして路地を抜けて正面の駄菓子屋の横の路地にはいって行く。家に帰ろうとだけ考えていた。
「えっ」
今気が付いた
俺は今
一体何処を歩いてる?
今まで同じ風景だから気付かなかった。この道は、あまり目印がない。でも今日だけで何回この路地にはいった?
心臓の音が聞こえる。
(不味い、とにかく戻らないと)
振り返ると目の前に赤い霧を出している門があった。鉄格子の洋風の門だ。普通じゃないとしたら赤い光が門の奥から湧き出ていることだ。
「なんだ、これ」
俺は手を伸ばして指先で触れる。
その時めが覚めた!
(何で俺、これに躊躇なく触れようとしたんだ?)
何かがおかしい。そう思い手を引っ込める。だが指が吸い込まれる。
「!?なんだよこれ、クソッ抜けねぇ!」
大した力じゃないのにゆっくりと俺の体を呑み込もうとする。
指、手、腕、胴体、足、そして全て流れるように呑まれた。呼吸ができない…けど苦しくない。
(何なんだよ、これ)
そして俺は意識を手放した。
3章 狂精神世界
目が覚めると見慣れた路地だった。 壊れていなければ。
大地が割れている。塀にひびが入り、いたるところが壊れたり、崩れている。
俺は慎重に歩いて路地を出た。そして気付いた。
「空が、黒い………」
そこはもう、俺の知ってる実郷じゃなかった。
気が付いたら俺は走っていた。絶望した。混乱した。世界に恐怖した。
立ち止まって空を仰いだ。やっぱり黒だ。そして仰向けに倒れた。
どれくらい経っただろう。一つの足音が近づいてきた。
俺は顔だけ起こしてそれを見た。目の赤い、黒い巨人がいた。3メートルほどで顔がなく、ジャミラの様だ。そして、恐ろしい顔が胴に描かれていた。
『ガヴォ…オォ………ア』
俺の思考は停止した。体がガタガタと震えている。少しずつ後ろへ後退すると巨人が腕を降り下ろした。とっさに横に飛び退いたが、俺がいたところの地面は深く抉れている。
そうこうしている合間に巨人は剛腕をアスファルトを削りながら横に振るう。両腕で衝撃を受け流し、身体を出来るだけひねり、衝撃に耐えようとしたが、俺の身体は、軽々と吹き飛び、さっきまでいた場所とは逆の方の[店だった]所の商品棚に激突。小物や、皿等が飛散し、身体全体に激痛がはしった。全身がバラバラになりそうだ。
「うわああああぁぁぁぁぁ!!…がああぁ………あ あああああああぁぁぁ!!!」
巨人は、その巨体からは想像出来ないほど速かった。そして何よりその腕からの衝撃は並みじゃない。俺は商品棚から剥がれ落ち上から降ってきた小皿の破片が俺の頬を掠める。
俺は身体を引きずるように店から出て路地に逃げ込んだ。あの巨体なら入って来れないだろう。しかし、巨人は塀や、壁を破壊しながら近づいて来る。
「ガハッ…クソッ、そんなの、ありかよ!」
俺は路地を痛みに耐えながら出来るだけ速く歩いて脱出。空き地を抜けて住宅地へ逃げようとした…………が…
「ッ!?なっ」
勢いよく地面に倒れた。足下を見ると形の歪んだ赤い目の怪物が、地面から上半身だけだして俺の脚を掴んでいた。そして、俺の脚を強く握ってきた。嘲笑うように、ゆっくりと。
「あああああぁぁ」
怪物を蹴りつけ脱出を試みるが、さらにきつく握りしめる。
『オォ……ア?』
怪物は、不気味な声を出し、俺をもう一方の腕で殴り付ける。
「ぐあぁ、クッ!」
そしてそこにあの黒い巨人がやって来る。そして俺を剛腕で殴るように腕を降り上げた。目を瞑り死を覚悟した。
「クソオオオオオォォォォォ!」
しかし、いつまでたっても衝撃は来ない。恐る恐る目を開けると目前まで拳は迫っていた。だが、そこで時が止まったように静止している。
すると俺の斜め前に黒い木製の扉が出現する。そして『キィ』と言う音と共に中から一人のコートを着たロングヘアーの女性が現れた。
「あら?ずいぶんかわいい子ね」
女性は俺を見ると微笑み大人っぽい声で言う。
「あの、俺男なんですけど。ってそんなことより助けてくれたんですか?」
「助かった訳じゃないわ。私の力じゃ時間を遅くするので限界だから」
そう言って扉のドアノブに手を掛ける。
「話は中でしましょう。大丈夫。その距離と速度なら40分位余裕があるわ。私の力で1秒を12000秒にしているから」
さらっと凄いこと言ってるな。とりあえず俺も身体を起こしてついていく。俺の身体は剥がれるように別れ、二つになり、一つは脚を掴まれ殴られる寸前だ。そして俺は女性と共に扉の向こうへ入っていった。
4章 覚醒願望
扉の向こうは、少し暗い雰囲気のお店のような場所で、一見アンティークショップのような宝石店だ。だが普通の宝石店とは大きく違うところがある。ガラスケース等で覆わず丸出しの所だ。
「随分堂々と置いてるな。って顔ね」
女性がクスッと微笑む。
「………すいません、名前は?」
「そういうのは普通、男性が先に名乗るものよ」
「真澄、瀬良真澄です」
俺はしぶしぶそう答える。
「瀬良君ね。解った覚えたわ。私は倉崎結羽よろしく。見たところ学生ね。高校生?」
「そうです。そう言うあな…倉崎さんは?」
「23よ」
想像以上に若かった。
部屋を見渡してあることに気付いた。どの宝石も剣や、斧などの中世風の武器にはめられている。しかし、どの武器も木製だ。
「此所にある宝石は全て武器に変化する。その木は変化後の武器の形をしているの」
俺の考えていたことを簡単に答え、俺は少し驚いた。
話によると宝石はマインドジェムと言い、それぞれ違う人間の精神の形。スピリットが宿るらしい。そして使用者と、精神の形(性格)が似ているマインドジェルを使えるらしい。そして、一度契約すると、死ぬまで契約は続く。契約したマインドジェムを使い、武器を顕現させるとその武器で怪物を倒すことができる。
「さあ、選んで。あなたのスピリットはどれ?」
「………」
同じ武器でも形や、ブレードの大きさが微妙に違ったり、マインドジェムの色が違ったりする。
黒いダガー、が目に止まった。軽装備の方が攻撃を交わすのに良い。元々筋力は少ないので、あんな化け物と剣で肉弾戦なんてする気は毛頭無い。
「あっ、いい忘れてたけど一度マインドジェムに触れたら契約開始して、もし精神の形が合わないと死んじゃうから」
それを聞いて俺は慌てて手を引っ込める。(そう言うことは早く言って欲しかった)
「そ、そうですか。は、ははは」
(ねェ、きコエる?)
「!?だ、誰だ!」
「どうしたの?」
倉崎さんが心配そうに聞いてくる。
「!えっ、聞こえないんですか?今の声」
「声?まさか」
(ここ、いる)
変化後の武器の無い黒いジェムがあった。
続く
- Re: 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ ( No.11 )
- 日時: 2017/07/24 07:00
- 名前: 瀬良真澄 (ID: eH6OJcrU)
6章 覚醒願望(No. 1)
生暖かい風がふく。周りは至るところにクレーターが出来て、あちこちが激しく音をたてて燃えている。
「今なんて言った?」
俺は自分の耳を疑いつつ、イヨに言葉を返した。
『だから、戦わないんですか?て言うか戦いましょう!』
まさかこの子って戦闘狂か?正直これから一緒にやっていけるか心配になってきた。
頭を抱えているとハッとあることを思いだし、上を見上げた。
じっと此方を見ている巨大タイラントがいた。だがその姿を見たときに、改めてでかいと思い、同時に疑問が生まれた。奴の目は此方を見ている。普通なら戦っていたルスペルの部隊を見ているはずだ。だが奴は俺を真っ直ぐ見ている。
『……セラ…?』
「!……なっ!?」
声だった。意味を持つ言葉を話したのだ。そして、俺の名前を知っていたのだ。
『…………セラ……マユミ……?』
「…瀬良真弓……」
知っている名前だった。否、知っている程度ではない。まさかここでその名を聞くとは思いもしなかった。その名は紛れもない。俺の“母親の名前”だった。
「悪いけど、俺は真澄。真弓じゃないよ」
『真弓ジャナイ……?』
少し悲しそうな声だった。
『よく似テイる』
俺もその言葉を聞き、少し悲しい声で話しかけた。
「何でここに来たんだ?お前は何が目的なんだ?」
『主の命令だ。二番目の契約者を殺せトな』
カクカクだったカプリコーネの言葉はだんだんなめらかになっていく。
「トゥエス?」
その言葉に聞き覚えなどは全くなかった。
『お前の事だ』
「……………………………えっ?」
俺の頭はグルグルとかき混ぜられるように混乱する。タイラントと会話をしている時点で思考回路はめちゃくちゃなのに、さらに追い打ちをかけるなんて。これも現実世界と同じ不幸体質のせいなのだろうか。
「つまりそれって俺がいなければこんなことにはならなかったのか?」
『それは違う。二番目の契約者の波長が真弓と同じだったノで我は戦わず身を引こうとした。しかし、何やら奇妙な者がいてな』
「奇妙な者?」
俺は顔をしかめた。
『スピリットでもタイラントでも人でもない何かがいたのだ。それを倒そうとした。真弓に傷つけようものならここら一体を”消滅”させてもよかったのだが、彼らはお前の友人なのだろう?それを攻撃するのは気が引けたが、〔ターコイズ〕の浄化の対象を人以外にしていたので大丈夫だろう』
「そうなのか?ありがとうな」
『だがその礼を受け取るわけにはいかん。何人か守れなかった』
その言葉に息をのみ、絶望した。
「……………何人か、守れなかった?」
『死んではいない。だが、それだけだ。それしか出来なかった』
一瞬心臓がはね上がった。ドロドロした感情のままにそいつに何かの刃を突き立てたような気がする。
(なんだ?この感じ)
「とにかくありがとうな」
『すまなかったな。嫌な思いをさせた。我は主の元へ戻る。次は敵として会うことになる。詳しいことはそこのスピリットに聞くと良い、真弓の子よ』
「待ってくれ!」
だが、俺は一つ聞きたいことがあったのでカプリコーネを呼び止めた。
「お前と母さんはどんな関係なんだ?」
『……我と真弓は…っ!!?』
その先の言葉は紡がれることはなかった。
「………えっ」
光の槍がカプリコーネの胸の宝石に突き刺さり、砕け散る。
『グルルウウウゥゥゥオオオオオオオオオォォォォォォンン!』
カプリコーネは苦しそうな、悲しそうな声で叫んだ。痛みに耐え、そして怒りで我を染めた。
「おい!カプリコーネ、落ち着け!!」
『無理ですマスター、逆鱗を破壊されるのは地獄の痛みに等しい。我を忘れています!』
イヨは必死に俺を止める。
「そんな!だって!」
だって、初めてだったから。母さんの事を誰かと話したのは。話したなんて大層なことじゃないけど、でも仲間だと思ったから。なのに!
『マスター、彼を助けたいのですか?』
「ああ」
強く、はっきりと宣言する。
『力を与えましょう。貴方に二番目の契約者の権能を』
「権能?」
『はい。ですが、それには貴方の願いが必要です。貴方の…』
強く、彼女も答えてくれた。俺の気持ちに。
『……“覚醒願望”が………』
- Re: 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ ( No.12 )
- 日時: 2017/04/29 20:55
- 名前: 瀬良真澄 (ID: .ZWwmuJW)
6章 覚醒願望(No. 2)
何もない。あるのは絶望だけだった。そんな場所で、ただ一人諦めていない少年がいた。
「覚醒願望?」
『そうです。狂精神世界は精神を司るこの世の裏側の世界。そして精神の乱れで世界のゲートが開かれる。つまり、その時精神が乱れた理由。その者の願望を願い、言葉を詠唱すればより強い力を使える。そして、願いが解れば私もより強い力を与えましょう』
「…………俺の願い………」
上を見上げ空を見つめる。やっぱり黒い。
あのとき、俺は疲れていて、チンピラに絡まれて、それでただ帰ろうとだけ考えていた。昔の事を思い出して、
[………正直なところ神を恨んだ]
恨み、そして怒りで自分を支配していたと言っても過言ではない。こんな神なら俺が代わってやりたかった。
スペルは自然と頭に流れ込んできた。
そうだ。俺の願いは………
「全てを侵食、神代となれ!オーダー!!」
俺の指輪から黒い炎が上がり俺を包み込んだ。
『侵食し神を退ける。素晴らしい願いです。これより私はマスターの僕として、そしてスピリットとしてマスターに二番目の契約者の権能を与えます』
指輪から炎と共にイヨが現れる。ルーン文字が浮かび上がりいくつも集まり、俺のなかに吸い込まれていく。完全に全て吸収したとき、指輪の炎が収まった。
「終わったのか?」
俺はジェムを見つめながら呟く。
「そう言えば二番目の契約者の権能ってどんなものなんだ?」
少し疲れが出たのか、胸に手を当てて溜め息をついていたイヨに問いかけた。
『………………能力名は冥界箱。過去に出現した災厄の力を使うという能力です』
「災厄の力を使う。ずいぶんと面倒な事に巻き込まれそうな能力だな」
溜め息混じりに言った。
『ですが前の大戦。先代のマスターが少々……色々とあって多くの力を失っているんです。つまり、一から世界に散らばった力を回収しなければ本来の力を発揮できないんです』
「それじゃあどうすればいいんだよ!」
絶望のせいで少し口調が荒くなる。すると、耳元で小さな声が響いた。
『じゃあ手を貸そうか?』
「っ!?」
振り向くと一枚の美しい鳥の羽があった。羽は強く光輝いた。
手をどかし、目をゆっくりと開くと一人の少女が立っていた。
- Re: 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ ( No.13 )
- 日時: 2017/05/06 20:12
- 名前: 瀬良真澄 (ID: .ZWwmuJW)
6章 覚醒願望(No. 3)
『じゃあ手を貸そうか?』
一人の少女が立っていた。雪のような真っ白な長い髪。黒い羽と、紫の小さな宝石のついた装飾品を頭の左側につけている。真っ黒のフリルつきのドレスを着ている。俺よりもやや年上という印象だ。
「……誰だ?」
『まさかこんなにも早く再会できるとは』
イヨは瓦礫に手をつき、寄りかかりながら言った。
『やぁサーキュバイス。久しいな』
『久しぶりですね、ネヴァン。お変わり無いようで』
しかし、そんな再会……(?)もつかの間。カプリコーネが咆哮を上げる。
「うわっ、すっかり忘れてた!」
『どうやら、ゆっくり話してられなそうだね!』
そう言ってネヴァンと呼ばれた少女はカプリコーネを見据える。
『彼女は先ほど言った散らばった力の一人です。カプリコーネを倒すには、恐らく現在はマスターの権能が最も有効です。ネヴァンの力を纏ってください!』
「おおっ、彼女が次の契約者かい?」
「いやいや、俺は男だから!」
すると彼女はいろんな角度から俺を見る。
『…………本当だ』
〔ターコイズ〕
「っ!まずい!?」
だがその直後後ろからネヴァンが俺に抱きつく。
『少年!行くぞ!』
黒い炎が俺を包み込み、俺の姿を変えていく。目指すのは生徒のいる戦地。
生徒の前に立ちはだかる。真っ黒の炎を纏った鳥。俺は、神の時代に存在した死の鳥、[ネヴァン]となって全ての攻撃を受けていた。
- Re: 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ ( No.14 )
- 日時: 2017/06/15 17:46
- 名前: 瀬良真澄 (ID: eH6OJcrU)
7章 終戦
俺の身体は抉られていた。
まず翼。左側は付け根の一部と先の部分を、右は付け根から胴体の一部まで痛々しく消滅していて、腹部に2ヵ所、右太股に1ヵ所、風穴を開けていた。
「がああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、うわあああああぁぁ!!!」
しかし俺の叫びは音として出なかった。ネヴァンの姿になった俺の口からは……
だが、そんなことはどうでもいい。今できる最良の選択を俺はした。
死を招く鳥。つまり、生きる物のエネルギーを周りから奪って活動する。と言うことはこいつの能力は……!
『〔吸収の炎〕』
俺を赤い炎が包み込み、その状態で奴目掛けて大きく羽ばたいた。生命の気配を感じ、炎は糸のようにカプリコーネと俺を結んだ。ゆっくりとエネルギーを吸収する。(ある程度回復できた。今なら……)
〔ターコイズ〕
緑色の光がカプリコーネの角に集まる。
『〔再生の炎〕』
こいつ(ネヴァン)の力は命。寿命を燃やして術を使う。だったら奴のエネルギーを吸収し俺のエネルギーにする!
緑色の光が俺を撃ち抜く。だが関係ない。ターコイズの力でこの光に当たったものはたとえ光でも消滅させる。重力も。だったらさっきまで飛んでいた勢いをそのまま使える。空気がないから羽ばたく必要もない。ターコイズより早く、再生すればいい!
『グオオオオオォォォォォォ』
「行っけええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
奴に、母の友人に届いた。
真っ黒な物だ。様々な記憶が断片的に写っている。その中には母の顔もあった。
『酷いことをするな』
真っ白な世界で巨大な鹿のような山羊がそう言った。
「悪い、無我夢中で、」
『構わん気にするな』
そう言ってきびすを返した。
『さらば、真澄』
「待って、まだ聞きたいこ………」
『時間は限られていてな……』
「……っ!」
目の前にあるのは、空。真っ黒な空だった。
- Re: 狂精神世界での覚醒願望Ⅰ ( No.15 )
- 日時: 2017/06/04 11:12
- 名前: 瀬良真澄 (ID: eH6OJcrU)
終章(No. 1)
黒く、どこまでも黒い空に緑色の光と緑色の炎がぶつかった。大地を揺らすほどの激震と共に、突風のような風が吹いた。周りの塵や砂、石がとんでいく。約30秒にもわたる激震はゆっくりと収まった。カプリコーネは沢山の小さな光の粒子となって何処かえ流れていった。黒い鳥型のタイラントはそのまま地上へ落ちてくる。
「……っまずい!」
この姿を見られるわけにはいかない。衝動的に俺は体を空中で起こして余力で羽ばたく。貧血のような感覚の目眩に襲われつつ、学園より遠くのマンションやビルが建ち並ぶ方角へ無我夢中で羽ばたいた。
私は衝動的に精具を使って移動した。精具から噴出される炎の推進力で飛んだ。皆が「セリア!!」と呼び止める声がするが関係ない。10年前、“私を助けてくれたタイラント”を知っているなら何か話を聞きたいと思った。
俺はマンションの屋上に着陸しようと思ったが、そこまでたどり着く前に限界を迎え、失速しマンションの壁に激突した。翼を広げ、ハングライダーのようにして着地しようとしたが、体を地面に強く打ち付け、引きずられるようにアスファルトを体全体で滑った。
「………ぐっ…………ぁ……」
角を曲がったところで、巨大な影があった。
俺は姿を元の人の形へ戻そうと、ジェムに力を集中した。黒い霧となって鳥は姿を消し、ジェムに全て吸い込まれた。
ゆっくりと私はそれに近づいた。大きさは徐々に小さくなっていく。30メートルはありそうなその姿は、あっという間に人と同じくらいの大きさとなった。
元の姿に戻った俺は一旦ここから離れて隠れ、その後こっそり学院に戻れば大丈夫だろうと思っていた。だが立ち上がろうと腕をつくとパタンと倒れた。腕が麻痺して動かなかった。
そのタイラントだったものは立ち上がろうともがいていた。
その時俺は視線を感じた。顔だけ振り替えるとそこには紺の髪をなびかせた少女がいた。
「………アルガーデ……さん?」
「瀬良?」
まずい。衝動的に俺は体を起こしてすぐにその場を逃れようとした。顔を見られたが、なんとかごまかせばいいと思ったからだ。だが、彼女に背を向け街路樹に捕まり、立ったところで力が抜けて俺は後ろに倒れそうになる。だが、アスファルトとは違う感触だった。彼女が受け止めてくれたと気づくのに数秒時間を使った。彼女はやや躊躇いがちに首を背けながら言った。
「……………アルガーデはやめろ……セリアでいい」
彼女は俺を抱き起こしながら頬を掻いた。
「…………………セリア…さん」
「うん、それでいい」
彼女に担がれながらなんとかビルが建ち並ぶエリアを抜けたが、その後彼女を追ってきた生徒達に発見される。女子に担がれるのはなんか気まずい。
「アルガーデさん、ここでしたか。そちらの方は?」
「生徒だ。校舎が破壊されたのに巻き込まれたらしい。それでここまで逃げてきたそうだ」
彼女の言葉に一瞬心臓がはね上がった。てっきり俺をつき出すのかと思ったからだ。
「そうでしたか、あの鳥型タイラントは?」
「さらに向こうへ飛んでいった。もう追えまい」
その後、生徒は「了解しました!」と言って会話を切った。その生徒たちは俺を医務室に運ぼうとしたが、セリアが強く断った。
そのまま俺は彼女に担がれながら女子の宿舎まで案内された。セリアの部屋で治療するらしい。少し緊張したせいかさらに疲れて、その途中廊下で意識を手放した。

