二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄—
- 日時: 2010/12/30 15:16
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
初めまして。
お久しぶりです。
学園アリスを書いていた時計屋と申します。
今回はテイルズシリーズ唯一プレー経験のあるテイルズ・オブ・ジ・アビスを書きたいと思います。
なお、自分はご都合主義なので赤毛二人とも生存しております。それと、設定が未来となっておりまして子供が主役です。
色々、矛盾点があると思われますがスルーして頂ければ幸いです。
では、オリキャラ達を紹介します。
人物紹介
ローラン(女)
『唄われる音』
年齢 15ぐらい
性格 天然
容姿 白のロング 栗色の瞳
その他
ローレライに創り出された存在。一時期ユリア達に預けられていたが、ダアト裏切り時にユリアの手によってローレライの元へと返される。その為、ユリアを裏切ったオリジナルをとても憎んでおり、侮辱する事もしばしば。存在が似ているレプリカ達には寛容で優しく、酷い扱われ方をしているレプリカを見ると後先考えず喧嘩を売ってしまう。現在の社会情勢には疎く、スコールに教わりながら日々勉強している。口調が少し可笑しいユリア大好きっ子。
台詞集
「それに何の問題が有りけるの。」「お前は、嫌いだ。」「失せろと言うのが分からぬか?」「願いは叶わぬのが私という存在なのだから。」
スコール・フォン・ファブレ(男)
『闇を照らす光』
年齢 16
性格 温厚
容姿 朱色の短髪 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの息子。ファブレ家の長男であり、リルカの兄。家を継ぐ気はあるが、一人旅をしてみたいという夢も持っている。ルークとティアから訓練は受け、実戦経験も豊富なため戦闘は強いが本人はあまり好きではない。勉強は好きだが、事実を確かめたいと外に遊びに行く事も。ユリアの譜歌も歌える第七音譜師。
台詞集
「世界は外に広がってるんだ。」「お前が犠牲になる世界が本当に正しいのかよ!!」「信頼しなくても良いから信じろ。」「お前が好きだよ。」
ギルフォード・レア・キムラスカ・ランバルディア(男)
『守り通す者』
年齢 17
性格 冷静沈着
容姿 紅の長髪 蒼の瞳
その他
アッシュとナタリアの息子。キムラスカ王国の王位正当後継者でリルカの婚約者。頭が良く物事を判断する能力に長けている。戦闘訓練を受けているため、スコールと同等の腕前を持つ。幼馴染みのスコールとリルカに振り回され頭を抱えながらも、自由な彼を尊敬もしている。表情は豊かだが、演技力抜群。リルカと結婚し国を支える事が目標。常識人な第七音譜師。
台詞集
「お前らは考えて行動しろよ。」「この国を誇りに思ってくれる人が一人でも多くいて欲しいんだ。」「俺は守りたいんだ。大切な奴らを。」「ほんと馬鹿だよな。救われるけどさ。」
リルカ・アウラ・ファブレ(女)
『清らかなる旋律』
年齢 14
性格 世話好き
容姿 栗色のロング 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの娘。ギルフォードの婚約者でスコールの妹。何かに付けてサボろうとする兄を叱るのが日課。自立心は高く王家に連なる者としての自覚もあるため、日々民に尽くしている。ヒーラーとしての腕が高く、医療施設に泊まり込みで働くのが好き。将来はギルフォードと結婚し、国のために役立つのが夢。スコールと一緒にギルフォードを込まらせる事もある。
台詞集
「お兄様!!サボりはいけません!!」「いつか私と結婚してくださいね?」「こんなに傷ついて、平気なわけ無いでしょ!!」「精一杯お役に立ちます。」
もう少し出て来ますが、一応主要キャラです。
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.3 )
- 日時: 2010/12/30 16:44
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二幕 〜繰り返される記憶〜
大地は障気と死臭に包まれ荒れ果てていた。嘗てあったであろう美しい森も思い出深い建造物も今はただの荒野となりはて、人々は絶望の中迫り来る死を待つしかなかった。
その中で一人の女性ユリア・ジュエが星の記憶と契約し、障気に支配された大地から人々を救い出した。そして、星の未来を詠み繁栄の未来を残した。
しかし、彼女の力を畏れた人々は彼女を裏切った・・・・。
『幸せになって欲しかっただけよ』
ユリアは静かに微笑み、悲しげに月を見上げた。
『ただそれだけ・・・・』
涙を流すことなく、それでも泣いているように見えるのは彼女の未来を知っているからなのだろうか。
『ユリアは・・・幸せにならなくていいの・・・?』
彼女の顔がもっと悲しく歪む。泣き出しそうなのに涙は流れてこない。
ユリアは世界の未来を詠み、人々の幸せを願っている。それは、スコアの所為なのか、それとも彼女自身の願いなのか私には分からない。
けれど、ユリア自身の幸せはその中にない。マスターの未来が覆されない限り、ユリアは幸せになれない。
『・・・・私は、幸せだったよ。』
月を見上げる彼女の横顔に先程の悲しみはなく、その瞳は驚くほど澄んでいて、夢が解けるように姿が霞む。
『私は幸せだった。たくさんの事を知る事が出来た。フレイルにも逢えた。世界の幸せを願う事が出来た。そして、貴女にも会えたもの。とっても幸せよ。』
朧気になるユリアは笑っていた。世界の未来を、自身の未来を知ってもなお幸せだと彼女は微笑んだ。
『ユリア!!』
消えるユリアに手を伸ばすも、掴む物は何もなくて。繋ぎとめる事さえ出来ない。彼女が消えていくのを何度も見た。その度に苦しみが増していった。
『ユリア!!!』
世界を愛した彼女は、私の記憶の中で何度も消える・・・・。
「ユリア!!」
「痛っ!!!」
久しぶりに見た夢で跳ね起きると、何処かで見た事のあるような気がする顔とぶつかった。
「・・・・貴様は・・・・。」
「痛〜・・・やっと起きたか。いきなり倒れるから驚いたんだけど、何ともないか?」
ぶつかった箇所を抑えながら気安く話しかけてくる男を無視し、現状を確認するため辺りを見回す。
そこには、明らかに一般家庭ではないと分かるほど高価な物が整頓され置かれていた。
「ここは、貴様の家か?」
「うん?そうだけど・・・・宿の方が良かったか?」
「・・・・いや・・・・邪魔をした。」
「あぁ、いいよ。って何処行くんだよ!!起きたばっかだぞ!!休んでけよ。」
「構わない。時間がないのでな。」
「おい!!」
「あら?どうしたの?大声なんか出して。」
部屋から出ようとすると女の人が立ちふさがり、行き場が無くなった。私の足が止まるのを見て、後ろから安堵のため息が聞こえた。
「母上ありがとう。ほら、休まないとまた倒れるぞ。」
「離せ・・・。」
「嫌だ。休んでけって。」
捕まれた左手を振り払おうとするが、力の差が在りすぎ無駄な労力に終わる。睨みつけるが尚も引っ張る男に苛つき、右手に第七音素を込めようとした時、後ろから手を捕まれた。振り向くと険しい顔をした蒼い瞳と視線がぶつかる。ユリアとよく似たそれは、私の記憶を揺さぶる。
呼べども叫べども、彼女の未来は変わらなかった。
世界を愛し、幸せを願った彼女はその世界に殺され、残されたスコアは彼女の意志に沿わず、汚れたオリジナル達の手で自らの都合のいいように歪められた。
「離せ・・・・・。」
「嫌だ。」
「オリジナルが私に触るな!!!身勝手な愚か者どもめ!!!!」
何かが壊れたように私は叫ぶ。
「お前達など居なければ良かったんだ!!!お前達が居なければ、ユリアは死ななくてすんだ!!!あんなに苦しまなくて良かったのに!!!」
「お、おい。何言って・・・・・」
「裏切り者!!汚らわしい!!離せ!!」
「落ち着けよ!!なんなんだよ一体!!」
居なくなればいい。
オリジナルもレプリカもこの世界も。何もかも無くなってしまえばいいんだ。
「落ち着け!!!!!」
その声にびくっとからだが反応した。いつの間にか掴まれていた左手は自由になり、守るように全身が包まれていた。
「落ち着け。大丈夫だ。俺は敵じゃない。安心しろ。」
優しく撫でられる手に、温もりと懐かしさを感じた。
ユリア 貴女は幸せだと云ったけど本当に願う事は無かったのですか・・・・
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.4 )
- 日時: 2011/04/13 11:55
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第三幕 〜彼の人の祈りは〜
暴れまくる彼女を腕の中に押し込めて、何度も同じ事を諭すように呟いた。敵じゃないと伝わって欲しくて、何度も何度も。
暫くすると諦めたのか、彼女が大人しくなり俺の腕を掴んで震えていた。安心させるために背中をさするも大して効果はなく、彼女の震えは止まらない。
「大丈夫だって。此処は安全だから。落ち着け。」
出来るだけ優しく。労るように話しかける。それで恐怖を緩和してくれればいいがそんな訳もなく、彼女の震えは一層酷くなっていく。
「・・・・・ユリ・・・ア・・・・」
さっきから祈るように、懇願するかのように呟かれる名は、俺たちも聞き覚えがあった。
遙か昔、二千年前の物語り。父上と母上から聞かせれていたこの世界の真実。その中で誰よりも世界を愛した女性の名が『ユリア・ジュエ』。星の記憶と契約し、今はもう無いが預言を後の世に残した。その所為で戦いが起こったり、ローレライ教団が出来たりと世界は預言を軸とし動き始めた。人々は預言を守り、それに忠実に生きる事を美徳としていた。
しかしそれを、二千年後の世界で覆し『預言に頼らない世界』を創り出したのが英雄と讃えられる俺たちの両親。勿論、道のりは決して生易しいモノではなかったらしい。人の根本に張り付いた絶対的な信頼は簡単に消せるモノではないし、その過程の中で生み出された新たなる存在は、二十年そこそこ立った今でも常に争いの的になっている。同じ命なのにな と前に父上が悲しそうに話してくれたのを思い出す。それでも未来を創り出すために父上達は戦った。辛い事も、悲しい事も、逃げ出したい事も何度もあったらしい。それでも、未来は創り出せると信じて戦い結果は勝利した。その代償は余りにも大きかったらしいが。
そのユリアの名を祈るように呼び続ける彼女は、ローレライ教徒なのだろうか。だとしたら『どっち』の。
「・・・・・ユリアってあのユリアか?」
腕を掴む手がびくりっと反応し、固まるのが分かった。
「お前もローレライ教徒なのか?」
今の反応でそんな訳ないと思いつつも、場を持たせるため続ける。
「お前はどっちの教徒なんだ?『預言を絶対とする』連中か?それとも『未来を創り出す』方?」
「・・・・・・」
「・・・預言はあくまで選択肢だ。未来の可能性の一つ。変える意志を持てば、未来は変えられる。だから・・・・」
「・・・・それは綺麗事だろう。」
今まで腕の中で黙っていた彼女が、冷めた口調で言い放つ。
「確かに預言は絶対の未来じゃない。ユリアもそう望んでいた。幸せに成るための選択肢の一つとな。けれど実際はどうだ?オリジナル達は己の欲のために預言を利用し、何かにつけてユリアの名を利用した。」
淡々と語られるそれは、諦めと悔しさが伝わってくる。
「歪みが生じれば預言を守らなかった所為だと言ってな。自分たちの責をユリアに背負わせ続ける。そんなオリジナルが今更なんだ。破滅の預言を知った途端手のひらを裏返したように『預言を絶対とする世界は間違っている』だと?ふざけるなふざけるなふざけるな!!!自分たちの付けが回ってきたくせに!!卑怯者!!」
段々と荒げられた声は感情を隠すこともなく全てを憎んでいるように響く。後ろでその光景を見守っていた母上も悲しそうに目を逸らしたのが分かった。
「責を背負うだけの覚悟もないくせに!!勝手な理屈で勝手な理由でユリアを傷つけたのに!!!なのに・・・・どうして・・・・なんで・・・ユリア・・・・幸せだなんて・・・言ったの・・・?」
彼女は感情をぶちまけた後、力尽きたように折れにもたれ掛かった。その姿は消え入りそうな程儚く感じ、抱きしめる腕に力を込める。
「・・・・俺は、ユリアの事を何も知らない。彼女がどんな人で何を想っていたのかも分からない。けれど、優しさは分かるよ。世界の幸せを願っていたって事も。とっても強かった事も。分かる気がするんだ。」
「・・・・傲慢だ。ユリアに逢った事もないくせに・・・・・」
「それでも・・・・・世界を・・・・音素[フォニム]を感じる時に思うんだ。ユリアもきっとこの世界が大好きで守りたかったんじゃないかって。」
「・・・・・・」
「君が言うように、これは傲慢なのかもしれない。ユリアの事は本人じゃないと誰にも分からないから。この世界だって、綺麗なモノだけじゃないけど・・・・・でも、これは父上達が命を掛けて守った世界だから。俺も守りたいだけだよ。ユリアと同じように。」
俯き押し黙る彼女は何かを決めたように顔を上げ、俺と目線を合わせる。
「・・・私の名はローラン。世界の記憶とその管理者だ。」
「それって・・・・どうゆう・・」
「??・・・・認めた相手には名を名乗るのが礼儀なのであろう?」
「えっ・・・いや・・・そっちじゃなくて。」
「訳のわからん奴だ。が・・・・面白い。知りもしない事を確信めいたように話す。」
「それ褒めてんの?」
「????当たり前だが?」
「・・・・・はぁ・・・」
訳が分からんと首をかしげるローランに呆れつつも、少し興味が湧いた。
「まぁいいや。ところでローラン。」
「なんだ?」
「バチカルの観光しない?」
「カンコウ???なんだそれは?」
「へ?う〜ん・・・・色々見て回らない?ってこと何だけど。」
「・・・・面白そうだ。お前が案内してくれるのか?」
「お前じゃなくてスコールだって。案内位ならお安いご用。」
「なら行こう。この世界の事を私は知りたい。」
肯定の後に見せた顔は今までの鋭い目付きではなく、年相応な女の子の顔で。その豹変ぶりに胸が高鳴ったのは気のせいとしておく。
「そんじゃ行くか!!!」
「引っ張るな!!」
紛らわす様に手を引き走り出す。ローランの抗議の声も、母上の怒った声も無視して赤い顔と動悸がバレないよう願いながら玄関を目指し走っていった。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.5 )
- 日時: 2011/04/16 12:37
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第四章〜決意の代価〜
ローランの手を引いて玄関まで行くと、間の悪い事に厄介な二人を見つけてしまった。
「・・・彼奴らいつもなら部屋に来るのに・・・。」
舌打ちし見つからないよう柱の陰に隠れながら、どうにか二人を交わす方法を考える。俺一人なら塀を越えるとか方法はあるが、問題はローラン。幾ら俺でも女の子に壁をよじ上れなんて言えない。
「何かまずい事でもあるのか?」
状況が分からないローランは隠れている柱から顔を覗かせ、それを慌てて隠そうとした時もろ二人と目が合ってしまった。
「お兄様。何処へ行かれるつもりで?」
言い方も優しく顔も笑顔なのに何故か怖い。後ろに鬼が見えるのは気のせいですか?
「・・・リルカ・・・いや・・・えっと・・」
「何処に行かれるのですかとお聞きしているのですが。」
「あー・・ほらローランが目覚ましたからバチカルの観光にでも行こうかと。彼女此処の事よく分からないらしくてさ。」
「まぁそうでしたの。でしたら、私がご案内いたします。お兄様は今日サボった分、きっちりとなさって下さいね?」
我が妹ながら容赦ない。
言い訳を考える暇もなくローランの手を取り意気揚々と出発しようとしているリルカと自業自得だと言わんばかりに睨みをきかせているギル。そして、あれほどオリジナルに触れられるのを嫌がっていたローランは気迫に押され文句を言いたげにもリルカの為すがままとなっていた。
あぁ本当、何でこいつらが居たんだろう・・・。ため息を吐きたくなる心境をぐっと我慢し、リルカの手からローランを奪い返す。
「俺が案内を頼まれたんだよ!!」
部屋の時と同じように無理矢理引っ張り、連れて行く。ただ少し違うとすれば、二人に追いつかれないよう今度こそ全力疾走。
「お兄様!!お待ち下さい!!!」
「おいスコール!!!・・・ったく。」
リルカの停止命令もギルの呆れ声も無視。唯一耳に届いたのはローランの安堵したようなため息と二人の追いかけてくる足音。それぞれに嬉しさを覚え、自然と俺の顔は緩んだ。
「此処まで来ればいいか?」
少し上がる息を整え随分離れた距離を再確認する。
「流石に彼奴らを巻けた・・・・・」
「誰の事を言っている。」
突然現れた声に空気が凍った。
「ギル・・・・」
「ようスコール。で誰を巻いたって?」
ロニール雪山並みのブリザードを利かせ、低い地鳴りのような声の主は俺の知るところ一人だけ。嫌な予感と共に振り返ると神々しい程の笑顔を見せたギルと明らかに激怒しているリルカ。
「ギルフォード様・・・・怒っていらっしゃいますか?」
「おお馬鹿。よく分かったな。」
そりゃあ分かるよな。何年幼馴染みやってると思ってんだ。てか、笑顔で剣抜かれたら誰だって分かるだろ?
「で?何か言う事は?」
死神を思わす黒い笑顔。これが出たら最終宣告。言い訳も何も通用しない事は長い付き合いで知り尽くしてる訳で。ここは大人しく観念した方が身のため。
「勝手してすいません。」
「分かってんなら少しは考えて行動しろ!!!」
ついに落ちた雷に抗う術など俺は持ち合わせていない。そこからくどくどと説教が始まる。
ちらっと横目で見てみるとローランがリルカの押しに耐えきれなくなっているのが見えた。焦りながら俺に助けを求める彼女の年相応な姿に笑いを堪えきれず、それがギルの雷を促進させてしまった。
当初の予定とは違いに違ってしまったが、何とかエレベータに乗り込み着いた先はバチカルの商店街。此処には多くの店が軒を連ね、有りと有らゆる品物が売買されている。
「ローランは何が好きなんですか?」
「すき?・・・特には無い・・・と思う・・・」
「あら、そうなんですか?でしたら、あれなんかいかがかしら?」
いつの間にか仲良くなっている二人の後を着いていく。一見すれば仲の良い友達同士の買い物なんだろうけど、俺から見たらリルカの雰囲気にローランが押されているようにしか見えない。まぁ、険悪でもないから良いけど。
「・・・彼女は何者なんだ?」
「ん?」
隣を歩いているギルへ顔を向ければ、いつになく真剣そうに二人から目を離さないで居る。
「何者って・・・普通の女の子だろ?」
「普通の子が刃物振り回す男に近づくか?しかも女性なら尚更だ。」
「それは・・・そうだけど・・・」
「俺は、彼女が普通の人とは違う存在なんじゃないかと思う。オリジナルとかレプリカとかじゃない。もっと根本的に違う・・・・。彼女ははお前に何か言ってなかったか?」
ギルの直感は多分当たってる。ローランが目覚めてからの言動から判断しても、あいつは俺たちと違う存在だと思う。けど、これを言うのは抵抗がある。それが何故だかは分からないけど嫌だ。
「知らねぇ。何でも良いじゃん。」
「良くないから言ってるんだ。何者かも分からなくて、もし彼女がこの国にとって害なす存在だとしたらどうする?国民を危険にさらす事になるんだぞ。」
「・・・・あいつはあいつだ。何者なのかなんてどうでも良いだろ?」
「スコール!!」
「例えあいつが人じゃなくて別の存在だとしても、害になるなんて事はねぇだろ?現に魔物だって無闇に人を襲ったりしない。」
「そうだが・・・」
「なら問題ないだろ。それに見た限りじゃ無闇矢鱈に危害を加えようともしてないみたいだし。」
「もし、彼女が危険な存在だと判明して危害を与えるようになったらどうするんだ?」
「その時は・・・・・」
俺は少し躊躇する。答えは決まっているはずなのに、それを言葉に出すのが怖い。けど・・・・
「その時は俺が止めるよ。どんな事をしても・・・」
「・・・・やっぱりお前は馬鹿だ。」
納得したのかギルはそれ以降この話題を振らなくなった。
リルカと共に歩くローランは何処から見ても少女にしか見えない。
もしこの国に世界に危害を加えるなら・・・この平穏を壊すなら・・・俺は、誰だって何だって倒してみせるさ。
握りしめた手には、薄らと血が滲んでいた。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.6 )
- 日時: 2011/04/24 17:43
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第五章〜久方の再会〜
商店街を進むうちに何故だかざわざわと騒がしくなっている。いや、普段から騒がしい場所ではあったが今日は一段と人が多く、特に女性の姿がよく見られる。祭りなどの予定も入っていない午後の時間帯。不思議に思いながら足を速めると、既にリルカとローランが騒ぎの渦中におり何やら楽しそうに話し込んでいるのが見えた。
「何かあったのかな?」
当然その事に気が付いていたギルと歩調を合わせるようにリルカ達の元に行くと、見慣れた青の制服を着たマルクト軍人と金髪の気品漂う同国の貴族が片方は完璧なまでに、片方は引きつりつつも穏やかに笑みを浮かべ迫り寄る群衆達をあしらっていたが、俺たちに気が付くと輪をかき分けるように抜けだしてくる。突然の登場に少しばかり驚いた。
「ご無沙汰しておりました。スコール様にギルフォード様。お変わりなく嬉しく存じます。」
「やめて下さいジェイドさん。あなた方は父上の友人で俺たちの師でもあるんですから。いつも通りで構いません。」
「おや?そうですか。ではお言葉に甘えて。久しぶりですね二人とも。」
がらりと変わった口調に苦笑しつつも懐かしい人達に自然と顔がほころぶ。ギルも会えて嬉しいのかいつもの演技ではない本当の笑顔を浮かべていた。と、隣で様子を見ていたガイさんが大きなため息を吐いた。
「旦那は相変わらずだな。」
「格上の方に対しての礼儀ですよ。一応彼らは王族ですからね。」
「食えない人だよ本当にさ。」
一応の言葉に引っかかりを覚えるがいつもの事だ。この人の言動をいちいち気にしていたら埒があかない。ギルも俺も図でに学習済みだ。
「所でどうしたんですかお二人とも。予定では明日のはずでしたが。」
そう二人は数日後に開かれるパーティ出席のため元々バチカルに来る予定ではあった。が、それは明日のはずで。早めに来ると言った連絡も受けていない。だから、驚いたのだが。
「運良くベルケンドに行く仕事がありましてね。ついでですからそのまま休暇を頂いたんですよ。連絡する暇がなかったのですが、まぁいいかなと。」
「よく言うぜ。最近立て続けに仕事を増やされたもんだから半ば陛下を脅してたくせにさ。」
「ガイ〜帰ったらブウサギの仕事増やすよう陛下に進言しますよ?」
「う・・・・嫌な奴だよ旦那は・・・・・」
「冗談はさておき、彼女は誰です?見ない顔ですが。」
何処か黒く感じるジェイドさんは項垂れるガイさんを無視し、リルカと共に買い物を再会しているローランへと話を変えた。
向ける目は好奇のような何かを察したような複雑そうに細められている。一瞬悟られたかと動揺したがバレはしなかったと思う。いや、気付いていない風に装っていたのかもしれないが、それを見破れる技を俺は持ち合わせていない。
「彼女はローランという名前だそうですよ。スコールが助けた女性です。」
「助けた?彼女もレプリカなのですか?」
「さぁ。口ぶりからはその可能性もありますが、彼女は自身の事をあまり話さなかったそうですから。」
俺が色々考えているうちにさらりとギルが説明するが、彼女の事を話していないので予測の言葉しか言わない。まぁ俺も詳しくは知らないから聞かれても困るんだけど。
「そうですか・・・・・」
「なんだ?何か気になる事でもあるのかジェイド?」
「いえ。何でもありませんよ。」
ジェイドさんが言葉を濁す時は確信が持てない時だ。しかしそれは予測の域を出ないと言うだけで、証拠さえ揃えば大抵の事は当たっている。特に悪い予想は憎らしい程当たるらしいが、外れた例がない訳ではないので考えすぎるのは好ましくないと教わったが。
慣れた手つきで眼鏡を戻した時には垣間見えた真剣な表情ではない、いつもの飄々とした笑顔に戻っていた。
「兎にも角にも疲れましたねぇ〜。ファブレ家のお屋敷に向かいましょうか。」
「あんた・・・・疲れる程動いてにだろ・・・・」
「いえいえ。年を取るとあの程度でも疲れるのですよ。ごほごほ・・・」
「嘘吐け・・・・」
「まあまあ、いいじゃないですか。では、スコール取り次ぎをお願いしますね。」
「分かりました。おいリルカ!!今日は一旦帰るぞ!!」
毎度の事ながらも苦笑してしまう遣り取りを終え、買い物に集中しているリルカ達を呼び戻しエレベータへと向かう。
途中安堵したように息を吐くローランにリルカの行為を謝罪すると、少し照れながら『かまわない』と呟くのを聞いて隠すように笑った。
「ただいま。母上。」
「お帰りなさい四人とも。それに、いらっしゃい大佐、ガイも。」
出迎えてくれた母上は、勝手に出て行った事を怒るでもなくただ静かに微笑んでいた。
「久しぶりですねティア。元気そうでなによりですよ。」
「半年ぶりですか?大佐達も変わりなく。ルークも会いたがっていました。使いをお願いしたので、もうすぐ帰ってきますよ。アッシュ達と一緒に。」
「あの二人も変わりない様子で。」
「えぇ。確か定例会議でナタリアと会ったとか聞きました。」
「はい。あの会議は大変でした。堅物の上層部をどうしようかとナタリア達と頭を痛めましてね。」
「レプリカ問題。予言の扱い。ローレライ教団の在り方。あの旅を終えてから時間は経っているのに問題は山積みですね。」
「それが私達世界を変えた者の義務ですよ。予言を否定し不確かな未来の元で私達は生きる事を選んだ。その結果に生じた問題なら私達は投げ出す事を許されません。」
「そうですね。この世界を選んだのですから。」
穏やかな雰囲気の流れる中慌ただしく玄関の扉が開き、父上達が肩で息をしながら笑顔を浮かべ帰ってきた。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.7 )
- 日時: 2011/05/05 00:10
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第六幕〜穏やかな休息〜
一通りの再会を喜んだ父上達は場所を応接間に移し、近況報告から始まった談話が何時しか上層部の愚痴に変わっている。
「全く信じられない程の頭の固さですわ。日々移ろい変わるはずの世界を受け入れず、この期に及んで予言だのと仰る方ばかりで!!」
「二千年も続いていた習慣を十年や二十年で覆せる訳無いと覚悟はしたつもりだったけど・・・・実際これ程厄介になるとは思ってなかったよ。旅の途中にヴァン師匠の事も知れ渡っていたから、理解はあると思ったんだけどな・・・・」
「ルークの言う事も分かるけどな、実際難しいもんさ。お偉い方も頭では分かってはいる筈なんだろうけどな。」
ガイさんが苦笑いしながら用意された紅茶を飲もうとした時、ナタリア様が凄い形相でガイさんを睨みつけ、一瞬の隙をつき腕を抱きしめた。その所為でガイさんが固まりジェイドさんが呆れたようにため息を吐くのが見える。
「ガイ!!その言い方はないのではなくて!!確かに彼らも多少の理解は示しているようですが、何かある度予言だのレプリカだのと言い訳がましく仰る方々を貴方は肩を持つというのですか!!!」
「いや俺はただ、分かり合うのは時間が必要だって意味で・・・・だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!俺に触らないでくれ!!!!!」
ガイさんの絶叫が室内に響き渡る。
女性恐怖症は多少改善されてきてはいるものの完全に克服するのは難しいのか、触れられると絶叫をあげるガイさんを見るのは一度や二度じゃない。
「ナタリアそのくらいで勘弁してやれ。ガイもお前の苦労は分かっているさ。」
「そのような事言われずとも分かっておりますわ。ただ少しむかつきましたので。」
アッシュ様の制止でガイさんを話すとナタリア様は笑顔で言い放った。呆れている母上とは対照的に何だか父上は嬉しそう。
「こうしていると旅の頃を思い出すよな。」
父上が溢しす独り言を聞いた母上は少し驚いたように目を見開いたが、直ぐまた穏やかそうに目を細め笑みを浮かべる。それに釣られるようにしてナタリア様達もそれぞれ思い出したように笑顔になる。
「そうね。ガイは相変わらずアニスや大佐にからかわれて。」
「ふふふ。そうですわね。それをティアが呆れながらも仲裁に入っておりましたね。」
「懐かしいな。ルークは今より悲観的な考えしか言わなくて、よくティアに怒られてたよな。」
「なっ!!ガイ!!」
「そうですね。私も何度呆れた事か。」
「あぁ。俺も会う度苛つかせられたな。」
「ジェイド!!アッシュまで・・・・俺そんなに酷かったか・・・?」
「えぇ。それはもう。貴方ときたら本当に困った人でしたよ。」
「・・・・・そこまで言うか・・・」
ジェイドさんの一言で落胆した父上を可笑しそうに母上が笑った。少し馬鹿にしているようなのに、そこに流れる雰囲気は何処までも穏やかで優しくて。
「ふふふ。でも、貴方は変わったでしょ?」
「ティア?」
「あの旅の中で世界を見て、人と出会って、多くの事を知って。迷いながらでも貴方は変わったわ。」
「・・・そう・・・かな・・?」
「そうよ。だからこの世界が在るんでしょ?貴方が救って、私達が未来を創っていける世界が。」
見つめ合う父上と母上には最早二人しか見えていない。ジェイドさんとアッシュ様は完璧に無視しているしガイさんは呆れている。目を輝かせているナタリア様に置いては論外で、唯一この世界を壊そうとする人は今はダアトだろう。こうなったら早めに退散した方がいいかもしれない。
「父上母上。俺達部屋に戻っていますね。」
聞こえるようにある程度大きな声で言ってみると意外にも我に返った母上が少し照れながら承諾し、俺はローランを連れ部屋を出る。後ろからギルやリルカが付いてきたのも確認して。
「全く。お父様方も人の目を少しは気にして欲しいものです。」
四人で俺の部屋に集まり、リルカの第一声に俺とギルは苦笑を漏らした。ローランだけ訳が分からないというように首を傾げている。
「けどさ、父上達の仲が良い事は平和の証だろ?喧嘩してるよりはいいじゃん。」
「それは確かにそうですが・・・。場所を考えて欲しいと思います。」
「ははははは。それについては、まぁ同感だけどさ。」
ギルも同意見なのか こくと頷く。まぁ・・・そうだよな。
「なぁ。」
「ん?」
「彼奴らは何で笑っていたんだ?」
「何がって?」
今まで黙っていたローランが俺の方に身を乗り出し真顔で聞いてくる。一方聞かれた俺は質問の意味が分からず聞き返すと、少し考え込むように俯いた後真っ直ぐに俺を見据える。栗色の瞳が目の前に広がり反らせない。
「不満だったのだろ?予言を鵜呑みにしていたオリジナルが。なのに何故笑っていた?あの『聖なる焔の光』も怒る様子もなかった。レプリカが馬鹿にされたはずなのに・・・。」
「う〜ん・・・・よく分かんないけど、久しぶりに仲間に会えたからじゃないのか?怒っているよりは笑っている方が楽しいし。」
「仲間・・・?それに会うと笑うのか?楽しいのか?」
返答に困る質問だ。ギルの方を向いても助け船は出して貰えそうもない。ローランは真剣なんだし、誤魔化すのも気が引ける。
「いつも・・・って訳でもないけど、やっぱ仲間に会えるのは嬉しいし事だろ。だったら笑いたいじゃん。まぁ、無理して笑うのはよくないけどさ。」
「いつもじゃない・・・・けど、嬉しい・・・無理して笑うのはいけない事・・????」
考えに考えて出た答えは在り来たりなものだが、これ以上の回答は今の俺に出来そうにない。よく分からなかったのかローランは独り言のように何度も繰り返し呟く姿は微笑ましいが、俺の答えが更に困惑させてしまって悪い気がしてきた。
それを眺めていたギルの深いため息が木霊する。
つづく
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