二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄—
日時: 2010/12/30 15:16
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

初めまして。
お久しぶりです。
学園アリスを書いていた時計屋と申します。
今回はテイルズシリーズ唯一プレー経験のあるテイルズ・オブ・ジ・アビスを書きたいと思います。
なお、自分はご都合主義なので赤毛二人とも生存しております。それと、設定が未来となっておりまして子供が主役です。
色々、矛盾点があると思われますがスルーして頂ければ幸いです。
では、オリキャラ達を紹介します。

人物紹介

ローラン(女)
『唄われる音』
年齢 15ぐらい
性格 天然 
容姿 白のロング 栗色の瞳
その他 
ローレライに創り出された存在。一時期ユリア達に預けられていたが、ダアト裏切り時にユリアの手によってローレライの元へと返される。その為、ユリアを裏切ったオリジナルをとても憎んでおり、侮辱する事もしばしば。存在が似ているレプリカ達には寛容で優しく、酷い扱われ方をしているレプリカを見ると後先考えず喧嘩を売ってしまう。現在の社会情勢には疎く、スコールに教わりながら日々勉強している。口調が少し可笑しいユリア大好きっ子。
台詞集
「それに何の問題が有りけるの。」「お前は、嫌いだ。」「失せろと言うのが分からぬか?」「願いは叶わぬのが私という存在なのだから。」

スコール・フォン・ファブレ(男)
『闇を照らす光』
年齢 16
性格 温厚
容姿 朱色の短髪 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの息子。ファブレ家の長男であり、リルカの兄。家を継ぐ気はあるが、一人旅をしてみたいという夢も持っている。ルークとティアから訓練は受け、実戦経験も豊富なため戦闘は強いが本人はあまり好きではない。勉強は好きだが、事実を確かめたいと外に遊びに行く事も。ユリアの譜歌も歌える第七音譜師。
台詞集
「世界は外に広がってるんだ。」「お前が犠牲になる世界が本当に正しいのかよ!!」「信頼しなくても良いから信じろ。」「お前が好きだよ。」

ギルフォード・レア・キムラスカ・ランバルディア(男)
『守り通す者』
年齢 17
性格 冷静沈着
容姿 紅の長髪 蒼の瞳
その他
アッシュとナタリアの息子。キムラスカ王国の王位正当後継者でリルカの婚約者。頭が良く物事を判断する能力に長けている。戦闘訓練を受けているため、スコールと同等の腕前を持つ。幼馴染みのスコールとリルカに振り回され頭を抱えながらも、自由な彼を尊敬もしている。表情は豊かだが、演技力抜群。リルカと結婚し国を支える事が目標。常識人な第七音譜師。
台詞集
「お前らは考えて行動しろよ。」「この国を誇りに思ってくれる人が一人でも多くいて欲しいんだ。」「俺は守りたいんだ。大切な奴らを。」「ほんと馬鹿だよな。救われるけどさ。」

リルカ・アウラ・ファブレ(女)
『清らかなる旋律』
年齢 14
性格 世話好き
容姿 栗色のロング 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの娘。ギルフォードの婚約者でスコールの妹。何かに付けてサボろうとする兄を叱るのが日課。自立心は高く王家に連なる者としての自覚もあるため、日々民に尽くしている。ヒーラーとしての腕が高く、医療施設に泊まり込みで働くのが好き。将来はギルフォードと結婚し、国のために役立つのが夢。スコールと一緒にギルフォードを込まらせる事もある。
台詞集
「お兄様!!サボりはいけません!!」「いつか私と結婚してくださいね?」「こんなに傷ついて、平気なわけ無いでしょ!!」「精一杯お役に立ちます。」


もう少し出て来ますが、一応主要キャラです。
   

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Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.8 )
日時: 2011/05/21 09:13
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

第七幕〜花の意味〜


彼女が唄うは 契約の証  
彼が問うは 未来の記憶
孤高の空に漂う意識の中で
願う彼の人祈りは散りゆく


スコールの部屋へ移動中に私の中で疑問が渦巻いていた。
『聖なる焔の光』 マスターを解放した彼は、同族であるレプリカが蔑まれている現実に対しあれ程変革を求めていたにも関わらず、当時の仲間達の話し合いでは呆れはしていたが怒りもしてないかった。逆に笑っていた。あろう事か仲間とはいえあの歪んだ世界を創り出したオリジナル達と幸せそうに語り合っていた。
だから、スコールに聞いた。不満そうに話し始めていたのに何故笑っていたのか。怒る事も軽蔑する事もなくどうして楽しそうだったのか。けれど返ってきた答えは理解に苦しむもので、答えたスコール自身もぎこちなく笑っている。

「あ〜もう父上達の話はやめ!!それよりもこれからどうする?商店街にも行ったし、中庭で剣術でもするか?」
「それは、お兄様がやりたいだけでしょう。私はいいとしてもローランが楽しめません!!!」
「ん〜・・・ローランも剣やってみようぜ!!俺が教えるから。」

目の前に差し出された練習用の木刀を受け取っていいのか迷っていると、嫌がっていると勘違いしたリルカがスコールに噛みついた。

「困って居るではありませんか!!お兄様女性に剣術を勧めないで下さいますか。」
「なんでだよ。身を守るためにも覚えた方がいいって!!やろうぜローラン。」
「あ!!お兄様!!お待ち下さい!!!」

私の返答を待たずにスコールが手を引き走り出す。またこの展開かと呆れていると、意外にも近くにあったのか目的の中庭には直ぐに着いた。
円形状の庭は中央部分を囲むように花壇が創られ、植えられている白い花が風に揺れていた。人工的な川を架けられている橋で渡り中央に敷かれている石を軽く叩く。

「剣術の稽古の時は大抵此処を使ってる。お前も好きに使っていいぞ。」
「・・・ここはお前の持ち物なのか?」
「いや。俺じゃなくてファブレ家の持ち物だな。今は俺が一番よく使ってるけど、昔は父上も此処で剣術習ってたって聞いたし。」
「なるほど。だからか・・・・・」
「ん?なんだよ。」

気にするなと伝え花壇に目をやる。
整備されているそれは大切に育てられているのだろう。行き届いた世話がされていると簡単に分かる程生き生きと花は咲いていた。

「それはセレニアって花だ。父上と母上の思い出の花だって、昔話してくれた。」
「思い出・・・・」
「あぁ。いつも大切な時にはセレニアが咲いてたって。だから、此処に植えたんだってさ。」

その話は何処か私とダブって聞こえる。
大切な時に咲いていた花。彼女は大好きだと云っていた。白く儚いその花は私によく似ていると。

「ローラン?」
「・・・・なんでもない。」

不思議そうに呼ぶ声に過去に浸っていた思考を戻す。
らしくない。幾ら過去が恋しくとも戻る方法など有りはしないのに。

「そうか・・・」

何かを振り払うように花壇から離れようとした時、スコールの声が後ろから届いた。独り言の域を出ない音量だが気になり振り向くと、笑顔のスコールと目が合った。

「セレニアってさ。お前と似てるよな。」
「・・・・え・・・・」
「真っ白なところとか、何か見てないと危なっかしいところとか。」
「・・・・・」
「だから、懐かしかったんだ。」

私は驚きを隠せず目を見開きスコールを凝視した。
なんでこいつ・・・。


思った事をいっただけなのに、ローランは固まって動かずおまけに俺を驚いたように見続けている。
数秒の沈黙の後、ばつの悪そうに顔を背けるローランは何かを言いたげに思考する様子を見せ、意を決したのか若干睨む形で顔を上げた。

「・・・・・その言葉・・・」
「ん?言葉???」
「セレニアが私に似ている と。」
「あぁそれね。えっと・・・嫌だったか?」
「違う。嫌・・・ではない。ただ・・・」

また口籠もったローランを急かすような事はしたくないと思った。だから、彼女が話すまで待つ。その時間は意外にも短く終わったが。

「昔・・・大切な人が同じ事を云っていた。白いこの花は私のようだと。」
「大切な人?」
「だから・・・・セレニアの花は大好きだと。云って笑ったんだ。」

ローランは事実をそのまま淡々と語る。だからその姿はとても悲しく見えた。

「大切な人って・・・・ユリア・・・・なのか?」
「・・・そうかもな。」
「おい!!」
「話は終わりだ速く剣術を見せろ。ギルバート達も来た事だしな。」

話はギル達の到着で無理矢理に締めくくられた。




つづく

Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.9 )
日時: 2011/05/22 11:43
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

第八幕〜少女の怒りと〜


「全く理解出来ません!!!」

大声ではしたなくを歩く私をぎょっとしたように兵士達が振り向きます。そんな事も意に返さず進んでいく姿は普段の私から想像も出来ないのでしょう。私だってこんな振る舞いしたくありませんのに・・・それもこれも全てお兄様の所為です!!!
お兄様がローランを連れてきてから早数週間が経ち、ローランも此処の生活に慣れようとしてきているのが垣間見えます。ローランについてお父様達とお話になって結果、一時的にファブレ家で預かることに落ち着いたようです。私としてもその事は喜ばしく、新たな妹が出来たように感じる日々を過ごしていますが問題はお兄様です。この家でローランと一番親しいお兄様は何かにつけてローランを誘い出します。剣術稽古や森の散策、果てには街の視察にまで・・・。ファブレ家の長男といえど若輩者であるお兄様にそこまで危険で重要性のある仕事は回ってきませんが、あくまでそれは書類上の事です。一歩現実の世界に足を踏み出せば今がいかに不安定な現状なのか一目瞭然。そんな情勢の中、護身術には優れているとはいえ女の子を平然と連れ回すお兄様には私もギルも頭を抱えているのです。

「・・・どうしたんだリルカ?」
「いえ。何でもありませんわ。少々お兄様の事で悩んで居りましたの。」

いつの間にか中庭まで出て来た私を迎えて下さったローランの手には、大きなセレニアの花束が抱えられています。
お兄様が此処に案内をして以来ローランはよく中庭に出てセレニアやその他の花を愛でています。その姿はとても神聖なモノのようで、触れてしまえば容易く壊れてしまいそうです。だから、私達は極力話しかけないようにしているのですが、お兄様とよく此処で他愛のない話を楽しんでいる姿を見る度にお兄様に対抗心を抱くようになりました。

「・・・・そうか。ならいい。」
「心配して下さってありがとうございます。」

心配をお掛けした事に対する罪悪感よりもローランが心配して下さった喜びの方が私には大きく、お礼を笑顔で申し上げると途端に顔を赤く染め逸らしてしまうローランの行動にまた顔が綻んでしまいます。
あぁ・・・・なんて可愛らしいのでしょうか。こんな仕草をするローランをお兄様がお好きになるのは当たり前ですが、こんなに可愛らしく可憐なローラン、お兄様には勿体ない程です。しかし、何処の馬の骨とも知らない殿方に取られるのもまた癪なもの。いっそのこと私の養女にと申し出た時のギルの顔はとても見物でした。

「リルカ?本当に何もないのか?」
「えぇ本当に大丈夫ですわ。」

百面相をしていたのでしょうか。ローランの声には心配そうな色が見え隠れしています。それでも、ローランに心配してもらえる事は嬉しいモノです。
最初こそぎこちなかったものの最近ではお兄様だけでなく私共とも自然に話してくれるようになりました。とはいっても、それはほんの少人数に限られ使用人や兵士達と言葉を交わす姿は見受けられません。ローランにとってこの屋敷は未だ敵陣地なのでしょうか・・・。

「・・・・ローラン・・」
「なんだ?」
「貴方にとって此処にいる事は辛い事ですか?」
「何だ突然?」

普段あまり変わる事のないローランの瞳に驚きの色が浮かびます。それもそうでしょう。いきなり『辛いか』などと聞かれば私だって驚いてしまいますもの。本来ならこの様な事聞く必要もない事です。聞いたところで私にはどれ程の力もありません。

「此処にいる事が貴方を苦しめていますか?」

けれど、聞かなければなければならない気がしました。問いかけなければ後悔すると。

「貴方は此処にいて幸せですか?もっと他に行きたい所が在るのではないですか?私やお兄様が勝手に貴方を引き止めては居ませんか?」

何かで塞き止められていたモノが溢れ出すかのようにローランに詰め寄り、不安をぶつけるように捲し立てます。

「何か隠していませんか?私には言えない事ですか?お兄様は知っていますの?何処か遠いところに・・・・行ってしまわれますか・・・?」

あぁ、何を言っているのでしょうか。こんな事を言いたくて来た訳ではありませんのに。止まらない言葉の洪水は段々と弱々しくなっていくのが私にも分かりました。

「リルカ・・・私は・・・」

やっと聞こえたローランの声に私は俯き掛けていた顔を上げ、懇願するように瞳を見つめます。もし、ローランが『辛い』と溢せば私に引き止める術はありません。

「私は、此処にいる事を辛いと思った事はない。」

強くそれでも、どこか淋しそうに俯き遠くを見る姿は痛々しく見ていられません。けれど、此処で目を逸らせば二度とこうしてお話しする事も出来なくなってしまう気がします。

「確かにこの屋敷はオリジナルで溢れているし、居心地が良いとも断言出来ない。けど、私は此処にいる。それではダメか?」
「・・・・もし、お兄様に愛想を尽かしたら・・・」
「え?」
「貴方を連れ回すようなお兄様です。よろしいのですか?」

話があらぬ方向へ飛んでしまいました。私も自分が何を言いたいのかさっぱりです。
きょとんと今までにない表情を浮かべたローランは次第に肩を振るわし笑いを堪え始めてしまいました。

「・・・そこで・・・スコール・・・を出すか・・・くっくっくっく・・」
「ローラン?」

何故彼女は笑っているのでしょう?
あぁ私には分からない事ばかりです。これをお兄様の所為と言わずして誰の所為に出来ましょう!!!!




つづく


変な終わり方ですよね・・・すみません。実は前後編です。後編も直ぐに書きますので・・・

Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.10 )
日時: 2011/05/22 17:59
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

時間軸さかのぼります。
八話よりも二〜三週間前の話です。

第九幕〜少年の決意〜

「最悪だ・・・・」
「何度目だよそれ。良いから手ぇ動かせ。」

ギルの容赦ない一言に再びため息が漏れた。それを咎めるように睨むギルを見て、慌てて書類に目を通す。

「んで今日に限ってこんなに仕事回すんだよ・・・・」
「うるせぇ!!さっさと処理しねぇお前が悪いんだろが!!」
「だからって・・・・何もローランと出掛ける予定の日に入れなくても良くねぇか?」

項垂れる俺にギルの鉄拳が下った。手加減はされているもののガードもせずに受けると流石に痛い。

「お前の所為だろうが!!舞踏会のこと忘れた訳じゃないだろうな!!」

あぁ・・・と曖昧に返事をすれば呆れたようなため息と、メイドが持ってきた書類の山が増える。うめきを漏らす俺に自業自得だと云わんばかりの視線が突き刺さり、居心地が悪い。
ふと、声が聞こえ窓を見やると中庭で佇んでいたローランにリルカが何かを話しているのが見えた。リルカと話す事にも慣れたな・・あいつ。

「・・・・本当に良いのか?」
「あぁ・・・」

いつの間にか隣に立ち同じ方向に目を向けているギルが独り言のように聞いてきた。何の事を聞いているのかは問わなくても分かる。その言葉に秘められた重さも十分すぎる程に。だから、迷いなく答える。あの日の事に後悔はないと。



時は遡り、ローレライデーカン・レム・48の日。キムラスカ王都最上階に位置するファブレ家の屋敷では、メイド達が忙しなく動き回っていた。それを横目に四人は中庭へ集まり普段と変わらず思い思いに過ごしている。しかし、何処か落ち着きのない三人に、ローランは屋敷の中と見比べるようにしてスコールへと首を曲げた。

「何かあるのか?」
「ん・・あぁ、ローランは知らないのか?今日生還祭をやるんだ。その準備に大忙しって訳さ。」
「生還祭?」
「世界を救った英雄が帰ってきた日ですわ。」

スコールを押しのけ前へと出て来たリルカにローランは再び疑問符を浮かべ首を傾げた。押しのけられたスコールは不機嫌そうにリルカを見下ろすが気にしていないのか、気付いていないのか。恐らく後者であろう事が分かるスコールは何も言わずにリルカの説明を黙って聞く事にした。

「今から二十年程前一人の男がレプリカ世界を創り、ユリア・ジュエの残した予言を覆そうと画策しました。予言通りにしか生きられない人類を憎み、世界を滅亡させようと。しかしそのレプリカ大地計画を認めずこの世界を命を掛け守ったのが今や七英雄と謳われる我がお父様達ですわ。けれどその代償は大きく、乖離現象を起こしていたお父様はローレライを解放する代わりに消滅してしまった。」
「その二年後タタル渓谷に消滅したと思われた父上と叔父上が帰ってきた。だからこの日は生還祭として世界が失われなかった事に感謝するんだ。」

辛そうに目を細めるリルカの代わりにギルフォードが続けた。不満げだったスコールも機嫌が直ったのかいつも通り人懐こい笑みを浮かべ、騒がしい邸内を眺めている。

「この日はさ、世界が幸せであるようにって願った父上達の記念日なんだ。だから、みんな頑張ってんだ。」

心から嬉しそうに語るスコールをちらっと盗み見て、ローランは複雑そうに顔を歪める。すると、フォンスロットを同調させられる時特有の頭痛が起きそれを悟られないよう俯いた。

『マスター・・・』

空の彼方にいる大切な人を心の中で呼ぶが帰ってくる返事はない。分かっていた事にもかかわらずため息を付いてしまう自分に嫌悪感が増し、小さく舌打ちをした後気付かれたかと思ったが幸いにもその場にいた三人には聞こえなかったようで、生還祭の話に花を咲かせていた。

「スコールーリルカーギルフォードー!!三人ともそろそろ支度しなさーい!!」

ティアの呼ぶ声に待ってましたと云わんばかりの勢いでリルカが駆けていき、その後をギルフォード呆れたように歩いて付いていった。

「・・・・お前は行かないのか?」

呼ばれたにも関わらずその場を動こうとしないスコールにローランが問いかける。う〜ん とどこか抜けている返答にローランは促そうとするが、意を決した目をするスコールに見つめられ動きを止めた。

「あのさ・・・・」
「何だ?用があるのならさっさと答えろ。」
「今日生還祭だろ。」
「さっきも聞いたが?」
「うん。でさ、式典の後舞踏会が在るんだ。キムラスカとマルクト両国の要人が集まっての。」
「だから?」
「それに・・・出てくれないか?俺と。」

突然の申し出にローランの思考は停止した。
真剣な眼差しは決して冗談を言っている風には見えない。けれど、拾い子当然の娘をパートナーに選ぶなど考えられるはずもない。元々世情に疎いローランだとしてもその位は分かる。

「ローラン?聞いてるか?」

何の反応も示さないローランに不安になったスコールが不安そうに尋ねる。

「私がか・・・?」

やっと帰ってきた言葉は震えていて、とても弱々しかった。

「俺はお前と踊りたいんだけど。」
「・・・・何処の誰とも分からないのに?」
「俺は気にしねぇよ。貴族の令嬢と踊る方が嫌だからな。」
「けど・・・・」

それでも申し出を受け取らないローランに業を煮やし無理矢理手を握った。弾かれたように見上げる顔には様々な感情が見て取れる。驚いているようにも何かを耐えているようにも見えた。無理強いは良くないと分かってはいるものの撤回する気などさらさらなかった。
片膝をつきローランを見上げる。優しく笑いかけると、少し頬が染まったようにも見えなくもない。

「私と踊って頂けますか。姫。」

軽く手の甲に口づけ、再度見上げると小さくだが頷くのがはっきりと分かった。
満足そうに笑うスコールは立ち上がり更に強く手を握りしめると、邸内に居るティアを探しにローランを連れ戻っていった。


つづく

Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.11 )
日時: 2011/05/28 17:38
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

第十幕〜宴の前に〜


ローランの手を引き邸内を歩き回るスコールに、メイド達は会うたび支度をと求める。鬱陶しそうにそれらを振り払い、目的の人物の所在を聞きまくり約十度目にしてラムダスから漸く求めていた情報が与えられると、歩く速度を少し上げる。

「母上!!こいつにもドレスの用意をお願いします。」

部屋へ入ってくるやいなや突然の息子の要望にティアは少し眉を寄せたが、二人の雰囲気を察し直ぐメイドを呼びつけドレスと装飾品類を持ってこさせるよう手配を始めた。

「おい・・・良いのか?」

呆気に取られ何も言うことなくその流れ作業並みの速さで繰り出される指示と受け答えするメイド達を眺めていたローランが、不安そうにスコールの服の裾を引っ張る。

「お前ドレス持ってないだろ?舞踏会だからな。ドレスぐらい着なきゃ笑われるぞ。」
「いや、私が言いたいのはそこじゃなくて・・・」
「失礼します。お嬢様採寸を致しますので奥のお部屋に起こしいただけますか。」
「えっ!!お、おい!!」

論点がずれていると指摘しようとしたローランをメイド達が遮り、有無を云わせず奥の部屋まで引きずるように連れて行かれる。その様子が可笑しく笑いを堪えているスコールの横へ、既に支度を終えたギルフォードがため息を吐きながら歩いてきた。黒を基調とした礼服は肌触りも滑らかな最高級品の布が使用され、王家の紋章が金の装飾で彩られている。普段下ろしている前髪も上げられ日頃とは違う空気を纏っていた。

「お前も用意しろよ。」
「分かってるって。」

答えの割には動こうとしない幼馴染みにギルフォードは珍しく強くは言わなかった。普段ならここでため息かお説教が振ってくると覚悟していたスコールもギルフォードの様子を不思議に思い、首だけ向けると場違いな程真剣な目とぶつかった。

「お前分かってるのか。」
「なにが?俺が女の子にプレゼントを贈るのそんなに珍しいか?」

わざと戯けたように聞き返すと、あからさまに顔を顰め舌打ちを返し、セットされていた髪を掻きむしる。後ろの方でメイド達が騒がしく手入れし直す為に道具を取りに行くのが二人には見えた。

「プレゼントをどうとは言わない。が、仮にもファブレ家子息のお前が得体の知れない者をパートナーに選んだと分かれば、お堅い貴族達が五月蝿いぞ。」
「得体の知れないって言い方はねぇんじゃね?確かにローランは良く分からない奴だけど、俺のパートナーとして招くんだ。別にかまわないだろ。」
「構うから言ってんだ。いい加減自覚しろ。お前はファブレの人間だ。お前が良くても周りは良くない。勝手な誹謗中傷だって珍しくないんだ。その批判を受けるのはお前じゃなくて彼女なんだぞ。そこんとこ分かってんのかよ。」

静かだが確実に苛立っているギルフォードに、スコールは内心驚いていた。ギルフォードはローランに対して少なからず悪い印象を持っているものだと思っていた。そして、自身が認められない人間の心配が出来る程この幼馴染みは大人ではない。しかし、ギルフォードの口から聞かされた言葉は間違いなくローランを心配するに他ならないもので、傷つけられる可能性を実行しようとしているスコールに明らかな怒りを露わにしていた。
その事を指摘すると、罰が悪そうに顔を背ける。

「彼女が傷つくとリルカが心配するだろ・・・」

あぁと納得したように頷くスコールをギルフォードは言うんじゃなかったと後悔の思いと共にため息を吐く。
スコールの妹リルカとギルフォードは、許嫁の関係である。公爵の位にあるファブレは古くからキムラスカ王家と姻戚関係にあたりお互いの子供を結婚させ繋がりを強固なものとしてきた。しかし、今となってはその慣習も一つ前の世代、ルーク達の時代に終わりを告げていた。現国王であるアッシュとナタリアが取りやめを発表し、それをファブレ家当主のルークが承諾することにより長く続いた両家の関係は終わりを迎え始めたのだ。けれど、ギルフォードとリルカは誰に強制を受ける訳でもなく自然と恋仲になっていた。その事についてとやかく言う者も居なく、結果双方の合意の元許嫁となった。
そんな訳で相思相愛の二人は特にギルフォードの方がリルカには甘かったりする。それをからかえば断固否定をするのだが、一目瞭然な態度に苦笑するしかないだろう。

「分かってるって。心配すんなよ。」
「お前のその言葉は信用できねぇんだよ。ともかく。下手は打つなよ。」

自信げに笑ってみれば、またギルフォードのため息が聞こえた。



「お嬢様のご用意が整いました。」

慣れないのかメイドに支えられるように入ってきた深紅のドレスを纏うローランに、応接間にいた二人は息を呑んだ。
シンプルだがその色やデザインがローランの白さを際立たせ、何処か気品溢れるその姿は王族の姫にも引けを取らないかもしれない。

「お如何ですか?ローランに合うものをと私が捜しましたの。」

未だ動きが取れないスコールの耳にリルカの嬉しそうな声が届く。我に返り目を向ければ、悪戯が成功した子供のように笑っていた。

「リルカが選んだのか?とてもよく似合っている。」
「流石ギルですわ。お兄様もそんなところで固まっていらっしゃらずに、褒めて差し上げて下さいませ。」
「似合って・・る・・・・」
「それだけですの?」

流石王族と云える紳士的な振る舞いで褒め称えるギルフォードとは対照的に、赤くなった顔を隠すので精一杯なスコールへリルカがさらなる追い打ちを掛ける。

「お兄様のパートナーとして参加下さるのですよ。もっと、貴方以上に美しい人はいない、とかないんですの?」
「スコール、こんなに美しく着飾った女性に対して失礼じゃないか。手を取り椅子へご案内する位はやるべきだろ。」
「あー!!俺も着替えてくる!!」

さっきの仕返しにと云わんばかりに難題をふっかけるギルフォードを睨みつけ、最もらしい言い訳をしスコールは応接間を後にする。
後ろから聞こえてくる愉快そうな笑い声を無視し、兎も角赤くなった顔を覚まさねばと、急いで自室へ向かった。



つづく

Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.12 )
日時: 2011/05/29 12:19
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

第十一幕〜真実はいつも残酷で〜


英雄達の言葉から始まる式典は厳かにけれど華やかに行われている。それを避けるようにローランは人気のない城の庭へと佇んでいた。
三ヵ国の代表を交えてのそれは、預言を完全否定するのではなくその歴史を受け入れ未来へ繋ぐための意思確認の場だとスコールはローランに説明をしてくれた。ユリアを否定した訳ではない。ユリアが願ったような人々が幸せに暮らせる未来を創るために、と。
その時のスコールの姿を思い出し無意識の内に胸元の布を強く握りしめていた。
分かってはいる。世界が新たな指導者を必要としていることなど。そこにユリアは当てはまらない事など分かっている。

「・・・・だから・・・悔しいんだ・・・・」

呟きは思いの外大きく、すんなりと心に墜ちてくる。まるで、水が溜まるように溢れる、黒い感情を押しとどめようとローランは更に強く服を握りしめる。

「んなことすると、皺になるぜ。」

背後から届く聞き慣れた声に体がぴくっと反応した。愉快そうな笑い声を堪えようともしないでゆっくり近づいてくる人物を振り向くと、予想と違わずスコールがはだけている礼服もそのままに隣へ座った。

「良いのか式典は?」
「う〜ん・・・ギルが何とかしてくれんだろ。」

相変わらずの態度にローランはただ そうか と答える。
ここ何日か行動を共にして、何となくだが形式張った儀式や行事などをスコールが苦手なのだという事をローランは感じていた。元々体を動かす事が好きなスコールにとって、式典は天敵にも等しかった。王族に連なる家の跡取りとしてある程度の礼儀作法は体が覚えてしまったのだと愚痴をこぼしたのは一度や二度ではない。それでも自覚はあるのか本番になればファブレの子息として振る舞っている。

「何考えてた?」
「・・・・え?」

意識を外に飛ばしていたローランはスコールの突然の問いかけの意味が分からず、聞き返してしまった。スコールは一度息を吐き、ローランへと向き直る。

「さっき。俺が来る前まで何考えてたんだ?」
「・・・何も。」
「ローラン。」

見つめられた目はいつになく真剣そのもので、誤魔化そうとするローランは背けてしまう。その行動が気に入らなかったのか、スコールはローランの両頬に手を添え見開かれるそれを無理矢理合わせた。

「正直に言え。何か俺に隠している事はないか?」
「・・・何もない。」
「ローラン!!!」

怒鳴るように名を呼ばれたローランは、瞳に淋しさと悔しさを湛え精一杯睨みつける。しかしそれでもスコールは引かず、真っ直ぐにその瞳を見つめ返した。

「全てを話せとは云わない。けど、少し位背負ってるモノを教えてくれ。俺じゃ力になれないかもしれないけど、知りたいんだ。お前の事。」
「・・・・知ってどうする。お前では何も出来ないぞ。」
「何も出来なくても側には居られる。知ったからこそ守れるモノもある。」


「・・・・私は、人ではない。」

暫くの沈黙を破ったのはローランの切なげな声だった。睨みをきかせていた瞳も諦めが入ったように伏せられる。

「人じゃない?・・・お前が・・・?」
「レプリカでもない。私は生まれるはずがないモノ。マスターの唯一の失敗作だ。」
「・・・失敗作・・・?」
「ユリアはマスター・・・ローレライと契約し、預言を詠んだ。外郭大地を創り地核から人々を遠ざける事で世界を障気から救い出した。しかし、その力に恐れを成した時の王はダアトを懐柔しユリアを捕らえた。後にユリアはダアトによって救い出され、ホドの地に眠った。ここまでは知っているな?」

スコールは黙って頷く。それを見て微かにローランは笑った。

「私はユリアがローレライと契約した時に生まれたんだ。創り・・・出されたとも云えるか。マスターに創り出され、ユリアに預けられた。」
「何のために・・・」
「オリジナルを・・・ユリアを監視するために。」

紡がれるそれらをスコールはただじっと聴くしかなかった。そんなスコールを残し、ローランは続ける。

「契約をし、星の記憶に触れたオリジナルがどんな行動を起こすか見届けるために私は創られ・・・・そして、捨てられた・・・・。」
「捨てられた・・・・?」

重苦しいその言葉をローランは事も無げに言い放つ。まるでそれが日常の一つとでも云わんばかりの変わらない声は、元々儚かったローランの印象を決定づける。

「創り出されたと云っても、私は預言が詠まれた際に出る第七音素の残滓から形成された『形在るもの』にすぎない。第七音素の大元はマスターなのだから創り出された、とも云えるだけの話だ。」
「それで・・・捨てられた・・・?」
「マスターにしたら捨てたなどと云う概念はないのかもしれないな。偶然出来た第七音素の固まりを使い道がないからオリジナルに与えた、と云うところだろ。」
「そんなの!!!・・・・酷すぎる・・・・」
「酷い・・・か?解らんな。ユリアも酷いと云っていたが、私は別段と悲しくもない。創り出したのが親というなら確かにマスターは私の親なのかもしれないが、私にとってマスターは私の所有者だ。所有者にどう扱われようと、私が意見を持つ事は赦されない。」
「もし・・・・殺されようとしても・・・・か?」
「当然。使わない物を処分するのは所有者の責任だろ?」
「巫山戯んな!!!!!!!!!」

当たり前だと、その事に疑問すら抱いていないローランに抑えていたスコールの怒りが爆発した。訳が分からないと目を見開くローランの姿に更に怒りが増す。

「所有者?第七音素の固まり?お前自分の命をなんだと思ってやがる!!どうして自分を貶す事しか云えない!!」
「私は・・・!!」
「物だからか!?創られたからか!?んな事どうでも良いんだよ!!お前はお前だろうが!!一つの存在として此処にいる!!それ以外に何が必要だって云うんだ!!」

響くスコールの言葉にローランは唇を噛みしめた。苦しげに俯く姿は何かに耐えようとしている。しかし、スコールの怒りは修まらない。ローランが今までの言葉を否定しない限り。

「・・・・赦されない・・・・私は・・・」
「なんでだよ!!!存在を認める事に赦しなんて必要ねぇだろ!!」
「・・・・それでも・・・・私は・・・・」
「んないに赦されたいなら俺が赦す!!!」

ばっ と上げられた顔は困惑でいっぱいだった。意味が分からないと呟くローランを無理矢理に抱きしめる。驚いたように固まっていたローランが離れようと抵抗する。それも押さえつけると、無駄だと悟ったのか大人しく腕の中に収まった。

「どんなお前も全部受け止めるから・・・・だから・・・・側にいてくれ・・・・」 
「・・・私は・・・・・でも・・・・」

震える声は弱々しく、不安げに響く。大丈夫だ と耳元で呟けば押しとどめていた涙が溢れ出す。
スコールはそれが止むまで抱きしめた。


つづく



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