二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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21エモン〜夢の旅路〜①
日時: 2011/02/26 14:03
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

第1話 旅立ち前夜
もう、2064年になろうとしている。あっという間の四年だ。もう、24歳になるんだな・・・。エモンは、そう思いながら、夜の銀座の街を一人歩いている。エモンは、国家宇宙探検家になっていた。あの、スカンレーと同じ職業だった。エモンは、最近テレビに出演する回数が多くなってきた。だから、彼はつづれ屋に帰ることも少なくなった。その、つづれ屋では、3人がこんな話をしていた。「坊っちゃん。病気治りませんでしたね」オナベが、困った顔をして言う。「でも、まあ、仕方なかったんじゃないか。わしも、こんな感じがしてたんだ。昔から。あいつは、わしに似て頑固だからな」苦笑いをしながら、20エモンが言う。「あいつは、あいつの人生があるんだ。それを見守るのが、わしら、家族の仕事さ。だが、460年続いたこのつづれ屋を、わしの代で終わらせるのがこころおしいな。寂しくなるな」20エモンの目には、涙がたまっていた。もう、あいつは戻ることはないんだ。わしは、このまま死ぬんだ・・・。
もう、3人はあきらめていた。このまま、死に逝くことを。息子に会えない寂しさを持ちながら。
そんな時、ドアの所に人影があった。20エモンは、笑顔で挨拶をする。「つづれ屋・・・。懐かしいな」そう言いながら、彼は言う。
「スカンレーさん。お久しぶりです。前は、私達の21エモンがお世話になりまして」ママが、スカンレーの前に立ち言う。「いえいえ。あれは、エモンくんの為を思ってしただけですから」スカンレーが、照れながら笑う。だが、その顔も真剣な顔になり、「それはそうと、僕がここに来たのは用があるのです」3人は、真剣な顔になってスカンレーに向く。「エモンくんは、ここにいらっしゃいますか?もう、24歳になるんですね。ぼくは、12歳の時しか彼を見ていないんだ。あれから、大きくなった姿を見たいなと思いまして、お伺いしました」20エモンは、冷や汗をかいた。そして、迷った。どうすればいいんだ。スカンレーさんに本当のことを言うべきか、言わないべきか・・・。「今、エモンは、店を開けておりましてですね。それで・・・」3人は、冷や汗をかきながら苦笑いをしている。「どうかしたのですか?お悩みなら、私のようなもので結構ならお受けしますが」「いえ、結構です。悩みなんて、そんな事」「いえ、ありますね。私には、あなたの気持ちが分かる」「仕方ないですな」20エモンは、スカンレーの要求に答えた。「実は、エモンは、あなたと同じ道を歩んでいるのです」「宇宙探検家ですか?私は、息子さんに説得したはずなんですが・・・」「それが、その説得がまた、夢に走り出したそうなのです」「20エモンさん。あなたは、もう、このつづれ屋が滅ぶことを覚悟しておいでですね?」スカンレーは顔を近づけて言う。「もちろんです。覚悟しておりました。あいつは、私に似た江戸っ子風の頑固野郎ですので、20歳の時に怒った時以来、私は、思いました。あいつにはあいつの人生があるんだと。昔の私が馬鹿だったのです」「いえいえ。そうではないですよ」スカンレーが励ます。「エモンくんは、たぶん、つづれ屋の為に何かをしてくれると思うのです。いえ、絶対」「そうでしょうか。私にはそうとは思いませぬが・・・」「ご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。では、ここで、失礼させていただきます」スカンレーは、自宅の六本木に帰る時泣いた。もう、会えないのだということを噛みしめながら。
一方、エモンは、マネージャーと2人、赤坂にあるTPPの楽屋で、話しあっていた。「エモンさん。明日地球を離れる心構えがあるというのは、本気ですか?」「もちろんですよ。僕は宇宙探検家ですからね」エモンが、パイプを加えながら答える。「ですが、エモンさんは、つづれ屋の跡取りでしょう。本当は」「つづれ屋?それってどこですか?ぼくは、知らないですよ。そんなお店」「とぼけないで下さいよ」マネージャーが立ち上がり、エモンの面前を見つめ、言う。「親の方が悲しまれますよ。モンガ—さんもスカンレーさんも同じだと思いますよ。そして、明日のテレビの予定も入っていますしね」エモンがパイプを加え、それの灰を落として言う。「君は、いつもいつもテレビと言ってはうるさいね。それは、キャンセルしてしまえばいい話じゃないの」「それは、しますよ。出来ますよ。だけど、親の方や、お友達が」「うるさい。うるさい」エモンが、烈火のごとく怒る。「これは、自分で決めたことなんだ。君や、僕の親が言う筋合いはないんだ」「そして、今日、生放送のバラエティーで、言うのですか?そのことを」「もちろんだよ。言うにきまっているじゃないか。僕が思っている世界、僕が愛している世界に自由に行けるんだ。微笑ましいことではないかね」エモンは、笑っていた。「確かにそうですね」マネージャーは苦笑いをした。「じゃあ。トイレに行ってくるからな」マネージャーは、その後ろ姿を見て思った。
この人とももう会えないのか。悲しくなってくるよ・・・。そして、一人で泣いた。エモンも、トイレで泣きそうになりながら、用を足していた。「さらば。地球よ。僕は、国の為に貢献するだけなんだ。ちょっとの期間だけど、頼むよ。地球」「本番10分前です」ディレクターが言う。エモンは、生放送されるスタジオに向かう。ぼくは、言わなければならない。あのことを・・・。彼は、言うことを決意した。本番が始まり、エモンは司会者としゃべりに喋り、笑いに笑い、番組を盛り上げていった。そして、最期に言った。「ぼく、視聴者の皆さんに言いたいことがあるんです。よろしいですか?」司会者は、了解した。エモンは、テレビカメラに顔を向け話す。「僕は、明日か明後日に、宇宙に向かうつもりでいます。沢山の星に行き、学びたいと思っております。国には、もう申し出ました。視聴者の皆さんとは会えないのが寂しいですが、あなた達が頑張って仕事などをしている時、僕は、秘境で頑張っていると思ってください。では皆さん、お元気で。さようなら」これには、皆驚いたであろう。司会者は泣き出し、テレビ関係者も泣いていた。この放送を見ていたつづれ屋一家も泣いた。エモンも故郷の星地球を離れると思うと、涙がこぼれた。もう、この星には帰れないんだ・・・。彼は、またそう思い、号泣してしまった。バラエティー番組は、収録が終了した。まだ、誰かの涙声が聞こえているようだ。
そして、エモンは、マネージャーに感謝の意を伝え、エアカ—に乗った。街は、皆が、ワンセグを見ながら、泣いてしまっている。号泣してしまっている。まさに、北朝鮮の主導者 金日成が死んだ時の人民によく似ていたであろう。彼は、密かにつづれ屋に帰り、宇宙探検の用意をし始めた。星の輝きが、彼を誘う。彼は、目に涙を溜めながら寝た。
明日か明後日の出発の為に・・・。〔第2話へ続く〕

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Re: 21エモン〜夢の旅路〜8話 心配する地球① ( No.14 )
日時: 2011/02/28 23:32
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

第8話 心配する地球①

エモンは目を開けた。前いた風景と違っていた。アンタレスの中より暗い。ずっと夜が続いているようであった。だが、息苦しい。エモンは、寝ぼけ眼で見てみた。うそだろ。ここは宇宙。アンタレスがあんな所にある。遠くにある。僕はなぜかしらこの星に座らされている・・・。エモンは、ここが何処か考えた。惑星・小さい石ころばかりありやがる。あ、ここは、小惑星帯?そんなわけがないよな。だけど、息が苦しい・・・。隣の星 ミリアムに空夫はいた。ミリアムから空夫は無重力に任せ、ヘレナに向かい浮かび、到着した。「エモンさん。お気づきですか」空夫は息苦しそうであった。「むやみに喋るな。ここは、宇宙の小惑星帯のようだ」「やはりですか。やっぱりやられてしまいましたね」

その頃、地球の日本州の州都 トウキョウシティーは平和な時間が流れていた。つづれ屋もそこそこ客が入っているようである。隣のギャラクシーも、旧桜田門外のオリオン・鶴見の須和みつ夫宅もであった。すると、こんな時にTPPのニュースが入った。臨時ニュースである。「臨時ニュースをお伝えします。昨日午前3時半ごろ、宇宙探検家のつづれ屋21エモンさんが、行方不明となりました。最後の通信は、アンタレスから発信されたということで、宇宙警察・アンタレス人民軍隊99隊は、早急に見つけ出すと声明を発表いたしました。繰り返しお伝えいたします」アナウンサーは慌てていた。まるで、首相が勝手にやめると言った時や、天皇が崩御された時の様に。エモンと空夫が知らない間に、地球はこのニュースを聞くと、青ざめた。
「おい、大変だぞ。20エモン」ホテルオリオンの社長の、オリノ・マサカズが慌てながらやってきた。汗をかきながらやってきた。「どうしたんだ。マサカズ。また、喧嘩をしにきたのか?」20エモンが、少々怒った声で言う。「いや、そうではない。一大事なんだ。お前の息子が・・・」「どうしたんだ。エモンに何かあったのか?」マサカズは、深呼吸をし「聞けよ。エモン君が、宇宙で行方不明になった」「は?」20エモンが信じられなさそうに言う。「だから、エモンくんが宇宙で行方不明になった」「それはうそだろ」「いや、本当だ。今、そのニュースを各放送局が流している。見るといい。絶対分かる。本当のことだ」「だが、お前の言うことは信用ならん。石畑に聞く。あいつは嘘はつかんからな」「ふん。石畑に聞けばいい。本当のことなのに」20エモンは、ホテルギャラクシーの社長 石畑正芳に聞きに行く。急いで・・・。20エモンは、石畑がいる部屋の前に立ち「隣の20エモンだ。入ってもよかろう」「もちろん」石畑は机の前で手を組んでいた。あいかわらず、ヨシフ・スターリンに似ている。「どうしたんだ?慌てて」「お前なら知っているかと思ってな。わしの息子が、行方不明なんだってな」石畑は、しばらく黙ってしまった。そして、窓ガラスの方を見て「20エモン君。私は、先程テレビを見た。どうも、本当らしい」「じゃあ、エモンは・・・」「ああ。死んでしまっている可能性が高い。それを覚悟するんだ。20エモン君」20エモンは、急いで飛び出して、泣いた。この溜池山王が暗くなった瞬間であった。

京浜工業地帯があった、ヨコハマシティーは鶴見の須和みつ夫宅も慌てていた。ガン子が夕刊を取ってくる。ガン子は読んだ瞬間に倒れてしまった。「ガン子。おい。おい」兄のみつ夫は、ガン子が握りしめている新聞を見つけ、読んだ。『宇宙探検家 つづれ屋21エモン氏 行方不明』題名を読んだ途端、みつ夫は、パーマンバッジに手をかけていた。「バードマン。21エモンさんが行方不明になってしまったのは本当なの?」バードマンは「ああ、本当の様だ。今、バード星〔プロキシマ・ケンタウリ〕で確認がされている。おお、出来たか?ありがとう。アントマイナ。資料を見ると本当の様だ。アンタレスの付近で行方不明になったらしい」「僕、エモンさんを助けたい。パーマンはそんな役目だろ?」「まあ、そうだが・・・」「頼むよ。許可してくれよ」「だが、それが無理そうなんだ」「なぜだよ」「マントが無重力空間では危ないんだ。君が、行方不明になるかもしれない。その事も考えた方がいい。君は死にたくないだろう。この事は自粛するんだ。私は、大山法善や、星野スミレ、山田浩一が言ってきても、許可は取らないつもりだ」「でも、彼は僕の命の恩人なんだ。幼馴染みなんだ。どうしても助けたいんだ」「無理だ」バードマンは、その理由を聞き入れなかった。

地球はこんな状況の中、エモン達も困惑の状態であった。というより、2人とも妄想ばかりしていた。「地球は大丈夫だろうか?」エモンは、泣き出してしまった。「ごめんよ。こんな危険な仕事についてしまって」空夫はその様子をじっと見ているしかなかった。息苦しかった。早く誰かが助けてきてくれないかと思ったが、もう心はとっくに諦めていた。2人は死ぬ覚悟が出来ていたのであった。〔第9話へ続く〕

Re: 21エモン〜夢の旅路〜①の7話・8話に出てくる人物, ( No.15 )
日時: 2011/02/20 03:40
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

7話・8話でも、難しい語句が沢山出てきました。そして、第8話では、新しい登場人物が出てきていますので紹介します。

〜登場人物紹介〜

オリノ・マサカズ ホテルオリオンの社長。リゲルの父。20エモンと同級生。20エモンに会った時には、いつも喧嘩ばかりしている。


石畑正芳・ホテルギャラクシーの社長。ルナの父。20エモン・マサカズと同級生。喧嘩の仲立ちをする。

須和ガン子・みつ夫の妹。パーマンに出てくる人物。小学生。母にみつ夫のだらしない行動を告げ口をする。名前の通り頑固者である。

バードマン・日本のパーマンのボス。須和みつ夫のボスにもあたる。バード星の住民。

〜語句説明・第7話〜

最後の晩餐・キリスト教の新約聖書に書かれている事の一つ。イエス・キリストが処刑される前夜、十二使徒と共に摂った夕食、またその事柄を表す言葉。ルネサンス期の画家・レオナルド・ダヴィンチが、最後の晩餐という絵を書きとめた。

ブラックホール・極めて強い重力のために光さえも抜け出せなくなった時空の領域。

逝去・死亡と同じ意味を持つ言葉

小惑星帯・太陽系の木星と火星の間にある小惑星の軌道が集中している地域。

ガスプラ・小惑星帯にある小惑星。1916年に発見された。

ヘレナ・小惑星帯にある小惑星の一つ。1868年 アメリカの天文学者によって発見された。

〜第8話〜

ミリアム・ヘレナの隣にある小惑星。比較的大きく暗いのが特徴。アメリカの天文学者によって発見された。

宇宙警察・宇宙を任されている警察。架空の警察。宇宙で悪いことがあれば、すぐにその場所に向かう。本部は、地球 トウキョウシティーの六本木。

アンタレス人民軍隊99隊・アンタレス人民共和国の警察。朝鮮人民軍〔朝鮮民主主義人民共和国の軍〕保安部をイメージとして筆者が作ったもの。架空。

崩御・天皇が亡くなった時に使われる言葉。

ヨシフ・スターリン 1878〜1953。ロシア〔ソ連〕の独裁者。レーニンの後を継ぎ第2代最高指導者となった。第2次世界大戦中に活躍した人物。

パーマンバッジ・パーマンの仲間同士の連絡を取るためのトランシーバー。通信中は目がくるくると回る。酸素ボンベ代わりにもなる。

プロキシマ・ケンタウリ ケンタウロス座にある恒星。太陽系に最も近い恒星として知られる。1915年に、南アフリカの天文学者によって発見された。バード星は、ここの別名として使われる。

京浜工業地帯・東京都大田区、神奈川県川崎市、横浜市を中心に、東京都、神奈川県、埼玉県に広がる工業地帯。四大工業地帯〔太平洋ベルト〕の中核であり、日本有数の工業地帯として有名。

星野スミレ・パーマンに出てくる美少女アイドル歌手。パーマン3号。みつ夫からは『パー子』と呼ばれている。

大山法善・パーマンに出てくる人物。寺の跡取り。パーマン4号。大阪出身。仲間からは『パーやん』と呼ばれている。


山田浩一・パーマンに出てくる人物。2歳の赤ん坊。仲間たちからは『パー坊』と呼ばれている。

以上です。第9話もお楽しみに。 

Re: 21エモン〜夢の旅路〜①第9話 心配する地球② ( No.16 )
日時: 2011/02/25 16:23
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

第9話 心配する地球②

ここは、横浜市内の中学校である。須和みつ夫はこの学校に通っていた。
「みんな聞いてくれ」同級生のメンバーが沢山集まる。「昨日のニュース知ってるい」「あの大ニュース。21エモンさんが行方不明のニュースだろ」木手英一が言う。「そうさ。ニュースではアンタレス付近でいなくなったとされている。だが、僕は誘拐されたのだと思う」「なぜ、そんな事思うの?」みち子が意味不振な顔でみつ夫を見ている。「実は、昨日宇宙図書館で調べてみたんだ。そしたら、アンタレスというのはアンタレス人民共和国の事で、治安が悪い国だということが分かったんだ。誘拐犯も沢山いるとのことだ。そして、この国では今、独裁政権を倒そうと人民が暴動を起こしているんだ。そんな危ない国なんだよ。エモンさんが行った場所というのは」「で、どうすればいいんだよ」木手英一が、腕を組んで話した。「この問題は、宇宙警察・アンタレス人民軍隊99隊が任務を請けているが、それだけでは全く進歩がない・・・」「ちょっと待って」慌てた口調でトンガリが言う。「みつ夫くん。君はもしかして、助けに行こうと、言い出すんじゃないの?」「そうだよ。よく分ったね」みつ夫が笑いながら話す。「君はばかかい。宇宙は危ないんだ。さっきのアンタレスの様に暴動が起きている地域もあるんだろ。そして第一、助けに行く費用なんかないよ。宇宙船も買う金もない。無理な話だよ。君は夢を言っているんだ」トンガリは、熱を出しながら言う。「募金を行えばいいんじゃないの」みつ夫が普通な顔で言う。「時間がないじゃないか。君はそれをわかっているのか?」「それならば、時間を作ればいい」みつ夫が熱気をあげ言う。「ちょっと待って」みち子が2人が話し合っている間に入る。「実は私の知り合いに、宇宙船を持っている人がいるの。その人に頼んでみない?」「いいね。みっちゃん。そうしようよ。トンガリ。どうだい。この意見で」「うん。いいよ」さっきの勢いはどこかに消え失せた様にトンガリは、元気がなくなっていた。

つづれ屋はいつも通り営業していたが、従業員一同元気がなかった。ゴンスケは、もう売り飛ばしてしまったため、それもあり得ることである。20エモンも、作り笑いをするのが精一杯であった。こんなに、心配をかけた息子もいないことであろう。あの、馬鹿息子が・・・。彼の眼には、エモンが宇宙で死に絶える姿しか見えていなかったのである。みな、諦めていた。あいつは、もう戻ってこないのだと。それは、ギャラクシーも、オリオンも一緒であった。

ヘレナでは、2人が座っていたのだが、もう、先が見えなくなっていた。宇宙船も通らないこの死の世界では、それもありえることであった。「空夫くん。頼みがあるんだ。これが、僕の最後の願いだ」空夫は真剣なまなざしで聞こうとしていた。

地球では、もう月日がたっていた。皆がもう忘れていたろう。そんな時に臨時ニュースが流れたのである。
「臨時ニュースをお伝えします。1か月前に起きた事件で確認が進められた結果、21エモンさんと一緒に行方不明になっている地球人がいた模様です。繰り返しお伝えします」地球は暗くなった。「エモンさん。大丈夫だろうか」地球人はそう思った事であろう。そして、その一人と言うのを知りたいと思っていた。「ただ今の情報の続きが入りました。地球人の名前は、日本州のヨコハマシティー伊勢佐木長者町の天野空夫さん。11歳であることが分かりました」関内の家でテレビを見ていたみきは、倒れてしまった。「みき。みき。どうしたの」母が心配そうにゆすっていた。母は気づいた。テレビで放送されている内容を見て。母は、知り合いに電話をかけた。
知り合いとは、ルナの事であった。「もちろん知っております。21エモンさんとは竹馬の友だったのですから」電話からルナの声が聞こえていた。母は、その事を伝え、エモンを助けに行くよう頼んだ。娘のみきの為に。「分かりました。私の知り合いに申し伝えますので、ご安心を」ルナは、ギャラクシーの社長であったが、その仕事を正芳に任せ、旧桜田門外・旧霞が関のオリオンに向かう。

力のない体を振り絞り、彼は空夫に手伝ってもらいながら起きた。「いいかい。よく聞くんだぜ。ぼくは、もうすぐに死に絶えるだろう」「何を言っているんですか?エモンさん」空夫の目には、涙がたまっていた。そして、つばを飲み込んだ。「これは、月で買ったクッキーなんだ。今日が地球暦の3月14日だからね。そして、ここに手紙がある。アンタレスで書いたものだ。この2つを、ギャラクシーの社長〔石畑ルナ〕と、母に渡してくれないか。そして、君はこの手紙が遺言だと思ってくれ」そして、笑顔になり「君は、僕よりも長生きするよ。君が一緒にいてくれて本当に楽しかったよ。ありがとう」エモンは力尽きそうだった。指にも元気がなかった。空夫は、それを手に持ち立って地球の方向を向き「これを届けよう。届けるのが、僕の仕事・・・」空夫は倒れた。力尽きた。このヘレナという死の世界で力尽きてしまった。もう、見えるのは死の世界〔天国か地獄〕だけであった。〔第10話へ続く〕

Re: 21エモン〜夢の旅路〜① 第9話の語句・登場人物 ( No.17 )
日時: 2011/02/27 13:52
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

第9話には、新しい登場人物が出てきます。そして、地名紹介も合わせて、紹介します。

〜登場人物紹介〜

木手英一・キテレツ大百科の主人公。発明好きの小学生。kマークのついているサンバイザーと、神通鏡という眼鏡をかけている。ここでは、中学生でみつ夫の友人として登場する。

トンガリ・キテレツ大百科に出てくる人物。本名 尖浩二。大金持ちの家の息子。友達思いの優しい性格を持つが、英一をいじめていることが多い。ここでは、みつ夫の友達・クラスメイトとして登場する。

みち子・本名 沢田みち子。パーマンに登場する人物。みつ夫が片思いで憧れている女子。だが、彼女はパーマン1号に興味をもっているが、みつ夫にはほとんど関心がない。

みき・本名 石崎みき〔苗字は筆者が作ったもの〕空夫のガールフレンド。11歳。

〜地名紹介〜

霞が関・東京都千代田区にある地名。政治の中心地。文部科学省以外の庁舎のビルが建ち並ぶ。桜田門の目と鼻の地域。地下鉄丸ノ内線・千代田線・日比谷線の駅がある。また、この地域は地下鉄サリン事件で、サリンがまかれた場所である。

関内・神奈川県横浜市中区にある地名。国土交通省の都市景観100選に選ばれている観光地。日本大通りや、山下公園などで有名。JR根岸線・横浜市営地下鉄ブルーラインに駅がある。

〜語句説明〜

竹馬の友・故事成語。幼馴染。幼いころから遊んだ友達の事を言う。晋書〔殷浩伝〕には、幼いころ竹馬に乗って、一緒に乗った友達がいたからと書かれてある。

以上です。第10話もお楽しみに。

Re: 21エモン〜夢の旅路〜①第10話 心配する地球③ ( No.18 )
日時: 2011/02/27 13:59
名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)

第10話 心配する地球③

空夫は身体を動かす事が出来なかった。力を振り絞って立とうとしたが無理であった。「エモンさん。すいません。僕が先に逝くかもしれない。その時はこれを頼みます」空夫は、震えている手に持っている手紙を見て、握りしめたのであった。

トウキョウシティーでは、晴天に輝いていたが地球人は空を暗く感じた。あの空にエモンがいるのである。旧桜田門外のオリオンに着いたルナは、謁見室なる場所に入らされた。そこにはルナ以外にももう一人女がいたのであった。沢田みち子である。彼女はリゲルに何かを話しているようであった。「ルナちゃん。入りなよ」ルナは椅子から立ち上がりリゲルの机に手をおき「リゲルくん。今日は君じゃないと言えない話なの」「だいたい質問の用件は分かっているよ。エモンを助けたいということなんじゃないの」ルナが意味不振な顔でこちらを向いている。「なぜ知っているの」「君の事だからね」「まあ、ひどい。リゲルくんてサイテ—ね。そんな人だとは思わなかったわ」ルナが少し怒った顔になり、腕を組んでいる。リゲルは冷や汗をかきながら「ごめん。怒らせてしまって」「いいわよ。私は頑固ではありませんからね」 
  これは小悪魔が出てきたようだ。さすがルナちゃんだぜ・・・。
「その宇宙にいる頑固野郎を助けたいんだよね?」「まあ、こんな時にエモンくんの事を頑固というとは・・・。無礼講じゃないんだから」「そうだね。ごめん。実は、この子もその用件で僕の所に来たんだよ。みつ夫とか言う子に頼まれたらしいよ」ルナは、エモンがこの地球から離れる直後の様子を思い出す。確かに、制服を着た160cmぐらいの少年がエモンくんに花束をわたしてたっけ。もしかしたらあの子かしら・・・。「ねえ、そこの子」ルナはみち子に問うた。「君って、エモンくんが離れる時のテレビ 見たの?」「はい。見ました」みち子はしっかりとした口調で話した。「みつ夫くんて、エモンくんに花束を渡した子のことかしら」「はい。そうです」やはりそうだったのね。私とエモンくんが10歳の時、あの子と遊んだ事がある・・・。ルナは頭の中が整理したようであった。「その子に伝えてちょうだい。エモンの知り合いのルナです。私と君の考えは一致しました。これからも一緒にエモンくんを助けあっていきましょう。と伝えてくれないかしら」「分かりました。みつ夫に必ず伝えます」
「さあ、そろそろお開きにしないかい。この件については僕が検討しとくよ」「リゲルくん。頼むわね」ルナが笑顔を見せながら振り向く。「もちろんだよ。ルナちゃんの意見は反映させてあげるよ」「良かった」彼女は笑顔になり、オリオンを去った。

ルナはそのついでにつづれ屋に立ち寄ろうと考えながら、動く歩道に乗っていた。ギャラクシーを越え、あの小さいつづれ屋にやってきた。「失礼します。20エモンさんは御在宅でしょうか?」出てきたのは、ママ〔つづれ屋希美〕であった。「主人ならいるわよ。あなた、ギャラクシーの社長が来ましたよ」「正芳が来たのか?」「いえ、ルナちゃんですよ」「ルナちゃん?」20エモンは煙管を吸っているようであったが、煙草盆に置き、ロビーに出てきた。「ルナちゃん。正芳の後を継いだのかい?大きくなったね」「ありがとうございます。今日はギャラクシーの用件で来たわけではないのです。エモンくんの竹馬の友としてここに来たのです。この話は裏で話し合いたいと思いますので、モンガ—ちゃんや、オナベさんも聞いていただきたいのです」「そんなに重要な事なのかい?」「はい」ルナは真剣なまなざしで20エモンをずっと見ていた。「分かったよ。つづれ屋一家集合だ。仕事は後にして対面室に来るんだ」20エモンは、声をはりあげた。今いるメンバーは来た。ゴンスケは、売ってしまったのでここにはいない。「どうしたのよ」希美が言う。「これは重要な話なんだ。ここに座りなさい」「仕方ないわね」希美は座布団に座る。全員集合した。「じゃあ、ルナ社長。話して下さい」「はい」ルナは真剣そのものであった。彼女は話し始めた。「私とみつ夫くんはエモンくんを助け出そうと思っています」「ルナちゃん。もう、あいつは死んでいるんだよ。宇宙でバラバラにされて、宇宙に浮かんでいるんだよ。もう、1か月経とうとしているんだよ」「20エモンさん。諦めないでください。諦めたら終わりですよ」「確かにそうだが・・・」「彼は生きているのです。そう考えるのです」20エモンは、チリの鉱山で起こったあの事件の犠牲者が全員生きて帰ってきた事を思い出す。あれは2010年だった。確かにそういう事があった・・・。「それで、私たちはリゲルくんの操縦のもと、彼等を助けに行きたいと思うようになったのです。今、リゲルくんが助けに行く事について考えてくれています。これがもし彼が生きていれば、あなた達に見せてあげたい。最初に。なのでこうして、船に乗ることを誘いに来たわけなのです」「ルナちゃん。これは確かに重要な話だ。ありがとう。あいつが生きていると信じよう」「ということは、乗ってくれるのですか?」20エモンは首を縦に振った。ルナの顔は笑顔になった。「ありがとうございます」ルナは何回も何回も頭を下げていた。「いいんだよ。君は前向きの考えが得だということをわしに教えてくれた。わしの方からも礼を言わなければならない。ありがとう」20エモンも笑顔になった。つづれ屋は笑顔に包まれた。

ヨコハマシティーの桜木町にある国立横浜中学校の3年1組の教室では、エモンの話をしていた。「今、知り合いの人が考えてくれているのよ」「みっちゃん。本当にしてくれたのかい?」みつ夫が信じられない顔で言う。「あら、信じていなかったの?」「信じていなかったというわけではないけど・・・」「信じてなかったのね」「うん」「まあ。いいわ。それが、君の性格なんだから」「くそー」みつ夫が悔しそうに手を握りしめていた。山田先生が急いで3年1組にやってきた。「沢田みち子。いるか?」「はい」「職員室に至急来てくれ」なにかあったのかしら・・・。みち子はエレベーターを使い職員室にやってきた。「お前に電話が来ている。立石先生が応対してくれている。すぐに行け」みち子は立石の席に行き、電話を取った。「もしもし、リゲルだけど。昨日の件・・・」彼女はその事について聞いた。あとは、みつ夫やトンガリ、英一に伝えばいい。彼女は階段に足をつけ、1段とばしで階段を駆け上った。〔第11話へ続く〕


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