二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

 幻想終着点 [ inzm11/BSR ]
日時: 2012/02/14 17:01
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: u0xvo3rP)
参照:  寒い日が続きますねガクブル




 (  その果てに××は無く、  )



■ご挨拶
 タイトルはころころ変わります。

 初めまして、こんにちは!
 イナズマイレブン/戦国BASARAの妄想や語りを載せている小説もどき集へようこそ、作者の桃李[Touri]です。
 ここでは夢小説の短編/長編&NL小説をちまちまと載せていこうかなーと思っております、反省なんて知りません。
 コメント下さると嬉しくて泣ける。なかなか人様のスレにコメントできないヘタレチキン桃李なので、気が向いた時にでもコメを残して頂くと嬉しいです。うわ俺マジチキン!
 ……ゆっくり見守って下さると幸いなのですが。変な方向に突っ走っていたら遠慮なく突っ込んで下さいw


■お願い
 作者のハートをブレイクするような発言及び行為はお控えください。
 荒しや無断転載はダメですよ! する価値も無いけどね!
 皆様とはマナーを守って交流させて頂きたいと思っています。


■目次
 [ Short story-NL ] *短いお話*
  >>033 春色前線 【立→←春/ほのぼの】
  >>035 初夏夜空 【ロコ夏/シリアス】
  >>008 夕闇秋景 【一→(←)秋→円冬/シリアス】
  >>038 粉雪幻冬 【不冬→円/シリアス】
  >>023 小鳥は歪な夢を見る、(それは籠の中の世界だからさ!)
  >>056 消失アクチュアリティー(廻る世界にさよならを告げて、)
  >>063 それが幸せへの近道なのです 【円秋前提円夏/※円夏信者さん注意】
  >>079 その先に何があるかなんて
  >>115 切って結んで赤い糸
  >>126 世界が僕らを見捨てた日
  >>129 負けないくらい想ってたのに
  >>147 僕が神に誓う時はたいてい嘘だから
  >>166 好きと嫌い。
  >>174 宙色心中
  >>194 恋人吟味
  >>215 愛された私



 [ Short story-Dream ]
  >>003 夕焼け小焼け。
  >>007 それは恋慕にも似た、
  >>005 もう、泣くことなど赦されない
  >>006 嗚呼、笑うことすら赦されない
  >>017 それを恋と呼ぶ前に、
  >>028 キューピッドの憂鬱。
  >>034 雨色がーる。
  >>044 やりすぎ☆タイガー
  >>048 愛したって、 【※三部構成】
  >>074 泡沫に溶けた、
  >>080 波に呑まれる。
  >>144 降り止まぬ恋時雨
  >>159 知ることのない世界の話
  >>181 純白の便箋(あの日に戻れたら、俺は、)
  >>181 だってこんなに好き
  >>219 ラブレターはゴミ箱へ(、忘却の初恋に捧ぐ)


 [ BSR ] 夢もNLも友情もごっちゃ。
  >>203 Delete world ( 貴方を壊して、そしたら、 )   浅井夫婦/歪んでる
  >>214 きみの知らない恋の唄   佐助とかすが/何か残念
  >>221 北条家に栄光あれ! 北条主従/優しい風魔
  >>229 凶王の背に遠影は忍ぶ 関ヶ原/衝動作品


 [ Scribble ] *落書き置き場*
  >>016 【綱海さん夢/眠たい夢主と先輩さん】
  >>040 【キャライメージ見解纏め】(20110720)
  >>051 【円秋/ロコ夏/不冬/sss】
  >>070 【円まこ】
  >>075 【夏+冬/「どうして夏未さんじゃないんですか」】
  >>131 オリキャラバトン!
  >>161 【円秋or円夏sss/一之瀬が秋に依存気味】
  >>171 【葵+秋/もやもや】
  >>197 【王子様にはryの前置き的な】


 [ Idea ]
 >>(題名未定) 【鬼葵/韓国戦終了後/歪んでる】
 >>王子様にはなれない 【バンレア前提ヒート+レアン】
 >>ラビットハート 【お題消化/珠香+桃花/白恋中/キャラバン出発前】
 >>幸せに閉じ込めて 【お題消化/紺子+葵/↑の続き物】
 >>236ベタ惚れ宣言! 【円夏/珍しくほのぼの甘】
 >>KGさん独白


 [ Long-novel ] *オリジナルに突っ走る夢小説とか*
 >>088 【 Aretalogy —謳う騎士よ— 】






 [ Project ] *企画物置き場*
  >>■愛してるんだけどバトン■—紅闇様より
  >>■愛してるんだけどバトン■—紗夜様より
  >>イナストプレイ日記! [ new ] ※小説じゃない



 [ Request ] *リクエスト小説* 応募用紙はこちら>>1
 >>11-12 [ セピアの追想 ] 【しずく様リク】
 >>030 [ Sweet picture ] 【紗夜様リク】
 >>52-54 [ 僕と彼らの略奪戦争! ] 【しずく様リク】
 >>069 [ 少女は叶わぬ夢を見る、(それはいけないことですか?) ] 【ゆう様リク】
 >>109 [ その感情が何かなんて、幼い僕はまだ知らなかった ] 【藍蝶様リク】
 >>130 [ 悪夢輪廻 ] 【紅闇様リク】
 >>167 [ きみが願う私になれたなら ] 【ゆう様リク】


 [ Theme ] *お題置き場*
  >>004 メガロポリス様より
  >>055◆それならば、どうしたら綺麗でいられるのでしょう。
  >>024◇これは終わりを願う恋(二人が壊れる前に終焉を)
  ◆私は君がいつか誰かに騙されそうで怖いよ
  ◇少女の心は彼方遠く(抜け殻の君は見たくない、ねぇ、こっちむいて)
  ◆華麗なるエンディングに向けて


■お知らせ
 スレ制作日 (20110703)
 ジャンル追加 +戦国BASARA (20111016) イケメンに負けました。


■I love you! 名前が載っていなかったら言って下さい

>>絆様 >>しずく様 >>紗夜様 >>ゆう様 >>藍蝶様 >>夜桜様 >>唯無様 >>紅闇様 >>星兎様 >>月影様 >>風星様
>>おかゆ様 >>伊莉寿様 >>兎子様


■クリックして下さった皆様にマジで感謝!

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 [ 紗夜様リク ] ( No.30 )
日時: 2011/07/18 20:16
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: fmJgdgg4)




 フルート、トランペット、チューバ……——
 たくさんの楽器がそれぞれ深みのある音色を奏でる。けれど私は、それらの楽器が重なった瞬間が一番好きだった。耳に滑り込む柔らかい音達は、私を心から癒してくれる。甘美な心地に酔い痴れながら、ふと窓の外を見遣った。今は私の出番では無い。少しくらい、良いよね。
 全開に開かれた窓からは、暖かなそよ風が吹き込んでくる。私の銀色の髪がゆらゆら揺れるのを視界の隅で感じながら、校庭をそっと見渡す。真っ白なユニホームを泥だらけにしながら小さな硬いボールを投げあう野球部、ずらっと並べられたハードルをいとも簡単に飛び越えていく陸上部。そして、黄色と緑の見慣れたユニホームを身に纏い、白と黒のボールを十人——いや、このチームは十一人かな——で追いかけているのは、

「……雷門中、サッカー部」

 彼が愛するサッカーが存在する場所。
 脳内に有人の控えめな微笑が浮かび上がり——ほんの少しだけ、火照る頬。目を細めたのは照り輝く太陽のせいにして、ぱっと音楽室の中央で指揮棒を振る先生を見つめる。だけど、集中できなくて。
 ゆっくり目を伏せ、しばらく考え込めば——浮かんでくるのは彼のことばかりで——嗚呼、もう、どうしてこんなに有人のことばかり考えてしまうの? 自問を繰り返すも答えはきっと返ってこない。……それなら。

 弧を描いた口元を隠しきるなんて、今の私には不可能だった。



 黒く、ずっしりとした重さを感じさせるカメラ。陽の光に反射したレンズが、もっと眩しい光を放つ。慌ててレンズを足元に向ければそこはもう、サッカー部の部室だった。今は、こんなちょっとした日陰が嬉しい。じっとりと吹き出す汗が、妙に気持ち悪かった。が、聞き覚えのある、鋭いシュートが刺さる時の音が聞こえ、とっさに顔を上げた。

 あれは——有人だ。

 デスゾーンって確か、帝国の技だった気が。まあ、強力な技だから有人が取り入れたのだろうけど。青いマントが風を孕み、ぼわっと広がる。薄く浮かんだ笑みは、私の脳内に浮かんだものと瓜二つ——それ以上に凛々しいものだった。やっぱり有人には、雷門のサッカーが似合ってる。一人で頷くとカメラを構えた。

 ぱしゃり、
 気持ちの良いシャッター音が短く響き、刹那、液晶画面には彼が映し出された。酷く眩しい笑顔だった。あ、よく撮れたかも。有人に見せたら、何て言ってくれるのかな——ぼんやりとそう考えていた時、春奈ちゃんの声が耳に届いた。どうやら休憩時間らしい。ちらりと有人を見遣れば、あ、今、目が合ったかも——なんて。慌てて乗り出していた体を戻し、木の陰に身を潜める。あれ、でも、どうして私、隠れてるの?

「隠れなくても良いんじゃないか?」

 自分で答えを見つけるよりも先に、低めの凛々しい声が頭の上から降ってくる。どきりと跳ねる心臓。でもきっと、さっきより体温が高いのは暑い太陽のせいだ。

「有人、」
「わざわざ見に来てくれたのか? ……吹奏楽部は、コンクールが近かったと思うが」
「……まあ、ちょっとね」

 曖昧にはぐらかすと視線を足元に落とした。ゆったりと、時は流れる。それは酷く心地いい物だった。

「……楽しそうで、何よりだよ」

 本音をぽつりと零せば、有人が優しく微笑んだことが何となく察せられた。そして有人の手は——男の子らしい、私より一回りも大きな掌が——カメラをゆっくりと撫でた。慈しむようなその瞳は彼がよく、妹の春奈ちゃんに見せる表情で。きゅう、と胸が締め付けられる。

「なあ、白癒」

 何を撮っていたんだ?
 そう訊かれて、返答に迷う。有人を撮ってたの、それは少し恥ずかしいかな。しばし考え込み、ここはやはり無難に「サッカー部員皆をだよ」と返しておいた。そうか、と呟くように零した言葉が少し悲しそうだったのは、きっと気のせいだろう。
 皆、楽しそうだね。笑って見せれば有人も少し、笑ってくれた。

「そう言えば、」

 ふと呟いた有人は——その声が震えているように感じたのは、私だけなのかな——少しだけ気恥ずかしそうに口ごもる。目で言葉の続きを催促すれば、ややあって唇を開いた。

「……そう言えばまだ、白癒と写真を撮ったことが無かったな」

 ああ、その、ツーショット写真とやらだ。
 そっぽを向きながら自棄になって言葉を吐き出した有人。赤らめた頬が可愛いな——なんて不謹慎ながらもそう思い、もう一度その言葉を頭の中で転がす。そう言えば確かに、まだ撮ってなかった。なんて落ち着いていられるはずがなく。また、頬が熱を持つ。この分じゃ耳朶まで赤くなっているんだろう。嗚呼——恥ずかしい。でも、だけど、ね。嫌なんかじゃないの。

「有人」

 びくっ。
 極まりが悪そうに眉を潜めた彼。そんな有人に私は、にっこりと笑って見せる。上手に笑えてるかな——心の片隅でちょっぴり心配だった考えが弱弱しく主張してきたが、徐々に和らいでいく有人の眼光を見れば、多大な心配は必要なかった。

「——私と一緒に写真、撮ってくれる?」

 遠慮がちに尋ねれば、彼はほっと安堵した表情から少し緊張気味の瞳に戻り、「勿論だ」堂々と答えてくれた。
 嗚呼、もう——家に帰ったら、可愛い写真立てを買ってこなきゃ。弾む心を押さえつけ私はもう一度、笑って見せる。赤い瞳を優しく細め、戸惑いがちに描かれた口元。いつもの彼の笑顔が、酷く甘いものに見えた。


ひぎゃあああ許して下さいいいい!
ややツンデレ風味の鬼道さんになっちゃったのはともかく、白癒ちゃんのキャラ崩れてますよね!?

吹奏楽部とかほとんど妄想で書きました。そのため描写が不足気味ですすいませぬ。
えっと、紗夜様! せっかくリクを頂いたのにこんなのですいませんでした;またリクしてやって下さい(自重

 

Re:   望郷ノスタルジア [ inzm11/紗夜様リク完成] ( No.31 )
日時: 2011/07/26 19:00
名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)

 ——夢リク用紙——

[名前]フローシア=アバランシュ/〃
[年齢]14・中2
[容姿]白銀のショートヘア。横髪が胸元まである。真紅の瞳。細身の美人さん。
[性格]大人しく、優しい性格。しかししゃべる相手がいないと読書をしながら何かを唱え始める。無意識らしい。
    その為、クラスでは変人扱いされるようになり孤立している。元の性格も隠すようになった。
    頭、運動神経共に良く、教師たちからの評価は高い。常に一位。
    隠れヤンデレ。
[人称] 一人称…『僕』 二人称…『キミ、貴方、呼び捨て、〜さん』
[相手] 風丸・雷門(大体FFiが終わった頃)
[ジャンル]シリアス・甘
[シチュ]夏休み後半折り返し地点。宿題は早くに終わらせて風丸の家で二人予習勉強会。
[備考]この子の名前が英名なのは気にしないでください←
    シチュは呼ばれたって感じですね。
[サンボイ]
【勉強会?……僕の知識じゃ予習も何も復讐……あ、いや、復習も出来ないですよ?】
【……今、実に不気味な衝動に駆られています。……風丸さんは僕を不気味に思わないのですか。僕の髪と瞳の奇異な組み合わせにビビらないんですか】
【仲間?友達?いいえ、僕はそんな事に頼る義理さえありません。学力さえあれば良いと、親から申しつけられています】



Re:   望郷ノスタルジア [ inzm11/紗夜様リク完成] ( No.32 )
日時: 2011/07/19 17:16
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: gOBbXtG8)

>>藍蝶様!
初めまして!リクご馳走様です←

おお、初の外人さんリクエスト……このようなキャラは自分では作れないので有難いです。書いていて楽しいv←
FFI後ですか……ちょっとのんびりとした日常に戻りかけてる頃ですねわかります。僕っ娘ですと……?ちょ、俺得じゃないですk

リク有難う御座います! お待ち頂ければ幸いです^^

 春色前線 ( No.33 )
日時: 2011/07/19 17:47
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Ryt8vfyf)




 にわかに感じた甘い香りは、薄水色の澄んだ青空を舞台に舞い踊るピンク色の花弁からなのか。
 それとも——少しでも大人に近づこうと、少しでも女の子らしくなろうと背伸びをし、俺からどんどん遠ざかっていく彼女がつけた香水なのだろうか。嗚呼、お願いだから、俺を置いて行かないで。



 花は散るから美しい。
 去年の入学式、咲き乱れる桜を眺めながら校長は慈しむように言葉を選び、春を愛でるように呟いた。良い言葉だ、けど特別珍しいって訳じゃない。何度か聞き慣れたその言葉に、今になってようやく惹かれる理由を知った。息を吹き返すかのように輝く新緑を差し押さえ、日本人の視線の先を奪って離さない桜。春の象徴でもあるそれを嫌う人は、少ないと思う。だって、美しいんだ。目を離せなくなるほど、綺麗なんだ。

「立向居くん」
 まるで、貴女のように。
 初めて会ったその日から、どれだけの月日が流れただろうか。まだ一年も過ごしていないのに、酷く長く思われて。きちんとした時間は覚えていないが、それでも短いのは確かだった。嗚呼、惜しい。もっと早く、貴女と出会っていたかった。もっと長く、貴女の傍にいたかった。
「桜、綺麗だね」
「……そうですね」
 あと数日もすれば、俺も貴女も、中学二年生。やっとあの人たちに追いつけるんだ。……まあ、そのゴールに立った時点で彼らはもう、俺の手が届くことないスタートを切っているのだけど。
 大人びた彼女の横顔はつい、同い年であることを忘れてしまう。嗚呼、そうだ、そうだった。俺だけがあの人たちに追いつけない訳じゃないんだ。俺と彼女もこれから、同じゴールを繰り返すんだ。そう思えば一年の差など、痛くもかゆくもない。
 だけ、ど。風に吹かれ靡いた藍色の髪、ふと振り向いた時そこに立っていた少女の姿は、酷く凛々しく、脆く見えた。嗚呼、いつか貴女にも置いて行かれてしまうのだろうか——それだけは、絶対に嫌だ。きっと彼女は強いから、さっさと先に行ってしまうのだろう。今だって俺は、彼女の眼中にも無いひどくちっぽけな存在なのだから。
「お花見、行きたいな」
 ぽつりと彼女は呟く。相手は誰ですか、なんて。
 あと一年。あと一年経ってまた桜を眺めている時、その時にはもう遅いのだ。彼らは、帰ってこない。そしたら俺には、何が残るのだろう。貴女を繋ぎ止めるなんてそんな難しいこと、できるのだろうか。
 ——まあ、今考えても仕方がない。彼女は自由なのだ、引き留めてはいけないのだ。俺如きの、男なんかが。
「……立向居くんはさ」
 誰かと行く予定とか、あるの。
 かあっと火照る頬。あたふたとしながら視線を地面に移す。敷き詰められた花弁はさながら、薄桃色の絨毯のようだった。

 嗚呼——願わくば、貴女とまた桜が見たいです。


へたれなのか……?
立春好きです。でも木春も可愛い。

 雨色がーる。 (※衝動モノ) ( No.34 )
日時: 2011/07/19 18:41
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Ryt8vfyf)
参照: 雨ネタ。




 灰色の厚く垂れこめた雨雲。ばしゃばしゃと世界を叩き付けるのは、激しい雨だった。遠くでは雷も鳴っているらしい、時折見える刹那の光は、普通に恐ろしかった。視界はその豪雨のせいで、白く霞んで見える。さっさと帰ろう、そう思っていたのに。
 下駄箱でうろちょろとしている影、一つ。誰だ、どいつだ、こんな雨の日に空を眺めてるなんて。だってまさか、傘を忘れたとかそんなことだったら僕の立場はどうなる。嗚呼、知らない人でありますように!
「……え、」
「藤浪か」
 学校としては、髪形や服装の規律は易しい雷門中学校。特徴的なメンバーの中でも一位二位を争う変わった奴——サッカー部のエース君じゃないか。珍しいなあ、雨を鑑賞中なの? と大真面目に尋ねてみたら、「俺が何かを持っていないことに気づけ」との事。うーん、何が足りないのかな。そう本気で悩んでいたら、怒られた。仕方なくごめんと告げる。
「……で、何で傘忘れたの」
「うっかりだ、うっかり」
「えー、円堂でさえ持ってきたのに? ドンマイじゃん」
 円堂の名を出した途端、しかめられた表情、困ったようにしわが寄った眉。そこを突かれると痛いらしい——ふむふむ、そういうことか。
「……鬼道にも言われた」
「あ、なんかゴメン」
 しんみり。
 どうしようもない微妙な雰囲気。さあっと響く雨音をBGMに、居心地の悪い沈黙はしばらく続いた。こんな時、僕はどうしたら良いのだろう。……少女マンガに有りがちな場面がふっと脳裏に浮かんだが、ぶんぶんと頭を振りその考えを振り払う。まさか、そんな、恥ずかしい台詞を言えるはずがないじゃないか! ……で、でも、風邪引かれちゃったらどーしよう。円堂だって、鬼道だって、サッカー部全員困っちゃうよね。寂しがっちゃうよね。……僕は別に寂しくなんてないけど、さ。
「あ、あの、豪炎寺」
 こんなどもってる僕なんておかしい。もう、なんなのさ……僕はただ、親切心から動いてるだけなのに。他に変な気持ちとか抱いてなんか無いのに。……多分。
「えと、その——」
 疑問符を頭に乗っけて、首を傾げる豪炎寺。
 嗚呼、もう勢いに任せて言っちゃえ! 投げやりに覚悟を決めると俯きながら、一気に言葉を吐き出した。

「この傘、貸してやるッ!」

 ほぼ噛まずに言い切った僕は、達成感を存分に感じながら顔を上げた。……あ、あれ?
「……え?」
 何だ、その拍子抜けしたような顔は。僕が優しいこと言うのがそんなに珍しいのか。むすっと唇を尖らせる僕に罪悪感を感じたのか、フリーズしていた豪炎寺はようやく動き出した。動揺してるように見えるのは、きっと気のせいだろう。
「可愛げのない傘だけど、これなら別に変じゃないし」
「いや、その……」
「あ、そんな気にしなくても良いよ。家、近いから」
 にっこり愛想よく笑ってみる。豪炎寺もつられたのか口元が微かに緩んだ。その隙に、鞄を頭の上に乗せると昇降口を飛び出した。背中の方から豪炎寺の焦った声が飛んできて、くるりと振り向き、もっかい笑って見せる。
「じゃーねっ」
 水を吸って重くなった制服が、ぺたりと肌に吸い付いた。その感覚は気持ち悪いものの、良いことをした後だ、気分が良い。それに、さ——火照った身体を冷やすには、これくらいがちょうど良いと思うんだ。
 明日学校で会ったら豪炎寺に「貸し一個」って押し付けてやろう。背筋が凍りつくほど冷たい雨だったけど、そう考えると楽しくも思えた。

 ほんと、明日が楽しみだなあ!


うちの葵は男らしくて困る。

豪雨=ごう=豪さんみたいなノリですよw
べたな展開だと思ってた人すいません、ただ葵が雨の中突っ走るだけの話でした。葵の中にも「相合傘」って単語はあるんだけど、恋人同士がするものみたいな認識が。豪炎寺さんはちょっと期待してたら見事に裏切られてしかも濡れさせちゃうっていう何ていうへたれ? まあそれである程度の罪悪感を覚えて、次頑張ってれば良い←
  


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