ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

霊障対策課24時!
日時: 2020/06/08 19:08
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)

現代日本を舞台にオカルト警察が霊障を解決して回る。

霊障とはオカルト系事件の事である。霊障対策課の職員は全員、霊能力という謂わば

超能力のようなものだ。


若くして霊障対策課を任された柳水流愛瑠は周りからの人望が厚い。彼女は高い霊力を

持ちながら霊能力を持たず、しかし霊を視ることが出来るために所属している。

(※柳水流…読み:やなぎずる)


第一章「課長は走る!」>>01-34
霊障1「屋台、出血大サービス!」>>01-02

霊障2「鬼の結婚式・調査パート」>>3-10 「潜入パート」>>11-18

霊障3「幽霊船に揺られて」>>19-24

霊障4「鬼が住まう島」>>25-31

閑話「お疲れ様、課長」>>32

霊障5「Shall we dance?」>>33-34



第二章「課長は止まる」>>35-42
プロローグ「新たな面子」>>35

霊障6「怒れる鬼神」>>36-40

霊障7「人食いが二人」>>41-42



Re: 霊障対策課24時! ( No.39 )
日時: 2020/04/24 21:46
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)


白虎は冷気を吹く。巨大な鬼神を凍結させたはずなのにその氷は鬼の炎があっという間に

溶かしてしまう。

「むぅ…やはり鬼神。一筋縄ではいかぬ」

「うへぇぇん!!どうしよ〜太郎!!!このままにしたら愛瑠先輩がぁ〜」

愛瑠と言う名前に鬼神と化した藤丸が反応を見せた。そして微かに「逃げてほしい」と

呟いた。その鬼神は後ろに後退る。

「ここで逃げさせるかよ!!」

大きな黒い拳が叩きつけられた。ダメージは無いに等しいが鬼神は揺れた。

「慶壱君!接近戦を仕掛けたら危ないよぅ!!」

實藤慶壱に向けて楡木佳子は震えた声で叫ぶ。

「とは言ってもここから動かさない方が良いだろ!愛瑠さんが来るまでどうにか時間を稼ぐ。

それとお前、逃げろとか言ってんじゃねえよ。ここで逃がしたところで課長は絶対に

追ってくるぞ」

大きく吠えた鬼神。その迫力に気圧される。

「皆!!」

虎徹と共に愛瑠が走って来るのが見えた。

「さぁ君と愛瑠ちゃんのサシだ。勿論、言葉のね」

「…」

少し呆れたような顔をした愛瑠は真剣な眼差しで鬼神を見上げた。

「返してよ藤丸君を。大事な部下を返して」

静かな口調で彼女は言った。鬼神は反抗するように唸る。それでも愛瑠は怯まない。

「優しさなんてね星の数ほどあるもんでしょ。あの暴力は仕方ない、お互いに非があった。

虐めたのが悪い、殴ったのが悪い。だけど殴りたくて殴ったんじゃない、守り神である貴方と

同じだよ。守るために殴ったんだ」

鬼神の心が揺れ動く。奥底に眠っていた本来の優しさが覗き込む。

「私は藤丸君の上司、先輩。だから部下を戻すためなら私は何だってするわ」

膝をつき愛瑠は深く頭を下げて土下座する。

「古き守り神、千寿よ。この通り、どうか私の大切な仲間を返してください!」

Re: 霊障対策課24時! ( No.40 )
日時: 2020/04/24 22:06
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)


土下座姿を見て鬼神の怒りが大きく膨れ上がった。土下座をして反省したはずの男は自分を騙して

巫女を攫ったのだから。簡単に殺せるはずなのに体は動かない。

『無力な女…顔を上げろ。もうこの子に害は与えないと約束しよう』

—本当!?ならこのまましっかり藤丸君を守ってよ?

『約束しよう。無力ながら強い娘よ』


数日が過ぎた。愛瑠は扉が開く音がして顔を上げると思わず二度見した。

「ちょっと待った!待て待て待て私的には数週間後に完治してっていうのをね、思ってたんだけど

え?もう治ったの?早くない?」

既に腕も完治した状態で世継藤丸は現場復帰を果たした。常人なら考えられないがこれは

まぁ鬼神を宿している彼の力か、それとも鬼神本人が謝罪のつもりで彼の体を治したのか。

どっちにせよ驚きを隠せなかった。

「先輩、お世話掛けました」

第一声はそれだった。

「いいえ、気にしてないから大丈夫。怪我人は出て無いし…咄嗟だっただろうによく判断して

居住区から離れたね。その判断力は凄いと思うよ」

それぐらいしか言えることは無かった。

Re: 霊障対策課24時! ( No.41 )
日時: 2020/05/17 18:40
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)

ある青年が確保され霊障対策課で監視することになった。見た目こそ成人だが彼はまともに

教育を受けていない。ソファに座り込み、必要最低限の知識を得るために幾つかのドリルと

プリントと向き合っていた。

「今日の分はこれで良いかな」

柳水流愛瑠は赤ペンを置いた。惣那日向、人食い鬼の先祖返り。何代も前の先祖の持っていた

遺伝上の形質が突然子孫に現れることを先祖返りという。自分の名前は漢字で書ける。

覚えるのも苦手ではないようで一度説明すればある程度理解は出来るようだ。

「先輩、捜査組から連絡が来ましたよ。もう一つの人食い事件の容疑者を押さえたって」

愛瑠の代わりに電話に出た栩原定道が言った。

「分かった。あ、エルダちゃんはそのまま調べて。私が様子を見てくるよ」

修道服を着たハーフの女性、花之木エルダ。彼女は聖水を使った簡単な治療を扱えて

姿が見えないヴェールという天使を従えている。彼女にはもう一つの人食い事件の正体を

探ってもらっている。


エルダはヴェールと共に資料室に籠っていた。ヴェールは職員でも限られた人物しか見えない。

霊力が高くなければ見えないのだ。霊能力を持たない愛瑠はヴェールの姿がはっきりと

見えている。それに初めは驚いた。ヴェールはエルダの肩を突き資料を見せた。

「やはり、ありましたね骨喰という妖怪の資料…」

エルダは本を開き目を通す。骨喰、名前の通り人の骨を喰らって生きる。それも無作為に選んだ

人間に憑りついて。宿主を殺しても次へ次へと乗り移る。つまり死刑には出来ない霊障案件だ。

Re: 霊障対策課24時! ( No.42 )
日時: 2020/05/17 19:03
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)

死刑にすることは出来ない、エルダの言葉に全員が騒然とする。だが彼らを静かにさせた人物が

いた。柳水流愛瑠だ。

「さっきのを聞けば分かるよ。こればかりは仕方ない」

「ありがとうございます。それで課長に力を貸してほしいんです」

愛瑠は首を傾げた。その部屋は暗く小さな窓から薄日が差していた。椅子に座った青年の両手足は

鎖で拘束されている。好青年に見える彼が二つ目の人食い事件の犯人だ。六道紅平だ。

「もしかしてアンタが課長か?てっきり強面の大男かと思ったぜ。で、課長さんが何の用だ?」

「まぁ色々仕事を…エルダさんは外に出ててね。何かあったときの被害は最小限に」

「分かりました。気を付けてください、課長」

エルダは敬礼してから部屋を出た。愛瑠の視線は紅平から上へ向けられる。

「まさかアンタ…視えてるのか!?骨喰が」

黒い靄のような姿に変わっているが目はある。

「…分かった。別にそのままでいてくれて構わない。けどもう貴方を殺そうとする人間は

いないよ。今の世の中、貴方のような妖怪が見えている人は本当に少ない。彼の身柄については

私たちの元で監視、言うならそのまま霊障対策課の職員として動いて貰うことがあるから

そのまま彼に力を貸してあげて欲しい」

大きな咆哮と同時に黒い靄は愛瑠の体に潜り込んでいく。しかし数分もすればすぐに外に

出て行った。愛瑠の暖かく広い心を見たからなのか、骨喰は何かを語り掛けて紅平の体の中に

消えた。

「(話しただけでコイツを改心させやがった。アイツらの話じゃ、課長は霊能力を

持っていないって話だ。誰よりも劣っているのに全員の上に立って誰からも慕われている)」

紅平はふと笑みを浮かべた。

「礼を言うよアンタに。これでようやく普通の食事が出来るってワケか」

「私は仕事をしただけなんだけど、まぁどういたしまして。でも少しの間はこの部屋で我慢してね

色々片付けなければならないものがあってさ。上に報告してからになるから」

「あぁ。気長に待たせてもらうよ」

Re: 霊障対策課24時! ( No.43 )
日時: 2020/07/31 18:10
名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)

定道は辺りの昨晩の様子を探る。

「ほぅ、本当に霊能力なんてのがあるのか」

ここでは幾つかのジムでトレーニングする選手たちが合同練習を行っている。

山の中で足場の悪い場所が多い、そう言った場所では様々な霊たちが多く存在する。

良い霊もいれば悪い霊も存在する。半信半疑だった草加ジムのオーナー草加健一は顔見知りに

勧められ彼らに同行してもらったのだ。

「どう?定道君」

「やっぱりいました。来て正解でしたね」

愛瑠は頷いた。

「こんな広い山だし、応援も呼んでおいたからどうにかなると思うけど…」

少し不安だ。山道の走り込み等があると聞き、その最中に何か起きなければいいが…。

「貴方が課長の柳水流さんですか?私、稲葉ジムのオーナーです。いやぁ、今回は引き受けて

くださって有難うございます」

中年の男はペコペコと頭を下げてくる。愛瑠もまた微笑を浮かべて会釈する。

「え、マジで!?その年で課長!?」

生駒銀治、もう一つ存在するボクシングジム眞城ジムに所属する選手だ。彼と共に現れたのは

草加ジム所属の小柄な選手、薬師寺音也だ。高校卒業してすぐの年齢、彼と愛瑠は同じくらいの

年齢だ。

「色々あって。高卒後からずっと所属してます」

「なんか大変そうだなぁ…で、アンタたちが言ってる霊障ってのは?」

「悪霊は分かりますよね?それらが主に起こす事件。悪霊じゃなくても時々風の噂で対策課の

話を聞きつけた霊たちが頼ってきたりもするんです」

頷いている生駒だがどうにも納得いっていないようだ。


対策課内では例の山、夷塚山について調べていた。

その中で最近、ある動画を見つけた。

『石の札、剥がしてみた』

動画を見て欲しい、そんなことばかり考えてのことだろう。

「あー、絶対これですね」

實藤慶壱は愛瑠のスマホを覗き込んで呟いた。

こういった札は剥がれそうだとしても勝手に剥がしてはならない。特に何も見えないし、分からない

一般人は。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。