二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 月下で交わる二人のオレンジ
- 日時: 2012/08/26 12:23
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: WrJpXEdQ)
募集要項>>34
皆様初めまして。二次で書くのは初でございます。
今まで一つたりとも完結した試しが無く、またしても他と掛け持ちということになります。
ということで、ここでは違う名前を使いたいと思います。
二次初挑戦のくせに二つの作品を頑張っておりまぜようとしていますが、きっと大変な事になると思います。
ここを見た人はできるだけ温かい目で見守って下さいませ。
で、一体何の二次かというと、『リボーン』と、『BLEACH』の予定です。
基本主人公たちの使う技たちは原作に忠実に行きたいと思うのですが、一体どうなることやら……
ちょいちょい勝手に考えた意味不明なのが飛びだすかもです。
二つの作品の時勢は大体、リボーンは未来から帰ってシモンが出てくる直前。
BLEACHが……こっちはまあ、大体皆が破面編で最終決戦ドンパチしてるぐらいの強さです。
オリジナルのキャラは敵ぐらいしか出てきません。
後は特に変わらないでしょう。
題名の月下は単に残月を指してるだけで物語には直接関係無いかもです。
注意書き
作者とBLEACHとリボーン嫌いな人は読まない方が良いでしょう。
荒らしは来ないでください。誤字脱字や文章の至らぬ点を言ってくれるのは大歓迎ですが。
多分ね、キャラクターが上手く使えないと思います。
ストーリーの大体の流れは決まっていますが細部が決まっていません。
尋常じゃないほど更新が遅い。
まだ作者にも面白いかどうかが分からない。
小説のルール、できるだけ守ろうとします。(ダッシュとか三点リーダとかの話です)
台本ではないです。たまに誰がどれ言ったか分かんないかも
第一章 交わる二つの世界
>>1>>3>>5>>13>>14>>18>>22>>25>>29
第二章 戸魂界<ソウル・ソサエティ>
>>30>>33>>35>>40>>57
>>48————アナザーサイド
第三章 開戦
>>58>>64>>74>>75>>76>>77>>78>>79>>81>>84
第四章 進撃
>>91
記念短編的な?
篠原鈴VS雲雀>>82
詩音&紅蓮&風花VS一護>>83
【オリキャラ達】
時空未来>>36
篠原鈴>>38
双竜詩音&双竜紅蓮>>41
鈴音風花>>51
【記録……的な?書くのは気まぐれ】
12/1 スレッドが立つ。一章がスタート
12/17 参照100超えを確認
1/15 一章完結
1/19 二章スタート
1/20 参照300
2/8 参照400
2/17 参照500
2/19 返信五十
2/23 二章完結
2/24 三章開始&参照600
3/2 参照700
3/15 参照800
3/24 参照900
4/1 三章完結
4/4 参照1000
4/19 参照1100
5/12 四章開始&参照1200
6/5 参照1300
8/25 参照1600
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
- Re: 【三章完結】月下で交わる二人のオレンジ【4/1最新話!】 ( No.82 )
- 日時: 2012/04/04 18:34
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Us9WpvjK)
- 参照: 700記念の短編その一、篠原VS雲雀
えっと、以前にアンケートを取った記念短編をようやく実施します。今回はまず、篠原鈴と雲雀さんでやってもらいます。
勝敗はこの後に及んで決まっていませんが、この二人だと完全な肉弾戦になります。
鉄扇使いとトンファー使い、正直30巻と酷似します。
あの時アーデルハイト蹴り技使ったしね……それに鈴の得意技は一応蹴り技……
まあ、本編を越えるぐらいの質にしたいと思ってます。
「で、この茶番って一体何なの?」
「さ……さあ? 私には分かりかねます……」
いきなり真っ白で何も無い空間に連れてこられた二人は、それぞれ異なった反応を取っていた。雲雀は不機嫌そうに辺りを見回している。こんな変な所に閉じ込められたのだ、多少の束縛感を感じているのだろう。束縛を嫌う風紀委員長はご機嫌斜めのご様子。それに対して篠原は、雲雀という、自分よりも年長者と二人きりになってしまい、少し委縮していた。
ちょっと冷や汗を流し、体中硬直してしまっている彼女の姿に雲雀はつまらなさそうにする。どうにも、相手にならない感覚がするのだ。これではウォーミングアップにならないだろうと思っている。
「いきなり闘えと言われても、こんな小動物とは嫌だよ。どうせなら、僕をここに閉じ込めた君が出ておいでよ」
天井に向かって誰かを挑発するが、別にそこに閉じ込めた犯人なんて居ないのだから答えは返ってこない。余計にイライラの募る雲雀に対して、年上が苦手な篠原はびくびくしていた。その様子がより一層雲雀としては我慢ならないようで、余計に機嫌を悪くする。彼が今考えているのは、武器を携帯しておいて戦意が無いだなんてどういうこと? という事だ。戦闘意欲が無いのならばそんなものを見せる必要は無い。自分のように闘いを欲する者にとっては冷やかし以外の何者でもない。だが、彼の性格上、そうであるとしても咬み殺すのだが。
肩に引っ掛けるようにしている学ランに隠していたトンファーを取り出し、両手に構えてみせた。右手の中指に付けたボンゴレリングから、巨大な雲の炎が放たれる。トンファーを紫の炎が覆い尽くし、威力を底上げする。重たい錘が圧し掛かってくるような、それでも突き刺すような矛盾したプレッシャーを、篠原は全身で感じた。間違いなくこれは、殺気。
殺気に当てられた篠原は、普段の彼女を取り戻す。一種のショック療法だ。雲雀という名の猛禽類相手に、竦み上がっていた一羽の小鳥から、もう一匹の猛禽類として立ち直る。目には、歴戦の勇士としての、それなりの眼光が宿った。それを見届けた雲雀は顔つきを変えた。
「へえ……何だ、できるじゃないか。予想外だったよ」
「それは良かったな。あのまま油断してたら、アンタ私に負けてたぜ」
「ふうん、それは何の冗談かな?」
未だに余裕を持ち続ける雲雀の話している途中で、篠原は攻撃に転じるために、一歩踏み込む。しかし、篠原が動いても、特に雲雀から仕掛けてくる空気が見えなかった。
先手を取ったので、意気揚々とした篠原は、そのまま靴と鉄扇に炎を灯す。上る朝日のように鮮やかで、純度の高いオレンジの炎。右手に持った扇を真っ直ぐ縦に振りおろす。持ちての反対側の、刃になっている部分から、纏われた炎が放たれた。弧を描くような形状のその炎は、燃やし切り裂く炎の刃。触れたらただでは済まない。
瞬間、ボンゴレリングが一層強い炎を放った。際限なく溢れ続ける雲属性の炎は、洪水のようだった。篠原の炎の斬撃を真正面から受け止めて、押し返す。鋭利で強力な斬撃でも、圧倒的な質量の前では歯が立たなかった。
「嘘だろ……動かずに対応するなんて……!」
「この程度なのかい? やはり君はただの……小動物のようだね」
一瞬、学ランがはためいた。学ランの中で待機させていた腕をその黒衣の中から登場させたのだ。今度こそ、本格的に攻撃が始まると言う事。雲雀風に説明を入れるとするならば、咬み殺し始めるということ。
攻撃の手を、決して休めてはいけない。そのように直感した篠原は駆け出した。受け身になった瞬間に倒されることは納得だ。相手は雲雀、恐ろしさは納得している。
すぐそこまで迫った彼が、向かって左側のトンファーを後ろに向かって引いた。攻撃直前の予備動作、防御用の炎を左手の鉄扇に集中させて右手の鉄扇を一閃しようとした時、視界にトンファーが飛び込んできた。最初の大仰なものは囮で、反対側のトンファーが本命だったようだ。
安直に左側の防御を厚くしてしまったことを後悔しながらも、身を屈める。後ろの方の髪の毛を掠められたが、打撃は受けていない。良い調子だと思ったが、そうでもなかった。最初に囮として使った雲雀にとって右手での攻撃は続いていたのだ。上から下に、地面に垂直に叩き下ろされる無情な一撃に、咄嗟に両手で防御する。炎最大の鉄扇をも盾にしたが、難なくその程度の壁は打ち砕き、トンファーを篠原ごと地面に叩きつけた。
「あっぶねぇー……」
「……! 凌いだんだ、やるね」
ほんの刹那の話だ、回避不可能であると判断した篠原は、反射的に傾けた状態の鉄扇を壁にした。側面をレールのように伝わったトンファーは、そのまま受け流されて地面を割った。変に真っ白い空間だからすぐに修正されたが。
次々と、想像以上の実力を発揮する篠原に、より強い興味を雲雀は抱き始めた。この目の前の少女は最後にはどれほどの力を隠しもっているのか、早く暴いてみたい気分。目の色がより、好戦的なものに変わる。
「君の牙の長さ……測り損ねたみたいだ。今からちゃんと、測って見ようかな?」
「ご遠慮いただく……ことにします」
攻撃を逸らしたと言っても、まだすぐそこには雲雀が居る。体勢的に両手を塞がれているも同然、正直ピンチだ。しかし篠原の一番の武器は、鉄扇ではない。状態は取り押さえられているが、下半身に注意は向いていない。しかし殺気を出せば確実に気付かれる。直接攻撃するのを諦めた篠原は、地面をおもいっきり蹴りつけた。
先程雲雀がトンファーで叩きつけたのと同等、もしくはそれ以上の力で地面を蹴ったので、反作用の力を貰う。それこそ、人二人を宙に浮かせるほどの。突然空気中に浮き上がり、ほんの少しの動揺を垣間見せた雲雀は飛び退いた。激しい運動に学ランははためくも、肩からはずり落ちない。急速に後ろに飛んだので、バランスを崩した雲雀が体勢を立て直し、前を見据えたその瞬間、篠原の姿は無くなっていた。
手元のリングの炎を薄く広げる。リングの最も自分自身に近い位置の部分の炎が揺らめいた。つまりは、背後を取られた。それでも雲雀が慌てることはない。それどころか、またしても予想を上回る実力に嬉々としながら高速回転させたままのトンファーを、後方に一閃した。紫色の横向きの竜巻が扇型の軌跡を残して床を削る。予想だにしない反撃に篠原は判断を送らせる。まさか開匣していない雲雀が遠距離攻撃をしかけてくるとは、思いもしなかったからだ。
そして、リングの炎をレーダー代わりに使う闘い方も知らなかった彼女は、なぜ背後を取ったのがばれたのかも分からなかった。回避がちょっと遅れただけなのに、雲属性の炎の竜巻は、頬の辺りの皮を掠めた。思わず顔をしかめてしまうぐらいの威力。
「何で……後ろにいるって……」
「炎を使えば、できる話さ」
背中を向けたまま、首だけ回して右半分の横顔で彼は答えた。右目から放たれる、狂気に染まった狂喜が、より一層篠原の感じる悪寒を強くした。まるで喉元に、切先を突きつけられているような。相手の持つ武器は、鋭利な刃物ではなく、鈍器だと言うのに。
雲雀を振り切れるスピードを出せるか、はっきり言って危ういが、正気を見い出すとすればとすればその一点しか無い。沢田のような大空の炎の超加速で対応するしかない。靴に灯される炎がより一層強力なものに変わっていく。
全力で、彼女は足元を蹴りつけた。走るというよりも、地面に押し返してもらうように、駆けるのではなく翔ける。空中では方向転換が取りづらく、単調で直線的な一撃をあっさりと雲雀は回避する。だが、これは推測通り。方向転換には靴ではなく、扇を用いる。開いた鉄扇を団扇のように、つまりは本来の扇としての機能を働かせることで、自分の背後に気流を作りだす。それに後押しされてもう一度雲雀に向かう。余裕丸出しだった雲雀がこれに対応するのは相当遅れ、気付いた時には会費は不可能。両手のトンファーを壁にして防ぐも、篠原の脚力にあっさりとトンファーは吹き飛んだ。
「くっ……まさかここまでとはね」
「もうあんたに武器は無い。次でとどめ……」
「戦闘終了、とりあえずお前らもう引っ込んでろ」
突如乱入してきたのは、死覇装を着た黒崎一護。戦闘を楽しんでいた最中、邪魔をされた風紀委員長は気分を害する。
「邪魔しないで。君を咬み殺すよ」
「武器弾かれた時点でお前の負けなんだよ。次は俺達の番らしいから、退いててくれ」
「そんな理由で、僕が納得すると思ってるの?」
「分かった分かった。脇で楽しんでてくれ。真ん中を譲ってくれ」
「……仕方ないね。でも、一つ条件があるよ」
「何だ? 言ってみろ」
「君を後で、咬み殺す」
数時間後、篠原との勝負が終わった雲雀は、死神状態の一護に敗北し、余計拗ねてしまったのは別の話。
篠原VS雲雀はここで決着です。一護理論では篠原の勝ち、実質引き分けです。
次回は一護VS双竜姉弟&鈴音風花です。
ていうか本当に1000に到達しました、いつも読んでいただきありがとうございます。
そういえばですけど、今日リボーンの38巻発売日らしいですね。
俺? ……買いました。
- Re: 【短編】月下で交わる二人のオレンジ【雲雀VS篠原鈴】 ( No.83 )
- 日時: 2012/05/02 21:40
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 91QMlNea)
- 参照: 700記念の短編その二、一護VS双竜&風花
「まずは、説明だ。何だかよく分かんねえけど、とりあえず三対一で闘わないといけないらしい」
「それで……本編と違って霊圧と炎圧で普通に闘えるんですよね?」
詩音の出した問いかけに、そうだと肯定して一護は頷く。腕組みをして、悠々としているその姿には、一切の緊張感が無かった。
「で、BLEACHとリボーンじゃ、キャラの強さが段違いだってことで……」
「ハンデとして一護さんは虚化禁止、でしたよね?」
肯定の意を示すために、もう一度一護は頷く。卍解だけでもかなりの実力差だが、三対一ならば多少は埋まるだろう。(というか、作者がそうしてみせます)それぞれがそれぞれの剣を抜き、身構える。一護は刃と柄しか無い“残月”という名の大刀。詩音は“アイスソード”の名を持つ、すらりと細長く、青色に透き通った太刀。同様に、赤く透き通った剣を紅蓮が構えている。最後に、半透明な翡翠色の二枚の刃を両手に持つ、鈴音風花。
もうこれ以上の説明の言葉はいらない。そう言いたげな四人は好戦的な表情を取った。その場に立ち込める異様な雰囲気は、殺気に極めて酷似していた。だが、そこまで刺々しくない。ゾッとするような、押し潰されそうな閉塞感にも似たプレッシャー。完全に目の前の戦闘に集中しきっている当の本人たちは平気そうな表情だが、もし仮に周りに人が居たとしたら、その重圧に気圧され、最悪気絶するだろう。それほどに、その空間に威圧感が立ち込めている。
脳髄を焦がしてしまうような緊張感が支配する中、最初に動いたのは三人組だった。三対一という、数的な利を生かすために、双竜姉弟が駆け出した。風花を今の場所に待機させ、詩音は左側、紅蓮が右側に展開する。周りから一気に畳もうという戦術だ。真っ向から適当に突っ込んで勝てる敵ではない。
各々の剣に炎を灯し、自分自身の剣技の型をいきなり見せつける。風花の双剣の周囲で渦巻く大気が鋭利な風を生み出し、風花の二本の刃をコーティングする。詩音の蒼い剣にはうっすらと、真っ白な霜が張り付いていた。紅蓮の握りしめる太刀からは、夕陽のように真っ赤な炎が煌々と燃えている。
迫りくる三属性の攻撃、それすらも一護はものともしなかった。ただ、ほんの一瞬の硬直だけでどう対応するのか瞬時に思い浮かべる。三方向から迫りくるというなら、三方向同時に薙ぎ払えば良い。つまりは全方向同時攻撃。
その判断は間違っていないと断定した一護は、一気に左足を軸にして開転し始める。ただ、それだけのモーションで、突風が吹き荒れる。残月の刃の部分が強い光を上げて輝いた。
「月牙天衝……」
一護は、丁度一回転したその瞬間に、一気に残月を振り抜いた。一護が大剣を振るったその軌跡をなぞり、斬撃が肥大化する。一護の霊圧を乗せた霊圧は、水平に、放射状に一気に放出される。気付いた時には、もうすでに三人の目と鼻の先に、光の剣戟は迫っていた。
風、氷、炎を纏った、手元の剣で三人とも防御を試みるが、あっさりとその剣圧に吹き飛ばされる。ただ、その死ぬ気の炎のおかげで威力は軽減され、致命傷までには至らなかった。ただ、精神的には大打撃だ。
それほど本腰を入れた攻撃ではなかったとは言え、明らかに有利な三人同時攻撃をあっさりと防がれたのだ。しかも、奥の手である“卍解”を使うことも無しに。
それでこそ、やりがいがあると感じた紅蓮は、好戦的に笑った。それなりに覚悟が、より強固に踏み固められた彼女の剣には、今まで以上に強力な炎が燃え盛った。
「やってやろうじゃねえか。行くぜ、詩音」
「了解です、姉さん」
「分かった、私も……」
紅蓮の一言を皮切りに、詩音と風花の刀に点いた炎も巨大化する。その刀身に収まりきらぬほどの死ぬ気の炎は漏れ出し、足元へと流れる。地平から天へと昇るその姿は、まるで三人の闘志のように映った。
「……気持ちは折れてねえんだな。そうこなくっちゃ面白くねえ」
包帯のような紐でグルグルに巻かれた柄を握り締めて一護は笑ってみせた。そして、切先を自分の真正面の方向に向けてみせた。右手だけで剣を支え、その右手を左手で支えている。
この体勢は、“あの状態”へと移行する合図。
「卍……解……!」
爆発するようにして霊圧は、一護の中に収束される。元々の質が高すぎる一護の霊圧が高密度に集中されて、それはそれは凄まじい濃度のエネルギーが構築される。爆炎が晴れたそこには、死覇装の様子が少し変わった一護が、万字型の鍔を持った漆黒の長刀を持っていた。今、一護が発するオーラは、何物をも塗りつぶす、黒。
「…………天鎖残月」
「出やがった……っ!」
その、一本の黒刀に向かって顔をしかめて紅蓮は毒づいた。こちらもそれなりに体勢を立て直したつもりだが、それでも情勢は悪化しただろう。卍解とは、普通の、隊長格の死神の切り札なのだから。そんなものが一護の手の中に握られている、この状況を楽観的に見ることのできる人間を連れて来て欲しいと、切に願った。まあ、一部の隊長は逆に歓喜しそうなものだが。
しかし、それでも自分たちには絶望でしかなく、より一層勝利へは遠のく一方だとも紅蓮は分かっていた。彼女の、みため幼い弟も、二人の親友である風花も、しれは理解していた。気を抜いたその瞬間が命取りだと、頭の中で何度も何度も復唱する。
だが、気持ちを落ち着かせるよりも遥かに速く、恐るべき速力で一護の姿は消えた。天鎖残月は、始解状態でのおそるべき強度に拍車をかけた強靭さに加え、使用者に並々ならぬ超速戦闘を提供する。意識を集中し、どこに一護が飛んだのか探そうとする三人、その中で詩音がただ一人冷や汗を浮かべる。
ちょっと出遅れただけの話なのに、彼の目の、ほんの数センチ先には真っ黒な刃の先端が突きつけられていた。なんとも形容しがたい恐怖が彼の脳裏を駆け巡るのと共に、脳髄の奥深くに冷たさが突き抜ける。それとは対照的に、冷静さは一気に燃え上がり、焦燥だけが煌々と、冷静の欠片の消し墨みたいに、そこに残っていた。
「——————————!」
漏れ出ていた雨の炎が彼の致命傷になりそうなピンチを排除した。鎮静の炎に当てられた一護の動きが、ほんの一瞬だけとてもゆったりとしたものになった。その偶然にホッとするも、長続きする訳がないのだからと、瞬時に飛び退く。その、飛び退こうとした瞬間に詩音の頬を黒い鍔が触れた。その前に、刃も触れていたらしく。一閃が、血で一本の赤い線を、詩音の頬に刻んだ。
仕留め損ねたのをすぐさま判断した一護は、また高速で移動し始めた。またかと思いながらも考える。今、このやり方が成功したのだからもう一度してやればいいだけの話なのだと。
隣を見ると、紅蓮は普段しないような闘い方をしていた。晴れの活性の炎で自分自身の命を活性化していた。そして、風花は片目に埋め込まれた義眼の石から炎を灯し、体中を硬化させていた。それと同様に、相手の動きを止める用の雨の炎を詩音も展開した。
「月牙天衝」
だが、それらの行動も全て無駄となる。どれほど体を活性化させて追いつこうとしても、一護を鈍足化させようと思っても、全くもって成功しない。さっきの不意に起きたあれ以外、一度たりとも鎮静化に成功していない。しかも、こちらから手を出そうとする前に、何度も月牙天衝を放たれて退かざるを得ないのだ。
名目上、一護も全力で闘っているのだろうが、それでも書くが違っていた。事実、虚化の制限された状態での勝負である上に、明らかに詩音たちは防戦一方で手も足も出ていなかった。
これでは明らかで、なおかつただのリンチだと気付いた一護は決断した、終わらせようと。
それが、今ポツリと呟いた月牙天衝である。どす黒い霊圧が、細い天鎖残月には留まりきらなかったようで、家事の現場の黒炎のように漏れ出していた。迸る凄まじい霊力にぞっとして顔を青ざめるも三人は最後の覚悟を決めた。どうせ終わるなら全力を出しつくそうと。
「じゃ、皆……行くってことで良いよな」
「了解です、姉さん」
「分かったわ、紅蓮」
サポートや防御に回していた全ての死ぬ気の炎を問う剣の方に集中させた。向こうが見えるほどに薄く透き通った刃が、炎に当てられて美しく煌めいている。それを確かめた三人は、紅蓮、風花、詩音の順に駆け出した。
「焦土龍帝」
「碧蝶の舞」
「凍土白帝」
赤、緑、青の光線のような突進が突っ込んでくるのを、なんとも思っていないのか一護は、自分の刀だけに集中していた。目を閉じて、天鎖残月に霊圧を残さずに注ぎ込むようにして、開眼したその瞬間に、空間中を真っ黒な斬撃が埋め尽くして行った————。
勝敗は言わずとも分かったでしょう。
それにしても短編書くのに一カ月以上かかったのかな……
まあ、今度から四勝書いていくんでそっちもよろしくです、では!
- Re: 【短編完結】月下で交わる二人のオレンジ【もうすぐ四章】 ( No.84 )
- 日時: 2012/05/18 20:20
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OYJCn7rx)
「……何かあったのか?」
憂いを湛えた表情で、ラス・ノーチェスの中に作られた宇木達が作った新たな住居の目の前に、少女が立っていた。水色のローブを羽織って、手には水晶の玉を持っている。そして、悲しそうな目で噴水から水が飛び散る様を眺めている。
その後ろ姿を見て、灰色の毛皮のコートを着た、初老の男が彼女に話しかけた。右目には眼帯、腰に巻いているベルトのホルダーには、二町の拳銃がはまっている。しかし、弾薬らしき面影はどこにもない。
彼の声に反応して、全身をすっぽりと覆い隠しているローブをはためかせて少女はゆっくりと振り向いた。その時に、声をかけた男は気付いた。彼女が泣いていることに。
「……双竜さんたちが捕まったの」
「……本当かよ」
「水晶に映ったから、本当よ」
胡散臭そうな目つきで、毛皮の男は眼帯のついていない左目で彼女の目をじっと見た。どうにも、嘘を吐いている気配は一切無い。深い深い溜め息を、一回だけ吐き出した後に、天井を見上げた。そして、かつてはここを取り仕切っていた一人だということを思い返し、自嘲交じりの笑いを浮かべた。
この男は、何が起きたのかはあまりよく理解できていなかった。正確には、全く教えてもらえていないのだが、彼の持つ洞察力で多少のことを悟っていた。
この男は過去に、大きな戦で命を落としている。二刀流の、似たような年頃の男の死神の手によって。そして、どうやったのかは知らないが、宇木という男の持っている力で、復活させられた。しかし、かつて十刃に身を連ね、上位の実力を持っていた過去は見る影もなく、今の彼には一切の霊圧が無かった。
そして、つい先日の話だ、ここの連中に合流しろと命令されるがままに従った。命令を聞くべき相手であった藍染がいなくなったことは目を覚ましてすぐに分かっていた。よって、忠義を尽くす相手は生き返らせてくれた男に変わったのだ、宇木了平に。
「えっと、あんたの名前って、何だったっけ?」
「コバルト。……コバルト・マーキュリー」
相変わらず彼女の頬を伝う涙が、天空のように澄んだ青色をしていた。髪の毛はオレンジ色で、手には同じような色合いの指輪をつけている。整った顔立ちは、日本人のものではなく、ヨーロッパ系だった。
「あなたの名前が……二つ見える。どっちが、本当の名前なの?」
「どっちだろうな、俺にも分からん。とりあえずは二人分両方残したいから……」
少し口を塞いで考えた後に、すぐに答えが出たのか、一拍の後にもう一度口は開かれた。
「二つに一つだ。“スターク・ジンジャーバック”か“コヨーテ・リリネット”かの」
「前者の方が、良いと思うわよ。慣れない名前は実力を抑制してしまう。言霊の力は嘗めない方が良い。鬼道の詠唱も、斬魄刀の名前だってそう」
「そうだな、スタークの方がしっくりくる」
ベルトに装着したホルダーから銃を取り出し、感触を確かめるように二回ほど宙に放って、受け止める動作を繰り返した。そして最後に、虚空に向け、引き金を引いた。紫色の一筋の閃光が天に線を描いた。
「無限装填<メトラジェッタ>」
彼の表情を、何だか陰鬱とした感情を晴らしたいがために、空へと八つ当たりをしているようにコバルトは捉えた。水晶玉の向こうには、炎を灯したグローブを手にする少年が一人。
「炎圧組が一気に七人まで減っちゃったわね」
「心配いらねえだろ。俺とあの“元ジジイ”が居れば」
「自信満々ね」
たしなめるように彼女がそう言うと、スタークは肩をすくめてみせた。何しろ、彼は最初からこの、“紫色の炎を操る人間の体”に慣れ切ってしまっていた。
同様に、彼の旧知の知り合いの“元ジジイ”の場合、“黄色い炎を操る人間の体”に完全に体が定着した、そういうところだ。
「ハリベルがいたらもっと丁度良かったんだが、どうにもあいつは死んじゃあいなかったみたいだしな」
「良いことじゃない。でも、正直そんなの今は関係無いわ。誰が味方かなど、関係の無い話」
ローブの中をまさぐった彼女は、真っ黒に塗りつぶされたおどろおどろしい匣状のものを取り出した。
「……何だそれは?」
「災厄の匣<パンドラ・ボックス>って読んでいたわ。一時的な霊圧が手に入れられるけど、使い捨てな上に五分で効果が切れる」
その匣は、情報として、リングの炎を動力として動く匣兵器を、画像として見た事はあったが、それと瓜二つ。唯一の相違点は、リングの宝玉を差し込む穴がないこと。
「これは、必要な時に握りつぶして使うらしいわ。ただ、これは貴方専用のものらしい」
そう言って、まるで汚物を扱うかのように、コバルトはそれを地面に転がした。
「気を付けて。それを使うと、貴方は二度目の死に一歩近づく」
「虚になる時にもう一回死んでいる。何かあったら三度目の死だ」
興味深そうな顔色でそれを拾い上げた彼は冗談交じりにそれを大事にしまいこんだ。
「弔い合戦ってガラじゃねえんだが……」
出動は近いよな?とスタークは占い師の彼女に訊いてみた。
「ええ、遅くとも明日ね。新月が見えるわ」
やれやれと、二人は溜め息を吐いてそれぞれ別の方向へと歩いていった。
_____
「離せ……縄をほどけぇっ!」
「うるせえ。負けたんならじたばたせずにすっ込んでろ」
市街地に攻め入ってきた中で、最初に目を覚ましたのは最初に決着のついた時空未来だった。武器の二本の剣を奪われ、幻覚の縄で縛られているので、もう反抗のしようがない。出来ることと言えば、喚くことと許しを請うことぐらいだ。まあ、彼女の性格からしてそれはないのだが。
「五月蠅い! あなたみたいな“口だけ右腕”じゃなくて最強の守護者に負けたんだ! あなた相手にだったら負けてないわよ!」
「てめぇマジでぶっ飛ばすぞ……」
いくら敗戦し、不利な状況下に置かれているといっても、決して時空未来は持ち前の暴言を緩めなかった。緩めるどころか、負け惜しみと相まって逆に強力になっている。一応は勝者側に立っているのに、怒りのあまり獄寺の額に青筋が浮かんだ。
だが、その睨むような目に、彼女は一切の恐怖や焦りを感じなかった。強気なのがアイデンティティだとか、そういうのは関係無く、雲雀の殺気に戦闘中はあてられていたのだ。ただのチンピラにしか見えない獄寺など恐るるに足らず、その態度は明白だった。
その後もギャアギャアと二人は言い争いを繰り広げていたが、他の者はまだ起きる気配が無かった。これだけ五月蠅いのに寝ていられるとはと、少々沢田は感嘆としていた。
「ていうかお前ら何者なんだ? リング持ってないのに炎使うしさ」
能天気、そして満面の笑みで山本は彼女に問いかけた。ずっと、彼が疑問に思っていた事だ。彼ら全員は、自らの持つ剣や左目に埋め込んだ義眼なんかに炎を灯しているようだが、リングでなくともそれができるのが驚きだった。
そこで、得意げになった時空未来は説明してやろうと、一旦は口を開いたのだが、すぐに口を閉じた。
「そっちが一つ質問に答えてくれたら教えてあげる」
「ああ? てめえ今の立場分かってんのか?」
「落ちつけ獄寺。良いぜ、何だ?」
ふざけてんのかと、大声で喚き続ける獄寺を片手で後ろに押しやって、山本が続きを促した。ボスである沢田は、成り行きを見守っている。
「あなた達は……死神たちに、炎のことをどこまで詳しく伝えた?」
「うーん? 武器ってことぐらいかな?」
「そうだな、属性の説明をしている暇なんてなかった」
「そう……」
気のない返事の向こう側、心の奥底で彼女がそっとほくそ笑んでるのが、沢田には直感的に理解できた。なぜなら、目を落として残念そうにしている割には、目の色そのものが死んではいないからだ。
どうしたものかと彼が考えている間に、時空は代償として自分の持っている情報を語りだした。
「リングの宝玉の原石、それが武器の中に埋まってるの。後は、あなたの時雨金時と同じ原理よ」
「なるほどな」
「……今あなた達、襲撃を食い止められてラッキーって思ってる?」
長い長い沈黙の続いた後に、静寂を斬り裂くように、ポツリと時空は話題を斬りだした。その声の中には、やや後ろめたい感情があるように思えた。屈辱感と、失敗に対する懺悔の念。
「まあ、そうだけど……。誰かが言ってたけど、目的はボンゴレリングなんでしょう? それなら護りきったし」
「確かに目的はそうよ、第一のね」
第一の目的が、リングの奪取、その衝撃の事実にいち早く気付いたリボーンは静かに驚きの色を示した。どういうことかと、少々疑念を差し挟んで、目と目を合わせてじっと見つめてみたが、嘘を吐いている気配は無かった。
「この作戦が失敗に終わりそうならば、この機に乗じて戸魂界に霊圧組を潜入させるのが、第二の目的。あなた達の足止めが私達の、本来実行されるべきではない役目ね」
「なんと、負けても勝っても目標を達成ということか?」
「まあね、同じ了平でもこっちの了平は頭の回転が悪いようね。すでに、向こうは戦火にさらされてるはずよ」
最後に一つ、付け加えた。戸魂界に攻めこむ、霊圧組を構成するメンバーの紹介だ。
その構成員の内、半分も知っていないこの少年少女が驚く訳もないのだが、事情を知っているものならば、ありえないメンバーの名前が上がったのだ。
「あのお方……そして宇木良平様。そして、ゾマリ、ザエルアポロ、アーロニーロ、ノイトラ、ウルキオラ。そして新たにあのお方が調教した、破面<アランカル>。全員が、霊圧と炎圧を組み合わせて使えるわ」
この時は、誰も知らなかった。その二つのエネルギー体がお互いに強く作用するというのは聞かされていたが、具体的にはどれだけ強化されるのかを。
そして、残る七人の炎圧組の実力も。
次回に続く……(予定)
この章は死神とアランカルがドンパチする話です。
三章とは逆方向ですね。
旧エスパーダが大量登場です。それでは。
- Re: 【四章スタートです】月下で交わる二人のオレンジ【5/12】 ( No.85 )
- 日時: 2012/05/17 16:34
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
お久しぶりです、月那です
あたしの小説にコメントしてくれて、ありがとぉぉぉ!!!
時間がなくって沢田VS篠原しかまだ見てないけど・・・
かっこいいねぇ!・・・ツナ!(オイ)
鈴は負けちゃったけど(当たり前だ)、ツナかっこよかった!!
おもしろかったよぉ〜!!
時間があったらまた、続きを読むね!!
- Re: 【四章スタートです】月下で交わる二人のオレンジ【5/12】 ( No.86 )
- 日時: 2012/05/18 20:24
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OYJCn7rx)
- 参照: 第一戦part2
>月那さん
あの話は確か、ツナが女子キャラと闘ったらこんな感じかな、とか勝手に想像して書いた覚えがあります。
多分傷をできるだけつけないように、ということで。
>>84を修正して完成させました。
懐かしの名前がたくさん出てきました。
次回は書きたかった死神VS破面。
あ、後ついでにこの小説三章で大体折り返し地点です。
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