二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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秘蜜〜黒の誓い〜 記念短編小説執筆中☆
日時: 2011/11/30 18:14
名前: 夏茱萸 (ID: lkF9UhzL)

≪プロローグ≫


貴女は『人間』

      僕は『天使』


決して出逢ってはいけなかったのに…
          
           あの時あの場所で 僕と貴女は出会ってしまった。


決して恋なんて 許されないのに…

           出会った瞬間 恋に落ちる音がした。


決して貴女は 汚れてはならぬ存在なのに…

           僕のこの手で 汚してしまった。



神に背いた罪として

     僕の一生を 貴女へ捧げましょう。




   それが僕の  『運命』と信じて…


  ずっと 貴女だけを 愛しているから……————

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Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ≪ボカロ曲小説化≫ ( No.57 )
日時: 2011/11/27 21:51
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

第十五章〜禁断の過去〜 前編


「…殺して」


全てに絶望したような声音で、真っ赤な彼女が囁いた。
暗く澱んでいる瞳は最早目の前の女性を映してはおらず、只々遠くの方を見つめている。

血色の悪い真白な頬を、涙で濡らしながら…———








ルミカは教会の近くにある森で、日課である散歩をしていた。
白く裾の長いドレスに躓かないように、器用に足を進めていく。

————この森にも、大分緑が戻ったわ。

木々の間から差し込む眩しい光を見上げ、小さく微笑んだ。
暫く進んでいくと、まだ建設されて間もない美しい教会が姿を現した。


「相変わらず…素晴らしい出来栄えだわ。ここに来ると祈りすら掻き消されてしまうような…ま、私は祈っていくけどね」

独り言を明るく締め括ると、ルミカは教会の中へと足を進めた。最奥へ辿り着くと天井にある絵画を暫く見つめる。哀しいような、寂しいような眼差しで…

天使と悪魔が争っているようなその絵は、ルミカの胸を酷く痛めた。

「ッ…祈らなきゃ…」

焦ったようにその絵から目を逸らすと急いで目の前の肖像へと跪いた。
手を合わせ頻りに言葉をブツブツと呟く。

「主よ。どうか私のこの汚れきった心身を浄化しておくれ…私の過去を…犯してしまった罪を…どうか、許して頂戴…罪が消えないのはわかってる。未来に罰が待っているのも…けれど授かった命を…あの子の魂を、無駄にしたくないのです…!どうか…どうか…ッ!」

ハッとして顔を上げると、自分の取り乱してしまった様を思い出し酷く吐き気がする。
目頭を押さえながら立ち上がると、ルミカは教会を出て行った。



教会を去ろうとしたのだが、不意にルミカの耳に女性の悲鳴が聞こえたような気がした。

「…?何かしら…」

教会の裏へ行くにつれ、段々とその声はハッキリと聞こえてきた。

「…ろせ…!殺せぇぇ!!」

「!?」

耳に入ったその言葉にルミカは過剰に反応してしまった。走って教会の裏へ回ると、一人の女性が泣きながら何かを訴えていた。

「ちょっと貴女どうしたのよ!何があっ…!?」

近寄ってみると彼女の周りは血だらけだった。傍には最早性別の区別がつかない死体が、二人転がっている。返り血を浴びてしまったのか彼女自身もまた、血に塗れていた。

「これ…全部貴女がしたの?」

「だ…れ?」

「私はルミカよ。それより、これ…」

彼女は俯くと、声を震わせながら言った。

「…わからない。気が付いたら…こうなって…ッ」

血に塗れた手で顔を覆うと泣きながら彼女はルミカに訴える。

「お願い!私を殺して!嫌なの…一人は嫌なの!!」

暫く考えるような仕草をした後ルミカは彼女のようにその場に座ると、彼女の頬を平手で打った。


バチンッ


乾いた音がその場に響き渡り、不意に頬を打たれた彼女は唖然としてルミカを見つめた。
スッとルミカが立つと、一瞬彼女の肩がびくりと震える。そんな様子を冷めた目で見下すルミカを、怯えた目で見つめ返した。

「甘えないで貰えるかしら。死にたいのなら他人に頼らず自分一人で死になさい。関係のない私を巻き込むものじゃないわ。…それに、本当に命を絶ちたいのなら、本来は他人に頼まず一人でひっそり死ぬものよ。他人に相談する内は、助けてほしいって心の何処かで思っていたりするものなんだから」

まっすぐに見つめてくるルミカの目を見たくないのか、彼女はゆっくりと視線を逸らした。そしてそのまま小さく

「…死にたいけど、死ねないの…」

そう呟いた。

「…どういうこと?」

「そこに倒れている人たち、私の友人なの。…テナートっていう女性なんだけど…。彼女の恋人ね、私の愛していた人で…今日、テナートと喧嘩をしてしまったの。勿論テナートの彼のことで…私に何かを言う権利なんてないかもしれないけど、それでも彼のことが好きだったから…ッ!それで、暫く二人で言い争っていたんだけど…彼がここに来てしまってね。彼がテナートをあんまりにも庇うから、頭に血が上ってしまって…それで、気付いたら…こんなに…ッ」

途切れ途切れに言う彼女にルミカは暫く何も言わなかった。


…否。


言えなかったのだ。
だって、彼女がこうなってしまった理由が、あまりにも自分の過去に重なってしまったから…


「…きっと、私がテナートたちをこんな風にしたんだと思うわ。でも、覚えてないのよ!何を使って彼女たちがこうなってしまったのか、どんな気持ちで死んでいって、私がどんな気分で友人や愛する者を殺めてしまったのか!何も覚えてないのに、自分を殺すなんて出来ないのよ!」

「…でも、死にたいのね?だから他人を頼って死のうとしたのね?」

「…えぇ」

二人の間に沈黙が続く。
やがて彼女は静かに顔を上げた。

その頬は先程よりもさらに青白くなっており、涙が一筋伝っていた。瞳は僅かな希望すら残ってはおらず、すべてを諦めたような色をしている。血色の悪い唇を震わせながら発した言葉はたった一言だった。








「…殺して」











彼女は友人を殺し、想い人を殺した。


そして、その事実から逃れるように


自分を殺すことを願った。


決して救われることなどないのに、


救いを求める。


誰も助けてはくれないのに、


助けを求めた……————

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ≪ボカロ曲小説化≫ ( No.58 )
日時: 2011/11/28 18:14
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

さ、参照1000…だと?
ちょっと四桁いったのが信じられないです;

クリックしてくださった方、ちょっとでも読んでくださった方、本当にありがとうございます!!

本気で感謝><


記念小説でも執筆しましょうか…^^(本編更新しろww

いや〜案外テンション上がるものですね(´∀`*)oo拍手
執筆するネタが出来次第、更新に来ようと思いますので その時は是非よろしくお願いしますm(_ _)m

それでは☆

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ≪ボカロ曲小説化≫ ( No.59 )
日時: 2011/11/29 22:24
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

参照1000記念☆小説!
今回は色んな人物でクリスマスネタの短編を執筆したいと思います^^

オチは期待できませんが(というか無いに等しいですが)、少しでも楽しんでもらえればと思います!!
短編第一弾は秘蜜設定のミクちゃんとリンちゃんです。




秘蜜〜聖夜の誓い〜
第一弾*ミク・リンVer


真白な粉雪が、ミリアムの剥き出しの掌へと落ちてくる。
リアンはすっかり真っ赤に染まってしまったミリアムの手を取ると、悲しげな表情のまま無言で息をふぅっと吐く。

「…ミリアム、温かい?」

「リアン…私は大丈夫よ、ありがとう」

ミリアムを気遣うリアンに感謝と少しの遠慮を込めて微笑むと、まだミリアムの手を離そうとしないでいるリアンの手を、自分の両手でやんわりと包み込んだ。

「リアンだって、こんなに冷たくなってるのに」

「僕はいいんだよ。それよりミリアムの手が寒さで霜焼けになっちゃう方が僕にとっての一大事だし…」

ミリアムの手を自身の手からそっと離すと、リアンは笑って言った。

「さぁ、ルミカさんに怒られてしまう前に薪を採って帰ろう?」


ミリアムたちはルミカに言われて薪を採りに出ていた。
しかしこの寒さの上に雪が降っていては、薪も湿っているだろう。それでもリアンは湿った木の枝をその辺の木から折って、小さな手に何本か握りしめていた。

「リアンったら、そんな細い枝じゃ駄目よ。もっと太さがないと」

「…そう?じゃあこれもダメ?」

「それくらいだといいんじゃないかしら」

二人で森の奥へと進みながら他愛のない会話で盛り上がる。


————こんな時間が、ずっと続けばいいのに…


リアンはそう心の中で呟くと、ミリアムに気付かれないようそっと溜息を吐いた。






「…ホワイトクリスマスね」

不意にミリアムが言った。
独り言か自分に言ったものかどうかわからなかったリアンは、咄嗟に黙ってしまった。

「雪って不思議。何でも消してくれるような気がするの。私の心の汚れも、罪も過ちも…すべて…」

今にも消えそうな表情で微笑む儚い横顔を、リアンはただ黙って見つめていた。

暫くの沈黙の後、リアンはミリアムに問いかけた。

「じゃあ、僕のこの気持ちも…いつか消えてしまうのかな…ミリアムは、それを願ってる?」


———もし彼女が僕の気持ちが消えてしまえばと願っていたとしても、僕はそれに応じることが出来ない。
けれど僕のこの気持ちがなくなり、彼女が僕を好いてくれるのであれば…
僕はこの気持ちを消してあげよう。

この雪と共に…

どんな形であれ、彼女に好かれるのであれば、僕自身が消えてしまっても構わないのだから…—————


そう思い手を握りしめた矢先、ミリアムから返ってきた答えはリアンの予想していたものと全く異なっていた。

「…私、リアンに好きでいてもらえるのはとても嬉しいの。恋とは違うけれど、私はリアンのこと好きだもの!貴女に嫌われるのは、とても辛いわ…リアンの恋心が消えてほしいなんて願っているはずないじゃない。どんなものであれ、恋愛というものは自由よ。みんな基本を大事にしているだけ。リアンは基本とは外れてしまったけれど、人を愛することのできる人間よ」


ニッコリとリアンに微笑みかけてくれるミリアム。


———僕はこんなにも穢れているのに…それなのに僕に笑ってくれる…ミリアム…ッ


リアンの頬には涙が伝っていた。

「ッミリアム!僕…ミリアムが好き!ずっと大好きだからね…ッ!」

「リアン…私も貴女が好きよ…ほら、泣かないで?」

「ぅえッひっく…ミリアムッ…」

ミリアムはリアンの細い身体を抱き締めると、ゆっくりと頭を撫でながら目を閉じた。

二人最後に発した言葉は



『———愛してる…』





あるイヴに起こった恋物語。


幸せに酔い痴れる彼女たちは


この後訪れる恐怖を


知る術もない…





その頃のルミカ&ガノム。

「ミリアムたちはいつ帰ってくるのよ!!」

「僕に当たらないでくれ!ひ…ッ」

ルミカの手から超速球で飛んでくる得体の知れぬ物を避けながら、ガノムは早く二人が帰ってくることを懸命に願っていた。


ゴツン!


「ッ痛!」

「避けろよ馬鹿ガノムが!」



————————————————————————————————————

超短編なうえにオチが何なのかわかりませんが、とりあえずミクちゃんとリンちゃんの話でした。

と言ってもクリスマスまでまだ約一か月ほどあるんですけどね^^;

こんな駄文でしたが、ほんの少しでも楽しんでいただけたら幸いです☆
あと登場人物に重音テト(テナート)を足しておきました!

それでは、失礼しました♪

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 記念短編小説執筆中☆ ( No.60 )
日時: 2011/12/04 22:31
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

参照1000記念☆小説第二弾は、ルカ姉様とがくぽにしようと思います!
前回みたいに面白くないと思いますが、楽しんでいただければ幸いです^^

今回は少し長いかも;




秘蜜〜聖夜の誓い〜
第二弾*ルカ・がくぽVer


クリスマス用のケーキが焼き上がるのを、ルミカは頬杖をついてじっと待っていた。家の中には退屈そうなルミカと気まずそうに目を泳がせているガノムの姿のみだ。

「…そういえば、リアン殿とミリアムは薪拾いに行ったのだよな。こんな季節にそれらしい薪なんてあるものなのか?」

沈黙に耐え切れずガノムが口を開くと、ルミカは一瞬だけガノムを睨み付け、そっぽを向いてしまった。

「…そんなもの知らないわよ。なくても何かしら代わりになるもん持ってくるでしょ」

相変わらず興味なさそうなルミカに苦笑すると、ガノムはあるものに気が付いた。

「ルミカ!これ、こんなに大量に薪があるではないか!何故こんなに薪が余っているのに二人を出したのだ?外は寒いのに…」

「馬鹿ね、それだからあんたはいつまでたってもミリアムをものに出来ないのよ」

「な…ッ」

からかうようなルミカの口振りにガノムは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。それに被せるように、今度は静かな口調でガノムに言った。

「…二人っきりにしたかったのよ、あの子たちを…雪も降って教会の近くで薪拾い。幻想的じゃない?」

「うむ、薪拾いが幻想的なのかはわからぬが、確かにいいシチュエーションかもしれぬな」

ルミカなりの気遣いか、とガノムが笑って続けると、怒ったようにルミカはガノムに怒鳴った。

「私はさっさと二人が幸せになってくれればと思ってるだけよッ!へ、変な勘違いしないで頂戴!なんで私があの子たち二人に気なんて遣わないとならないのよッたく馬鹿ガノムが!」

それを気遣いというのではと心の中で呟くが、口には出さなかった。
言い返せば自分がどんな目に合うのかわかりきっている。

オーブンからケーキ生地の焼けた香りが漂ってくると、そろそろかとルミカは鍋掴みを手にハメて焼き上がった生地を取り出した。こんがりと綺麗な焼き色のついたそれを、皿の上に火傷しないように置く。

「粗熱を取らないと…結構時間が掛かっちゃうわ」

苦笑しながらルミカが生地に布をかけていると、ガノムは席を立ち、ルミカの傍へと寄ってきた。

「あら、何か用?」

「…少し腹が減ってな、何かないか?」

「そうね、確かに少し小腹が減ったわ…夕食は二人が帰ってきてからじゃないと食べれないし…余り物だけど、お店のパンでよかったら食べていいわよ。でも食べ過ぎちゃダメよ?夕食やケーキが食べれなくなってしまうから」

早口にそう言うと、ルミカは料理の仕上げをするため再びキッチンへと入って行った。ガノムはそれを見送ると、店の方へと足を進める。

「どのパンにしようか…茄子のがいいな。…あれ?」

茄子の乗った小さめのパンを手に取ろうとして、ふと隣のパンへと目が移る。
そこには生地の上に茄子とネギの乗った、色合いのとても鮮やかなパンがあった。その隣には一つだけ、ぽつんと控えめにマグロ風味のパンとミカンやバナナの乗ったフルーツパンが置いてあった。

そしてその他には余っているパンはない。

その奇妙な光景に、ガノムは多少の違和感を覚える。

「これ…みんなの好物ばかりではないか。確かリアン殿はミカンやバナナが好きと言っていたし、ルミカはマグロでミリアムはネギ…僕は茄子…これを人物に置き換えると、随分物騒な図になりそうだが…まさか、な…」

幸せそうに寄り添うガノムとミリアムを、リアンやルミカが微笑ましそうに見つめている。そんな絵を想像したいのに、何故だかガノムには、二人が自分たちを睨んでいるようにしか見えなかった。

結局ガノムはパンを一つも食べなかった。…食べれなかったのだ。

あのようなくだらない想像で食欲が失せたのかというとそうではないが、あのパンを食べる気が失せたのかというと、頷く以外になかった。それ程にあの不自然な置き方はガノムにとってショックなものだったのだ。

(もし意図的なものだったのだとしたら、ルミカたちは僕らの結婚を…喜んでくれていないのか?リアン殿はわかるが、何故ルミカが…)

「あらガノム、少しは腹の足しになったかしら?…どうしたの、そんなに顔歪めちゃって…」

突然俯いている顔を覗かれ、ガノムはビクッと身体を震わせた。
ルミカに心配されるほど、自分の顔は歪んでいたのか…

「パンは…食べれなかったよ。ルミカ…」

「どうして?あんたの好きなパン残っていたはずよ?」

「…一つだけ、聞いてもいいか?」

いつも以上に真剣なガノムに、思わずルミカの体も強張ってしまう。

「…ルミカは、僕とミリアムの結婚を祝ってはくれぬのか?」

目を見開いてガノムを見つめるルミカに、さらに重ねてガノムは問いかける。

「くだらぬことだとはわかっているのだが…あのパンを見た時、もしかしてルミカはこの結婚に賛成してくれていないのではないかと思ったのだ。どう見てもあれは僕たちで、どういう見方をしてもあの並び方は、ルミカとリアン殿が僕たちを睨んでいる光景にしか見えぬのだよ…どうなんだ、ルミカ」

「ず、随分いい加減でくだらない妄想ねッ…私がそんな馬鹿らしいことするわけないじゃない!」

笑ってはいるがルミカがかなり動揺しているのは、普段鈍感なガノムにすらわかった。冷静さの欠片もない表情でルミカは必死に言葉を繋ぐ。

「大体!私はミリアムが幸せになってくれればそれで十分なのよ!?どうして反対なんて…ッ勘違いも甚だしいわ!」

「ルミカ!少し落ち着け!」

「ッ…とにかく、あれはたまたま偶然奇跡的に、あんな形になってしまっただけだし…そろそろ二人が帰ってくるかもしれないから、夕食の準備手伝って頂戴」

ふぅっと深呼吸を一回すると、いつものポーカーフェイスを完璧に纏ったルミカの表情が目の前にあった。



———三十分後。

「ミリアムたちはいつ帰ってくるのよ!!」

「僕に当たらないでくれ!ひ…ッ」

近くにある物を手当たり次第ガノムに投げつけるルミカ。
それを必死に避けるガノム。

食卓に美味しそうな御馳走が並んで約二十分。
そろそろ本格的に怒り始めたルミカとは対照的に冷めてゆく夕食たち。

「あぁもう!冷めちゃうじゃない!」

最後ものすごいスピードで飛んできた金属製の何かが、ガノムの額に見事にぶつかり、部屋に鈍い音が響いた。

「ッ痛!」

「避けろよ馬鹿ガノムが!」

それから五分も経たないうちに、リアンとミリアムは帰ってきた。手には二人とも小枝を持っている。遅くなってごめんなさいと俯く彼女たちを見て、二人とも怒ることが出来なかった。



その夜、ルミカの家では

賑やかな笑い声が

一晩中近所に響き渡っていた————

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 記念短編小説執筆中☆ ( No.61 )
日時: 2011/12/05 21:27
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

参照1000記念☆小説第三弾は、GUMIちゃん&KAITOの組み合わせで執筆しようと思います!

少し難しいです;
短編としてうまくまとめれるかどうか…><

まあなんとかなるs((




秘蜜〜聖夜の誓い〜
第三弾*GUMI・KAITOVer



「天使ってクリスマスや雪が似合うと思わないかい?」

「知らない。メイサに、聞け」

木の上に座り粉雪の舞う寒空を見上げながらカイナが呟くように問うと、その隣で無感情にラグミナは答えた。
興味なさそうにするでもなく、嫌な顔をするでもなく、ただ無表情なラグミナにカイナは少し困ってしまう。

(そりゃあ、いつものことだけど…)

ラグミナとは会話が続かない。かといって気まずいわけでもなく、ただカイナもラグミナも黙っていつも遠くを見つめていた。

少し前までは会話というものがあったのだ。
あの小さな黄色の天使が二人のもとを去って以来、訪れるものは沈黙のみだ。

「…リアン」

ふとラグミナが呟いた。
光も影もない、希望も絶望もないその瞳を、カイナは暫く見つめていたが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。

「リアンのこと、心配?」

「当たり前。仲間心配しない、そんな奴、悪魔だ。私、腐っても天使」

「…最後にはきっと、僕たちのもとへ帰ってきてくれるさ。僕らを選んでくれる…仲間を、リアンを信じてろ。それも天使だよ」

ラグミナの「腐っても天使」という言葉に多少の引っ掛かりを覚える。
いつからだろう、ラグミナという天使が自分自身を底辺として見るようになったのは。
ラグミナと初めて出会ったときはまだ、多少の感情が残っていた。
周りの天使ほど明るくなく、おとなしい子だったが今よりたくさん笑っていた。

ラグミナが笑わなくなったのは、あの方が…


メイサが来てからだ。

彼女が天使の長になったときから…————



そこまで考えて軽く首を横に振る。
考えたくもない、あの異例な人物のことなど…

「お前は、リアンのこと、信じてるのか?」

不意にラグミナがこちらに首を傾けた。
一歩間違えればホラー映画のワンシーンになりそうな光景だ。

「変なこと聞くんだね、キミは。勿論信じてるさ、僕はリアンのことが大好きだからね、絶対に僕らのもとへ…僕のもとへ、帰ってきてくれると信じてる」

「カイナは、信じてない。信じてるんじゃなく、自分に言い聞かせて、安心しているだけ。そんなの、ただの自己満足にすぎない」

「…そうだね、僕は勝手に自分にそう言い聞かせて、安心したいのかもしれないね。だけど、天使だって悩むんだ。平和ボケしている天使なんて、所詮は絵本の中だけさ。人間も天使も悪魔も魔女も、根本的には全部同じなんだよ」

ラグミナに微笑みながらカイナが言うと、無感情な顔を精一杯嫌そうに歪めた。珍しいことだとカイナがのんびり思っていると、思った以上に強いラグミナの声が、二人の間に響き渡った。

「あんな野蛮な連中と、私を同じ類のものにするな。お前、それでも天界に住む者なのか」

「僕は天界に住む、立派な天使だ。間違ったことなんて言っていない。何だかんだ言ってラグミナ、キミもやっぱり天使なんだね。少々夢見がちな部分があるようだし…僕はただ、他の天使より現実を見れるだけなのさ」

嫌悪に歪んでいた顔を一瞬だけ怯えに変えたラグミナ。
この青い天使は、見た目が冷たい印象を持っているが案の定性格さえ残酷な天使だった。

カイナがどうして高い位に就いているのか、ラグミナは漸く分かったような気がした。

「さ、こんな話は御終いにしようか。せっかくのイヴくらい、僕らも騒ごう。一度天界へ戻ってみんなで祝おうか!」


飛び立つカイナの後を追いかけようとして、一度開きかけた翼を閉じた。

そしてどんどん上に登って行くカイナの背に向かって一言だけ呟いた。




『メリークリスマス。カイナ』


そして、今はいないあなたへ。


———Merry X’mas Rian…


呟いた言葉は、何も知らない真白な粉雪へと



吸い込まれて、消えていった……—————


—————————————————————————————————————————————

まとまらない、です;

少しだけ本編に関わりそうなことに触れてみましたが、多分まだ出てきません;

少しずつ明らかになっていくと思います^^
今回も拙い小説でしたが、楽しんでいただければとても嬉しいです。


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