二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 月下で交わる二人のオレンジ
- 日時: 2012/08/26 12:23
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: WrJpXEdQ)
募集要項>>34
皆様初めまして。二次で書くのは初でございます。
今まで一つたりとも完結した試しが無く、またしても他と掛け持ちということになります。
ということで、ここでは違う名前を使いたいと思います。
二次初挑戦のくせに二つの作品を頑張っておりまぜようとしていますが、きっと大変な事になると思います。
ここを見た人はできるだけ温かい目で見守って下さいませ。
で、一体何の二次かというと、『リボーン』と、『BLEACH』の予定です。
基本主人公たちの使う技たちは原作に忠実に行きたいと思うのですが、一体どうなることやら……
ちょいちょい勝手に考えた意味不明なのが飛びだすかもです。
二つの作品の時勢は大体、リボーンは未来から帰ってシモンが出てくる直前。
BLEACHが……こっちはまあ、大体皆が破面編で最終決戦ドンパチしてるぐらいの強さです。
オリジナルのキャラは敵ぐらいしか出てきません。
後は特に変わらないでしょう。
題名の月下は単に残月を指してるだけで物語には直接関係無いかもです。
注意書き
作者とBLEACHとリボーン嫌いな人は読まない方が良いでしょう。
荒らしは来ないでください。誤字脱字や文章の至らぬ点を言ってくれるのは大歓迎ですが。
多分ね、キャラクターが上手く使えないと思います。
ストーリーの大体の流れは決まっていますが細部が決まっていません。
尋常じゃないほど更新が遅い。
まだ作者にも面白いかどうかが分からない。
小説のルール、できるだけ守ろうとします。(ダッシュとか三点リーダとかの話です)
台本ではないです。たまに誰がどれ言ったか分かんないかも
第一章 交わる二つの世界
>>1>>3>>5>>13>>14>>18>>22>>25>>29
第二章 戸魂界<ソウル・ソサエティ>
>>30>>33>>35>>40>>57
>>48————アナザーサイド
第三章 開戦
>>58>>64>>74>>75>>76>>77>>78>>79>>81>>84
第四章 進撃
>>91
記念短編的な?
篠原鈴VS雲雀>>82
詩音&紅蓮&風花VS一護>>83
【オリキャラ達】
時空未来>>36
篠原鈴>>38
双竜詩音&双竜紅蓮>>41
鈴音風花>>51
【記録……的な?書くのは気まぐれ】
12/1 スレッドが立つ。一章がスタート
12/17 参照100超えを確認
1/15 一章完結
1/19 二章スタート
1/20 参照300
2/8 参照400
2/17 参照500
2/19 返信五十
2/23 二章完結
2/24 三章開始&参照600
3/2 参照700
3/15 参照800
3/24 参照900
4/1 三章完結
4/4 参照1000
4/19 参照1100
5/12 四章開始&参照1200
6/5 参照1300
8/25 参照1600
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- Re: 【三章開始】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.77 )
- 日時: 2012/03/13 15:25
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Uo0cT3TP)
- 参照: 獄寺&山本VS詩音&紅蓮 終幕です
「……燕特攻と同等かよ。大分やるじゃねえか……」
「凍土白帝が相討ち……ですか……。それじゃ、僕にはどうしようもないですね」
「くそがっ! 何つう威力だよあの炎の矢……。焦土龍帝と、互角」
「そっちも中々やるじゃねえか。あの野球バカクラスの一撃だなんてなあ」
二つの大爆発は、最初に彼らが進攻し、街々を破壊する以上の損害をもたらした。雨の二人の衝突は、周囲の家の外壁、果てには家そのものを凍てつかせ、山本の凄まじい鎮静力で空を飛ぶ鳥すらも、その場で止まってしまっている。なのに落ちるようなことはない。空間自体が、鎮静化されている。
もう一方も、それは凄まじい被害をもたらしていた。山本と詩音に極めて近い位置には、打ち消し合って完全に消失していた。が、勿論のごとく打ち消されていない他の部分の破壊活動はかなりのものだった。晴れによって活性化された嵐の分解能力によって、コンクリートで舗装されているはずの道路は、見るも無残に蹴散らされていた。まだ燃え続ける底の見えない、赤い炎は溶かすようにアスファルトを壊していく。
「こっちの攻撃が一切通用しないのかよ! 何て実力だ……」
「お前らは覚悟が欠落してんだよ。炎が弱い。馴れ合うだけで勝てるほど、ボンゴレは甘くねえぞ」
「……あなたは、僕と姉さんの絆を馴れ合いと呼ぶのですか?」
「別に。俺は言うつもりはねえけどな」
「銀髪のあなたに、見せてあげましょう、僕の覚悟を」
自分の最強の技を返され、途方にくれる紅蓮。彼女に対して獄寺は、炎が強いものであるための条件が欠落していると言い放つ。それを聞きつけた詩音は急に顔つきを変える。さっきまでは無表情であっても柔和な雰囲気を漂わせていたのに、今となっては本当に凍りついてしまったかのような表情だ。
獄寺も不味いことを言ったなぁと、山本は冷や汗を浮かべて目の前の詩音を諭そうとする。しかし、もう彼は聞く耳を持っていなかった。紅蓮がかなり不味そうな表情をしている。途端に詩音から発せられる霊圧が急上昇する。いきなりの豹変ぶりに今さら悪寒を感じるもすでに手遅れで、引き返せないところにまで、もうすでに達していた。
「訂正しろ」と、何度も何度も詩音は口の中で反芻する。獄寺に最も届けないといけないというのに、それどころか近くにいる山本にすら聞こえていない。顔を上げた彼の表情は、完全に感情を押し殺そうとしていた。ただし、勿論押し込まれていなかった。明らかに強い、憤怒の想いは。
「許さない……炎が弱いだなんて、信じない。全部の炎なんて————消えてしまえば良い」
途端にドーム状の巨大な雨の炎が詩音の刀を中心として周囲を取り囲む。その半径およそ、東西南北に半径百メートル。ただし、その中にいる四人に、何の変化も訪れなかった。命が鎮静化されることも、氷鈴斬のように温度が下がることも。
ただし、違う所に異変は現れていた。急速に、獄寺の持つ弓の炎が弱まる。それだけでなく、急速にしぼみだし、形態変化は溶けて、ただのアニマルリングに戻ってしまった。ボンゴレリングから放たれる炎も弱体化する。その変化は山本にもやって来ていた。刀を纏う雨の炎は消えてしまう。その変化は勿論、紅蓮どころか詩音自身にも影響していた。
すぐに分かった。これは炎を完全に消しさる空間なのだと。雨の鎮静で、炎を完全にシャットアウトした世界。いくら覚悟を込めても、マッチ棒の先に点く程度の火種すら熾らない。
「ほら! 君だって覚悟足りてないじゃないですか!」
得意げに獄寺に罵声を浴びせるように指摘する詩音、その顔は大層、嬉々としていた。それもそうだろう。ずっと仲の良い双子だったのだ。詩音にとって紅蓮は自分と同じか、それ以上に大切な存在なのだ。逆もまたしかりなのだが、このように暴走するのは、未だに精神の幼い詩音の方だ。
自分の持つ覚悟が、獄寺の言うようなちんけなものではないと証明できた。彼の性格ゆえに、純粋に罵倒してしまうことは無いが、それでも普段と比べると見下すような態度が混ざっていた。
それを見て獄寺は溜め息を一つ吐く。ポケットから煙草型の着火装置を一つ取り出す。いつの間にか火は点いていて、煙も燻ぶっている。胸元の辺りに手を入れて、ダイナマイトを取り出した。
「下がってろ、野球バカ」
「……一人でいけるのか?」
「当然だろ。嘗めんな」
山本を後ろに下げて、一人だけ双竜姉弟と相対する。その眉間には、相当量の皺が寄っていた。
「お前、ここは、炎を拒絶する空間か?」
「ええ、そうですよ。だからあなたの炎が点かなくても覚悟どうこうの問題じゃあ……」
「何度言えば分かる。ボンゴレ嘗めんじゃねえ」
獄寺は、おもいっきり煙草の尻を咬み潰す。ぐしゃりと口の中でオレンジ色の部分に凹みがつく。拳に力を込める。血管が浮き出るほどに、もうすぐ手の平の皮が裂けそうなほどに。
その時、炎は指輪に灯った。打ち消されるのに立ち向かう、小さいながらも意志の強い炎。
「そんな……ことが、ある訳……」
「お前ら相手に炎は使わない。ダイナマイトで充分だ。先に言っとくぜ、果てろ」
言い終わるとすぐに、大量のダイナマイトに火を点け、自分の周りに大量に散布させる。空中を、獄寺自身の周りを飛び交ういくつもの爆弾に、敵である二人は下を巻く。気が狂ったのではないかと。
リストバンドに忍ばせていた小さいダイナマイトを手首から取り出した。すぐさま着火装置の先端に掠めて導火線に火を点ける。それを後方に押しやって、駆け出した。
当然、獄寺の背後でそれは爆発する。誕生日ケーキに刺すろうそく程度のサイズの“ミニボム”の爆風を背中に受けて彼は駆け出した。その速度は生身の人間のそれを遥かに凌駕する。当然、すぐに剣士の周りに入る。しかし、彼らは剣を振るえなかった。さっきの騒動の中、近くに駆け寄っていたため、二人の丁度真ん中を通る獄寺を斬ると、自分の家族を斬ってしまう。それをためらった二人は剣を止めた。
その隙だらけの中心を、銀髪の少年は走りぬける。大量の、着火済みのダイナマイトを、彼らの周りに投げつけて。双竜姉弟の周囲を、爆弾が包囲する。もうすぐ、爆発するというかなり危険な状態。
「ボム・スプレッズ」
だが、それら全ての導火線を、彼らは持ち前の剣術で一つ一つ切っていく。すぐさま全てのダイナマイトは、導火線を失う。
だが、そんなこと獄寺には関係無い。なぜなら、それを見越した攻撃の手順だからだ。皆はその存在を忘れていた、最初に取り出した爆弾の存在を。
「ロケットボム」
一番最初に獄寺が、自分の周りに放置したあのダイナマイトが、急速に尻に仕込んだ火薬を燃焼し、急加速する。瞬く間にそれは、二人の下に迫る。刹那の時間の後に、それらを口火として、解き放ったほとんどのダイナマイトが爆発する。巨大な太鼓を打ち鳴らすような轟音を響かせて、大気をうねらせる。
ゾッとするような爆炎と爆風の中、煤だらけの二人が現れる。あれでもまだ倒れないのかと、山本は感嘆する。だが、彼にも獄寺にも、耐えきった理由は分かった。高速で各々の剣を振るう事で、真空の壁を生じて、防いだのだろう。
だが、獄寺は、最後に四つのダイナマイトを仕込んでおいた。それらを一斉に指差す。双竜の二人が気付くのは、爆発のその瞬間だった。
最後のダイナマイトは、真空の壁の内部に入り込んでいた。走りぬけるその瞬間、獄寺の手によってそれらはポケットに入れられていたのだ。
「これで最後だ。ピックポケットボム」
視界を覆い尽くす、いっぱいいっぱいの黒煙が、闘いの終わりを象徴していた。
はい、こちらの闘いは完了です。
原作で一度しか登場していない技や、Wikipediaで偶然発見したアニメオリジナルの技を使ってみました。
獄寺が原作以上に闘いで活躍してる、とかは言わない方が良いのかな……?
次回は鈴音風花と極限くんと牛ガキとクロームが闘います。
説明適当?そんなことは無いですよ……多分。
- Re: 【参照800】月下で交わる二人のオレンジ【現在三章途中】 ( No.78 )
- 日時: 2012/03/16 09:47
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Uo0cT3TP)
- 参照: ランボ&クローム&了平VS鈴音風花
「さっきの爆発音、何だったのかしら?」
闘いの最中、突然周囲に響き渡った爆音に、風花は顔をしかめた。もうもうと立ち込める、真っ黒な爆炎が、そこで爆発が起きたことを表わしていた。それを見た了平はすぐに気付いた。獄寺が持ち前のダイナマイトで戦闘をしたのだと。突然向こう側から炎圧が届かなくなっているので、相討ちにでも持ちこまれたのかと、クロームと了平は危惧していたが、そうでもないと判断する。
それっきり、ダイナマイトの爆発音も収まる。おそらく、さっきので決着は着いたのだろう。勝敗は分からないが、それを確認するためには目の前の敵を倒さなくてはならない。しかし、開戦から長らく経った現在でも、三対一であっても、苦戦を強いられていた。
三対一と言っても、全くもって話にならない三対一である。実はというと、一人一人の性格を考慮してみると、戦闘面に全力を注げる人間がいないのだ。そんな状態で、雲雀にも肩を並べ得るような実力の相手と闘うのだ、勝てる由もない。
なぜ三対一が上手くいっていないのか、それはまず戦力が足りないのだ。元々、常時戦士として活躍できるのは、それなりに年を重ね、なおかつ腕力のある了平一人だ。クロームは幻覚によるサポートの方が適している。つまりは、元々闘いにはあまり向かないタイプだ。その上、ランボはまだ幼すぎて、戦闘に集中なんて到底できそうにもない。さっきから必死に、普段リボーンから逃げる時同様に、回避に徹するしかない。
そして、最後の理由に、了平が闘わないということだ。先刻の山本のセリフから察せられる、『甘さ』を持った人間は、山本一人ではない。沢田にも、了平にもある。中々女相手には手を出しづらい。沢田が篠原相手に、炎を吸いきって気絶を誘うやり方を取ったのもこのためだ。そして、了平は当然、信条の一つとして“女は殴らない”というものがある。時折例外として起こるかもしれないが、基本的に女子に手を上げることを彼は嫌う。彼の凝り固まった思考回路では、『女=男性が護るもの』とでも定義されているのであろう。
「それにしても、三人がかりでなさけない」
翡翠色に透き通った二枚の刃を重ね合わせて彼女は三人を挑発する。出会った瞬間に浮かべていた、穏やかな笑みは二つの短剣を手にとるや、すぐさま消えてしまった。いつの間にか膝まである長い髪が、邪魔にならないように後ろでくくっている。背は対して高くなく、右目が燃えるような赤色で、左目には不思議な色で、不思議な模様の義眼がはまっていた。
笑みが消えただけでなく、そのプレッシャーからも、ピリピリとした威圧感を、了平は常時感じていた。その気配が、今になって一層強くなっている。今までは、拳圧で炎を飛ばす程度にしか攻撃していなかったが、そろそろ不味いと明瞭になってくる。
同じような攻撃スタイルしか取らないにしても、やはりやるしかないと判断した了平は深く溜め息を吐き、アニマルリングに炎を注ぎ込んだ。現れたのは、アーマーを纏ったカンガルー。
「形態変化<カンビオフォルマ>」
次の瞬間、カンガルーは了平の全身を覆いこむような装甲に、その姿を変える。その装甲に身を包んだ彼の体は、晴れの炎で黄金に輝いていた。ただし、この状態には厄介な短所があり、三分しかそのコンディションを維持できない。
三分以内で決してみせる、その覚悟で一歩を踏み出す。一気に実力が上がったと、即座に判断した風花は、二本の剣を構える。彼女の武器は、雷の炎を纏った双剣だ。湿気た樹木が火の粉を破裂させるようなパチパチという音がする。軽くその剣を彼女が振るうと、剣圧が生じる。微弱な、弱すぎる風でも雷属性の“硬化”の能力を受けると一気に鋭利な刃となる。何度も何度も、空気と擦り合わせるように両手の刃を振るう。次々に風の斬撃を作り上げていく様子は、まさに舞のようだった。
近づいて行く了平の頬に一筋の切れ筋が入る。鎌鼬のような攻撃が頬を掠めたのだろう。顔の側面を垂れる赤い液など意に介さずに了平は接近する。さすがに脚力を最大活性させた彼のフットワークはかなりの速さであり、対応は困難。すぐさま懐に入り込まれる。
「拳自体は当てはせん! 極限太陽<マキシマムキャノン>!」
彼が高速で一閃させた拳からは、光り輝く炎が一直線に放たれる。回避できないのか、しようとしなかったのか、彼女は真正面から直撃する。手ごたえありかと、了平は思ったが、それは間違いだった。
鈴音風花は、文字通りかすり傷一つ負っていなかった。それどころか、微弱な風を浴びた程度にしか感じていなかった。もはや、爆風の領域に突入するほどの、拳の圧力によって生まれた衝撃すらも、意に介していない。
一体、どのような策を講じたのか、彼の弱い頭では、全く分からずに、反撃に備えて後退する。だが、そんなもの許すはずもなく、風を纏った彼女は突撃する。
「六花風斬!」
鋭い空気の刃を剣で起こし、了平に向かってその双剣を振り下ろす。剣を取り巻く、渦を巻くような斬撃は剣を離れて独立した遠距離攻撃へと変わる。脚についた靴型の装甲に炎を注ぎ込み、空中に浮き上がり、了平は回避する。次の瞬間、舗装された道路は風によって粉々に切り裂かれた。切り裂かれた後に宙を浮かぶコンクリート片でさえも、微かに吹き荒れる風で刻まれる。
了平が前線で闘っている間に、クロームは自分の魔レンズで、相手の闘い方を解析していた。ランボはというと、狙われなくなったその瞬間に緊張が解けて、座り込んで観戦していた。
「晴れの人。その人、雷の炎で肉体を硬化させています……! だから、もっと強くしないと……」
「雷の炎だと? こやつ、剣から出る炎は全て攻撃に回しているぞ!」
「違う……左目の、義眼!」
そう言われてハッとした了平は、風花の左目をよく観察する。長い前髪に隠され、剣から迸る炎圧にカモフラージュされて、大分分かりにくいが、確かに左目から緑色の炎が奔っている。あれによって鈴音風花は強固な防御力を手に入れているという訳だ。了平の、炎を込めた攻撃を受けても、一切ダメージを受けないほどの。
しかし、それほどの防御力があるならばということで吹っ切れる。手加減などしていては勝機は無いと。かといって、やはり女子を殴るのは絶対拒否の彼は、ランボの力を借りることに決め、声をかける。座り込むランボの耳元にまでしゃがみこみ、耳打ちする。するとランボは得意げな表情を取り、頭から二つの指輪を取り出す。
だが、普段の彼は火を点けることなど、決してできない。彼の戦意を引き出す方法は、少し前にリボーンから、聞かされていた。そして了平はランボに向かって、叫ぶように話しかける、「沢田の母親に、会いたくないのか」と。それを聞いたランボは、目から大量の涙を流し始める。初めは小さく嗚咽するようなものだったが、次第にボリュームは大きくなり、号泣となる。その瞬間、ボンゴレリングから、強い炎が放たれる。突然、幼子が強力な炎を放ったのだ、風花は勿論の如く目を丸くする。
ゾッとするような、鋭い電撃がもう一つのリングを覚醒させる。そこからは、巨大な牛がその姿を現した。咆哮するような、大きな鳴き声を上げてその巨体を振るわせる。その瞬間に、宇木から聞いた情報を彼女は思い返した。実戦で使われてこそいないが、あの牛の突進の威力は凄まじいものだと。
どうにかして、ランボを叩いて、炎の供給を絶たねば、今度こそ自分が敗北する。それが分かった彼女はすぐさまランボを先に仕留めようと駆け出す。しかし、それ以上走ることはできなかった。焦燥が彼女の視野を狭めていたのだ。いつの間にか了平が後ろに回り込み、風花の両腕を押さえこんでいた。残った隙で剣を弾き飛ばしてそこいらに飛ばす。
「なっ……このままじゃあ……」
「行け、ランボ。俺ごとだ!」
「突っ込め牛丼ー!」
もはや、鳴き声を上げるランボに理性は残っていない。元から無いに等しいのだが、それ以上に無くなっていた。ただただ了平の言うがままに自分の匣アニマルの牛丼を走らせる。助力をつけるようにして、蹄で地面を擦り上げるその仕草は威嚇のように見えた。
風花は、自分にできるのは防御力の上昇だけであって、身体能力は上がらないことは分かっている。だからこそ、完全に諦めに入り、できる限り体を硬化させる。少しでも敗北の可能性を減らすために。
もうすでに、牛は走りだしていた。背後には砂煙を上げて、凄まじい速度で。刻一刻と間合いの詰まる中、了平はタイミングをうかがう。自分は回避でき、風花は回避できない限界点を。
途端に、衝突した地点から四方に衝撃波のようなものが飛び散る。軽々とランボはそれに飛ばされ、道路上を転がる。クロームも、必死でそれにこらえる。
一通り爆風が収まり、落ちついた頃に了平が出てくる。かろうじて回避はできたのだが、そろそろ三分が近づいているためか、炎が弱くなっている。そして限界が訪れたらしく、形態変化は溶けてしまった。
砂煙が払われたそこには、風花が倒れていた。しかし、まだ意識はあるらしく、立ち上がろうと腕を地面についている。
「まだ……終わってはいませんよ……」
今にも倒れてしまいそうな彼女を、これ以上傷つけないためにも、クロームは幻覚の縄で動けないように縛ろうとした。しかし、できなかった。突然現れた一筋の閃光が、了平を撃ち抜いたのだ。
「がはっ……」
弱々しく、漫画によくありそうな呻き声を上げて、彼は倒れる。今発射されたのは、大空属性のレーザーだった。何事かと思って鈴音風花のさらに向こうの方を見つめると、一人の男性が立っていた。体中の至るところに、見たことの無い幾何学的な模様や言葉が羅列して、紋章を織りなしている。そしてそれら全ての紋章が、それぞれ赤橙黄緑青藍紫のいずれかの色で輝いていた。
「虹宮……道山……」
虹宮道山(にじみや どうさん)と呼ばれたその男は、得意げな嘲笑を浮かべて、炎の枯渇した四人に語りかける。さも、弱者を見下すように鬱陶しげな感じで。漁夫の利であるというのに。
「よう、鈴音。随分やられてんじゃねえか。後は任せな」
出てきました、炎圧組の中では唯一の自分で作ったキャラクターです。
どういう風に闘わせるかは、次回分かります。
ていうか……こんなにボロボロで勝てるのだろうか……?
- Re: 【3/16最新話】月下で交わる二人のオレンジ【現在三章】 ( No.79 )
- 日時: 2012/03/20 15:10
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: DzlMUhcv)
「何しに出てきたのよ……虹宮……」
「おっと、随分な言いようだな。今! ここで! 俺が! 来なかったらお前はただ単なる敗北者だろうが!」
「来ても変わらないわよ」
「変わるね! そうなればお前は、俺を手助けした功労者なんだよ!」
突然現れた虹宮という男のいでたちは、相当に変わっていた。先刻申し上げた通りに、体中に紋章が浮き出ている。しかしそれは、体表に模様として現れたというよりも、皮膚の下に埋め込まれたようだった。右腕にはモニターのついたパソコンのような機械、妙なゴーグルのような装置を左目にだけかけている。その風貌はまるで化学者。
額、両手、両足、腹部、クロームのいる方向からは見えないが、背中の合計七か所に、それぞれ色の異なる紋章が煌めいていた。その色は、炎の色と同じ七色。これで大体のことは、魔レンズで調べ上げることができた。この男は自分の体に違う人の炎を、大空の調和で、拒絶反応を起こさずに移植、戦闘に活用しているのだと。
ただし、虹宮自体は大空属性ではないらしい。他の仲間の大空の炎で調和させ、自分自身は紋章を構築している。霧属性の炎の特性、それが“構築”だ。幻覚を構築するのが一般的と思われているが、別にそれだけには限らない。紋章という、溜めこんだ多属性の炎を放出する装置的なものを構築している。
そして、もう一つ発覚したことがある。この男、形はそれほどではないが、実質的な実力は相当なものであると。何だか狂ったようなテンションで、終始高笑いしているような変人に映るが、炎圧はかなりだ。疲弊していたとはいえ、了平が一撃で倒された、そんな相手にクローム自身が勝てる由もない。
ちょっとした恐怖と戦慄に駆られる。いっそ幻覚にかけて逃げだして、沢田や雲雀に任せた方が得策かもしれない。手元の三叉の槍を地面に突き立てようとする。だが、またしても虹宮は了平に撃ち出したように大空のレーザーを放つ。沢田の移動に使われていることからも、大空属性はかなりの速度である。少し手元を掠めた程度だが、焼けつく痛みに武器を放り出してしまった。
「あっ……」
「じゃあな! とりあえずリング三つゲットだぜ!」
——————沢田綱吉サイド——————
「なあリボーン、この子どうするの?」
「仕方ねえ、適当に縛っとけ。暴れられても面倒だ」
「こんな場所で? 俺が変な人に思われる気がするんだけど」
「つべこべ言わずに家庭教師<かてきょー>様に従え」
超モードを解除し、普段のへたれた方の性格に戻った沢田は、少しだけ狼狽しながら隣の赤ん坊に問う。このまま気絶した少女を背負うというのも、人目を引いてしまう。するとリボーンは、どこに持っていたのか長いロープを取りだした。小さな、動物の目がついていたからすぐにリボーンのペットのレオンだと分かった。
レオンというのは、リボーンの持つ特殊なカメレオンで、見たものの形に変身できる。
ただし沢田はその回答に余計に困惑することになった。縄で縛りあげた人間を持ち運ぶ人間の方がよっぽど特異な人間だと。そもそも目立ちたくないから訊いたのに、なぜ余計に目立たせるのかとリボーンに反論する。ただしその反応はリボーンにとって苛立たしかったらしく、強烈な蹴りが沢田の顎に入る。変な鳴き声を上げて、沢田は空を見上げる。涙目になって顎を片手で押さえながら抗議する。
「なあ、結局どうすんの……!」
「……どうしたんだツナ? いきなり顔色変えやがって」
「いや……この感じ……もしかして……」
何だか不穏な雰囲気を感じ取ったのか、突然沢田は顔つきを変えた。身の毛がよだつような、冷たくなるような感覚。今までにも何度か似たようなものを感じとった経験はあった。
考えている最中、凄まじい、劈くような音が聞こえてきた。立ち上ったのは雷属性の炎。先程ランボが放ったものを感じ取ったが、それよりかは多少威力が低い。その上、波長の感じもランボとは全然違っていた。
現在、クロームや了平達の状況はどうなっているのか分からない。しかし、沢田には何となく予想はついていた。きっと、窮地に立たされているのだろうと。
でも、きっと心配をする必要性は無い。彼が来たのだから————。
——————再びクロームサイド——————
「まあ、とりあえず恨みは無いけど! 威力マックス! 雷の光線を! 喰らってもらう!」
大空属性の時に右手の紋章が橙色に輝いたのに対し、左手の紋章が緑色に輝きだす。ショートする時に起きる引き裂くようなバチバチという音がする。強力な雷属性の炎は、七属性の中で最も硬度が高い。並の兵器よりも遥かに威力は優れているだろう。
電圧が……炎圧が高まるにつれて、危機感も増していく。このままではクローム一人どころか、三人揃って敵の手に落ちてしまう。クロームは戦闘に不向きな上に、ランボは先刻の一発でガス欠、了平は既に倒された。絶体絶命の状況下で、何とかする手立てはもう既にゼロに近い。
これまでかと彼女が諦めた時に、虹宮は翡翠色の閃光を放つ。ただの緑ではなく純度を上げ、透明感の高い翡翠色の炎。ここで終わり、絶望しながら、緑色の光線が上げる大きな爆発音を聞きとる。それこそ、本物の雷が落ちたように。刻一刻と迫りくるその光の動きが、三人にとって相当スローペースに感じられる。催眠術にかかるような感覚で、クロームはスッと目を閉じた。
途端に、地面にぶつかった炎は、天空に向かって盛大に爆炎を上げる。雷属性の爆炎は、落雷が天に帰って行く様子によく似ていた。
「ハハハハハ! なあ鈴音ぇ、これでお前と俺は三種のリングを持ち帰った! 謂わばMVPだぜ!」
「癪に障るけど、確かにそうね」
心底忌々しげな表情で、自信満々、得意げな虹宮に、吐き捨てるように風花は言葉を返す。漁夫の利を得るようなスタイルにしか持ちこまないこの男を、彼女は嫌悪していた。
それでも、頼る相手がいない以上は仕方ない。ついでに詩音や紅蓮の下に向かいたいという意志が現れる。よろよろと立ちあがって、ボンゴレリングを回収しようとした時に、何だか違和感を覚える。目の前から、強力な霧の炎————。
「ん? どうしたよ鈴音。いきなり立ち止まりやがってよぉ」
「近づかない方が……良い」
「あ? なんでだよ。満身創痍の! カス共だぞ! 別に嘗めてかかっても良いだろうがよ!」
「それはどうも、勘違いというものですね」
虹宮は、先程まで無かった声に驚き、顔色を変える。了平という男もこのような声ではなかった、さらには残りの二人からこんなに低い声が発せられるとも思えない。明らかに声変わりを終わらせた男子の声音だ。
特徴的な笑い声と共に、突然の来訪者は現れる。その笑い声は本当に特徴的なもので、一般人がいきなりそんな風に笑いだしたら、きっと気が狂ったかと思われるだろう。それも、彼が言うとそう聞こえないのは凄まじい性質だと思われる。「クフフ」という笑い声は。
「えっと……確かお前の名前って?」
「あなた達ももうすでに知っているはずですよ」
「そうね……確か……」
彼の代わりに消えていたのはクローム髑髏。どこかの中学の制服も、女ものから男ものに変わっている。開いた制服の内側に見えているのは色々な色の散りばめられたシャツ。手には、三叉の槍を持っている。右目と左目で色の違うオッドアイ、赤い右目には瞳の中に“六”と字が入っていた。右手の中指のリングからは、恐ろしいまでに強い霧の炎。
彼の瞳の中の漢数字が“六”から“四”に変わる。オーラが眼球から放たれるのが視認できるようになる。その瞬間に雰囲気が変わり。それは場の空気をも一変させた。
確認を取るために、風花は口を開いた。
「六道骸だったわよね?」
今回は最近の話と比べると短めです。(それでも3000文字)
ようやく骸様登場です。ようやく書けたなこのシーン……
さてと、後一話で三章が終わるので、その後に短編書けそうです。
では、次回に続きます。
- Re: 【3/20最新話】月下で交わる二人のオレンジ【現在三章】 ( No.80 )
- 日時: 2012/03/23 16:44
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: tBL3A24S)
申し訳ありませんが3/28まで合宿なので
3/29まで更新はできません。29か30で更新予定です。
- Re: 【3/20最新話】月下で交わる二人のオレンジ【現在三章】 ( No.81 )
- 日時: 2012/04/01 11:25
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 8Sk6sKy2)
- 参照: 六道骸VS虹宮道山
「ええ、確かに僕の名前は六道骸です。よくご存じですね」
「当然。……敵に勝つ第一歩は知ること、でしょう?」
「ええ、少なくとも僕はそう思っています」
倒れかけの鈴音風花と、突然の乱入者であるオッドアイの男が自分を無視して話し続けているのが勘に障ったのか、突然虹宮は地面を踏みつけた。勢いがどれほどであったのかは知らないが、コンクリートが砕け散る。それだけでなく、大きな亀裂が道路中に走る。スッと目を細めた骸は冷たい視線で観察する。地面に叩きつけた左足の紋章から、黄色い炎が放たれているのに。きっとこれは晴れの“活性”による肉体活性だろう。
「何故だ! 何故今さら現れたんだ! 今までこちらにいる気配すら見せなかっただろう!」
「仕方ありません、今まで思念体で観察していたのですから」
「だったら! 何で今さら出てきたんだ! この邪魔くせぇ囚人が!」
怒り狂うように髪を振り乱し、何度も何度も地面を抉り続ける男に、骸は憐みの目を向ける。どうやら、少々イカレてしまった人間だとは即断できた。我を忘れてしまっているようで、目は血走り、瞳孔は開き、鼻息も荒くなっている。
無様極まりない、その様子を見た骸の、虹宮に対する第一印象はそれだった。しかし、地面が粉々にされてしまっているその様子から相手の力そのものは決して侮れないということは納得した。
「決まっているでしょう、君が僕の分身をどう扱ったか、忘れたとは言わせませんよ」
「くそっ……。何でこいつまで呼んだんだよ、あの人は」
「僕は勝手に付いてきたんですけどね」
そこから骸の解説が勝手に始まった。訊いてもないのに始まったのだが、敵である二人にとって、それは仕入れておきたい情報だったので黙っていた。
まず、骸は将来の目的である沢田綱吉を乗っ取るという行動のために、守護者集合の際にクロームの中に意志として忍んでいた。都合良く、沢田は感じていないのかそれどころではなかったのかこちらの事を黙っていた。すると、クロームという器ごと、骸はこちらの世界に来た。その後、大虚が現れた瞬間に、骸はクロームへの憑依を解き、周囲の探索を始めた。そして、見つけた宇木良平を。そのまま観察を続けていると途端に彼は元々骸の居た、ボンゴレ一向の下に戻ったのだ。
どうやらやり過ごしたのを見つけ、浦原商店に着いていき、一緒に戸魂界に潜入した。途中の、拘流でクロームが転倒するというアクシデントでは、一瞬だけ憑依して脱出を手伝った。
なんだかんだの動乱で、気が昂ぶっていた沢田は骸が現れる兆候であるサインに気付かずにそのまま現世に出撃した。そして、憑依の直前、最も強い違和感を感じる瞬間でようやく沢田は気付いたのだ。
「さて、今のところ分かっているのは、大空と雷、そして晴れぐらいですね。他の炎だと、どのように使うのでしょうか」
「うっせえよ! 全部使うまでも無くお前は死ぬんだよ!」
右足の紋章が深紅に輝いた。今度は嵐属性の炎のようだ。その、赤い炎を纏った右足を、サッカーボールを蹴るようなフォームで一気に振り抜く。空を蹴ったその脚からは、嵐属性の鋭い刃が放たれた。
三日月形のその蹴撃が、真っ直ぐに六道骸に襲いかかる。三叉の槍を構えた六道骸が、格闘能力に特化した状態で舞うような槍術で迎撃せんとする。
六道骸は、自分自身で六道輪廻の世界を全て回ったと言っている。六道輪廻の思想とは、人は死んだらそれぞれ、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道を回るというものだ。そして骸はそれら全ての世界でスキルを手に入れてきた。その中の一つが、格闘スキルに特化した修羅道。
だが、嵐の“分解”能力を持った刃は、槍をあっさりと打ち砕く。完膚無きままに破壊された彼の槍の欠片は、宙を舞った。防御のための道具を失った骸に、容赦なくその嵐の炎が襲いかかる。
「馬鹿な……」
「ほらな! この! 虹宮道山を! 嘗めんなって話なんだよ!」
勝ち誇ったように、虹宮は高笑いする。目の前で膝をつき、胴体に斜め一文字に出来た斬り傷を見下しながら。真っ赤な血を垂らす彼を嘲笑しながら、止めを刺そうと大空の炎を右手に集約させた。これで終わらせようとの算段だ。より一層不敵に、虹宮は表情を崩して、嫌らしい笑みを作る。
そして、右手から炎の光線が放たれる。沢田が空を翔ける時のような凄まじい速度で、骸に向かって一直線。
その瞬間、視界全てが漆黒に包まれた。それこそ、一寸先をも見渡すことの出来ないほどに深い闇。
「なっ……何だこれは!?」
それまで圧倒的に優位に立っていた筈の虹宮が焦りを顔に浮かべる。今、攻撃したのは彼の筈なのになぜこのように動揺しているのか、風花には分からなかった。どうせ、ふざけた虹宮がこのような空間を作り出したと思ったのだ。しかし様子から察するに、それは違うようだ。
だとすると、候補は最悪の状況である一つしか思い浮かばない。ゾッとするような悪寒が身を包む中、周囲一帯の景色が牙をむいた。絶対に明るさの欠片も無い、目も当てられぬ程の闇に眼が眩んできた、その瞬間にやけにリアルな目玉が浮き出てきたのだ。
血走った眼、それら全ての目の赤い瞳には、一の文字が入っていた。
「鈴音! これは一体……何なんだ!」
「六道骸の……幻覚空間よ」
何が起こるか分からない恐ろしさに目を見開き、ガタガタと震える風花、彼女の言葉を聞いた虹宮までもが血相を変える。さっきまでの興奮は無かったかのように血の気が引いていく。それこそ、顔面蒼白。彼にも分かっている、相手の幻覚に堕ちたということは……知覚のコントロール権を完全に奪われてしまったという事。これから骸が作りだす世界、それは二人にとっては現実となるのだ。
周囲の目玉、その中心から、幻覚のレーザーが発射された。それこそ、先程虹宮が撃ち出したような。幻覚とは分かっていても、防御しないといけないという防衛本能が働く。腹の辺りの紋章が輝き始めた。属性は雨、その鎮静力で無効化しようとの判断であろうが、幻覚なのだから威力は元よりない。それなのに、額から出る雲の炎で雨の炎を増殖させて、より強力な炎を作り上げる。
それでも、この空間内に居る間中は、全てが骸の意志に左右される。練りに練ったその炎も、あっさりと消し去られてしまった。
「嘘……だろぉっ!!」
「真実ですよ、陥っている、君たちにとっては……ね」
「いつからだ……! いつから仕掛けていたぁっ!」
突然足下から現れた蓮の茎が、二人に絡みつく。身動きの一切を封じられて、全身を締めあげられた二人は、悲痛な、苦痛による呻き声を上げる。もうそれは、声になっていない。
その様子を見ながら、一応問いには答えておこうと骸は口を開いた。
「幻覚の事ですか? 最初からですよ」
「適……当なこ……と言ってんじゃねえよ!」
「分かっていないのですか……」
やれやれと、頭を抱えて骸は残念そうにする。そして、それこそ勝ち誇ったような表情で、もう一度現実を突きつける。
「僕が現れたその瞬間、君たちはもう僕の術中に嵌まっていたのですよ」
「何……だと……。……ふ、ざけんなあっ!」
途切れ途切れに、怒りに体を震わせる虹宮が絶叫するも、拘束はほどけない。いつの間にか、虹宮の足元にだけ灼熱の溶岩のような色の円が出来上がっていた。
じりじりと、髪を焦がす音が虹宮の耳に飛び込む。髪の毛が焦げる臭いもする。皮膚を突き刺すような熱気が、体の表面全体を覆い尽くす。
「僕のクロームに容赦なかった君には……情けをかけるつもりはありません」
そろそろ強気な鼻っ柱を叩き折られた虹宮は涙を流していた。ただ、己の命惜しさに命乞いを続けるだけ。どのみち幻覚内なので、本当の死を迎えることは無いのだが。
骸は笑みを解き、神妙な顔つきになる。鋭い視線で睨みつけて、威嚇する。許す気は無い、それが視線から痛いほどに伝わってくる。脊髄に、堪らなく冷たいものを垂らされている感覚。
「君の敗因は、言わずとも分かりますよね。後、最後の背中の霧属性の紋章ですが、それは楔ですね。紋章を構築するための紋章、よってそれ以外に効力は無い。これで全て、ちゃんと分かりましたよ」
次に虹宮が何か言葉を発しようとする前に、紅蓮の火柱が彼を包み込んでいた。際限なく天へと伸びていくその火柱から、隣に居る風花までもが熱気を感じ取った。
「堕ちろ、そして廻れ」
三話・開戦がこれにて完結です。
四話に入る前に短編作ろうと思います。
もうすぐ1000なので、もはや700じゃなくて1000記念になっちゃいそうなのですが……
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