二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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RR 赤イ翼ノ執行人 ー 人は単純だ。だから、つまらないー
日時: 2012/08/17 19:21
名前: 東洋の帽子屋 (ID: O7xH2wYh)
参照: http://blog.livedoor.jp/yamisizuku00/

初めまして。
ようこそいらっしゃいました。
ああ、ごあいさつが遅れました。元神咲 裕の帽子屋というものです。
以後お見知りおきを。

■この二次小説は、藤本新太先生の作品レッドレイヴンを題材にしたものです。それを踏まえた上でご閲覧下さい。



■プロローグ

…青い、空が見たかった。ただ、それだけだったんだ。

■第一章
−借り物の力。それは、ただの子供騙しにすぎないと。ボクが一番分かっている−
>>1 >>13

□第二章
−一度だけでいい。自由に笑って見たいと彼女は言った。

もし神様というのがいるとしたら……いや。気付けな かったのは、紛れもないボクの罪だ−
>>14>>15>>16>>17>>18>>19>>2>>3>>6>>12

■第三章
−彼は言った。「いいか?ダルいから一度しか言わねぇ。お前は、もう俺達の仲間なんだ」−

□livedoorblog、公開中です。
お時間ありましたら、是非上記のURLからお越しください。
我が家の愛犬とオリジナルイラストを掲示予定です。
お越しくださいったさいに、コメントを頂けると管理人は飛び上がるほど喜びます(笑)

お客様

・黒簾様
・黒猫様
・満月*様
・ゆったりノック様











 
 

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Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.14 )
日時: 2012/08/08 02:24
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

「チリリリン」「チリリリン」「チリ……(ガチャッ)」
「はい?……あ、マーストその書類はあっち」
「……アンナ?」
「はい……え?アンディ!?ち、ちょっと待って!!いい、そこ動かないでね!!」
「うん」
その二人のやり取りをみていたウォルターは苦笑いした。
「何?」
「いや……珍しいマフィアもいたもんだ」
「それってアンナのこと?」
「だって、本来ならばレッドレイヴンとマフィアって、互いの気配を感じとった瞬間に武器を向け会う関係だろ?でも、お前らは悠長に喋ってただろ?」
「うん」と、僕は言うと、でも。と、すぐに続けた。
「アンナは周りのマフィアが持っている作られた力を使おうとはしない。
それはきっと、アンナはどこのマフィアよりも強いものを持っているからだ」
「……なんだ?」

「…………他人を大切に思う心だ。それに関しては、きっと僕もアンナに及ばない」


少し昔まで、何もかも信じられなくなっていた。

周りは白衣を着て、仮面を被った人間ばかり。

その場所にいるうちに、僕もだんだん感情が欠落していった。

「僕は今でも、笑いかたを思い出せない。感情が欠落したままだ。でも……アンナは心から笑おうとする。
そうしている限り、アンナと空っぽの力を使おうとするマフィアは違うのさ」
僕が話ているあいだ、ウォルターは珍しくも静かだった。
目をつぶり、僕の言葉を全身で受け止めているようだった

「なるほど、な。いいか、アンディ」
ウォルターは、がっしりと僕の両肩を掴んだ。
「何?」
「いい加減に、自分を機械呼ばわりするのはやめろ。
お前、さっきいったよな?
ありがとうって。あれは、形だけのものだったのか?
お前の感情は、少しも入っていなかったのか?」
「それは…………思ったさ」
「なんて?」
「……ウォルターに頭を下げる日が来るなんて、て」

数秒の沈黙が流れた

「ククッ、ハハハ」
「何なんだよ……………」
僕はウォルターの手をわざとらしくはたきおとした。
「いや、いいじゃないか。きちんと感情が入っている」
ウォルターはニヤニヤと笑って、そしてまた爆笑する。
「!!」
僕はからかわれたとわかって。気に恥ずかしくってきた
「笑うなっ!!」
サッと飛び出した拳も軽く交わされてしまう。
「お……い………ディ」
ん…………誰だ?
「アンディ!!」
はっ、と僕は飛び起きた。見慣れない場所だ。
横をみると、ウォルターが椅子に腰掛けたまま寝ていた。
「……ウォルター?」
「疲れて寝てるよ」
!!
後ろを振り返ると扉のところにアンナが立っていた。そして一気に距離を積めるてくると、まじまじと僕の顔を見た。
「……うん。大丈夫みたいね」
「何が?」
「いやっ、な、なんでもないの。うん、大丈夫!」
ピョンっと後ろに飛び退くと、僕と目を合わせないように視線の先をアチコチ探す。
「アンナはアンディのことぶん殴ったんだよ」
と、ふいにシャルルが口を挟んできた。
「……え」
ためしに頭をなで回してみる。
すると、ポコッと腫れている場所が確かにあった。
「…………」
僕は意味がわからないという顔でアンナのことをみた。
「ち……違うの!わざとじゃないのよ?でも……勢いあまってっていうか……」
「……殴ったことは否定しないんだね」
「まあ……それは事実だし…………とにかく、ゴメンッ」深々とお辞儀するのはマフィアならではのクセなかもしれない。
きっとマフィアの世界ならば、このようなお辞儀は日常茶飯事だろう。
契約を取るためには相手のご機嫌取が必要不可欠だ。
「……君ってさ、時々マフィアらしいよね」
「ちょっ、それどういう意味!?」
「別に」
アンナの怒りを出来るだけ買わないように、僕は早々にはなしを切り替えた。
「……で、ここどこ?」
周りを見回しても、有るのはこのベッド一つと木製のの丸いす一つ。それから光源には蝋燭一本という、非常に質素な作りだった。

まあ、僕の部屋ほどではないが。
「ああ、ここは私達ジョルダーニが、管轄している孤児院よ。
親を亡くした子供達や、親に捨てられた子供達が来るところ」
「ふーん……」
「でも」とアンナは続けると、顔に影をおとした。

「最近、特に多いわね。
主に来るのはマフィアに親を殺された子供達…皮肉なものよね。親を殺された奴の所にくるんだから」
「……」
「そういえば、なんてアンディ達はアラバントの街にきたの?」
「仕事……と言ってもマフィア柄みじゃないから、安心していいよ」
「仕事?」

「うん、人使いの荒い上司の命令で、特別任務中」
「何?」
……僕は少し迷った。アンナなら力になってくれると思って来てみたけど、さっきの話しを聞くとどうも頼みづらい。
いや、僕はレッドレイヴンだ。私情は挟まない。
「……あのさ、アンナ。頼みごとがあるんだけど」
「何?」
黒い瞳が、僕を見る。
「グッ…………ッ孤児院の子供達に……会わせてくれない?」
言葉がうまく出てこなかった。喉の部分まできているのに、出てこない。
そんな、もどかしい感じだった。
「いいけど……多分大変な事になると思うよ」
「え?なんで……」
「まあ、いけばわかるから」
アンナは苦笑いした。

「?? うん。ありがと……っと。ウォルター起きろよ」
ペシッと頭を叩いてみる。
「いっ……あ、アンディ。起きたのか」
「早くコート着ろよ。仕事だ。今から、ジョルダーニが管轄している孤児院にいってみようよ」
僕は衣装スタンドに掛かっているウォルターのコートを放り投げた。
「サンキュー」
「じゃあね。ありがと」
「うん。本当に気を付けてね」
このあと、僕達はアンナのこの意味深な言動の意味を、嫌というほど知ることになる。





Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.15 )
日時: 2012/08/08 02:38
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

「ねぇ、あそんで、あそんで!」
「あのっ、ちょっと……痛っ,髪引っ張るな!」
「わ〜喋るカラスだ!」
「やめろ!羽抜ける!!」

孤児院について早々、ウォルター達は腰をおろす余裕もなく子供達に囲まれてしまった。
これでやっと、アンナの言っていた意味が分かった。確かにこれは辛そうだ。
「二人ともハゲるの必死だね」
「アンディっ……お前、そこで悠長に座って見物なんてしてんなよ!」
「だって僕の所に子供来ないし」
ウォルターは何となく絡みやすそうな容姿で、シャルルは珍しがられて子供達の人気を集めていた。
正直、僕は子供は苦手だからこの状況は都合が良かった。
「ねぇねぇ」
「!?」
そう思ったのもつかの間。ふいに話しかけられて、僕は反射的に後ろを振り返った。
そこにいたのは、9歳ほどの女の子だった。白い肌に、碧の髪。碧色の目という綺麗な顔立ちをしている。
……後ろに居たことに、全然気付かなかった。
「お兄ちゃんは、なんでおめめ隠してるの?」
興味津々に眼帯を見つめている。孤児院ではそんなに珍しい物ではないと思うけど……。
「……事故だよ」
面倒事は、さっさと流すに限る。それに……こんな子供にこの目の真実をかたる気は少しもなかった。
「嘘」
「……え?」
(今……なんて)
「お兄ちゃん、今嘘ついたでしょ。いけないんだ〜。神様が見ているって神父様が言ってたよ」
女の子は、わざとらしく頬を膨らませて怒ってみせた。
しかし、そんな幼稚な行動と裏腹に碧の瞳がものをいう。

私、何でも知っているのよ

そんな事を言いたそうに、少女の碧い瞳が笑った。
「君……何物?」
僕は、本能的にこの子供を危険人物と見なしたようだ。座っているギロチン入った鞄の止め金に指がかかる。

フフっ、と女の子が口元に笑みをこぼした。いかにも、僕のこの言葉を待っていたかのように見える。
「私の名前は、リナージュ。リナージュ=マントハッタよ!
よろしくねぇ、お兄ちゃん」
差し出された右手を、僕はただ見つめているしかなかった。

「どうかしたのお?」
何も反応しない僕に、リナージュはついに右手をおろした。
つまらなさそうに口をとがらせ、まるで子供に喧嘩の理由を聞いているような口調で不思議そうに声をあげる。
「……いや。何でもないよ」

僕は彼女と目を出来るだけ合わせないようにした。なんか、この子の目は怖い。
心の中まで見透かされては、たまったものではなかった。
「そうお?じゃあ、私達これからミサだから。じゃあね! さあ、皆。早くいこう」
「うん!リナージュお姉ちゃん」
「ベス、早くいこうよ〜がみんな行っちゃうよ!」
「え〜。喋る鴉もっと見たい!」
「やめろーっ、抜けるっ、羽抜けるから!!」
リナージュは見た目でいえば一番年上だ。実際、子供達のリーダーのような役割をしているようだ。

子供達が去ったあと、ウォルター達は疲れきった顔をしていた。
シャルルにおいてはその場にうつ伏せになり、ゼェゼェと息をたてている。
「は〜。やっと終わった。それにしても恐ろしいな……子供ってのは」
ウォルターは乱れた髪を整え、小さくもううんざりだ。と、呟くと足元に転がっている小さい椅子に腰掛けた。
「はぁ〜っ。これからしばらくはこれが続くのか。ダルいなぁ」
「…………」
「アンディ?」
僕はしばらく宙を見つめていた。もしかしたら、リナージュ……あの子だったら今回の任務をクリアできるかもしれない。

でも………



『わたし、何でも知っているのよ』



そう言いたげだったあの瞳が忘れられない。

「ウォルター」

けど

「あ?」

僕はレッドレイヴンだから

「もしかしたらそれは反乱を引き起こすかもしれないし、もしくは万有の戦力を得られるかもしれない」

私情は挟まない

「そんなジョーカーみたいなカードを手にいれてみる気、ある?」

こんな事、ずっと前に決めたはずなのに。今でも僕は、きっと迷ってる。
そんな弱い過去の自分が、まだ。


どこかで僕を狙っている
『見てごらん。きれいだろう?』
『うん!とても綺麗!何て言う石?』
『カズトック鉱石っていうんだ。ほら、太陽のひかりにあたると、赤色に光るんだ』
『本当だ。まるで太陽を映したような色だね』
『ああ……まるで太陽のような石だ。これ、お前にあげるから、大事にするんだよ。パルス』
『うん!父さん!』



「アンディ……?どうした、ぼおっとして」
はっ、と僕はわれにかえった。なんだろう、今の回想……パルスって誰だ?
「アンディ?」
なにも反応しない僕に、ウォルターは珍しく心配そうな顔をしている。
 しかし、そのカオには疲労がにじみ出ていて、いかにもつらそうだ。
「……ウォルター、先にカルロに連絡してきてもらえる?僕一人でこの件は片付けたいんだ」
もしかしたら、厄介な事になるかもしれない。そんな中で倒れられても迷惑だ。
「……わかった」
チラッ、とウォルターは僕の顔を見ると壁に立てかけていた棺をつかみ、ドアのほうへと歩き出した。
「アンディ」
ウォルターはドアノブに手をかけた。後はまわせばいいだけなのに、もどかしくもそこで動作をとめる。
「何?」
「……無茶、すんなよ」
ガチャッ、とドアを開ける音が静かな子供部屋に響く。ウォルターはそれだけ言うと振り向きもせずに部屋を出て行った。

「……余計なお世話だ」
ポツリとつぶやくと、僕は気絶しているシャルルと鞄を引っつかんで部屋を出た。
右を見ても、左を見ても同じような景色で、いつになったら目的地につけるか分からない。自分の方向音痴は自覚している。でも、何故だか直らない。
「しょうがないな……ねぇ、シャルル起きてよ」
「…………」
少し揺らしてみるが、まったくもって動く気配が無い。……軽くたたいてみるか?昔からよく言う、電化製品はたたけば直るってやつを実践してみるかな。
「起きろって」
ガッ、と鈍い音がする。
「イテッ、何すんだよ!」
シャルルは頭を擦り、涙目で訴えた。シャルルはロボットだ。殴られても、僕のように腫れることはない。
「ねぇ、シャルル。ここの孤児院で一番人目につきにくいとこ探して」
「え……なんで……」
「いいから、早く」

何か、嫌な予感がする。早くしないと色々な事がまにあわなくなるかもしれない。

シャルルは、不思議そうな顔をしながらも辺りをスキャンし始める。そして十秒もしないうちに場所を割り出した。
「えーと……あ、あった…………」
「グウッ、ッ………」
「おい、アンディ!!どうした!?」
僕はその場膝をついた。嫌な汗が頬を伝い、地面に落ちる。
何だろう……胸の辺りが痛い。
「はあっ……は……は……いや、大丈夫だ。早く行こう」
足に力が上手く入らない。鞄を支えに、ようやく立ち上がる。
しかし、まだ歩く事が出来ない。ヨロリと一歩を踏み出すのが精一杯だ。
「おい、アンディ……無茶するなよ」
肩に乗っているシャルルのその言葉に、思わずうっすらと苦笑いした。
「……何で笑ってんだ?」
「いや、皆おせっかいだなって思って」


(アンディ、無茶すんなよ)


ウォルターの顔が、フッと頭を過る。あの時、ウォルターの目は真剣だった。いつものなんかダルそうな感じは一切なく、真っ直ぐな目をしていた。

……きっと、ウォルターは察していたんだ。僕の考えていた全ての事を。

(心まで見透かされたんじゃたまったものじゃないな)
「…………」
「アンディ?」
「いや、何でもない。行こう」

足を再び踏み出そうとした、その時だった


ガウンッ……

向こうのほうから、二発ほど銃声がした。それと同時に建物が崩れる音と人の叫び声がする。
「チッ、始まった……!!」
僕は駆け出そうとした。が、すぐにその場にふみとどまり、鞄の留め金を外す。
「何で……」
「何で?ははっ、それはオレもききたいんだけど」
ギロチンを片手に僕は相手を睨んだ。
白い髪に白いスーツ。それとは対照的な人を見下したような黒い笑み。そして、一切の光を受付ない青の目。
「なんで、オレがこんなとこに派遣されなくちゃならねぇんだよ」
ニイッ、と口角を吊り上げてその男は笑う。
「やあ、アンディ。元気だったか?」
「…………バジル」

Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.16 )
日時: 2012/08/08 02:45
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

「どうしたんだよ、久しぶりの再会だろ?もっと喜ぼうじゃないか」
武器を構えていても、バジルは顔色一つ変えずに悠長に語る。それは余裕からくる笑みなのかそれともこれから起こることに胸を踊らせているのか……。
「何しに来たんだよ。ここはただの孤児院だろ」
僕は当たり前のことを聞いてみた。
しかし、バジルはハッ、と笑うと哀れむような目で僕を見る。
「それはアンディがまだこの孤児院の実態を知らないからさ」
そして、ふいに宙を見上げた。
「きっと素晴らしい日になる。マフィアの時代が、本格的に幕を開ける記念日だ」
ニヤリ、と歯を見せて不吉なことを言いはなった。

「……何をたくらんでいるんだ?」
「さあな」
「俺達は、詳しいことを聞かされていない。知っていることはこの孤児院がまともじゃないって事だけだ」
「……それならなおさらだ、そこ、退いてくれない?」
しばらく、バジルは考えているように腕くみをした。そして……
「いいよ」
と、意外なことをいった。
「…………へ?」
あまりの出来事に、間の抜けた声が出る。思考がまだ追い付けていないようで、その言葉を完全に理解できない。
「いいよ。別に。俺はここに視察に来ただけだし、今回の件については完全に傍観者の立場だ」
ハアッ、とわざとらしく溜め息をして、つまらなそうに肩を落とす。
「じゃあ、何で声かけたんだよ」
「んー……そこにいたから?」
(何てマイペースな人間なんだろう)
「それより、急いだ方がいい」
フッとバジルの顔を見直す。その顔から笑みは消えていて、珍しくも真顔だった。
「……言われなくても急ぐさ」
僕はなんの躊躇もなくバジルの横を通りすぎた。一瞬、振り返ってみようかと思ったがそんな暇はない。足早にその場を後にする。

「さぁ、俺もそろそろ行くかな。ハアーッ、かったりぃ」
バジルは誰もいない回廊で、一人、呟いた。

「今度はどっちが潰れるか……見物だな」
ニヤリと笑うその不気味な笑みを、目にしたものは誰もいない。



「んー……なんか調子でないな」
シャルルは、自分でも不思議そうに首をかしげる。確かに、さっきから電子音が体の至るところから漏れていて、とてもというほどではないが気になっていた。
「……なんか、変なものでも食べた?」
「オレをそこらの鴉と一緒にするな!ロボットだぞ!!どうやって食べろって……ん……だ…………」

徐々に言葉が途切れていき、ブツンッと、嫌な音がした。それと同時に肩からシャルルの体が離れていき、地面に 何の抵抗もなく落下する。
「シャルル、どうしたの??」
シャルルを拾い上げようと、手を伸ばしかけた。
「ん?…………湯気がたってる」
(もしかして……)
「あつっ……やっぱり、壊れてる」
何でだ?シャルルは物を食べられるわけでもないし、さっきの軽く叩いたくらいじゃ壊れない。
この孤児院に来てから、僕の他にシャルルに触ってた人物は……。

『ベス、早くいこうよみんないっちゃうよ〜』
『え〜っ、喋る鴉もっと見たい!!』

「あいつら……っ」
バジルのいった通りだ。
この孤児院は、普通じゃない。

ガガンッ、という音をたてて建物崩れる音がする。
地面が揺れ、まともに立っていられない。
「つっ……早く、この件終わらせないと」
さっさとここを脱しなければ、瓦礫のしたに埋まって終わる運命だ。
……考えている暇はない。
僕はシャルルを抱えて、いく宛もわからずに走り出した。
「クソッ……どこにいる…………リナージュ……マントハッタ!!」

ステンドグラスの無数の美しい光が、聖杯堂に降り注ぐ。
しかし、そこは聖杯堂というよりは戦場の跡地という方が妥当だった。
壁画に大きな穴が空き、そこから風が入り込んで土埃を巻き上げる
「ごほっ……ヴー……ちょっと頑張り過ぎたかな……」
「大丈夫?リナージュ姉ちゃん」
「うん。それより、ベス。あの喋る鴉どうした?」
「ああ、あの鴉?今頃ぶっ壊れてんじゃないかな。配線を二、三本切っといたし」
ベスはズボンのポケットからペンチを取り出した。
「エライエライ。アンナさんの話だとあのレッドレイヴンは方向音痴らしいから、しばらくはここにたどり着けないでしょ」
(さて……)
少し派手に壊しすぎた。きっと、アンナさんがすぐに駆けつけてくる。
どうする……ちょうど、スキャックズを持ったマフィアが彷徨いていたようだし、そいつらにやられたとでも言っておくか?
「それとも、レッドレイヴンにやられたとするか……?」

「そんなこと、させない」
ヒュッ、と何かが顔スレスレを通り抜けた。
後ろをふりかえると、大きなギロチンが壁に突き刺さっている。
そのギロチンには鎖がついていて、足元を蛇のように這っている。
「ちっ……運は強いんだね。お兄ちゃん」
リナージュは舌打ちすると、子供らしくない、感情の深く入った表情をした。
「運じゃない。これが結果だ」
ギロチンを引き寄せると、再び右手に握りしめる。
何故か、いつもより握る力が強いようだ。手が血色良く赤らんでいる。
「残念だ。今の僕は判定書の出ていない君を狩れない」
僕は、相手を睨んだつもりだった。
しかし、
「アッハハハ!!」
と、リナージュは高笑いする。
「…………」
「どうしたの?何故黙るの??」
まだ笑いが抜けきれないようで、言葉の至るところでククッ、と微笑する。
「……君は僕と同じだと思ってた。でも、違う。君は僕以下だ」
「……何?」
表情から笑いが消え失せて、段々と目をつり上げる。
「私のどこが、お兄ちゃんより劣っているの?」
リナージュは両手を広げて、くるりと軽やかに回転する。
「ほら、どこが劣っているというの?」
「確かに……傷や血にまみれている僕と違って、外見は君の方がいい。……劣っているのは中身だ」
「中身??」
「そう、中身。君は心から笑おうとしない。どこかぎこちない」
リナージュの顔をチラリと見やる。ただ、呆然としているだけで特に何の体勢もとっていない。
(攻撃する気は無いのか……?)
「でも、それはお兄ちゃんにも言える事じゃ無いの?」
「…………確かに」

確かに、その言葉には何の間違いも無い。
僕はこの孤児院に来てから一度も笑っていないし、笑おうともしていない。
そういう意味では、僕の方が劣っている。
でも……。
「確かに僕も、一部の感情が欠落している。でも、君よりは人間らしい心を持っている自信がある」
そういうと僕は天井を見上げた。
しかし、そこには青空が見える。暴動で崩れた穴から覗いているのだ。
「……どうやってそれを証明するの?」
リナージュの凛とした声が空っぽの孤児院に響く。
……物がないから空っぽと言う訳じゃない。

思い出が、空っぽなんだ。

「僕なら、思いの詰まった宝箱を無理やり壊して開けようとしない。そこに詰まっている物が、なんだか解っているからだ」
「それは何?」
まだ、解らないという顔をする。その垣間見える子供らしさに、敵意を忘れそうになる。
「……仲間だよ。それと、思い出」


『はよーっす。カルロ裁判官。今日も寝癖、酷いっすね』
『……これは天然の物なのだよ。君はいつも一言多いようだな』
『二人とも、そのやり取り何回目??』
『おっ、アンディ。おはよ』
『アンディ、君は少しはフォローに回るとかしないのかね』




『アンディ』



そう呼ばれることが、レッドレイヴンに留まる理由な気がした。
「なんで、壊したんだここは君らの思い出の場所だろ?」
「…………」
リナージュは、少し考えているように見えた。
しかし、突然思い出したように目を見開く。

「…………邪魔だったから」

「……え?」
(今、なんて…………)
「そうよ、邪魔だったから消し去りたかった。……思い出??思い出って何?この孤児院には、マフィアに対する憎しみで満ち溢れている」
いきなり饒舌になる。もう、黙ってなんかいられない。そんな感じだ。
「毎日、毎日毎日マイニチ周りの誰かが消えていくの。それで友達も、何もかもが消えていった。それもこれもマフィアのせい。でも、そんな私を救ってくれたのもマフィアだった」
……アンナの言っていた通りだ。ここの子供たちは、マフィアにいい印象を持っていない。

Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.17 )
日時: 2012/08/08 02:49
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://


……アンナの言っていた通りだ。ここの子供たちは、マフィアにいい印象を持っていない。
「愛想良くして、いつかあのマフィアを潰してやるつもりだった。だから、私たちは自ら力を望んだ」
段々と、声が力んでいく。時折グッと言葉を詰まらせ、泣き声をおさえていた。
「……スキャッグスに手を出したのか?」
「あんなものっ……キライだ。私たちはあれを使わない。だから、自分達で強くなるって……決めたんだ!!!!

リナージュは周りの子供たちを見回す。
「ベスは機械に関する事なら大人にも負けない知識を得たし、アニーは大きな剣を振るえるようになった。私は銃を扱えるようになった……スキャッグスがなくても、皆立派な戦士よ」
その声は、実に真剣だった。
「……スキャッグスを使うマフィアなんて、人形と同じだわ。奴らは私以下よ。だから、今日にでも潰しに行くつもりだったのに……まさかレッドレイヴンが客人として招かれるとは思わなかったわ」
「……アンナは他のマフィアとは違うよ?」
「どこが!!」

「アンナは、スキャッグスを作られた力と解っている。それに……」
「それに??」
「心から笑おうとする」
アンナのその姿を見たとき、人間としての格差を感じた。
その喜という感情は、かつて僕も持っていたパーツの一つだった。
でも、長い事使っていなかったせいか錆び付いてしまってうまくその歯車が回らない。
時折、その事に虚しくなりさえする。
「君はまだ幼い。きっと、まだ間に合う」
「…………」
リナージュは顔を俯いたまま、挙げなくなってしまった。足元には黒い点がポツリ、ポツリと止まることなく落ち続ける。
「グッ……ヴッ、ヴッ」
唇をかみ締め、必死に泣き声を抑えているようだった。
「……何で、そんなに頑張ろうとするんだ」
僕は足元にギロチンを置き、一歩ずつゆっくりと近寄っていった。見た目は九歳の小さな少女。でも、胸のうちに秘めていた思いはきっと想像を絶する大きなものに違いない。
「……私が自分勝手に決めたマフィアを潰すという事に皆が賛同してくれた。この子達にも、きっとやりたいことや批判する心があったのに………」
リナージュは涙で汚れた顔を挙げると、僕の瞳をまっすぐに見て訴えた。
……これは子供の目じゃない。立派な大人の眼差しだ。
「だからっ……もう、引き返せないと思った!どこかでは感じ取っていた。アンナさんが優しいことや、自分が間違っているということ。でも……でも……」
「……自分の考えのせいで子供たちの運命を変えてしまった。っていいたいんでしょ?」
リナージュは一瞬、ビクッと体を振るわせた。そして、恐る恐る周りの子供たちの顔を見て
「……うん」
とつぶやいた。
「きっと、皆馬鹿だと思って笑ってるわ」
薄っすらと、恐怖からくる笑みをこぼした。歯がカチカチと鳴り、無理に口を動かしているのが良く分かる。

……そのとき、子供がポンッとリナージュの頭に触れた。

「エライ、エライ」
「……ベス?」
「さっき、リナージュ姉ちゃんそういって僕の頭、撫でてくれたでしょ?」
「何で……」
ベスがこれでいい、と確信しているのに対してリナージュは意味が分からないというような顔をした。
「え?だって、リナージュ姉ちゃん頑張ってたんでしょ??頑張ったら、頭を撫でるんでしょ??」

「…………つっ」

ベスのその言葉に、リナージュはせき止めていたものが切れたかの様な声を出した。そして、ベスのことをギュッと抱きしめると再び涙を流し始めた。
「僕、間違ってたかなぁ」
「ううん……これでいいの。皆も、良くがんばったねぇ」
リナージュは残りの子供もまとめて抱きしめると、一人一人にほお擦りした。
「えへへっ、ほめられたよ」
「うん、いいことをした後にリナージュ姉ちゃんにほめてもらうの、大好きっ」

「……本当に、ここにはマフィアに対する憎しみしかなかったの?」
僕は子供たちと戯れて、笑顔でいるリナージュに問いかけた。すると、さっきとは全く違う、心からの笑みでリナージュは答えた。
「ううん……そんなこと無い。それに……それにね、私の本当の思いも、今、ここでかなったの」
「何?」

「一度だけでいいから……皆の前で、自由な笑顔で笑ってみたかったの」

その瞬間、僕は彼女にアンナを見た。

「……よかったじゃん」
「うんっ」















Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.18 )
日時: 2012/08/08 02:57
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

「さて……」
一息ついたところで、色々な問題が浮上してくる。
まずは壊れた孤児院をどう説明するか。
それから、子供たちの行先……。
しかし、何よりも厄介なのはバジルがいるという事だ。
今のところは再び姿を現してはいない。……奴は自分の事を傍観者と言っていた。一体、どこから見ているのか…………。
「…………」
「どうしたの?怖い顔」
子供の一人が顔を覗き込んできた。何も知らない、無垢な目をしている。
(……下手に心配させる必要はないな)
「いや、何でもないよ。それより、君達が今後どうするかだ」
「あ……」
リナージュはパッと青ざめた顔をした。
「そっか……壊しちゃったから…………」
孤児院は所々が大きく壊れていて、天井に穴が空いている箇所もある。……修復は極めて難しい。
「さて……」
「アンディーっ!」
突然の声に振り返ると、扉の無い聖杯堂の入り口にアンナが息を切らして立っていた。
「っはー……一体、何があったの!?」
アンナは意味が解らないといった感じだ。焦っているせいか、何度も舌を噛んでしまう。
「あー……考える余裕もくれないか」
「えっ?なんか言った??」
「いや、何にも。……それよりアンナ」
「何?」
僕はチラリとリナージュを見た。もし、ここで本当の事を喋ったらリナージュ達の安否が怪しい結果となってしまう。
「…………」
(まあ、いいか)




(……バジルには悪いけど、全部擦り付けるかな)
「あのさ、アンナ……バジルってマフィア知ってる?」
「ああ、No.入りのスキャッグスを使う噂のマフィアね。知ってるわ」
アンナは目を細めて記憶を手繰り寄せ、うなずいた。
「噂によると白い服が印象的らしいわね」
通常、マフィアは黒や灰色など、比較的色の暗い服を選ぶ。
しかし、バジルに関しては帽子から靴、ネクタイまで真っ白で、唯一色のついたシャツは黒というモノトーンな珍しい風貌をしている。
「うん。それで……バジルがこの孤児院に潜んでいるみたいなんだ」
「なっ……」
アンナは一瞬戸惑い、大きな声を出しかけた。が、すぐに飲み込み「なら」と小声で言葉を続けた。
「なら、今回のこの騒ぎを起こしたのはそのマフィアだって言うの?」
「多分、ね。中庭で子供たちと遊んでた時にいきなり孤児院が崩れ出したから」

「……」
リナージュは子供たちを相手にしながらも、時々こちらの様子を確認する。
フッと僕と視線があうと、申し訳なさそうに目をそらして『ごめんなさい』と声を出さずに言う。
「…………」
「アンディ、どうかした?」
アンナの言葉にハッ、と我に返る。そして、景色扱いだったアンナの顔がはっきりと見えてきた。
「……いや、何でもないよ。それで、この孤児院どうするの?」
僕とアンナは穴が空いた天井を見上げる。
「うーん……やっぱり、修復は難しいわね」
「じゃあ、この孤児院は……」
するとアンナは、僕が言いたかったことを予測していたように
「うん。閉院せざるを得ない」
アンナは子供達に聞こえないように小さな声で呟いた。
しかし、
「!」
と、リナージュはその小さな声にも敏感に反応する。小さな背中が僅にビクリッ、と震えた。
「……子供達はどうするの?」
再度リナージュと目があった。今度はそらそうとない。
碧の大きな瞳が、静かに決断を待つ。

そして、アンナの決断は
「うーん……他の孤児院に協力してもらって、何人かずつ分割して入ってもらうしかないかな…………」
という物だった。


(…………さて、リナージュはどうでるかな)
しかし、その決断を聞いても不思議とリナージュは絶望している様子は無い。
そして、心の内で思っていた事を決めたように
「あのっ……!」
と、リナージュは大きな声を聖杯堂に響かせた。


その頃、レッドレイヴン本拠地『鴉の巣』
「あー……マジダリィ」
自室に戻ったウォルターは、靴を履いたままベッドに倒れ付した。
「まさか、あれほど田舎だったとはね……」
アラバントから鴉の巣まで、歩くほか通行手段が無いと聞いてから、ウォルターは重い棺桶を背負って約四時間、休むことなく歩き通し、ついさっきたどり着いたところだった。
「あー……背中と腰がバキバキいってら」
ウォルターが腰を擦っていると、ガチャリッ、とドアが開きそこに満面の笑みのカルロと秘書のモニカが立っていた。
「ご苦労だったね。ウォルター君。アンディはどうした?」
「アラバントの孤児院に預けてきた。今頃、あの子供達に苦戦しているな……」
ウォルターは遠い目をし、苦い記憶を思い出す。
「うん……子供ってのは怖いな。ってか、何でカルロはそんなに笑顔なんだよ?」
「君たちへの、せめてもの気遣いだよ。ほら、笑顔は人を和ませるだろう?」
ハハハッ、とカルロは爽やかに笑うが、ウォルターはそれを逆に気味悪がる。
「……あんたがそういう風に笑うってのは、大抵仕事の話なんだよな」
ウォルターが深くため息をつくと、カルロは
「ご名答」
と、口角を上にニヤリ、と吊り上げて笑う。
「残念だが仕事の話だ。君には、ザップヘンドタウンに行ってもらう。モニカ、資料を読み上げてくれ」
「ザップ……ヘンドタウン?」
聞き覚えのない場所だ、とウォルターは呟く。
「はい。えーと……ザップヘンドタウン。ここから東南に数キロ行ったところにある、機械工業の盛んな町です」

「ザップヘンドでは戦闘機に使用する超重要部品から自転車に使うギアまで、幅広い科目で高い評価を得ています。近年ではさらに視野を広げ、子供向けの玩具の研究が進んでいるそうです」

モニカの説明を一通り聞き終えると、ウォルターは『ふーん』と興味津々に相づちを打つ。
「じゃあ、バイク関連の部品もあるかもな」
最近、バイクがうまく動かない。そのせいで今回は帰りが徒歩になってしまった。
行きは運よく通りすがりの旅商人に途中まで乗せていってもらったが……。
「……で、そのザップヘンドには何しにいけばいいんだ?」
ウォルターは机の上に出されているコーヒーを取ると一口すする。
(また、昨日みたいなのはごめんだな……)
そう、ウォルターが思っていた時だった。
「いやね、それがまた昨日みたいな仕事なんだよ」
「えっ……」
不覚にも本心からの声が出てしまった。それどころか顔の表情までを微妙にかえ、心底子供が苦手になってしまったのがみてとれる。
「それじゃあ、頑張ってくれ。事態は一刻を争うぞ」
カルロは詳細の記された書類をウォルターに放り投げる。
……もはや発言する権限さえも与えられない。そう感じ、ウォルターはまだ宙を舞っている書類をわしずかみにした。

視線を書類に落として数秒。
「…………これって」
と、確かめるようにカルロの方に顔を向き直る。
カルロはすでにほかの仕事に入っていて、ウォルターをチラリと一瞥すると
「楽しくなりそうだろ?」
とだけ言った。
「……まあ、たまには社会見学もいいかもな」
ウォルターはニヤリと笑うと、片手に持っていたコーヒーカップを机に戻し、わざとらしくため息をつく。
「……それじゃあ、そろそろ行きますか」

「あのっ……!」
リナージュの力強い声が聖杯堂に凛と響いた。
決意を心に決めたようで、その碧色の瞳に緩やかな光が灯る。

そして、リナージュの声にまわりが誰一人と喋らなくなり、外の野次馬達のざわめき声がよく聞こえてくる。
……そんな状況が数秒続き、そのなかで再び口を開いたのはリナージュだった。

「…………私達をレッドレイヴンにおいてもらえませんか」
リナージュの声色は、実に真剣だった。別に冗談を言っているわけではない。
ただ、この状況で、そんな唐突な事を話しても頭がおかしくなったとしか思われない。
「え……リナージュ、なんていった?」
案の定、アンナはもう一度リナージュに確認をとる。
「"レッドレイヴン"においてもらいたいと言いました」
リナージュはレッドレイヴンという所を特に強調し、真顔でアンナに返答する。
「レッドレイヴンに……」
アンナは素早く僕の方を振り向く。その顔はぎこちなく笑っていて、どうにも感情のコントロールができていないようだった。
『……無理よね?』
と、アンナはどうにかして目で訴えてくる。


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