二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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月下で交わる二人のオレンジ
日時: 2012/08/26 12:23
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: WrJpXEdQ)

募集要項>>34

皆様初めまして。二次で書くのは初でございます。
今まで一つたりとも完結した試しが無く、またしても他と掛け持ちということになります。
ということで、ここでは違う名前を使いたいと思います。

二次初挑戦のくせに二つの作品を頑張っておりまぜようとしていますが、きっと大変な事になると思います。
ここを見た人はできるだけ温かい目で見守って下さいませ。

で、一体何の二次かというと、『リボーン』と、『BLEACH』の予定です。
基本主人公たちの使う技たちは原作に忠実に行きたいと思うのですが、一体どうなることやら……
ちょいちょい勝手に考えた意味不明なのが飛びだすかもです。

二つの作品の時勢は大体、リボーンは未来から帰ってシモンが出てくる直前。
BLEACHが……こっちはまあ、大体皆が破面編で最終決戦ドンパチしてるぐらいの強さです。
オリジナルのキャラは敵ぐらいしか出てきません。
後は特に変わらないでしょう。

題名の月下は単に残月を指してるだけで物語には直接関係無いかもです。


注意書き

作者とBLEACHとリボーン嫌いな人は読まない方が良いでしょう。

荒らしは来ないでください。誤字脱字や文章の至らぬ点を言ってくれるのは大歓迎ですが。

多分ね、キャラクターが上手く使えないと思います。

ストーリーの大体の流れは決まっていますが細部が決まっていません。

尋常じゃないほど更新が遅い。

まだ作者にも面白いかどうかが分からない。

小説のルール、できるだけ守ろうとします。(ダッシュとか三点リーダとかの話です)

台本ではないです。たまに誰がどれ言ったか分かんないかも


第一章 交わる二つの世界

>>1>>3>>5>>13>>14>>18>>22>>25>>29

第二章 戸魂界<ソウル・ソサエティ>

>>30>>33>>35>>40>>57
>>48————アナザーサイド

第三章 開戦

>>58>>64>>74>>75>>76>>77>>78>>79>>81>>84

第四章 進撃

>>91

記念短編的な?
篠原鈴VS雲雀>>82
詩音&紅蓮&風花VS一護>>83



【オリキャラ達】
時空未来>>36
篠原鈴>>38
双竜詩音&双竜紅蓮>>41
鈴音風花>>51

【記録……的な?書くのは気まぐれ】

12/1 スレッドが立つ。一章がスタート
12/17 参照100超えを確認
1/15 一章完結
1/19 二章スタート
1/20 参照300
2/8 参照400
2/17 参照500
2/19 返信五十
2/23 二章完結
2/24 三章開始&参照600
3/2 参照700
3/15 参照800
3/24 参照900
4/1 三章完結
4/4 参照1000
4/19 参照1100
5/12 四章開始&参照1200
6/5 参照1300
8/25 参照1600

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Re: 月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集、アンケートしてます】 ( No.57 )
日時: 2012/02/24 17:48
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: gWvD8deM)

>>56
3DS持ってるんですか、俺はないですね。
そもそも最近ゲームする時間無いんで……

じゃあ、新しい話書き始めます。




「手ごたえあったか……か?」

 漆黒の月牙天衝を放った一護は大事を取って後方に退く。一通り前方を吹き飛ばした月牙は、煙のようになり払われていく。そして直撃したノイトラがその場に現れた。
 例のごとく硬すぎる外皮に阻まれて傷は付いていないが、多少の痛手にはなったようだ。顔には少し、痛みによる顔の歪みが生じている。さらには、武器を破損させることにも成功した。咄嗟に鎌を盾にしたノイトラは、自分を護ると共に武器を犠牲にした。攻撃手段が激減したノイトラの情勢は悪い方に一気に傾く。
 以前圧倒した経験のある者に対してこの様である彼は怒りと憎悪から眉間にしわを寄せる。ただ、ここで無理やり突っ込むのは命を捨てることと同意、その程度理解している彼は退く決心をした。

「ちっ、仕方ねえ、退くか……」
「待てよ、何でお前が生き返ってんだよ」
「ああ? 何で一々説明してやらねえといけねぇんだよ」
「何でもだ、さっさと答えろ」
「別に。ちょっと新しいボスがな」

 その瞬間に彼は少し下の方を見る。前髪が目元を隠し、表情が分からなくなる。じっと見てみるとノイトラが特徴的な長い舌を出しているのが分かる。
 何か考えている、それに気づくのは遅すぎた。彼は下方向に向けて全力の“虚閃”を撃った。地面を陥没させ、砂煙を巻き起こし姿をくらませる。慌てて一護も月牙天衝で振り払おうとするももうすでに、その姿は無かった。

「くそっ、逃げられたか」
「どうかしたの、黒崎くん?」
「えっと……沢田、だよな? 今のは説明すると長くなるけど……とりあえずは昔の敵だ」
「昔の? それって……? そして生き返ったって、一体……」
「あいつは剣八って奴に斬り殺された筈なんだよ」

 剣八、その名前にはこっちに来たばかりの一行でも聞き覚えが合った。宇木良平という男が霧属性の力で化けていた者だ。ウニみたいな頭の、鈴を髪の先に括りつけた、眼帯を付けた男。彼は十一番隊隊長と言っていた。

「ねえ……隊長って何?」
「ん? ああ、この戸魂界には護廷十三隊っていう組織があるんだ。主な仕事は虚……化け物の退治とこの街の警備だ」
「十三隊……それだけの部隊に分かれてるって訳か?」
「お前は、獄寺だったな? そうだ、全部隊には隊長と副隊長がいる。全員が恐ろしく強い」

 そこまで言った途端、彼は口を閉じた。巨大な門がいつの間にか門番の腕力で入り口を開いていたのだから。そして中から十人程度の死神が出てきた。誰もかれも死覇装の上に白い羽織を着ている。そこには一人一人違う数字が漢字で書かれていた。
 戦闘に経つのは頭に管のような飾りを付けた澄ました男の人、それ以外にも銀髪の少年や二足歩行している犬、例の更木剣八、髪を左右で括っている女性や妙な仮面を付けた者もいる。

「報告通りだな、黒崎一護。来るのを待っていた」
「おい白哉ぁ……こんなに隊長が揃ってどうしたって言うんだ?」
「分からないのか? 少し考えればすぐに分かる」
「ん? ああ、こいつらか……」

 今さら気付いたかのように一護は後ろの沢田達を指差す。そんな中、若干の例外を除くその一団は緊張していた。つい先ほど恐ろしいほど強いと説明を受けた隊長が全員並んでいるのだ。その威圧感は緊張なんてものじゃ足りないくらいで、冷や汗が頬を伝うことすら忘れさせた。
 若干の例外とはリボーンと雲雀だ。リボーンは流れと雰囲気から察して、目の前の連中が味方だと分かっている。つまりは緊張ではなく心強さを感じている訳だ。そして雲雀はというと、実力者が揃っていることに高揚感を感じていた。戦闘マニアの彼ならではの反応である。

「もうすでに浦原と夜一様から連絡は受けている。違う世界から来たとほざく連中だという事もな」
「あぁ? そこの女喧嘩売ってんのか?」
「貴様ら相手には喧嘩にもならん」
「んなっ……てめえっ!」

 浦原の時しかり激昂した獄寺はダイナマイトを取り出す。すぐさま対処される事を分かりながら。それでも導火線に火を付けようとしたその瞬間に、もうすでに対応されていた。
 浦原と比べても引けを取らない。それどころか彼をも凌ぐ速度で女性隊長は間合いを詰める。いきなり懐に入り込まれ、銀髪の少年は悪寒を感じる。彼女の右足が消える、それぐらいのスピードで蹴りが放たれる。咄嗟に腕で庇おうとしたとは言え、受け身も取れていない獄寺は一直線に吹き飛ばされる。

「大丈夫か!? にしても速ぇなあ……」
「ああ、今、何が起きたか分からなかったぞ」
「蹴りが入ったのさ、三発ね」

 あまりの出来ごとに驚嘆している山本と了平に、雲雀が横から口を挟んだ。その会話の内容にさらに二人は驚いた。あんな短時間に一発どころか三発も攻撃しただなんて信じられないと。
 ただ、その言葉を聞いて女性は、得意げな笑みを浮かべていた。どうやら何も分かってはいないな、と。ただしそれも、この直後の沢田の一言で崩れることとなる。

「えっ……その前に二回ぐらい平手で突き飛ばしてたけど……」

 沢田の一言に蹴りを入れた当の本人————砕蜂<ソイフォン>————を初めとするほとんどの隊長が目の色を変えた。霊圧の欠片も持たないただの“人間”が、最速の隊長の動きを見切ったのだ。彼女が手を抜いていたとはいえ、これは信じ難い事態、明らかな驚愕の表情を皆が浮かべていた。
 そんな中、一際冷静に努めている白い髭を大層長く伸ばした老人が現れる。左腕は無くなっており右腕には杖を持っている。

「どうやらただの人間ではないようじゃの……」
「元柳斎殿、これより我がこの者たちに説明を始めたいと思うのですが、よろしいでしょうか」
「構わん。頼んだぞ」

 名乗りを上げたのはパッと見ただの犬の姿をした隊長、狛村左陣。犬がいきなり喋ったと思った沢田は酷く仰天する。と言うよりそもそも二足歩行していた時点でかなり気にはなっていたのだが。

「黒崎一護、確か相対した者の名を宇木了平と言ったな」
「えっ、あぁ……」
「おそらくそれは元々護廷十三隊に所属していた」
「……いつ頃?」
「貴公が死神になる、五年程度前だ。確か二番隊の七席だったな、砕蜂殿?」
「ああ、間違いない。隠密機動からの脱走者だ。現世に亡命しようとしたとある死神を追っていくふりをしながらそのまま行方をくらませた」
「当時奴は自らの斬魄刀を偽っていたはずだ。それは貴公らの報告で分かった」
「なるほどな……で、藍染の騒動があってこっちが混乱してる隙に攻め込もうとしたって訳か」
「そのようじゃの。虚圏<ウェコムンド>まで乗っ取って良い気になっておる」
「それで、そろそろ攻めこんでくると思い、ここで待機しているのだが中々現れない」

 何かまだ準備が出来上がっていないかのようにと思っていると、ノイトラがやってきた。いざ応戦しようとしたら一護が退却させたという流れだ。
 そこまでの説明を終えると口をつぐんだ。敵の正体、そして大体の現状ぐらいしか未だ分かっていない。それ以上を口にしないところからそれは察することができた。
 しかし用意が出来ていないとしたらその要因は何か? そういう疑問が出てきたら分からない。そこでようやく結びついたのが、イレギュラーな要素の異世界の者たち。彼らをこちら側に呼びだしたことと、まだ攻めあぐねていることはどこかしらで繋がっていると踏んだ訳だ。だからこそ緊急事態の現在、揃いも揃って隊長が出てきたという訳だ。

「こういう展開……前にもあったな」

 ぼそりとリボーンは呟いた。それを聞いた沢田は気付く。彼らの目的に。

「もしかして……リングが狙われてるんじゃ……」
「どうした少年? 心当たりでもあるのか?」

 思い返す、霊圧と炎圧は強く反応すると言っていた宇木の言葉を。炎の性質を利用するために、ボンゴレリングを呼ぶために自分たちごとこちらに連れてきたのだとしたら、全てのつじつまは合う。ただ攻めただけでは返り討ちに逢うのは当然なので、何か変わり種を探した訳だ。
 そこで彼らは異世界の力を選択した、勝利のために。だから最も強い炎を呼びだすことが可能なボンゴレリングのために沢田達をこちらに誘い込んだ。

「白蘭と一緒か……リングが欲しいから俺たちを誘った」
「なるほど、流石十代目っす。とすると俺たちは」
「狙われている、という事なのだな、沢田?」
「多分そーだな。そろそろ、何か仕掛けてくるのが普通だぞ。きっと現実世界に来るだろうな」
「なっ……! 洒落にならないぞリボーン!」
「笑い取るために言ってんじゃねえ、可能性が高いんだ」

 突如、とてつもなく大きなサイレンのような音が聞こえてきた。けたたましく音を轟かせながら誰かの声が告げる。



————現世が、何者かの手によって襲われていると。


二話『ソウル・ソサエティ』完結です、
三話『開戦』に続きます。

Re: 【二章完結】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.58 )
日時: 2012/02/24 16:00
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: gWvD8deM)

第三話 開戦





「何じゃと? 現世が?」
「やっぱりそう来たか。予想通りだな」

 いきなり予想外の所に攻め込まれて狼狽する隊長達をさておき、リボーンはと言うと沢田に向けて得意げな笑みを作る。自分の推測は当たっていたではないかと。こうまでなると、とある事実が確定する。相手が狙っているのはリング、自分たちは挑発されていると。
 冷や汗が流れ、背筋を冷たい何かが伝う。またしてもこれを賭けて闘わないといけない、そう思いながら指輪を睨みつける。もうこれで三度目だ、大きな力を手に入れたい連中と闘うのは。

「総隊長、現世監視を行っている班員からの伝言です。相手からは霊圧どころか一切の霊力が測れないとの事です」
「何じゃと……手出しができないという事か……」

 突然、奥の方の巨大な建物から顔を笠で隠した痩身の男が走ってくる。そして総隊長、隻腕の老人、山元元柳斎に報告をする。その内容は相手から霊力が感じられないとの事で、それを聞きつけた一同からはざわめきが上がった。
 一切の霊圧が無い者は、霊的濃度の高い存在、死神や虚に対して触れることはできない。つまりは干渉できないのだ。人間が死神に触れられない、だとすると裏を返せばこちらからも手出しができない。むざむざと目の前で人が死にゆく様を見届けないといけないのだ。
 どうするものか悩む彼らに、報告のため走ってきた彼は立方体の装置を床に置いた。そこから立体的な映像が飛びだす。

「これが敵の姿です。五人組で全員女のようです」
「そうか。それにしてもこの妙な色の炎は何じゃ?」
「それが……未だに解明できずにいるのですが……」

 不味そうにして黙り込んでしまった男に対して、その沈黙を破るようにして沢田が口を挟んだ。

「それ……死ぬ気の炎です」
「初めて聞くな、何なのだそれは? 黒崎一護の付き人よ」
「俺達の世界で、闘う時に使う物です。色は属性を表わしていて、属性が違えば効果も違います」
「貴様らにはそれが使えるのか?」
「はい、一応」

 そうか……、余韻を残してそのように呟き、髪飾りを付けた男性は黙り込む。何か考え事をしているようで、ぶつぶつと独り言を漏らしている。
 そしていざ、覚悟が出来たとでも言いたげに口を開いた。彼を知っている者としては信じがたいような言葉だったが。

「こちらから手が出せぬと言うのならば仕方ない。恥を忍んで貴殿らに頼む。我らの代わりにこの者たちをどうにかしてくれぬか?」
「どうすんだ、ツナ?」

 ニッと笑いながら沢田の肩の上でリボーンは問いただす。目の前で傷つきそうな人がいる、そんな映像を見せつけられている沢田が行かないと言う結論を下す訳が無かった。

「行こう、皆」

 そう答えると、待っていたと言わんばかりに各々が答えだした。各自の意思表明のために。

「勿論です、十代目」
「待ってました、って感じだな」
「では行くかぁ!」
「了解……ボス」
「コラー! ランボさんを置いていくなー!」
「ヤダ」

 順調に了承の言葉を述べる中、ただ一人だけ行く気の起こさない者が現れる。最後の一言に皆が反応する。誰が輪を乱しているのかと思ったら、そこに居たのは雲雀だった。

「こっちに来てからどれだけ群れたと思ってるの? そろそろ限界だよ。行きたいなら勝手に行ってきて」
「てめえなあ! 何言ってんだ、十代目の命令に従え!」
「前々から言ってるだろ? 僕は従ってるつもりはないし君たちと群れるつもりもない。邪魔するなら咬み殺すよ?」

 挑発するように雲雀はトンファーを取り出す。それに対して獄寺も手元から自分の武器を取り出す。
 学ランの男子と爆弾魔の男が今にも内輪もめを始めようとした時に、雲雀のやる気を高めるためにリボーンは口を挟んだ。

「おい雲雀、これ見ても黙ってられるのか?」
「ん、どうしたんだい?」

 呼びとめられた彼はさっきの立体映像を凝視する。すると、どこかの学校の制服姿の黒髪長髪の女子が、壁に『小鳥はこちら』と、明らかな挑発文を刻み込んでいたのに敏感に反応した。
 さっきまでの群れたくないがために脱力感はどこかへと吹き飛び、彼の中に本来の闘争心が戻ってくる。自らをコケにする者は許さないと言いたげな眼光、相当に怒りが溜まっているようだ。

「予定変更だ、彼女から咬み殺そう」

 彼が戦闘に参加するつもりになったのを見届け、一同は安堵する。雲雀がメンバー内で一、二を争うのは周知の事実。居ると居ないのとでは全く士気が異なってくるだろう。それ以前に居なかったら負ける可能性だってある。
 一人ずつ、覚悟を決めたところで一気に顔つきを変える。気合いは十分であり、充分強い炎も灯せそうだ。

「では、穿界門を開く。急いで拘突を止めよ」
「現世に現れた時点ですでに完了しています」

 元柳斎の命令に、伝達の男は返す。既に大半の用意は整っていると。それを聞いた面々は沢田達を現世へと戻る入口へと案内する。戦闘に立つ隊長達に、すぐさま彼らはついて行った。

「なあリボーン、変なことがあるんだけど……」
「どうした? 何かあったのか?」
「実は、さっき普通の人には死神は触れないとか言ってたけど俺達を襲った奴らは、普通に雲雀さんのトンファーが当たったし、マントで光線を防げたんだけど……言ってる事が違うっていうか……」
「……確かにな。ダメツナにしてはよく思いついたな」
「それに、襲ってる人達も死神が見えないっていうのに死神の味方っていうのも変な話だし……」
「流石は超直感だな。まあでもそこは俺にも分からねえ。とりあえず攻めこむ奴らを片付けるだけだぞ」
「うん……それもそうだね」

 疑問が解消されたとまでは行かないが、相談して軽いものになり、安心した沢田は歩調を速める。肩の荷が下りる前に大分置いて行かれているのだから必死で今から追いつかなくてはならない。
 目指す先には階段があり、宙に障子が浮いていた。障子の向こう側には微かに、つい先ほど通ってきた空間が口を開けていた。
 先程は、無事にたどり着くために急がなければならなかったが、今度は違う。より多くの人を護るために急がないといけない。
 それならば得意分野だとでも言いたげに、彼を初めとする数人の仲間はしっかりとした顔つきで歩んでいた。






                             〜現世〜

「何か……女の子扱いされた気がします」

 青みがかった銀の長い髪の少年は、あからさまに不機嫌な顔をしてポツリと呟いた。ただしその声は周りの誰にも聞いてもらえなかった。

「あー、っもう! まだなのかしらあいつらは……」
「本当だぜ、もう五、六個ビルぶっ壊したっていうのによ」
「その割に死人は出てませんけどね……」
「無用な殺しは精神の教育に悪影響をもたらすと教わったのよ。あなたみたいな甘ちゃん達にも無理でしょう」
「甘ちゃんって……闘ってる時は私甘ったれたこと言ってないわよ」

 倒壊した後のコンクリート片を眺めながらグチグチと呟く五人組は、被害者から見たら化け物のようだった。いきなり現れたかと思うと五人がかりでいきなり建物を襲撃し始めた。風にさらされ水流に揉まれ、炎に焼かれ冷気に叩かれ……三十分も経てば二十階程度の建築物が半壊していた。
 そんな中で人一倍愚痴を洩らしているのは、元来の口が悪い時空だった。八つ当たりだと言わんばかりに詩音や風花に罵声を浴びせるも、冷静な二人には対して効果が無かった。
 そろそろ退屈も限界で、一気に半径五メートル程度吹き飛ばしてやろうかと思ったその時に、ついに扉は開いた。彼らの腕時計状のレーダーに、霊界へと繋がる道が開いたという信号が現れる。ついに向こうからリングを携えた沢田達が戻ってきたのだ。
 よし来たと言わんばかりに、いきなり篠原と時空は駆け出した。それぞれ、沢田と雲雀という自分の見定めた標的と闘うために、他の者にターゲットを奪われないように。ただし、同じく標的を定めているはずの詩音は穏やかにしていた。分かっているからだ、鈴音風花も姉の紅蓮も自分の意思を尊重してくれることが。
 紅蓮と風花に、誰と闘いたいという願望は無い。よって詩音には焦る必要が無かった。

「ちょっと篠原さん? ストーキングするのやめてくれないかしら?」
「五月蠅い。私が行こうとする方向にあんたも行ってるだけだぜ」
「屁理屈は良いから、離れなさい」
「そっちこそ、私は向こうに敵がいるから急いでんの。雲雀だったら待ってても来るから我慢しなさい」

 醜い口論を続けながらも二人は相対する者の出現地へと向かって走る。現に相手との距離はもうすでに大分詰まって来ている。向こうもこちらと同様に探しているのだとしたら、遭遇するのも大分早いはずだ。
 ふと、炎の気配が彼女達のすぐ近くから感じられた。壁一枚隔てた所に誰かがいる。誰が現れるかと思っていたら、いきなりそれは上空に飛び上がった。

「当たりじゃん! じゃあな未来、私は先に交戦しとくぜ!」
「ちっ、ついてないわね……さっさと出てこいよ弱虫小鳥……」

 嬉々とした表情で上に飛び上がった篠原を見て、聞こえるように時空は舌打ちをする。ただしそれは、歓喜する少女の耳に入っても特に嫌悪感は無かった。
 どうしようもない苛立ちをさっさと人にぶつけてしまいたくて、愚弄の言葉を交えながら雲雀を呼ぶ。するとそれが願ったり叶ったりか、紫色の死ぬ気の炎が視界に入った。あの属性でかなりの量、それを扱えるのは雲雀しかいない。自分だって幸運が舞い降りているのだと、彼女はその方向に飛びだした。
 そこには、案の定雲雀がいた。

「ようやく見つけたわ」
「ああ、君かい? 僕も探していたんだ。風紀委員を愚弄するなんて校則違反だ、咬み殺す」
「別にあなたの学校の生徒じゃないんですけど?」


                             ◆◇◆


 見せつけるように雨の炎を上空に向けて燃やしながら、詩音と紅蓮の双子は敵を待ちかまえていた。下らない世間話で談笑しながら、誰かが近づいてくるのを待つ。
 もうすでに風花の方は先にどこかに行ってしまった。ここで固まっている訳にもいかないという事で。そういう訳で姉弟の二人組で待っていた。
 そしてその時ようやく、足音が聞こえてきた。数えてみると二つ、二人組で行動しそうな残りのメンバーを考えるとおそらくはあの二人。

「おっと、双子の姉妹か? しかも何気二人とも剣士なのな」
「適当な事ってる場合かよ。ちゃんと準備しな、強ぇぞこいつら」

 現れたのは獄寺と山本。二人ともすでに準備は万端のようで、獄寺はベルトにいくつもの匣を付け、山本は抜き身の日本刀を持っていた。
 詩音は紅蓮に対してアイコンタクトを取った。銀髪の方の男は任せると。口にはしていないが充分意思疎通のが取れるので、紅蓮は了解の意を込めて頷く。
 こちらも、戦闘に向けて、お互いに万全の態勢は整った。


                              ◆◇◆

「うーん、三対一か……。でもま、そんなに強くなさそうだし大丈夫でしょ」

 鈴音はと言うと、残った了平、クローム、ランボの三人組と一挙に鉢合わせていた。クロームとランボに至っては時空や篠原の敵ではない宣言を思い出して安堵する。事実上ほとんど一対一と変わらないと。
 得意げな顔でさらりと挑発されるも、相対している三人はというと、怒るどころか緊張を感じていた。


次回に続く。

Re: 【二章完結】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.59 )
日時: 2012/02/23 18:38
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)


おおっ2話完結!!


ていうか雲雀さんほんとに群れるの嫌いだね・・・

Re: 【二章完結】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.60 )
日時: 2012/02/23 21:55
名前: 炎修 (ID: ixsLSGyl)

二章完結おめでとうございますm(_ _)m
ふと、思い付いたのですが、詩音と紅蓮の剣が死ぬ気の炎をともすリングと同じ石でできている。というのは、どうでしょう?

Re: 【二章完結】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.61 )
日時: 2012/02/24 16:09
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: gWvD8deM)

月那さん
ええ、二章完結しました。
前期入試で学校行けない隙に一気に書きまくりました。
来週テストなんで書けない可能性が高いので。
雲雀さんならきっとあれぐらい言っちゃいそうだと思ったのでああしました。
でも実際はいつの間にか勝手に一人で闘いに行っちゃいそうですけど……

炎修さん
あ、その設定で行っていいですか?
元よりそんな感じで書こうと思ってたのですがこれで安心してできます。
風花も同様にしますね。義眼も同じ石にしてしまいましたが
それはそれで別で考えた闘い方に使わせて頂きます。




>>58が完成です。想像以上に長くなりました。
次回の話は雲雀VS時空未来の予定です。
その次ツナVS篠原鈴、その後に双竜姉弟、からの三対一です。
バトルシーンは最近全然書いてないんで下手だった以前よりもさらに酷いかもしれませんがよろしくお願いします。
俺のバトルシーンは省略しすぎて分かりづらい、もしくは長すぎて面倒くさいの二択ですので……
要するに下手なんです、申し訳ありません。


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