ダーク・ファンタジー小説
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- 霊障対策課24時!
- 日時: 2020/06/08 19:08
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
現代日本を舞台にオカルト警察が霊障を解決して回る。
霊障とはオカルト系事件の事である。霊障対策課の職員は全員、霊能力という謂わば
超能力のようなものだ。
若くして霊障対策課を任された柳水流愛瑠は周りからの人望が厚い。彼女は高い霊力を
持ちながら霊能力を持たず、しかし霊を視ることが出来るために所属している。
(※柳水流…読み:やなぎずる)
第一章「課長は走る!」>>01-34
霊障1「屋台、出血大サービス!」>>01-02
霊障2「鬼の結婚式・調査パート」>>3-10 「潜入パート」>>11-18
霊障3「幽霊船に揺られて」>>19-24
霊障4「鬼が住まう島」>>25-31
閑話「お疲れ様、課長」>>32
霊障5「Shall we dance?」>>33-34
第二章「課長は止まる」>>35-42
プロローグ「新たな面子」>>35
霊障6「怒れる鬼神」>>36-40
霊障7「人食いが二人」>>41-42
- Re: 霊障対策課24時! ( No.34 )
- 日時: 2020/04/22 11:41
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「そこで何をしているのかな?」
部屋を探っていた累槻は手を止めた。
「アンタの手記とかが見つかればって思ってたんだよ。警察だからな」
「私の事を探っていたのか。確かに未練はあったが今は無いさ。夜が明ければここを出るよ」
ダイヤ伯爵とエレン。ダイヤ伯爵は真実を話す。
「私の婚約者エレン。あの時、ここを使ってパーティーを行うつもりだった。それはもう
華やかで私たちの結婚式にはぴったりだっただろう」
ダイヤ伯爵はエレンを抱いた。
「だけどね、それを良く思わない者がいたのだよ」
「エレンを好きな奴、とか?」
「その通り。パーティー会場は炎上、二人の新郎新婦は火の中に消えたのだよ。だからこれは
生前に果たせなかったパーティーの続きさ」
ダイヤ伯爵はただ単にやれなかったことをやろうとしていた。風の噂で霊障対策課があることを
知り、霊障を起こせば必ず来ると踏んでいた。
「さぁ、そろそろこのパーティーをお開きとしよう!」
薄日が差してきた。短い夜の仮面舞踏会は終わった。舞踏会を楽しんだ霊たちが次々と
成仏していく。最後にはダイヤ伯爵とエレンも消えて行った。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.35 )
- 日時: 2020/04/23 21:17
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
霊障対策課につい最近は言って来た新米、楡木佳子(楡木:にれぎ)は式神の白虎「太郎」と
いつも一緒だ。ドジな面が強い佳子は普段太郎に面倒を見てもらっているのだ。最近、佳子が
尊敬しているのは若い課長、柳水流愛瑠だ。若い人は舐められがちだと思っていた彼女だが
愛瑠は皆から頼られ仕事もしっかりやれて全員に気配りができる正しく理想の上司。
散らばった紙類を佳子は慌てて拾う。
「はい」
「わぁぁ!す、すみません!!!…あ!」
数枚の紙の束を渡してきたのは愛瑠だった。
「あ、ここにもありますよ」
もう一人は男の声。彼は佳子と同期、栩原定道(栩原:とちはら)だ。彼は霊が現れた場所の
二日前までの過去を視ることが出来るサイコメトラー。
「あ、ありがとうございます!!」
「大丈夫だって。気にしない気にしない」
愛瑠はそう言った。彼女は霊能力を持っていないが高い霊力を持っている。ここに居る職員の
中で一番高い。二人は佳子が散らかしてしまった紙を拾ってから離れた。愛瑠の背中を佳子は
見つめていた。彼女の心情を察した太郎はため息交じりに言う。
「課長のようになりたいならまずはドジを直さないとな」
「うっ…が、頑張ります」
少しショックは受けた。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.36 )
- 日時: 2020/04/24 17:00
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
一本の電話、それは霊障事件が起こったという報告だった。
愛瑠の前を通りかかった続麻彼方に声を掛けた。
「あれ?ウエディングドレスの人はいないんですか?」
「あーキリコさんか。なんか突然消えちゃったんだよ」
続麻彼方は触れた死体を操るネクロマンサー。ウエディングドレス姿のキリコと呼ばれる人物も
死体だ。いつも一緒の辺り、思い入れがある人物か大切な人物なのだろうか。それと霊障事件は
ほぼ同じ時間帯に起こっていた。
扉を開けて戻ってきた人物が二人いた。一人は栩原定道、彼のサイコメトリーで現場で
起こっていたことを調べてもらった。で、もう一人は…。
「って、またボロボロだなぁ…」
「これについてはちょっと言っておきますね先輩。たまたま俺たち、霊障事件の犯人を
見つけて応戦したんですけど逃げられちゃいました」
定道が説明した。長い髪に黒い服を着た女性でうねうねとした手のようなものを操っていたらしい。
生傷を抱えて戻ってきた男、實藤慶壱(實藤:じつふじ)は気持ち悪いと言っていたが彼も手の形を
した式を扱うお前が言うなと思ってしまう。物理で殴りに行く無鉄砲な彼なので仕事から
戻ってくると大抵生傷を負って戻ってくる。
「今回の仕事も戦闘は避けられないのかな」
「難しいと思いますよ、俺も」
定道も頷く。何やらキョロキョロしている慶壱が何を欲しがっているのか察することは簡単だ。
声を掛けて手元にある小さな袋を渡した。
「糖分探し、でしょ」
「すいません。あざっす」
それを手に取り中にあるクッキーを食べ始めた。
- Re: 霊障対策課24時! ( No.37 )
- 日時: 2020/04/24 19:05
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
目撃情報が入った場所に一人の職員を愛瑠は向かわせた。世継藤丸は愛瑠から要請を受けて
その場所へ向かった。鬼神憑きだ。一人で戦闘は可能、第三者から見れば霊力があるだけで
能力を持たない課長の柳水流愛瑠と比べたら上だろうが彼は彼女を尊敬していた。能力ではなく
人柄が良いから。この能力は呪いのような物、幼い頃に鬼神を見て苦しんだところを元、
霊障対策課の職員の男に救われた。体には炎を模した赤紫色の入れ墨のようなものがある。
入れ墨とは違うがどれだけ洗っても消えないところは同じ。そんな変わった容姿を馬鹿にする
人物はいなかった。職員として入る前に必ず課長と対面する。何か言われるのではと考えていたが
彼女はそれに関しては
「体のそれは封印的な感じ?大変だね」
とだけ言った。それに救われたと思ったのは事実だ。彼は足を止めた。伝えられた容姿と同じ。
愛瑠はその霊障に頸狩りと命名した。
「あら、自ら首を取られに来たのね」
頸狩りから感じる雰囲気は続麻彼方が連れていた「彼女」に似ていた。手で首を庇った直後だった。
「ダメでしょう。勝手に避けないで頂戴、失敗しちゃうから。ほら、その腕」
しまった、そう思ったときには遅かった。幼い頃に体験した体内が焼け爛れるような感覚に
苛まれ一時撤退。
その異変を彼は早口に愛瑠に伝えていた。
「ちょっと待って!大丈夫なの!?今、救援を」
『いりません!来ちゃダメです!!それと…彼方さんの—』
会話が途切れた。霊能力、特に憑かせて戦う能力者はこういう状況に陥りやすい。
「どうしたんだい愛瑠ちゃん」
声を掛けてきたのは中年の男、古里虎徹だ。呪文を詠唱し、その場にいる土地神の力を
借りて扱うことが出来る。
「藤丸君が、能力というより鬼神が暴走というか封印が解除されちゃったみたいで」
- Re: 霊障対策課24時! ( No.38 )
- 日時: 2020/04/24 21:12
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
虎徹は資料室に愛瑠と共にやってきた。愛瑠は数人、職員を藤丸が逃げたであろう場所に
向かわせた。古い資料を幾つか取り出し虎徹は愛瑠に見せた。
「昔、彼は鬼神に蝕まれた。そこに職員が駆け付けて体のあれを描いたってわけ。で、藤丸君の
鬼神についてはこれね」
村の守り神と結婚するはずだった巫女、その巫女は彼の先祖によって攫われた。先祖は巫女に子が
出来ると目もくれなくなり巫女は自殺。それを知った鬼神は今までの優しさを捨て怒り狂った。
どうやら世継家には先祖代々「人に優しくしないと怖い鬼に食われる」と伝えられてきたようだ。
それは先祖に対して怒り狂った鬼神が掛けた呪いの事。藤丸自身の今までを調べると一度、
小学校時代に暴力沙汰を起こしていたようだ。好きな子がいたようで虐めていた同級生に
殴り掛かったらしい。それが始まりだったようだ。
「まぁ…暴力は良くないけど守ろうとして手が出たってことだよね」
「そうだとしても鬼神からしたら優しくないと思われたんだろうね。さて、ここまで調べて
君はどうやって事態を治める?」
「…どうにかなる。優しい鬼神でしょ?どうにかなるなる」
一方、頸狩りの元にやってきたのは続麻彼方だった。彼一人だ。彼を見た途端、彼女は頭を
抑え始めた。
「やめて!あたしは生きるのよ…」
「俺の方こそ、やめてって言いたいぐらいです。霧子さん…もうお別れの時間です」
頸狩りの黒い服が真っ白なウエディングドレスに変わった。
いつかウエディングドレスを着たい、そう願っていたのは彼方の姉的存在、麻生霧子。
彼女が頸狩りの正体、否それに殺されてしまった。頸狩りの首は霧子の首だ。頸狩りを道連れに
霧子は成仏する。
「さようなら彼方君」