ダーク・ファンタジー小説

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知らぬ合間に異世界転生
日時: 2022/08/08 06:03
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 長い眠りから覚めると、そこは異世界でした。
 彼はどうしてここに連れてこられたのか。
 何のために生かされているのか。

 真実は『  』のみぞ知る。

 ・目次

 異世界での目覚め~ >>01-
 >>01>>02>>03>>04>>05

Page:1



Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.1 )
日時: 2022/07/25 22:20
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 0

「★〇!♪※*」
「……」

「※◎▽↑∴=」
「あ、あの~」

「゜・%&#☆」
「……ねぇ」

「○?」
「なに言ってんのか全然わかんねええええぇえええええ!!」

 みずみずしい新鮮な野菜や厚みのある肉が並ぶ市場の中心で、一人の少年が空に向かって叫びに叫んでいた。
 彼は周りの目など気にせずに膝から大きく崩れ落ちる。こんな大胆な行動ができてしまうのは、彼がこの世界の人々との意志疎通ができないからである。
 自分がおかしな人間だと思われているのは間違いないが、実際にそれを彼に伝える者がいないのだ。いや、もしかしたらいるのかもしれないが、少なくとも彼にはそれを聞き取れない。
 この世界で目覚めてはや三日。やけくそ気味になるのにもそう時間はかからなかった。

 そう、少年はある日突然知らない世界に迷いこんでしまっていたのだ。

Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.2 )
日時: 2022/07/28 00:01
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 1

 三日前、少年は突如として目覚めた。
 ここはどこだろう。まぶたを何度もこすりながら、ぼやけた視界を見渡す。
 何もない。真っ暗だ。日の光も月の光も見当たらない。
 どうして俺はこんなところにいるのだろう。
 長い間眠っていたのだろうか。身体も思うように動かない。どの部位も凍りついてしまったかのように、硬く冷たい。首を曲げようとすると、ミシミシと木製人形のような音を立て、わずかな不快感が胸に染み込んでいく。このまま仰向けに寝ていようかとも思ったが、寒い暗闇で独りでいる寂しさから、とりあえず出口を探すことを決心する。
 少年は両手で地面を押し込み、無理矢理起き上がろうとした。

「……いっ!」

 少し頭を浮かせただけでも痛みが全身を巡る。手の感触から考えると地面は岩のようだ。そんなところでずっと寝ていたのではこの痛みも無理はない。
 それでも少年はこらえて、なんとか上半身を起こすことができた。
 少しだが、心にゆとりが生まれる。

 すると、どこからか風の音が聞こえてきた。
 耳をすまして、音の出どころを探る。
 風が若干強かったのもあってか、少年はすぐに視界の先の方から来ていることが分かった。

 また両手で地面を押し、尻を引きずりながら今度は前方に進む。このとき感じた摩擦で自分が服を着ていないことを同時に理解した。

 しばらくすると、壁にぶつかり、目線より少し高い位置に指が三本ほど入りそうな隙間を見つけた。
 そこから冷たい風が入り込み、全身を覆う。少年は思わず自分の手で自分の身体を抱き締めて、歯を細かに震わせた。暗闇の中がこんなに寒いのも納得だ。

 少年はゆっくりと隙間から外を覗いてみる。

「お!」

 どうやら向こう側は暗闇とは真逆の白い世界のようだ。
 すかさず、少年は隙間に指を入れ、外に出ることを試みる。

「………。はは、さすがに無理か、て、ええ!?」

 なんと、隙間を指で埋めただけで壁は一瞬の間をおいてからバラバラと砕け始めた。
 刹那、視界いっぱいに雪の降る銀世界が広がる。少年は白の眩しさに思わず目を閉じ、両腕で顔全体を隠した。

 だが、そんなことよりさらに重要な問題に少年は気づく。
 今彼は衣一つとして身にまとわずに雪降る大地に放り出された状態。要するに、

「めっちゃ、さ、さむ!!」

 ということであった。

Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.3 )
日時: 2022/07/31 21:36
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 2

 目の前に広がるのは真っ白な異世界。
 全身に冷気が伝わり、吐く息一つ一つから白い霧が生まれる。辺りに吹く荒風は、雪をよりいっそう激しく散らせ、少年の視界を遮っていた。 
 さすがに今、外を歩くのは危険だ。少年はさっきまで自分がいた暗闇に戻ろうと後ろを振り向く。だが……。

「おいおいまじかよ」

 そこには小さなほら穴が存在した。比較的整った岩と岩の壁に囲まれており、中は暗く、静けさを漂わせている。ただ、そのほら穴は一粒の雪もかぶらずに、銀世界に黒の存在感を知らしめていた。それはあまりにも異質であったが、同時に気高い神秘を感じることもできた。

 だが、少年がほら穴を目視した今、岩の壁は次々と亀裂を走らせ、白い大地に砕け散った。白と黒の世界の繋がりが断たれた瞬間である。

 目覚めてから、何もかもが突然のことで思考がうまく回らないが、これだけははっきりと分かる。

「もしかして俺、死ぬ?」

 雪原の上を全裸でたたずむこの状況。間違いなく危険だ。
 少年は己の死を実感するやいなや、迷わず前方に駆け出す。

「はぁ、はぁ、はあ……!」

 雪の霧のせいで何も見えない。人にも会えない。
 どんどん呼吸は荒くなり、冷気が何度も身体中を蝕んでいく。足の裏は真っ赤に腫れ、地を足で踏みしめるたびに脳天まで激痛が走る。
 走れど走れど希望は無い。まさにそこは白の地獄。

 風は少年を無理矢理に押しては掴み、罵倒をするかのように両耳を貫いていった。

「やだ、やだやだやだ。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだヤダヤダヤダやだやだやだヤだやダヤダヤダ」

 少年の瞳孔は大きく開かれ、凍りかけた涙が溢れ出る。そのまま彼の後ろへと流れていき、少年の背中にはきらめく涙の尾がたなびいていた。

「うわ!」

 疲労や視界の歪みのせいか、少年は顔から派手に転ぶ。同時にきらめく尾も雪の彼方へ消えていく。

「もう、だ……め……」

 少年は前に伸ばした手をゆっくりと下ろすと、そのまま深い雪の中で眠りにつく。

「……*!」

 幻聴だろうか。消え行く意識の中で、男の声が聞こえた気がした。
 ……。

「──◎&**★!?」

Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.4 )
日時: 2022/08/05 15:52
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 3

『──どうしてあなたは』
『──ごめんなさい』
『──私、あなたのこと』
『──だから私は』
『──守りたかった』
『──さようなら』

『──私は……』

 ────
 ──

 ……ここはどこだろう。てっきり雪の中で死んでしまったと思っていたが。
 少年はまた仰向けに寝ていた。しかし、背中にはあのいまいましい岩のかたい感触は無く、むしろ雲のように柔らかい何かに包み込まれている感じだ。とすると、やはりここは天界だろうか。

 ──いや、それはありえない。

「……あれ?」

 なぜ今俺はそう思ったのだろう。少年は自分が天界になど逝けるはずもないと、なぜかそう感じていた。
 それ以上考えようとすると、小さな頭痛が走る。とりあえず今の状況を確認するため、少年はゆっくり起き上がった。

「ここは……」

 少年は重いまぶたをなんとか持ち上げ、辺りを見回す。どうやらどこかの一室らしい。部屋全体が焦げ茶色をしていて木のぬくもりが感じることができる。少年が今座っているのは古びたベッドで、少し体を動かすと軋む音が伝わってきた。
 他には木の椅子と机が部屋の隅に置かれ、机の上にはなにやら白い膨らんだ袋と紙が一枚置かれている。ベッド横の窓からは光が一直線に射し込み、少年の瞳を刺激する。
 以上から、少年はここがいわゆる寝どころであると推測した。
 
 それにしても誰が俺をここに……。
 とりあえず机まで移動し、その上の袋と紙を確認する。
 袋を軽く持ち上げてみると、中身の物がジャラリと音を立てた。そして思っていたよりも重い。
 少年は息をのみ、ゆっくり袋の中を覗いてみる。

「こ、これは!!」

 なんと中には大量の銀と銅のコインが入っていた!

 一体どういうことなのか。

「あ!」

 少年はさらに気づく。この世界で初めて目覚めたときは服を着ていなかったはずなのに、今彼は薄茶色の革服と真っ白なセーターを身にまとっていた。

 やはり誰かが少年を助けたのだ。
 少年はそのままそばにある紙にも目を通す。なにか文字が書いてある。だが!

「え……読めない……」

 そこには彼の知らない言語があった。

Re: 知らぬ合間に異世界転生 ( No.5 )
日時: 2022/08/08 05:57
名前: 襲い夜行進 (ID: hDVRZYXV)

 4

「あの~。すいません」
「〇#?」
「へ? なんて?」
「……▽▽&↑*」
「あ~、とっと……え、まじ? もしかしなくとも言葉通じない?」

 少年は顔を両手で伏せると、ため息と悲鳴が混じった特に意味のない声を吐き出した。
 そのまま現実逃避気味に少し前のことを振り返る。

 遡ること数分前、少年は紙に書かれている文字をまじまじと見つめていた。

「うーむ。やっぱ分かんねーな」

 コインの入った袋と共に机の上に置かれていた一枚の紙。おそらく彼を助けてくれた誰かからの物であるが、肝心の内容を理解できない。
 どうにかお礼を言いたいのだが……。
 少年は左手の親指を唇に当て、今、何をすべきか考える。

「ま、とりあえず部屋の外に出るか」

 ここでじっとしていても何も始まらない。少年は木製のドアをゆっくりと開け、外を軽く見渡した。
 彼から見て横向きの廊下が一本。すぐ右には腰ほどの高さの台があり、その上の花瓶の中では、白と赤の花が互いに絡み合いながら伸びている。
 そして左には二つの部屋のドア、さらに奥には下に向かう階段があった。ここは二階ということだろうか。

 少年は念のため音を立てないようそっと階段を下る。

「……っあ」

 突然、少年は動きを止めた。いや、勝手に身体が硬直したと言うほうが正しい。

 ──人の声が聞こえる。

 この未知の世界で会う初めての人間。孤独の状態が続いていた彼にとってはとても嬉しいことだ。現に頬が少し緩みかけている。だが、同時に恐怖も感じた。これから視界に映そうとしている人間は、本当に『人間』なのだろうか。もし、そこに自分の知らない生命がいたらどうしよう。

 細かい汗一粒一粒が全身をまばらに駆け回る。喉の中、首筋と服の境目が次第に痒くなり、余計に焦燥感が増してくる。

 だめだこんなんじゃ。
 少年は犬が水を払うように首を振ると、思いきり頬を両手で叩く。ピシャンと痛々しい音が壁に反響する。いちいちウジウジしていてはだめだ。
 少年は意志のはっきりしたうちに残りの段を駆けて下った。
 下の様子が見えてくる。さあ、新たな一歩を踏むときだ。
 一瞬だけ目を閉じてから、少年は瞳いっぱいに新世界を取り込む。

「◎☆&▽?」「?〇∴:↑」「&%○▽★」「=※~♪◎~♪」「+><※」「・■↓!?」「▼◇#……++++∴〇=!!!!」

 そこには、男たちが朝っぱらから酒を飲み交わしては大声で話し、女子供が楽しそうにサンドイッチや果実を食べている光景が広がっていた。誰一人少年に意識を向けない。

 意表を突かれ、少年はしばらく固まっていたが、すぐに我に返り、この状況を理解した。
 どうやらここは酒場で、彼はその二階で寝泊まりしていたらしい。
 なるほど、机の上のはそのための宿代か。
 先ほどとは打って変わって冷静になって、少年はカウンターで立つ、コック帽の料理人らしき男に話しかけた。

「こんにちは」
「〇?」
「いい天気ですね。はは」
「★★▽∴◎↑!」
「あ~そうですよね。分かります」
「……%&∴:・?」
「……はは」

 コック帽の男に怪訝そうな目で見られながら少年は虚を見つめていた。
 耳に入ってくる意味不明な音。だが、感情がこもっていて、少年の脳内に無理に理解させようと迫ってくる。
 知らない世界で言葉も通じない。少年はやけに冷静に微笑していた。


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