二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】  
日時: 2011/11/17 22:22
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21031

 夢は一時の願いを膨らませるのでした。


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@ ご挨拶、

どうも、知ってる方は知ってるでしょう蟻です。
今回は私のスレッド、[ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた]からのリクエストで人柱アリスがあったのでこうして作らせていただきました。
長くなりますが、できるだけ詰め込みますので、宜しくお願いします。
この解釈が気にいった方は、上記のスレッドも見ていただけると嬉しいです。
ちなみに、更新は参照を優先させるので、こちらの更新は遅めになりますがご了承ください。

では、ルールを守ってゆっくりしていってね!

@ お客様、
ウォーカーさん

@ 目次、
#00 - 願望 ( 初めの少女と全ての原因 )
>>1 >>2
#01 - 正義 ( 正しいモノは案外脆い )
>>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16



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( 人柱にされたアリスは今頃何を想う? )

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Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】   ( No.14 )
日時: 2011/10/08 21:43
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)

 暗い森の中には、見え難いが確かに川があった。メイコは、川辺まで近付いて、そこにしゃがみこんだ。そして、川の水を手で掬い、口の中に入れる。何度かそれを繰り返し、腹を満たす。

「うぅ……腹を満たす為とはいえ、飲みすぎると流石に気持ち悪いわね……」
 
そこに草が茂り、こけも生えている事もおかまいなしに、メイコは寝転がった。そして、上を見上げる。
 空が、どこまでも遠い。木々の葉は、夜空も、青空も、見させてくれない。時間を知らせてくれない。
 メイコは、悩んでいた。それは、自分の生死に関する事である。早めに町を見つけなければならないと思うのだが、水を飲んだだけでは腹が満たされる筈もなく、動く気力がなかった。空腹で倒れてしまう前に町を見つけなければならない。今動けばいいのか、今眠って、体力を温存してから動けばいいのか。

「こんな事なら、何か持ってくるんだったわね……ラパンも、教えてくれたっていいのに。あの変人」

いつぞやのウサギ耳を付けた青年、ラパンを思い出し、疲れ気味に文句を吐き出した。
 風の音と、水の音。しきりに鳴るその心地良い音色が、子守唄の様になって、メイコに眠気を催させる。

「まあ、いいわ。眠たいから、眠りましょ」

仰向けになって、大の字の格好。そしてメイコは、自分の本能に忠実になって、目を閉じた。


「……ふああ。うぅ」
 
欠伸をしながら目を開ける。いつも通りの日常は、なかった。いつも訴えてくる空腹は、昨日から続いている。食料もまともにない森の中で、メイコは初めて一日を過ごした。
 目を擦って起き上がり、川の水で顔を洗った。それでも、光は見えない。

「はあ、お腹空いた」

冷たい水が、メイコの喉を通る。両手で水を掬い、落ちないうちに飲み干す。何回も繰り返すが、腹は満たされない。腹の中に、水が溢れている感覚を、メイコは感じて、気持ち悪いと小さく呻くのだった。
 暫く動く事もせず、ただ川の向こうを見つめてみるが、何も変わった事はない。
 横を見てみると、ラパンに渡された剣が置かれていた。金色の柄にスペードのマークのついた、刀身の白い剣を、見つめていた。

「折角あるんだし、何か斬ってみたいわね……まあ、時が来たら斬る事になると思うけど」

剣を見つめて、呟いた。そして続ける。

「くだらない願望でゲームオーバーになるのも、嫌だし」

笑いながら剣を取り、メイコはそこから立ち上がる。
 空腹と戦いながら、歩を進めた。

Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】   ( No.15 )
日時: 2012/04/15 22:00
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)

 それから、一日の半分が経った。
 メイコは疲れた様子で、そのまま歩く。腹が限界を迎え、体力のない状態でも、ただただ森を歩いていく。

「単なる過酷なダイエットじゃないの……はあ」

静かな森の中で、空しさを紛らわせるかの様に、五分に一回くらいの確立で、ひとり言を零すメイコ。
 何かないものかと、ポケットの中を探ってみる。しかし、そこにあるのはラパンから貰った『招待状』と呼ばれる紙だけだった。希望を持っても、現実に引き戻されてしまうメイコであった。
 
「でも……現実を抜けたら、夢は叶う」

体力の限界を訴えつつも、自身の夢の為にひたすら足を動かした。
 ——そんなメイコに、一筋の光が差した。

「…………あ、れは」

ひとり言さえも言わなくなったメイコの表情が、明るくなる。疲れているはずの体は、自然に走って、光に近付いていく。
 暗闇から抜け出した、一人の少女は。その開放感溢れる、どこまでも続く草原に、一人倒れた。


「あ、やっと起きた」
「……ここは、どこ……ですか?」

目を開けて、上半身を勢いよくあげるメイコ。その大きな音に気付いて、黒髪を一つに纏めた少女は、愛想よく笑った。メイコは挙動不審に辺りを見回して、自分より年上らしく見える少女に問い掛ける。

「ここは村よ。というか、村はずれの家ね。まあその村さえ、無くなりかけてるけど」
「どういう事ですか?」

悲しそうな顔をする少女に、疑問を投げかける。

「村を壊す奴らがいるの」

少女が俯いてそう言った途端、玄関のドアが乱暴な音を立てた。メイコはすぐにベッドから立ち上がり、玄関へ走る。
 玄関を見ると、乱暴に開けられたドアは壊されており、二人の巨体の男が立っていた。メイコは、正義であるがために、悪い事をした二人の男を睨みつけて、怒鳴った。

「アンタたち、何の用よ!」
「あっれぇええ? 見た事ねえ嬢さんだなァ……何しに来たんだ?」
「俺達に刃向かうって事は、死ぬ事を意味する。まあ、今ここで謝れば許してあげてもいいがな」

 ——それは正しく、『悪』だった。


 

Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】   ( No.16 )
日時: 2011/11/17 22:21
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)

 後ろでは少女が怯えて男たちを見ている。ここからひくわけにはいかない。そう思ったメイコは、ラパンから貰い、ずっと身につけていた剣を抜き、構える。
 
「……おいおい、女が剣を持つモンじゃねェぜ?」
「人の役に立たない事ばかりをして、何が楽しいのよ?」
「全部楽しいねェ、悲鳴も血の臭いもその光景もその心臓も! 元からあったものを壊していくって、楽しいだろう?」
「そうね、武器を持ってるんだから、壊したいとも思うわよね。——だから私が、アンタたち悪をめちゃくちゃに壊すのよ」

メイコは、挑発的な態度で笑ってみせる。そんなメイコを見ても、男たちは気味の悪い笑みを浮かべるだけだった。

「馬鹿だなァ……化け物の俺たちを、壊すだなんて」
「ぶちきれた、むかついた! ぐちゃぐちゃにしたら、お前のハートにキスしてやるよ!」

男たちは、ただ、どこにでも居る様な人の役に立たないゴミから、まるでゲームの世界の様な、気持ちの悪い化け物に変貌した。メイコは一瞬怯むが、負けては駄目だと首を振り、不安を全て振り切った。

「何ソレ、鳥肌ものじゃないの」

そう、挑発的に笑って。化け物を見上げると、メイコの上には既に触手の様なものが降りかかってきていた。それがメイコに直撃し、木でできた家にもその触手はあたり、家はいとも簡単に崩壊する。
 
「いったぁ……痛いなんて、もんじゃないわね。ごめんなさい。大丈夫ですか?」

足を引きずりながら、家だった木の板から、化け物たちの目の前へ出て行く。服は一瞬で破れ、頭からも足からも血は流れ出る。
 触手が振り下ろされたその刹那に、メイコは少女の方へ跳び、少女を押し倒しながら、守ったのである。予想外の速さに、勿論少女も無事ではなかったが、それでもメイコよりはマシな方だった。
 ふらつきながら歩いていくメイコは、あまりにも不利である。それでも、正義である彼女は悪を倒さなければならないのだ。
 彼女が正義である限り。彼女がアリスとなるためには。
 例え命の危険があろうとも、逃げない。

Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】   ( No.17 )
日時: 2011/12/14 20:52
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)

「どうした? もうフラフラじゃんよ——」

化け物がそう言った瞬間に、空から針の雨が振ってくる。
 当然避けられる場所などなく、メイコはそのまま受け身をとった。針はメイコの背中にあたり、白い服は赤く滲んでいる。
 ——このままでは、負けてしまう。メイコは息を切らしながら、そう思う。負けてしまうどころか、出欠多量で死んでしまう。
 メイコは普通の町娘であり、狩猟すらできないただの正義を持った女性である——見た事のないような化け物と戦える様な、超人的な能力など、持っているはずもない。

「あきらめな……人間が俺らに勝てるはずないんだよ。今なら、治してあげてもいいんだぜ?」

触手を持った化け物は、自身の触手でメイコを持ち上げて笑う。メイコは動く事もせず、ただただ化け物の顔を見つめて、否。睨んでいた——。

「私は……絶対に、負け、るはず、な、い……!」

そう化け物を見つめて、メイコは弱弱しい声で言った。化け物は苛立ち、メイコの傷ついた体を、千切れるほどきつく締め付ける。メイコは痛さに耐えられず、声を漏らすが、決して自身の負けを認めない。

「今でも傷だらけのくせに、よくそんな事言えるなあ!」

触手を振り離され、メイコは宙に浮く。落ちる速度が速すぎて、下さえ見えない。しかし、このまま落ちてしまったら確実に死んでしまう。
 先程も言った様に、メイコは超人的な能力などないのだ。綺麗に着地など、できるはずもない。できる事など、一つもない——。
 ふと、メイコの目には、白く光る剣が見えた。あのラパンに貰った、白い剣がメイコの手には握られていた。

「あんなウサギ耳が居るんだから……!」

呟いた瞬間に、大地は激しい音を鳴らした。砂煙が宙を舞い、何も見えない状況だった。
 女はもう死んだだろう、と化け物の二人は安堵し、嘲笑する。所詮ただの人間だと、そう笑った。アリス候補を、『ただの人間』だと、迂闊にも、そう思ってしまったのである。

 それこそが最大の間違いであり、それこそがメイコにとっての最大のチャンスだった。

Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】   ( No.18 )
日時: 2011/12/16 00:23
名前: 禊 ◆fzpLpgOYbk (ID: 8hgpVngW)

どやん★\(^O^)/
出落ちでごめんなさい、映像の方でコメ頂いた禊です(ノ)・ω・(ヾ)

頭の中がもうあれですね、(文章綺麗すぎて)パーンッですよ。
人柱アリスの世界観は個人的にとても大好きで、
それが素敵に表現されてる部分が多々あるのでもう……もう!ry

更新楽しみにしてますねっ


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