ダーク・ファンタジー小説
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- Cord___CyAN
- 日時: 2023/01/27 20:09
- 名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)
どもども、ぷれです。
ここのところ、色々書きすぎて疲れたのですが、また新作書きます。
今回は、エージェント系です
~あらすじ~
2年前、大規模テロ事件が発生した東京都新江戸川区。ターミナルタウンとして、発展を遂げた街には未だ犯罪が絶えない。
そこで日本政府が立ち上げた、犯罪未然防止組織CyAN(シアン)を導入。
記憶喪失の少年と、新入りの少女がこの街の安全を守るために戦う。
人物紹介>>1
Prologue>>2
Episode 1.「New Buddy」>>3-5
Episode 2.「The pandora」>>6-10
Episode 3.「Day off」>>11-13
Episode 4.「Taste of Blood」>>14-20
Episode 5.「Hyacinth」>>21-22
Episode 6.「LOST」>>23-24
Episode 7.「Reaper」>>25-27
Episode 8.「Unknown」>>28-30
Episode 9.「Poison」>>31-33
Episode 10.「Alone」>>34
Episode 11.「Finale」>>35
Epilogue>>36
Episode 0.「Started」>>37
- Re: Cord___CyAN ( No.8 )
- 日時: 2022/10/18 09:37
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
『さーて、作戦を説明するぞー』
「ういーっす」
スマホのスピーカーから鳴る彰の声を聞きながら、着替える。
『今日は3人での作戦行動だ。ざっくり話すとな、あとで送っとく合流地点で依頼主と合流。その後、車を回収してここまで戻ってくる。車はまあ、荒木が運転する』
『あたしが運転かよ...』
『あ、叶魅は5分後に俺のとこ来い。渡したいもんがある』
「へいへい」
一人だけお店まで戻ってきた。
「叶魅、お前にはスナイパーとして動いてもらう」
「ほーん、L96とか?ドラグノフとか?」
彰は、隣に置いてあったギターケースを渡した。
「開けてみろ」
「...バレットM82A1」
その瞬間、叶魅は血の気が引くような感覚に襲われた。
どうして、こんなところで再会してしまったのか。
「これは荒木の提案だ。お前がいつまでもトラウマを引きずらないように、この銃を使わせる。これは上官命令とか、そういうのじゃない。ただの、仲間からの頼みだ」
「...了解」
どんな理由があっても、彼は断ることはしなかった。
自分のために用意してくれた銃を、使わないことはしない。
久しぶりに感じる重量感。対物ライフルの名に恥じない重さだ。
「行ってこい」
「行ってきます」
- Re: Cord___CyAN ( No.9 )
- 日時: 2022/10/21 22:56
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「よーし、作戦のおさらいするぞー」
叶魅ら一行は、目的地である江東区を目指していた。
新京葉線に乗り、新木場駅まで乗り換えなしで行けるとは非常に便利である。
「駅に着いたら、歩いて立体駐車場まで行って車を回収する。そのあと、ホテルで待ち合わせしている依頼主を乗せて新江戸川まで逃げ切れば成功だ」
「ところで、依頼主って一体誰...」
「津葉木さん、ちゃんと話聞いてました?」
「知 ら ね」
「はぁ...Pandoraの社長ですよ。私も社長の顔も名前もよく分かりませんが、任務が成功したらCyANに全面協力してくれるそうです」
最初の溜め息は結構傷ついたが、普通に話してくれる藍奈は優しいと思った。
Pandoraとは、世界的に有名な企業で表向きには他の企業の製品を輸出したり輸入したりする企業だ。しかしその反面、武器販売や個人の特定などを行っている。
さっすが後輩!とか言ったら、あとでお咎めがありそうなので言うのは控えよう。
「うし、着いたぞー」
「というか津葉木さんギターケースの中何が入ってるんですか」
「...車でのお楽しみ」
とは言ったものの、あまり見たくないし見せたくないしで複雑な気分。
立体駐車場までは徒歩で5分と意外と近場なのだが...。
「...偵察用のドローンか」
「こんなところじゃ、排除できないですよ」
「しゃーねー、車に乗ってから排除すりゃいいや」
中々面倒なことになった。偵察用ドローンを排除しなければ、いずれこちらが格好の的になってしまう。
それも武装までしているドローンとなると、早めに処理しておくのが一番安全な手段だが...。生憎ここは密集地、いくらサプレッサーを付けていてもパニックになってしまう。
「...お前ら、走って車に乗り込め」
「了解」
「行くぞ!」
「ちょ、バレット重たいんだって!!待ってぇぇぇ!!」
情けない男である。
「これか...」
車種はWRX STI、流石に防弾仕様車だと信じたい。
「パワー足りるか?これで」
「エンジンは見た感じV6ですけど...津葉木さん、そんなとこに居ないで早く乗ってください」
「あ、ああ...」
叶魅は車に乗り込み、ギターケースを開けた。
「これって、バレット...」
「バレットM82A1、僕のトラウマさ」
「トラウマ?どういうことです?」
叶魅はマガジンにゴム弾を装填しながら語った。
「2年前、凶悪犯によるテロに捜査官6人総出で任務をしたんだ。その時にこの銃を使ってね。凶悪犯を無力化したんだ」
「?なら良かったんじゃ___」
「死んだ。護衛対象は上半身と下半身で真っ二つになって、犯人は頭が飛んだ」
本当にあの時やめておけばよかったと、今さら後悔しても遅い。
あの時圭の忠告を無視しなければ、あの時無理せずにバレットなんか使わなければ。そんなこと、今思ったって遅いのに。
「話してるとこ悪いけど、ドローンは武装してた。どっちでもいいから撃ち落とせ」
「「了解」」
ガバメントはケースから取り出すまで時間がかかる。ならば___。
「僕がやる」
セミオートで外したら後が面倒なので、ロングマガジンを装填。フルオートモードに切り替え、窓を開ける。
ここで外せば死ぬか、或いは病院送りか。そんなことはどうだっていい。グロック18のフルオートを信じるしか方法はない。
「さーて、申し訳ないけどドローンの出番は終わりだ」
トリガーを引いた瞬間、80発の9mm弾がドローンへと直撃する。
体勢を崩したドローンは、黒煙を上げながら地面へと叩きつけられた。
「流石にダメージが大きいか?」
叶魅は、今までフルオートを使ったことが2回しかなかったため、部品へのダメージが大きいかどうか心配していた。
「ちっ、ドローンを落とされたか。まあいい、新深川線で迎撃しろ」
『了解』
叶魅たちを迎え撃つための部隊は、すでに準備をしていた。
「乗って!」
カーディガンを羽織った小学生ぐらいの少女、と断定するのはいけないか。
「社長、こいつらに自己紹介してやれ」
「そうだね。ボクは篠崎有栖、Pandoraの代表取締役社長だ。以後、お見知りおきを」
どう考えてもロリっ子にしか見えない。何歳なのだろうか。
「ボクはこれでも26歳でね、若く見えるだろ?」
「むしろ見た目でアウトでしょ」
「津葉木さん、そんなことよりこの車ともお別れです」
何言ってんのこの人。
しかし、強ち間違いではなかった。
「どうしてこういうのはM4使うかな」
「こんな対物ライフルよりよっぽど効率的なんだろ」
「準備した本人が何言ってんの!?」
相手は容赦なく撃ってくる。
残念なことに、この車は窓だけ防弾仕様だった。ケチるなよそこで金を。
「このまま突っ切るぞ!!」
「は!?正気ですか!?社長乗せてんだよ!?」
「津葉木さんうるさいです。それとバレットが邪魔で動けないんですけど」
「知らないよ!!」
「二人は脱出しろ!狙撃ポイントに向かって走れ!あたしたちはあとで追い付く!」
やはり作戦に穴がありすぎた。インカムは通信妨害の影響で、無力。
もうどうすればいいのか分からない。
「ここだ!」
狙撃ポイントに到着し、ギターケースからバレットを取り出す。
サービスエリアの茂みで、道路は封鎖されていて周りに人は見当たらない。
「ふぅ...」
2年ぶりのスナイパーで、体が強張っているのが分かった。必死に落ち着かせようとするも、焦点が定まらない。
こんな状況で、トリガーを引くのはあまりにも無謀に近い。
「津葉木さん、準備を」
「...」
「津葉木さん?」
「...初弾装填」
「逃げろ!」
「キミはどうするのさ!」
「あたしはどうにでもなる!」
銃弾が飛び交う戦場で、思考はすでに働いていない。だから闇雲に撃つ。
デザートイーグル、圭は自分の体とミスマッチだと知っていながらこの銃を使用している。
50口径という規格外の大きさを誇るこの銃は、50AE弾という強力な弾丸を使用する。いわゆるマグナムと言われるこの銃は、身長158cmの圭には不向きの銃だ。
「ちっ、援護はまだか!」
「ひえぇぇぇ!まだ終わらないの!?」
「津葉木さん、外さないように」
「分かってる...」
スコープを覗き、強襲部隊を捕捉する。
震える右手をトリガーに這わせ、呼吸を整える。
「...っ!」
轟音とともに、地響きが起きた。腹に衝撃波に近いものが伝わる。
「...外した!」
「ちっ、んの野郎外しやがった!」
圭は怒りを隠しきれなかった。
ここまで来て、まだ迷いを捨てきれていない叶魅に対する憤慨だ。
「...津葉木さん、私も一緒にトリガーを引きます。失敗はさせません、だから迷いなんか捨ててください」
「...頼んだ」
叶魅の右側に体を委ね、トリガーを握る指に自分の人差し指を這わせる。
「いいですか、人に当てる必要はありません。強襲部隊の車を狙ってください。爆発させるんです」
「分かった...」
手の震えが消えて、この銃に対する恐怖を捨てた彼に、もはや敵などない。
藍奈の冷たい手が、叶魅の体温を奪っていく。嫌な感じはしない。
「...今!」
バン!!という重い音が鳴り響く。勝利の音。
「...爆発を確認しました。成功です」
「よし!」
爆発音が耳に突き刺さる。
圭は安堵の表情を浮かべた。
「あいつら、よくやったな。社長、もう大丈夫だ。その内ヘリが来る」
「うぅ...首都高だってのに、こんなことしたら国からお咎めがありそうだよ...」
「荒木さん!」
叶魅たちは、泥だらけになりながら戻ってきた。
藍奈は相変わらずクールに振る舞っているが、その表情には微かに笑みがこぼれていた。
「叶魅、藍奈よくやったな。もう少しで迎えのヘリが来るからな」
「全く、次依頼するときはもっと安全に頼みたいな」
「ここに置いてくぞ」
「ごめんなさいありがとうございます」
安心したのも束の間、気絶していたはずの敵が背後に忍びよってくる。
「散々な目に遇わせやがって...死ねぇ!」
「おっと、ナイフ使うのは無いでしょ~。あれ、思ったより力弱い?」
一瞬で取り押さえられ、抵抗できずにナイフを落とした。
「藍奈、気絶するまで撃っていいよ」
「分かりました」
そう言いながら、スライドを引く藍奈の顔は完全に鬼畜のそれだった。
- Re: Cord___CyAN ( No.10 )
- 日時: 2022/10/21 22:57
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
22:19
「はい!つーことでお疲れさまでした。カンパーイ!」
作戦が終わり、打ち上げをしているのだが...。
「あ、藍奈!お前それハイボールだぞ!?ジンジャーエールじゃないからな!?」
「まさかとは思うけど、柏木さん飲んだの?」
とか言いつつ、有栖も普通にビール6杯目である。
「...飲んでないれふ」
打ち上げ開始早々でカオスな状況になっているが、これはこれでいいのではないだろうか。
叶魅にとって、今回の作戦は大きな成長となった。
「津葉木しゃん、ぎゅー」
「何この可愛い生き物」
「普段のクールな藍奈からは想像もできないな。叶魅も俺が見ない内にそんな関係に」
「なってないわ。前線立たせるぞ」
「お前上官兼世話係の俺にそういうこと言っていいのかな~?」
この男、34歳である。というか本当に34歳かどうかも怪しいが。
「そこで上官権限使うとか職権乱用だぞー小暮」
「小暮さん!ビールもう1杯!」
「その見た目でビールってどうなの」
「小暮!無視すんな!」
まだまだ夜は長い。
2話終了です
中の人大体こんな感じじゃない?
叶魅:CV 花江夏樹さん
藍奈:CV 東山奈央さん
彰:CV 中村悠一さん
圭:CV 井口裕香さん
有栖:CV 坂本真綾さん
- Re: Cord___CyAN ( No.11 )
- 日時: 2022/10/20 11:53
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
Episode 3.「Day off」
「休暇?」
「そ、お前ら二人の活躍は組織全体で見ても目に余るものばかりだ。だから、褒美として休暇をやろうかなと」
テロの鎮圧はこの1ヶ月で8件と、かなりの活躍ぶりだった。
しかし、二人からすればそこまで活躍していないような気がしていた。というかこんな短期間で8件もテロが起こっていた事実に、今ツッコミたくなった。
「代表には俺から言っておくから、心配すんなよ。楽しんでこい」
「とは言われたものの、行きたい場所とかある?」
「私と行く前提なんですか」
「あれ?違った?」
普通に違うだろ。
「まあいいですけど...。そうですね、水族館とか行きたいです」
「お、中々ロマンチスト?やっぱりおと___」
「乙女ですが何か?」
いつ取り出したのか分からないガバメントの銃口を、叶魅の頭に突きつける。
この感覚は恐怖以外の何物でもない。
「い、いえ何でも...じゃあ行きますか水族館」
心なしか、藍奈の目が輝いて見えたのは叶魅だけであろう。
- Re: Cord___CyAN ( No.12 )
- 日時: 2022/10/22 12:01
- 名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)
「どこの水族館行くー?」
「サンシャインに行きたいです」
「即答だね...じゃ、行くか」
東京で一番大きい水族館と言っても過言ではないだろうか。
叶魅も捜査官たちと一緒に行っていたが、バディと行くのは初めてだ。
「ちょうど着いたら開くころじゃないか?...え?待って僕たちそんな早く起きたの?」
「そうですね。5時起きです」
「遠足前の小学生かよ!!ワクワクして寝れなくて、早起きしちゃったタイプだろ!!」
車のなかで一人騒ぐ男、津葉木叶魅。そして横で耳を塞ぐ藍奈。
ちなみに今日のコーデは、叶魅は紺のオーバーサイズシャツに黒のパンツ。藍奈はワイシャツの上に紫のカーディガン、デニムのロングスカートだ。
「うるさいですよ。あと出口間違えないでくださいね」
「僕信用されてないなー」
「信用はしてますけどね。まあ、あと100mで出口なんですけど」
「もっと早く言って!?」
藍奈は表情一つ変えずに、叶魅の方を向いた。
「ずっと一人で喋ってて、タイミングを見失ったんです」
「それはすいません...」
やはり情けない男である。このままでは、帰ることもままならい。
「着いたな...疲れた」
「何言ってるんですかこれからですよ」
「え~?休ませて~」
そんな叶魅の願いも虚しく、藍奈は腕を引っ張った。
中は、薄暗く幻想的な雰囲気を放っている。
「クラゲだ。綺麗だなー」
「そうですね...」
どこか寂しそうな表情で水槽を見つめる藍奈を、不思議に思ってしまったことを後悔することになった。
「...何かこの水族館に思い入れとかあるの?」
「ええ。家族でよく行ってたんです」
非常に和むような話で、思わず訊いてしまった。
「ご家族は今どこに?」
「居ません。2年前の大規模テロで、みんな死んじゃったんです...」
「...ごめん。辛いこと訊いちゃったね」
2年前、犯人こそ判明しているものの未だ解決されていない大規模テロ事件があった。
犯人は、テロの2日後に何者かによって誘拐されてしまった。それ以来、行方不明扱いされて2年という月日が流れた。
「いえ、慣れているので。それより、早く行きましょう。いつまでもクラゲを眺めているわけにもいきません」
「...ん」
短く返事をして、別のフロアに移動した。