二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-無事完結
- 日時: 2011/06/02 18:32
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
初めましてー、ここでは本当に初めましてです。
ダメ作者の、山下愁です。
今回はですね。私の好きな銀魂と戦国BASARA3をごっちゃにした小説を書きたいと思います。
ハイ、注意!!
その1→キャラが完全崩壊。
その2→銀魂のストーリーを選び抜いてやりますから、ストーリーも崩壊。
その3→オリキャラが大暴走。
その4→何か……くそい。
その5→山下愁無理、神文読みたいな人は今すぐUターンをして、原作を読んでいてください。
その6→荒らし、誹謗中傷なコメは、強制的に無視します☆
……残った? 残りました?
では、残った人だけ、読んでください!!
ご訪問者 ありがとうございました!!
かにゅ様 野宮詩織様 ロン様 如月葵様 柚莉様 ああ様 ★ジャスタウェイ★様
お知らせ系列
オリキャラ募集>>24 募集終了!!
何のお話が好きですか? >>39
目次
登場人物>>01
プロローグ『何やかんやで、降ってきちゃったんだよなこれが』>>02
第1話『とりあえず、郷に入っては郷に従っとけ。大丈夫だから』
>>05 >>07 >>12 >>14 >>15
第2話『薬とかヤバいものあるけど、皆注意してね、街で海が見えるから』
>>16 >>17 >>18 >>19
第3話『機械? あれだろ、何か……うん。あれだよ』
>>20 >>21 >>22 >>23
第4話『ほくろに毛があると幸せになれるって本当ですか?』
>>27 >>31 >>32
第5話『下着泥棒って居るじゃん。あれって、何が楽しいの?』
>>33 >>38 >>44
第5.5話『怖い話って案外怖くないんだよ』
>>55 >>58 >>60 >>61
第6話『海の家に売っている焼きそばは、大体もっさりしている』
>>62 >>63 >>64
第6,5話『恋っていいよね』
>>68 >>71 >>72 >>73 >>74
第7話『記憶喪失に負けず、叩けば直る』
>>78 >>81 >>82 >>84
第8話『お花見は大体理性を飛ばしやすい』
>>100 >>101 >>108
第9話『忍者? うちにも居るでしょーが!』
>>111 >>112 >>113 >>114
第10話『紅桜ってさ、ある意味怖い桜だよね。だって赤いもん』
>>115 >>116 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121 >>122
第11話『動物は最期まで大切にしてあげなさい』
>>125 >>126 >>127 >>128
第12話『ロボットは怖い、バグが怖い』
>>131 >>132 >>137 >>139 >>141 >>142 >>145 >>146 >>147
第13話『雨は必ず上がる』
>>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155
第14話『鎖で縛られて喜ぶのはただのM』
>>157 >>158 >>159 >>160 >>161 >>163
第15話『夢の中が自分で彩れたら最高じゃね?』
>>164 >>165 >>166
第16話『空を見上げて歩こうか』
>>167 >>168 >>169 >>170
エピローグ『炎神暴君☆リシタニア』
>>171 >>172 >>173
あとがき>>174
質問大会
東翔>>51
椎名昴>>54
山本雫>>59
篠宮優奈>>65
月読怜悟>>95
王良空華>>156
スカイ・エルクラシス>>162
作者の裏設定情報ー☆
その1>>75
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- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.115 )
- 日時: 2011/04/14 18:59
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 紅桜ってさ、ある意味怖い桜だよね。だって赤いもん。
「そこの奴……」
怜悟は歩みを止め、後ろを振り向いた。
そこに居たのは、傘をかぶり刀を持った男だった。顔は見えない。
刀身が月夜に照らされ、血を吸ったように赤く染まっていた。
「誰だ?」
怜悟は警戒しつつ、その男に訊いた。手はきちんと背負っている斬鉄の柄に触れている。
そんな反応が楽しいのか、男は声を押し殺して笑いだした。
「何をそんなに笑っている?」
「いや? 別におかしくないよ。ただ楽しくてね?」
男は刀を振り上げ、空中で一閃。
その瞬間、怜悟の肩から滝のような血が噴き出してきた。
「なっ————?!!」
「さようなら。破壊神、月読怜悟」
怜悟はそのまま地に倒れてしまった。
***** ***** *****
「……」
「「「「「…………」」」」」
万事屋銀ちゃんでは、無言の空間が続いていた。
お客としてやってきたエリザベスは、何も喋らずにずっと皆の前に座っているだけだった。
「……で、お前は何で来たんだ?」
オーナーの銀時が居ない為、代わりとして翔がエリザベスに訊いた。
何も答えない。10分前からこんな状態が続いていた。
やがて、そんな息苦しい空間に耐えきれなくなり、鶴姫が根を上げた。
「もう!! 何ですか、この人。全然喋らないじゃないですか!」
「こいつは人なのか?」
毛利が怪訝そうに顔を歪めながら、鶴姫に問う。
翔は首を傾げて、新八に「銀時のイチゴ牛乳を持ってこい」と頼んだ。
「でも、銀さんが怒るんじゃないかな?」
「この前に俺が大切に取ってあったチョコを食べやがったからお返しだ」
吐き捨てるように理由を話し、翔はまた無言になる。
新八は言われた通りに銀時のイチゴ牛乳をグラスに注ぎ、エリザベスの前にトンッと置いた。
すると、エリザベスはそのイチゴ牛乳を見た途端、泣きだした。
「ビンゴだ! そんなに好きなのか、イチゴ牛乳!!」
「やったアル。新八、でかしたネ!」
「あれ、これで良かったのだろうか……」
エリザベスがイチゴ牛乳好きだと分かったらしい。
その時だ、1つの風が吹いてスタンッと床に誰かが降り立った。
宙を舞う黒髪、全員を見据える翡翠色の隻眼。言わずもがな、王良空華である。
「おう、どうした空華。何かあった————」
翔が気楽そうに返事をしたが、途中で息が止まっていた。
何故か? それは、空華が背負っていた青年を見てだ。
血に濡れた黒髪。だらりと力なく下がっている白く細い腕。本来なら細い切れ長の紫の瞳が見えるはずだが、今は閉じられている。
全員が良く知る仲間————破壊神、月読怜悟である。
「怜悟?! どうしたんだ、おい?!」
いつもの冷静さを忘れ去り、翔は空華に背負われている怜悟を揺さぶった。
しかし、怜悟は目を開かない。静かに閉じただけだ。
空華は苦虫を噛み潰したような表情を作り、何故こうなったかを説明し始める。
「朝に見たら、橋の上で倒れてたらしい。このままだと死んじまうって思って……。俺様は傷を癒す技はないから……。どうしよ、翔?!」
必死の表情を浮かべる空華は、翔を頼る。
とりあえず怜悟を安静な所に連れて行こうと言う訳で、奥に敷いてある翔の布団に寝かせる。
「……まだ生きてる。でも、急速に死亡時刻に向かって行ってるから……、佐助。真選組から希実を借りてこい!」
「了解」
傍で控えていた佐助に命令し、翔は立ててあった炎神を背負い万事屋から飛び出した。
目的は凜の所。情報を集める為に——
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.116 )
- 日時: 2011/04/14 20:27
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 紅桜ってさ、ある意味怖い桜だよね。だって赤いもん。
凜は静かに天井を見上げていた。
ゆらりと手を上に伸ばしても、そこにある天井は掴めず空を掴むだけだった。
すると、そんな空間の中に翔が飛び込んできた。全速力で走って来た為か、息遣いが荒く汗が滲んでいる。
「あら。どうしたのかしら、そんなに急いで」
凜の気だるげな瞳が、翔に向けられる。
翔は凜の前に詰め寄り、バンと目の前のデスクを叩いて乱暴に言葉を吐いた。
「辻斬りの情報を渡せ。奴を狩る!」
その言葉を聞いた凜は、にっこりと笑う。
「いいのかしら、死神は簡単に人の魂を狩ってはダメなんでしょう?」
「どうでもいい。仲間がやられた、怜悟が今にも死んじまいそうなんだ」
ガッと凜の胸倉を掴み、翔はもう1度だけ凜に言う。
「辻斬りの情報を渡せ。主犯者を狩る」
***** ***** *****
万事屋銀ちゃんに戻った翔は、ソファに座り込み大きなため息をつく。
事態が大きくそして急すぎて収集がつかなくなりつつある。こめかみを押さえ、ゆっくりと瞬きをした。
翔が帰って来た事に気付いたのか、孫市が反対側のソファに座る。
「どこに行っていた? 報告をすると、希実に傷を回復してもらい、今は眠っているぞ」
孫市が怜悟の方に視線を投げる。
布団に寝かされた怜悟は、規則正しい呼吸を繰り返し眠っている。ザックリ切られた肩の傷は、完全に癒えていた。
「辻斬りの情報を聞いていた。……許せない、絶対に狩ってやる」
翔は舌打ちをして、今にも砕けそうなぐらいに震えている拳を机に叩きつけた。
「落ちつけ。お前らしくないぞ。俺様で自己中だが、冷静でどんな状況でも対応出来る————それが死神である、東翔の姿だろう?」
「この状況で落ちついてられるかよ!! 絶対に許したくない、あと1歩で死ぬところだったんだ!!」
ソファから立ち上がり、翔は叫んだ。
静かに、冷静に、落ちついて翔を見上げる孫市は、小さなため息をついた。
「それで。その辻斬りとやらの情報はどんななんだ」
怒号が聞こえてきたのか、元就が翔に問いかけた。
翔は深呼吸をしてソファに座り直し、凜に聞いてきた辻斬りの情報を説明する。
「相手は強い人を探している。会った奴は全員、斬られて終わるって話だ。ただ、その刀が、生き物のように動く刀身の赤い刀だったというらしいが」
「赤い刀? ならば、貴様の鎌も赤くないか?」
「残念だが、俺は柄だけだ。刃の方は銀色——鋼色と言った方がいいか? まぁ、問題はそいつが夜に出るって話だけどな」
そして夜になる。空が真っ暗になり、星がちりばめられていた。
「へぇ、怜悟が襲われたんだー。ふーん」
翔から話を聞いた雫は、さも興味無さそうに答えた。
一応経緯を雫に話しておいた翔は、そんな反応を返されて殴りたくなったがとりあえず我慢しておいた。
「まぁ興味はないけど。辻斬りは許せないね、うちも協力するよ」
「助かる。お前は馬鹿だけど、戦力にはなるからな」
「それってさ、褒めてるの貶してるのどっちなの?」
笑顔で銃を翔の額に突き付ける雫。
翔は銃を振り払い、目の前に置かれていた水を飲み干した。
「辻斬りは、本当に許せない」
「ホント、翔ちゃんは仲間を大切にするね。死神なのに、人には干渉しちゃいけないんじゃないの?」
雫は片手で銃を弄びながら、翔に訊いた。
「許せないもんは許せない。斬ったから斬り返す、それが常識!」
「いや、常識じゃないでしょー」
雫は銃をホルスターに戻し、大きく伸びをして椅子から立ちあがった。
翔も雫の背中を追いかけて椅子から立ち上がる。
空は暗く、そして月がぽっかりと浮かび星が見えていた。
「……今日も起こるかなー」
「何が?」
雫のつぶやきに、翔は首を傾げた。
「んー、独りごと。それより、パトロールみたいなの、行ったら?」
その時だ。
遠くで、鶴姫の悲鳴が聞こえたような気がした。
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.117 )
- 日時: 2011/04/15 18:31
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 紅桜ってさ、ある意味怖い桜だよね。だって赤いもん。
鶴姫の悲鳴が聞こえた方向へ走って行くと、そこに居たのは岡田似蔵と地に倒れた銀時、そして沢山の奉行所の奴らだった。
武将達が、必死の形相で銀時の名を呼んでいる。
翔は何が何だか分からず、その場に立ち尽くしていた。瞳の奥が震えていて、焦点が合っていない。
そんな翔を横目に、雫はホルスターから銃を引き抜き、岡田に突き付けた。
「そこの奴!! 銃姫・山本雫の名の下に貴様をこの場で処刑する!」
「へぇ、面白い娘が最近では居るもんだねぇ」
岡田は切れた腕を押さえ、赤く光る刀を持っていた。そして、汗の滲む顔に笑みを浮かべる。
その時だ。
闇の中に奔った銀影。誰もがシノかと思ったが、違っていた。
その銀色は鎌の刃。夜空に高々と突き上げ岡田に向かって行くのは、翔の姿だった。
「岡田、似蔵だな。お前を殺す」
その声は、今までも翔の声よりも低く、そして冷たく無感情で、ナイフのような声だった。
誰もが翔の名を呼び止めようとしたが、誰の声も聞こえていない。
すると、凜とした声が、闇に響いた。
「岡田さん、何で負けてるんスか。俺が出る幕じゃないでしょうがぁ」
翔の瞳が開かれる。
聞き覚えのない声。しかし、この気配はいかにも————死神?
「ダメだよ少年。岡田さんには、まだまだ働いてもらわなきゃいけないんだから」
背後に降り立った亜麻色の青年。短い亜麻色の髪が夜空に舞い上がる。
誰もが錯覚を覚えた。明らかに、その青年は凜と酷似している。
「……お前、まさかっ————」
翔の言葉が終わる前に、青年は武器を横へ滑らせた。
月明かりに照らされて映し出される銀色の鎌。間違いなく、それは死神が使う鎌である。
ゆっくりと翔の体が、地に向かって倒れて行く。
熱い傷口から血が流れ、宙へ舞い空を赤へ彩って行く。
「……市ノ瀬、蘭」
そこで、彼の意識は途切れた。
***** ***** *****
一方である。
神楽は定春と一緒に桂の動きを探って、港までやってきていた。
もう夜である。13歳の彼女にとっては少々きつい仕事である。くぁ、と欠伸をして定春に言う。
「定春、もう帰るヨ。ヅラなら生きてるってー」
帰ろうと定春に言うが、定春は前を見据えたまま動かなくなった。
そこにあったのは、大きな木製の船だった。静かにそこに佇み、何かを物語っているようだ。
神楽がそこに特攻しようと番傘を構えた瞬間、誰かに肩を掴まれた。
「ッ!! 誰アルか?!」
振り向きざまに番傘を相手に突き付ける神楽。
月夜に照らされ、輝く銀髪。と金髪。シノとミウである。
「どーしたのかなって思って。通りかかったからね?」
両手を挙げ、フリーズする2人。表情には苦笑を浮かべている。
神楽は番傘を下ろし、今までの経緯を話した。
「つまり、翔達は赤い刀を追っていて、神楽ちゃんはあの船に特攻すると……。アタシも行くわ」
「何を言うアルか?! シノ達は関係ない、私1人でも——」
「戦力は、多い方が良いと言いますし。優奈だって私だって、簡単にはやられません。人は見掛けによらないんですよ」
シノとミウは、心配する神楽に笑顔を見せた。
神楽はそんな2人に観念したのか、黙って背中を見せた。いいよ、と言っているのだろうか。
「じゃ、行こうか!!」
「おう!!」
「了解です!!」
3人は船に乗り込んだ————
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.118 )
- 日時: 2011/04/16 18:17
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 紅桜ってさ、案外怖い桜だよね。だって赤いもん。
うっすらと目を開ければ、目前に広がったのは万事屋の天井である。
意識を取り戻した翔は、動く範囲で首を横へ動かす。
襖、壁に寄り掛かったり、床にダイレクトに寝たりしている武将達と、未だ目を覚ましていない怜悟の姿が目に映った。
「お前ら——?」
「起きたんだ」
襖が少しだけ開き、雫が顔を出す。持ってきていた水を翔の横に置き、静かに隣に正座をする。
翔は小さなため息を漏らし、上体を起こす。
すると、肩に激痛が奔り、布団の上で悶絶する。死神同士の鎌で傷をつけられると、治るのに時間がかかるのだ。
そんな翔を見て、雫は翔を布団の上に押しつけた。
「まだ寝てないとダメだよ。ね?」
「いや、俺はあいつを止めないとダメなんだ。誰が何と言おうと、この身を壊してでも止めないと」
歯を食いしばり、起きようとする翔を雫は必死に止めた。
だが、翔も翔で譲れないらしく、傷がついた体に鞭を打って起きあがろうとする。
そこへ、凜が呆れたような表情を浮かべて入って来た。
「怪我をしたって言うから来てみたんだけど、元気そうね。何よりだわ」
「うるせぇ奴が来たぜコラ死ね消えろ帰れ冷やかしなら即刻帰れ」
翔は動けない分、口で攻撃をしてきた。
一方の凜は深いため息をつき、雫の横に正座をする。
「……私の兄が、申し訳ないわ」
「…………。やはりな。お前の兄は、俺に……いや、俺達に異常なまでの憧れを抱いていた」
天井を静かに見据える翔。瞳の奥が死んでいるようにも見えた。
何も言えなくなる凜は、うつむいて黙りこむ。
「それで? 兄が迷惑をかけましたって言いに来たのか? それなら気にはしていない、どうせあいつは死ぬ」
「分かっているのね」
落ちついた声で、凜は返答した。
フン、とつまらなさそうに鼻を鳴らした翔は、ゴロリと横に寝がえりを打つ。
「人工死神を造ったところで、それで何になるんだろうな。どうせ死神の力が体に大きな負荷をかけてすぐに死ぬんだろうが」
独りごとのようにつぶやく翔。
その言葉を聞いて、凜は唇を噛み拳を作った。
「お願いがあるの」
震える拳の上に涙を落としながら、凜は言う。
「蘭を……、兄を助けてあげて」
いつもの凜からは想像出来ない涙声。綺麗な漆黒の瞳からは、綺麗で透明な涙が溢れている。
翔はチッと舌打ちをして、傍に控えている雫に「炎神を渡せ」と命令した。
理由が分からない雫は、とりあえず言われた通りに炎神を翔に渡す。
「んな事はしたくねぇが……。やるっきゃないよな」
ひとりごち、翔は自分の指に炎神を少しだけ滑らす。切られた指の先からは、自分の血が流れ出てくる。
その血を、翔は何も言わず舐めとった。
すると、心臓が大きく跳ねるような「ドクン」という音が聞こえ、翔の切られた傷が見る見るうちに回復して行く。
「え、何——」
何が起きたのか分からない雫は、口をパクパクと開けて座りこんでいた。
翔は体を起こし、炎神を担いで死神装束を羽織る。包帯をはぎ取り、そこら辺に寝ていた幸村、政宗、家康を蹴り起こした。
思い切りけられたのか、激痛で無理矢理起こされた3人は、相当不機嫌そうだった。
「凜。よく聞け」
ボサボサだった黒髪を手櫛で梳かし、髪紐で左下に結う。
いつもの姿に戻った翔は、凜に向かって親指を突き出し、そのまま下へ持って行く。「死ね」のジェスチャーだった。
「俺は蘭を許す気はない。あいつの記憶を改造されるのは覚悟しておけ」
それは、翔達「死神」にとっては最大の譲歩である。
死神同士で傷つけあう事は、どちらかが必ず死ぬ。だが、今の翔はそんな事は一言も言っていなかった。
言葉が意味する内容——「殺しはしない」である。
「だからお前も協力はしろよ。体力バカ」
「えぇ、分かってるわよ。自分の兄ですもの」
涙を拭い、凜は立ちあがった。
***** ***** *****
曇天の空。風が吹き荒れ、少年の髪を大きく乱す。
彼方を見据える翡翠色の双眸——その目下にあるのは大きな船だった。
少年は小さく笑みを浮かべ、そしてつぶやく。
「まったく、高杉晋介の野郎には呆れるねー。俺に一体、どうしろって言うんだ。鬼兵隊になんて、死んでも入りたくないし」
薄い紙で作られた手紙を粉みじんに引き裂き、少年は笑う。高く高く、どこまでも響く笑い声で。
やがて、その笑い声は止まり、1人の少年の名前をつぶやく。
「東、翔。どこに居るのかなー」
また笑う。今度はクスクスと、声を漏らして。
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.119 )
- 日時: 2011/04/17 16:39
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 紅桜ってさ、案外怖い桜だよね。だって赤いもん。
「うぉらあぁぁ!! アタシらをここから出せぇぇ!! そしてお前らはくたばれぇぇ!!」
折檻され、必死に檻を叩き壊そうとするシノ。目が必死。
一方、捕まっているのを楽しんでいるのかあるいは自覚していないのかミウはニコニコと笑っていた。
ちなみに言うと、神楽もシノと同じく檻を壊そうと必死である。
「だーもう!! 何でここから出られねぇんだよ。マジざけんな。死ね!」
フープでガッツンと檻を叩くが、一向に壊れない。
そんな3人を、来島また子と武市変平太は耳を塞いでジト目で睨んでいた。
いや、睨んでいても静まりませんよ。その2人は少なくとも。
「何なんスかァ、武市先輩。こんな奴ら、さっさとやっちゃいましょうよ」
「うるさいですね、これだから猪女は。もう死ねばいいのに」
「お前が死ねばいいのに」
静かに舌戦を繰り広げる2人に向かって、ミウはフープを投げた。また子の頭にぶつかり、バウンドして手に戻ってくる。
やはりいつものニコニコ顔を浮かべて、そして一言。
「うるさいから静かにしていてくれません?」
「ハァ?! 人質の分際で何を——!!」
「また子さん。あなたはまだ気付かないのですか? 彼女達の正体ですよ」
武市は顎をしゃくり、3人を指す。
「あの娘は夜兎族ですし、こちらの金髪娘は金叉族。さらにあの絶滅したとまで謳われた夜叉族の子もいますし」
「だから何だってんスか。強いんスか? こいつらが?」
信じられないと言うようにまた子はシノに視線を送る。
今まで「ただキレる」という行動を繰り返していたが、今此処でシノのバロメーターは破壊。プチッという嫌な音が頭の中から聞こえてきた。
瞬間、メキッという音が檻から聞こえてきた。
何事かと思った全員は、音がした檻に目を向けた。
音を作ったのは、シノだった。手に握っていた檻が、へし折られている。
「な、な?!」
まさか、シノが折った——?
檻から除くシノの瞳は、どこまでも赤く紅く紅く、血のように染まっていて————、
犬歯が覗く口から赤い舌を少しだけ外に出し、シノは剛腕を振るった。
***** ***** *****
「なぁ。変な音が聞こえてきたんだけど、気のせいだよな」
「気のせい、で済むと良いな……」
新八、翔、凜、雫、武将メンバーは高杉一派の船に近付いていた。
敵兵が多すぎて特攻するにも出来ない状態に追い詰められている。さて、この状況をどう突破しようと言う話だ。
うーんと翔としんぱちが頭を抱えていると、敵兵の前に孫市が飛び出した。
銃を乱射しながら船に突っ走る孫市。そうか、正面突破かー、っておい!!
「孫市ぃ!! お前は何をしてるんだ、敵の方が俺らより圧党的に多くて強いぞ!!」
「それがどうした」
政宗が、胸を張って堂々と答えた。
武将メンバーが、妙に頼りがいがありそうな感じがする……。どうしてだろうか。
きっと全員は、こういう状況を数多く繰りぬけてきた戦の玄人なのだ。
「ここは俺らに任せな!! 派手なPartyにしてやるぜ!」
初めから6本の刀で敵を斬りつける政宗。
あーぁ、この始末はどうするかなんていつもは考える翔だが、今回だけは別だった。
タタッと先陣を切って道を走り、後ろに控える新八達に告げる。
「武将達の力を無駄にするな! 行くぞ!!」
「あ、ちょっと待って?!」
新八が全員を止める。
忙しそうに凜は「何?!」と新八に訊く。
「船の先頭に居る人って、神楽ちゃんとシノさん達じゃ——?!」
「「「「ハァ?!!」」」」
確かに、船の先頭に磔刑をされているのは、シノとミウと神楽の姿だった。
一方、シノとミウと神楽は、命の危険にさらされていた。
船の先頭に張り付けられ、逃げられないようにされている。一体どうしたら逃げられるだろうか、と一生懸命考え中である。
シノは大きなため息をついた。
「もう死ぬしかないかなー」
「そんな事を言わないでくださいよ。悲しくなるじゃないですか」
「そうアル。絶対、誰かが助けてくれるネ!」
落ち込むシノを、2人は一生懸命元気づける。
その瞬間、目の前がいきなり明るくなった。相手の船から光線が撃たれたのだ。
今にも当たりそうな3人の前に、
「地獄業火、獄炎乱舞!!」
炎が生まれた。
光線を相殺し、辺りに煙を立ちこめさせる。
曇天の空に生まれた4つの人影——翔達である。
「「「翔、凜、雫、あと誰だっけ?」」」
「酷ぇなお前ら?!」
新八は「そんなに影、薄いかなー」とつぶやきながら、神楽達の縄をほどく。
騒動が気になって来たのか、また子と武市、そして蘭の3人が甲板に現れた。
蘭は7人の姿を瞳に捕らえると、苦笑を浮かべる。
「一体どうやってビームを相殺したのさ? 教えてほしいね、死神の俺に」
「そうッス! 誰の回しもんスか?!」
また子は銃を構えながら叫ぶ。
翔はにっこりと笑い、雫はあははと豪快に笑い、シノはため息をつき、凜は舌打ちをし、ミウは楽しそうにけらけらと笑う。
全員と別行動をしてなお、戦い続ける武将達も笑う。
そして、空に浮かぶ青い青年も笑顔を作って。
全員でこう言い放った。
「「「「「「「宇宙1、馬鹿な侍だ。このヤロー!!!!!!!!」」」」」」」
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