二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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涼宮ハルヒの嫉妬
日時: 2009/12/18 16:59
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

 大好きな漫画のパロディ『涼宮ハルヒの嫉妬』です。ご存知のS〇S団メンバーだけでなく、オリキャラも交えた新しい彼らの活躍を、楽しく読んで頂けると嬉しいです。はい。

—登場人物—

・キョン
 本作の主人公。全作品を通しての語り手でありツッコミ役も兼ねる。涼宮ハルヒ絡みの厄介ごとを背負い込む苦労人で「やれやれ」としばしば口にする。性格は事なかれ主義。理屈っぽくよく愚痴をこぼすが、文句を言いつつも人付き合いはよく、お人好し。

・涼宮 ハルヒ(すずみや はるひ)
 ヒロイン。黄色いリボン付きカチューシャを着けている。美少女ではあるが、性格は唯我独尊・傍若無人・猪突猛進で感情の起伏が激しく、情緒不安定になりやすい。実は「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」という、神にもなぞらえられるほどの力を持っている。
 
・長門 有希(ながと ゆき)
 いつも無口で無表情だが、知識欲、食欲は旺盛。谷口曰く容姿はAランク-(マイナー)。読書を好み、いつも何かしらの本を読んでいる。正体は、情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。平たく言えば人造『宇宙人』。

・朝比奈 みくる(あさひな みくる)
真面目で気が弱い性格。キョンに「朝比奈さんより可愛い生物はいない」と言われるほどの超美少女。正体は、はるか未来から来た『未来人』でハルヒの監視係だが、まだ研修生以下の見習いレベルでほとんど権限が無い。

・古泉 一樹(こいずみ いつき)
 いつも微笑を浮かべ穏和な物腰をしており、学校でも女子からの人気は高い様子。正体は『超能力者』であり、その集団である組織・「機関」に所属する。現在の性格や表情などは「ハルヒの願望」に沿った演技であるらしく、そうした演技を強いられる不満をキョンに漏らしたこともある。

—お客様—

 刹那 様
 みやっさん('・ω・` 様
 ヒヨ 様
 工場長 様
 mim 様
 ヾ(=・ω・=)o☆Lunsrot 様
 いしいみゆ 様
 健心 様
 ユキタバ 様
 虎徹 様

 — 目次 —

 第一話 スパイラル エンヴィー
 >>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 

 第二話 デステニー デイ
 >>10 >>11 >>12 >>13

 第三話 ウェザー コンディション
 >>14 >>15 >>16 >>17

 第四話 ミステリック サイン

 第五話 ホーリー ナイト

 第六話 ハード メランコリー

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Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.13 )
日時: 2009/12/12 14:31
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

 事故現場から約四キロメートル。時間にして1時間弱を越えてようやく俺達は家に着いた。
「さて、帰ったはいいものの、この状況をどうやって親に伝えればいいんだ……? 」
 少し前から思ってはいたことだが、家を前にしてどうしていいのやら、分からなくなってしまった。
「素直に言っちゃダメなの……? 」
 女の子も不安げに言った。
「そうしたいのはヤマヤマなんだが……」
 実を言えば、親に報告したくないのは自転車の件ではなく、この子を巻き込んで今一緒にいると言う事だ。
「……? 」
 そして、女の子が首をかしげているところに、悲劇は起きた。なんと、家の玄関が内側から開いたのだ。
「あら、どうしたの……? もう学校始まるでしょうに」
 更にあろうことか、母さんが出てきてしまった。
「あぁ、その……」
 なんとか状況を整理し、上手いこと伝えるべく俺は必死に脳をフル回転させた。しかし——……
「あらあらあら?」
 母さんは、焦る俺でもなく、大破した自転車でもなく、真っ先に女の子の存在に気付いた。
「あ、どうも……」
 ぎこちない雰囲気の中、女の子は母さんにお辞儀をする。
「これは、どうも」
 そう言いながらも母さんはこの状況を必死で理解しようと、俺や壊れた自転車を見回した。
「……またハデにやらかしたモンだねー! 」
 状況理解が済むと、大きなため息とともに苦笑いが出る。
「……ご、ごめんなさい !!! 」
 突然、女の子が謝った。
「おやまぁ……——気にしなくてもいいんだよ、自転車が無きゃ歩けばいいんだし! 」
「えぇ ?! 」
 他人事だと思って母さんはとんでもないもと言い出した。
「はぁ」
 当然、女の子も困惑している。
「ところで、あなた名前は? 」
「あ、そう言えば聞いてなかったな」
 会話がぎこちないと思っていたのはこのせいだったのだ。

「・・・し、島尾 日和(しまお ひより)」

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.14 )
日時: 2009/12/18 16:52
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

 第三話 ウェザー コンディション


「さて、今から行ってもどうせ遅刻だろうし、今日は学校休んでったら?」
 親が子に言うセリフかよ……
「俺はよくても、ひよりサンは……」
 事故とは言え、巻き込んだのは事実。俺のせいで単位落とすのは忍びない。
「ひよりでいいよ、敬語省けって言ったのキョンじゃない」
 含み笑顔でひよりは答えた。
「あぁ、そうだな」
「それと、心配しなくても私は学校に行ってないから大丈夫」
「えぇ !? 」
 突然の告白だ。
「でも、その制服は?」
 母さんはそうとう動揺しながら聞いた。
「これは……——」
 ひよりは言葉に詰まった。
「まぁ、今いっぺんに聞く必要はないさ。落ち着いたらまた色々話そう」
 俺は母さんの空気を読まない質問攻め(未遂)からひよりを守った。
「うん……そうしたい」
 ひよりも、疲れてはいるようだった。
「そうね」
 母さんの承諾を得た後、ひよりは俺の部屋で休むことになった。
 今、ドアの閉まる音が一層重く感じられる。
「ふぅ—……」
「疲れているな」
 俺はひよりを気にかけ言った。
「そりゃあ、高校一年生の女の子があれだけの距離を歩けばねー」
 椅子に座るひよりを見て、俺はどうしても聞きたくなった。
「なぁ、お前さっき学校行ってないって言ったよな……? 」
 落ち着いてからと言っても、気になるものは気になる。
「ちょっとワケありで……」
 ひよりは少々暗くなって言った。
「…………? 」
 当然だが、俺はひよりのことを何一つ知らない。妙な歯がゆさが残る。だからこそ、これ以上踏み込めない状態でもある。
「まぁ、落ち着くまでゆっくりしてけよ」
 俺は不明な点を差し引いて言った。誰にでも言いたくないことの一つや二つあってもおかしくはない。
「うん、ありがと……」
 ひよりは軽く微笑んで、会釈した。——とその時

「ピピピ ピピピ ピピピ」

 俺の携帯から着信音がなった。
「誰だ? こんな時間に……」
 俺はソファーの上に転がっている携帯を手に取った。
「もしもし……」
「コラ !!! キョン !!! 今何時だと思ってんの !!! さっさと学校来なさい !!! 」
 ハルヒの叫び声が携帯越しに俺の部屋に響いた。
 えーと……どう説明すればいいのやら
「ハルヒ、すまんが学校には行けそうにないんだ。理由は出来れば聞かないで欲しいんだが」
 俺は後手に回ってハルヒの反応を待った。
「ちょっと! 風邪とかじゃなわよね !? それと、忘れてないでしょうね! 今日は絶対予定空けときなさい !!! 部活終わったら迎えに行くから !!! 」
 一際大きな声を出し終えたハルヒは勢いよく電話を切ったようで、「ツーツーツー」という音が静かに聞こえた。
「いけねー……忘れてたぜ」
 俺はと言えば、今朝の事件の衝撃のデカさからかそのことをすっかり忘れていた。もし、ハルヒから連絡が来なかったら逆鱗に触れていたことは間違いない。
「……今の何?」
 半ば驚きながらひよりは聞いた。
「ん?あぁなんて言うか……」
 俺は言葉に詰まった。俺とハルヒの関係についてどう説明すればいい? 誰か教えてくれ。

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.15 )
日時: 2009/12/18 16:53
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

「何て言うか……——」
 俺は言葉に詰まった。
「ん? 」
 ひよりはキョトンとして首をかしげている。
「言うなれば、クラスで俺の後ろの席に座ってて、所属してる部活の部長だな……! 」
 棒読みだ。
 それ以上の言葉は口から出てこなかった。というか、言いたくないし言う必要もない。
「それがハルヒさん? 」
 ひよりは怪しくうつむき、言った。
「あぁ……まぁ」
「ははっ」
 ひよりは不意に笑った。
「何だよ?」
「いやー尻に敷かれた彼氏よねぇ……」
 俺にはおどけて言っているように聞こえたが、ひより本人の表情は少し寂しそうに見えた。
「俺とハルヒはそういう間柄じゃない!」
 俺ははっきり言った。
「ほえ? そうなの?」
 今の電話一本でそう思えるものなのだろうか?
「でも、今日はクリスマス・イブだし……私てっきりそんな感じの電話なのかと」
 『そんな感じ』って一体どんな感じだ?
 すると、今ひよりの表情が堅くなるのが分かった。

「……気になる?」
 突然、ひよりは言い始めた。
「ん? 何のコトだ? 」
 俺は自分が座っていたベットに横になり聞いた。
「私のコト」
 一体何を言い出すのだ?
「……? 」

 ひよりが口を開き、ためらう数秒の沈黙と部屋いっぱいに広がる独特の威圧感が一瞬で場の空気を澄みきったモノへと変貌させた。そして——……

「実は私、夏休みに入る前に北高校を退学してるんだ」
 ひよりの重たいセリフは俺の耳には少しばかり鈍音だった。
「退学……!」
 俺は心底驚いた。
「うん。といっても家の諸事情で自分から辞めざるを得なくなって……」
 ひよりはうつむき、目を合わせなくなった。
「……諸事情?」
 俺は一瞬しまったと思った。他人の諸事情など軽々しく聞いていいものではない。
「…………」
 ひよりも言葉に詰まっているようだ。
「……あぁ、言いたくないなら言わなくていいぞ?」
 俺はさりげなく自分の失言へのフォローをした。
「ううん、これを言わないと話進まないから……」
「そうか……」
 ひよりは呼吸を整えて落ち着いた様子を見せながら少しずつ話始めた。

「私のウチは両親と妹がいて、今思うと毎日が笑って、怒って、泣いて、それでいて優しくて、温かくて、感情が募ってくる素敵な日々だったと思う。でも——……」
 ひよりは歯を食いしばり、その眼にうっすらと涙が見えた。
「……5ヵ月程前、私の家族は何者かに惨殺されたのよッ !!! 」
 ひよりの叫ぶ感情が事細かに俺に伝わってきた。
「………… !? 」
 俺は黙ることしか出来なかった。いや、それ以上にこの重すぎる事情と俺の知るひよりとの少ない情報が色々と交差したからだろうか。
「犯人は知れぬまま、その後は親戚をたらい回しにされて、あまりにもそのテンポが早すぎて転校の手続きも出来たモノじゃないし……今日も何となく暇だったから気分転換に散歩してたの。それでも北高の制服を着てたのは学校への心残りだったのかしら? 」
 ことのてん末を俺は耳に焼付けた。だが、俺の口は開かず終いで、何か掛ける言葉を必死に考えていた。
「そういうわけで、もう暫くしたらこの町からもオサラバなわけ。せっかくキョンとも会えたのにね」
 そう言うと、ひよりは俺に少し引きつった笑顔を向けた。それは俺にとって何とも返しがたい笑顔だった。
 今のひよりにはどんな言葉を掛けても同情にしか聞こえないだろう。
「…………」
 見えないはずの空気が酷く色あせている。
「…………」
 お互い言葉が発せられない。次に何を言っていいのかが分からないのだ。すると——……

「コンコン」 
 ドアからノック音がした。
「母さん! 」
 ドアの開き口から顔を出したのは母さんだった。左手のお盆にはコーヒーが2つと軽い菓子が添えられていた。
「悪いね……盗み聞きする気はなかったんだけど」 
 どうやら、ひよりの事情は部屋の外で母さんにも伝わっていたようだ。全く……最近の母親というのはどこも同じなのだろうか。
「ひよりちゃん。もしよかったら、ウチに住まないかい? 」
 突然母さんはとんでもないことを言い出した。
「え……? 」
 ひよりも困惑しているようだ。
「おいおい、いいのかよ? そんなこと急に決めて」
 母さんの予測不明の言動にはほとほと呆れる。
「いいんだよ、人が困って立ち往生してるのを黙って見過ごすのはいい気分がしない」
 俺の饒舌のルーツは実はここにあったのかもしれない。
「……え、でも」
 当然、ひよりは困った。事故に巻き込まれそうになりつつ、大破した自転車に責任を感じて俺について来ただけなのに、そんな急展開になるだろうとは思ってもいなかっただろう。
「決めるのはひよりちゃんよ? でもあなたには一度気の休まるところで留まっておく必要があると思うの……」
 母さんはひよりの気持ちを透かすように言った。
「……気の休まるところ」
 そして、徐々にひよりの眼には輝きが蘇ってきた。
「そう。ウチならいくらでもいてくれて構わないからさ。そうだ、もう一度高校にも入ってみたらどうだい? 」
 話はさらに膨らむ。
「……高校」
 ひよりは一言ずつしか言葉を発しないが、引きつった笑顔がだんだん彼女の本当の笑顔へと変わって行く。
「……どう?」
 どうやら、母さんの後押しが効いたようだ。ひよりは立ち上がり深呼吸をして言った。
「いいんですか? 私なんかがここに居ても?」
「うん、いいともさ」

 涙……ぽつりとひよりの頬を伝ってこぼれ落ちる。 
 ひよりにとってそれは久しぶりに浴びる『優しさ』だったのかもしれない。彼女の表情がそれを物語っている。こうしてウチに新しい縁が登場した。

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.16 )
日時: 2009/12/18 16:55
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

 さて、あれから十数時間。俺は学校をさぼり、悠々自適に過ごしていられたのには理由が絶えないが、かくしてウチに新しい家族が出来たわけだ。あまりに突然のことで妹も本当に驚いていたが、そこは順応性の高い俺の家族だ。反対などあるはずもなく快くひよりのことを受け入れてくれた。それに妹は懐きだしたら利ない。

「しかし、何だってこんな健気な子をたらい回しにしたのかねぇ」
 母さんはひよりの目の前でぶっちゃけた話を始めた。
「ま、まぁ親戚とは言え生活が苦しい家庭もありますし……」
 しどろもどろでひよりは答えた。
「社会問題ってやつだよ。ヘタな詮索するなって。ひよりが困るだろ? 」
 俺は回りくねってフォローした。
「あはは……」
 苦笑いだ。
「あれ、そう言えばあんた誰か迎えに来るって言ってなかった? 」
 不意に母さんは言った。
「あッ !!! しまった、すっかり忘れてた……」
 またしても忘れていた。いつもなら忘れることじゃないはずだが、ひよりの存在があやふやにしているのだろうか……
 いや、そんなことよりハルヒを家に入れるわけにはいかない。告白された次の日に女の子を連れ込んだなんて知れたらどんな地獄を見るかわからん。
「もうすぐ18時よ……? 今からどこか行くの? 」
 放任主義の母親だ。あまり心配している素振りはない。
「それはハルヒに聞いてくれ。まぁ十中八九出かけるだろうから晩飯はいいよ」
 俺もそれ相当に答えた。
「はいはい。あんまり遅くならないようにね……」
 母さんがそういい終わるか否かで俺は身支度を済ませ、部屋を出た。そして、数分後……

「ピンポーン」
 
 怪しげにベルは鳴る。

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.17 )
日時: 2009/12/18 16:56
名前: song (ID: p17IpJNR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516

 ここは一歩引くべきか押すべきか……ひよりを気にする余り、俺はドアを開けながらも一層悩んだ。ほんの一瞬だけ……
 本当ならもっと悩んでからでもよかったのだが。

「こんばんは」

 そこにいたのは紛れもないハルヒだ。チェック柄のミニスカに分厚いコートと紺色のマフラーを羽織っていた。しかし、今ひとつ声に張りが足りてい。それはなぜか、俺には分かりかねる。
 俺は多大な違和感を覚えた。
「どうした……? らしくない」
 普段が普段だけに少し心配だ。
「え? あ、何か変かしら? 」
 変も何もお前は元から変だ。正しくは変じゃなくなった……か?
 俺は心の中でツッコミを入れたが、それを言葉にする勇気はない。爆弾の導火線で火遊びする気はないからな。
「いや、なんでもない。出かけの準備は出来てるから行こうぜ? 」
 俺はハルヒをせかした。
「慌てなくても時間はあるわ。のんびり行きましょう? 」
 そう言ってハルヒは徒歩を後ろへ進め俺の裾を引っ張った。
「お、おう……」

 神妙な気配で何となく分かったが、ハルヒなりに照れているのだろう。
 クリスマス・デート。はっきり言ってこれは日本だけの風習っていうか習慣だ。神仏習合の集大成とも言えるだろう。本来クリスマスは厳粛に教会で行われる年末の最大イベントだ。下手すりゃ正月よりも大切な行事だとか。古泉の言ったことを真に受けるのは癪だが、俺自身少し不思議に思っていたことだ。

『本番を前に盛り上がり過ぎないように……』

 考えたくないが「盛り上がり」とはデートを指し、本番とは……——まぁアレだ。

「さっきからずーっと黙ってるけど、どうかしたの? 」 
 考え事の最中、おぼろにハルヒの声が突き刺さった。
「あぁ、悪ィ……で、何だって? 」
「全く……これからちょっと寄りたい店があるから、付き合ってくれる? 」
 雰囲気とムードに合わせつつ、ハルヒは俺をあちこちに連れまわす気なのだろう。実にハルヒらしい一方的なデートだ。
「りょーかい」
 含み笑いを浮かべながら俺は答えた。
「ほら、ちゃんとエスコートしなさいよね! 」
 家の前では大人しかったが、少し開けた町並みが除いた瞬間、同時にその勢いが戻ったのだろう。俺はふとそんなことを思っていた。すると——……
「ん? 」
 俺の目の前には差し出されたハルヒの手が。
「早くしてよ……手が冷えるわ」
 口元をマフラーで隠しながらハルヒは言った。
 そして、俺は頭の端で俺自身、まだ何もハルヒにアプローチしていないことに気がついた。ハルヒはちゃんとアプローチしたのだが……
 何はどうあれ俺はハルヒの行動に無言で答え、その手を握った。
「さ、行きましょ」
 
 俺が思っていた以上にハルヒの手は冷たく、小く感じた。


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