二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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イナイレ*最強姉弟参上?!10years later-26話
日時: 2013/11/03 10:14
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 3Sm8JE22)

初めまして、またはこんにちは!
訪ねて頂き、ありがとうございます♪

このスレは駄作者伊莉寿の1作目「イナイレ*最強姉弟参上?!*」の“続編のリメイク”となっております。
1作目のキャラクターが引き続き登場し、謎も出てくるので1作目を読んで頂いた方が理解は深まるかと思いますが、駄文な上とても長いのでこちらで説明を加えて書いていこうと思っております。
なお1作目を書いていた時は目次を作らなかった(来たばかりの時は知らなかった)のですが、賞を頂き、カキコの方がまとめて下さいました。URLを貼っておくのでどうぞ。


※お願い&注意
・ネット上のマナーをお守りください。
・原作沿いですが、オリジナル設定が半端無いです。
・駄文です!!
・高校に上がったので亀更新になるかと。

以上の事に了解して下さる方、まだ少ないですが楽しんでいって下さい!


<目次>
**本編

第1節((白い絵の具で色を隠した、そんな少女))
プロローグ>>007第1話>>008第2話>>011第3話>>013第4話>>016皆さんのオリキャラ紹介>>017

第2節((少女は、サッカーとふれあい、渦へ巻き込まれる事を望む))
キャラ紹介>>21世界説明>>22第5話>>020第6話>>025第7話>>028第8話>>032
皆さんのオリキャラ紹介>>035

第3節((強すぎるほどの光で明るく照らされる、少女の学校生活))
第9話>>038 皆さんのオリキャラ紹介>>043第10話>>044第11話>>052第12話>>054第13話>>060

第4節((危険なサッカーにより、目覚める力、目覚める者))
雷光小FC紹介>>069第14話>>066第15話>>070第16話>>074第17話>>079第18話>>084
第19話>>086第20話>>089

第5節(())
プロローグ>>091第21話>>092第22話>>103第23話>>109第24話>>118第25話>>166
第26話>>167

**短編まとめ
バレンタイン短編*記憶喪失のお菓子作り>>047

**お知らせ
*1000HITs Thanks!!:03/05
*100comments Thanks!!:05/09

最終更新:11/03 第26話>>167

**お客様
・レッドさん…リメイク版初コメの方。ダンボール戦機の小説を書かれています。
・姫佳さん…1作目からコメを頂いてます!双子姫が最強で可愛い♪メル友で神友でお姉ちゃんで婚約者で((とても仲良くさせてもらってます☆←
・雪桜奇(元:凛々)さん…イナイレの小説を書かれています!亞夢ちゃん強いです、魁渡君に口喧嘩で楽勝しそう!←
・水蓮寺雨音さん…1作目からコメを頂いていて、イナイレとポケモンの混合小説を書かれています。

#プロフィール(読まなくても全く問題ないです)
P.N  伊莉寿/イリス
学年 高1  誕生日 12/07
趣味 ネットサーフィン、読書とカキコの話を考える事。時々ピアノ。
好きなもの 犬。カキコの皆さんと話したりメールが出来るパソコンと携帯は無くてはならないもの。
好きなこと 寝ること、犬をなでること。それと皆さんのコメントを読むことが嬉しくもあり楽しくもあり。
マイブーム 最近カゲプロにハマってしまったかもしれないです←
その他 父親・弟の影響でアニメにハマった為、色々と好きです。

主に好きなアニメ&マンガ&ラノベ
——マギ、黒バス、ガンダム種&運命、イナズマイレブンシリーズ、ダン戦シリーズ、るろ剣、バトルスピリッツシリーズ、鋼錬、クレイモア、仕立屋工房、バカテス、ハイキュー!!、キノの旅

スレッド作成日((11/24/Saturday/11:58))

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Re: イナイレ*最強姉弟参上?!*10years later-更新 ( No.12 )
日時: 2012/11/27 18:18
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)

姫佳さん

私も親の目が無い時間に良くパソやってます(笑)

記憶喪失です、シリアスです(笑)どうしよう明るくならない!←
それに少女、って打つのも面倒になって来まし((神童「なら早く記憶を戻せ!」
色々段階があるんです!

ラティア姫、負けても失うものは何もないからいいんですよ!←
社会が出来ない件、ヒントは……本編に書いたもので精いっぱいです;;

更新、3者面談の日は1日1話のペースで出来るかもです♪
勉強?今日は塾に行くので多分大丈夫です☆←

……確かにラティアちゃんと輝姫ちゃんって珍しいですね(笑)
コメありがとうございました♪


凛々さん

その“なぜなったか”というのは結構後回しになるかもしれないです。←
正直突飛な話なので(笑)
ここで出てきたら原作沿いで行けなくなるほど!

中間テストなんですか!
少女「……≪英語はほんばにいくといいです≫」←筆談
え、それ難しいよ!!??しかも貴女何もしないし!

亞夢ちゃんまさかのライダーキック!?
デスソードとどっちが威力あるんでしょう……。
足が滑るって恐ろしい!←

コメありがとうございました♪


**
4日目で参照100突破!ありがとうございますっっ!
霧野「早く主人公の名前出せよ……」
……あはっ((神童「フォルテシモ!」

Re: イナイレ*最強姉弟参上?!*10years later-更新 ( No.13 )
日時: 2012/12/01 10:01
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)

第3話 別れと始まり


雷門中サッカー部監督・円堂守は、忘れ物を取りに来た天馬に彼のスパイクとボールを渡し、帰路へつこうとしていた。
その前に、と足を止めて河川敷を見渡す。中学時代に特訓した日々が脳裏によみがえり、自然と微笑みが漏れた。
刹那、聞き覚えのある声が耳に届く。はっきりと聞こえないながらも、記憶と結びつき、形をなす。

——デスソード。

入学式の事件。
雷門サッカー部2軍に1人で勝負を申し込んだ剣城が放った、2軍を潰したシュート。
しかし悲鳴も何も聞こえない。

円堂(河川敷で剣城が1人で自主練習という可能性は無いだろう……被害は無かったのか?)

声の聞こえた方向へ歩き出す。遠くは無いはずだ。

円堂「ん?」

影が動く。人影だと気づいていなかった円堂は、歩みを止めて動きに注目する。
階段を上がってどこかへ行こうとする、少女。
気付いたのか、立ち止まり振り返った彼女に笑顔で声をかける。

円堂「なあ、君!」
少女「……。」
円堂「送って行こうか?」
少女「!」

大きく目を見開いた少女に、円堂は苦笑する。

円堂「足、痛いんだろ?」

図星、だ。
混乱する頭の中を落ち着かせようと、少女は地面のみを視界に入れた。色々思案するも、やはり落ち着かない。
しかし次に円堂が言った言葉で、その思考は中断される。

円堂「まだサッカー部が残ってるみたいだからその後、だけどな。」
少女「!?」

ぶんぶん、と首を横に振る少女を、円堂は脇に抱える。

少女「っ!」

円堂は、彼女が来た道を行く。




円堂「おーいっ、3人共ー!」
「「「!!」」」

未だにショックの中にいた神童、霧野、剣城の3人はその声にハッとして顔を上げた。
そして円堂の姿に驚き、次に彼が抱えている人を見て顔をひきつらせる。

剣城「何で……。」
円堂「コイツか?」
霧野「あ、暴れてますよ……?」

少女は抵抗を続けていたが、全員の視線が向いていると気付くと抵抗を辞めた。
24歳のゴールキーパーには、敵わなかったようだ。

円堂「神童、霧野。明日は練習に来いよ?」
神童「っ!」
少女「……!」

突然名前を呼ばれ、神童はビクリと肩を震わせた。少女は空気の変化を感じ、神童を見おろした。
そんな大人しくなった彼女を、円堂はそっと地面に降ろす。

霧野「……監督、その子は俺たちの知り合いなんで、送っていきます。」
円堂「あ、そうだったのか。会えて良かったな。」

俯いた神童を促して、霧野が階段を駆け上がる。
少女がもうどこにも行かないようにと霧野は少女の手を握り、遅れて階段を上がった神童と監督に礼をして帰路に着いた。

円堂「……剣城。」

2人しかいなくなった河川敷。
剣城は、真剣な表情で円堂を見上げる。

円堂「……————。」
剣城「!」

その言葉に、剣城は不快そうに、顔を歪めた。



霧野「靴が合わないと、結構きついぞ。」
神童「そういう物なのか……。」

医者からどこまで散歩に行っているのか、もう帰ってきなさいという電話がかかってきたのが10分前。
少女がつらそうに歩いていると神童が伝えると、車が飛んできた。
そして当の本人は、夢の中にいる。

霧野「……それにしても、デスソードを技なしで止めるって相当だな。」
神童「ああ、デスソードは三国先輩のバーニングキャッチでも止められなかったシュート。それを……。」

こんな女子が。
神童は、隣の席をちらりと見た。すやすやと安心しきった表情で眠る少女に、思わずほほが緩んでしまう。
霧野も信じられないな、といいつつ苦笑する。
少女が知らず知らずの内に醸成した穏やかな空気が、車内を包んでいた。



神童「ど、どういう事ですか?」

神童邸には、すでに警察が到着していた。
彼等は椅子に座りなおして、もう一度繰り返した。

警官「ですから、彼女の特徴と一致する少女の捜索願は、まだ出されていないんです。」
警官2「でも今日家出したという事なら、遅くとも明後日くらいには出てくるでしょうから……。」

大丈夫ですよ、と取り乱した神童の肩を警官が叩く。

警官「それから彼女が着用していた服ですが、近くの病院の病院着では無かったようです。」
警官2「もしかしたら市販されている物かもしれないので、探るのはやめにしました。」
神童「そうですか……。」

ゆるゆると息を吐き出して、神童が答える。

神童「わざわざ調べて下さって、ありがとうございました。」
警官2「いえいえ、病院から逃げ出した可能性もありましたからね。ついでに聞けば良かっただけでしたし。」

入院していたのかもしれない、と言い出したのは神童だった。
心当たりを捜しきった警察は、あとは捜索願を待つばかりだと伝えると立ち上がった。

警官「それでは、彼女の身柄をお預かりします。」
神童「あ、はい……。」

警官達を視線で追っていると、ドアが開かれた。
廊下に立っていたのは隣の部屋で寝ていた少女で、まだ目が覚めきっていないらしく眠たげな顔をしている。
目が合い、神童が何か声をかけようとすると少女は視線を外した。
警官から渡されたパーカーを羽織り、警官に連れられて玄関の方へ進んでいく。

警官「では、失礼します。」

女医と霧野、神童と目を合わせて頭を下げた警官に神童も礼を返すが、視線が背を向けた少女に行ってしまう。
あっさりすぎる別れが、悲しい。

少女「……。」

彼女の隣に立つ警官がドアを開ける。
そして少女は、足を踏み出す直前に振り返り、ぺこりとお辞儀をした。

桜色の髪が、風に揺れる。
くちびるが、ありがとう、を紡いだ。


**


?「天使ちょー、大変ですっ!!」

バタバタと慌てた様子で、黒髪の少女がドアを開けた。
四方の壁は本棚で囲まれ、室内では分厚い何冊もの本が空間を漂い、床に本の山が出来ている。
そんな散らかっているようで散らかっていない部屋の主は、駈け込んで来た声に反応せず、文字を目で追い続けていた。

?「本当に大変な事なんで……ちょっとホントに大変なんだってばもう!」
?2「……何。」
?「悪魔が人間界に現れたのっ、しかもこの時代の悪魔じゃなくて過去から……“時空の壁”を越えてきた悪魔!」

部屋の主——天使長ソフィアが、本を閉じた。
漂っていた本が棚に吸い込まれていき、途端に部屋がすっきりとする。

ソフィア「そう、いつも仕事を増やしてくれるのは他の時間の悪魔ね。人間への影響は?」
?「接触した可能性は高いけど、天使が退治したみたい。……こうなったらやるしかない、かな。」
ソフィア「ええ、過去の悪魔が大人しく退いてくれる可能性は低い……。」

暫く俯いていたソフィアが、顔を上げる。決意した表情だった。

ソフィア「アルモニ、出られるA級天使を数名確保して、30分後にここへきて。」
アルモニ「りょ、了解っ!!」

黒髪の少女——A級天使長アルモニが敬礼の姿勢をとる。


ソフィア「“時空の壁”破壊計画、決行する!」


**

少女「……。」


夜空を見上げる少女は、自分が世界に与える影響を、知らない。

Re: イナイレ*最強姉弟参上?!10years later-第3話 ( No.14 )
日時: 2012/12/01 16:18
名前: 凜々 ◆9dztvRmu3M (ID: IGAMlEcf)

おおお!?ソフィアちゃんとアルモニちゃんの天使コンビがきたああああ!
そして過去からきた悪魔ってなんなんだあああ!?
そして少女の与える影響ってなんなんだあああ!?
亞「うるさい」
失礼。ちょっと混乱しちゃって、失礼。

あの少女が何か鍵を握っているんだね!
亞「まぁはなしの内容的にそうだろうね」
そして少女の名前は何なんだ!?
亞「出てるだけいいじゃん。僕なんて二話のその三から出てこれたんだから(チッ」
あ・・・ごめんなさい。

Re: イナイレ*最強姉弟参上?!10years later-第3話 ( No.15 )
日時: 2012/12/06 23:06
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)

凛々さん

天使2人が来ました!
アルモニ「ああっ、ソフィア、あたし時計持ってなかった!」
ソフィア「……じゃあさっさと集めてきなさい。」
アルモニ「りょーかいっっ!」
みたいな2人を、引き続きよろしくお願いします(笑)
若干設定変えましたが、それはまた後で……テスト前日で時間がなくて;;誕生日にテストとか笑うしかないです(笑)←

少女の名前、そろそろ出したいです……少女って打つのが面倒になってきて((
少女『声はいつ出るの』←筆談
……いつでしょう、遥か遠い未来かも、ってすみません警官の拳銃奪って私に向けないで下さい!!

アルモニ「コメありがとっ♪亞夢ちゃんもまた来てねっ!」

Re: イナイレ*最強姉弟参上?!10years later- ( No.16 )
日時: 2012/12/08 23:14
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)

平日の夕暮れ。オレンジ色に色付いた空の下で、穏やかな時が流れている。
少女が神童邸を去って2日、彼女は新しく趣味というものを見つけていた。
子供たちが元気に遊ぶ外に流れるBGM。それは、その少女が奏でるピアノの音色だった。
間違いを知らないとでもいうように、鍵盤の上を滑るように動く指。
意識はピアノのみに向けられ、それに応えて溢れるメロディーは儚くもしっかりと、聴く人の心に届いている。
弾き切って一つ息を吐いた時、彼女は初めて戸口に人が立っている事に気付いた。

「貴女の≪音≫素敵ですね。」

そう言って微笑んだ同い年くらいの少女。


子供たちの元気な声が、BGMとなって部屋に流れていた。



【第4話 眠れぬ少女】


少女の記憶は一向に戻らず、情報も一切なく。
一晩経ち、警察は少女をひとまず児童養護施設に預ける事にした。ふれあいという名の刺激を、頼りにしたのである。
そして必要になった、仮の名前。

「歌海さん、“月乃”さん誘えました?」

月乃杏樹ツキノアンジュ。彼女自身が考えた名前だ。

「いえ、少し疲れているようでしたので……。外に出てみて下さい、とは伝えましたが。」

そう言いながら縁側に座る薄茶色の髪の少女に続いて、藍色の髪の少女も隣に座った。

「そうですかー、同い年と聞いて仲良くなれると思ったんですけど。」

藍色の髪の少女——長坂翔萌は残念、と顔を曇らせた。
午前中の内に施設へやって来た月乃の自己紹介を、学校へ行っていた2人は見ていなかった。
しかし、面倒を見てくれる大人から大ざっぱに彼女の事は聞いていた。
13歳で中学1年、事情により声が出ない、という事だけ。

「それより、彼はどうしたのですか? さっきまで、一緒にサッカーボールで遊んでいましたよね?」

辺りを見渡し誰もいない事を疑問に思った、薄茶色の髪の少女——明空歌海が首を傾げる。
“彼”は彼女にとっての弟的存在であり、翔萌にとっての幼馴染だ。

「私が下手で飽きたそうです。どっか行きました。」

つまらなそうな顔をする翔萌に歌海はクスリと笑い、立ち上がった。つられて翔萌も顔を上げる。

「もしかしたら、マサキ君も気になっているのかもしれませんね。」
「え?」

さっき瞳子さんに聞いたのですが。
歌海はサンダルをはきながら、顔を翔萌に向けた。

「月乃さんは、サッカーに興味がある様なんです。」


**

正直、見るのが好きなんだろうくらいに思っていた。
だって女子でサッカーするのは珍しい。ヒロトさんが何度も話してくれたFFIの話には出てきたけど。
最強の双子と、決勝の対戦相手に1人、そしてチームメイトに1人。それ位しか話を聞かない。
そこまで考えて、何かこみ上げてくる物があって溜息をついた。

認めたくない。

足が止まった。何で翔萌を置いて来たんだ、なんて分かり切ってる。
サッカーボールを蹴るたびに瞳子さんの言葉が脳裏によみがえって、いてもたってもいられなくなったから。
イライラを原動力に、足が再び進みだす。
腕に抱えたサッカーボールの存在が疎ましく思えて来て、今日はもう中に入るか、と決めた、その時だった。
日陰になっている肌寒い場所から、ボールの弾む音。

認めたくない。

吸い寄せられるように足が動いた。
ボールが壁に当たった音、地面とこすれる音。この施設で、自分の知らない場所で鳴る事なんて無かった音だ。

狩屋(……あ————。)

そこにいたのは、桃色の髪を耳の後ろで2つ縛りにした、背丈の近い女子だった。
予想していたよりずっと大人しそうな、サッカーは見る事もしなさそうな。
けれどリフティングをする姿は、なぜか様になっている。ボールは彼女のペットの様に、離れようとしない。


((——認めたくない。))


翔萌と歌海と、3人では“サッカーボールを蹴った”。
ヒロトさん達には、時々、本当に時々“サッカーを教わった”。
1人で、“サッカーをしていた”。

彼女には近い内迎えが来るのだ。違う存在、なのに。
重なってしまう。1人でサッカーボールを蹴る姿が、自分と。


狩屋「っ……認める、かよ、」


本当は、“誰かと一緒にサッカーをしたかった”、あんて。









コツン、という音で、現実に引き戻された。
気付けば自分はしゃがみこんでいて、膝に目を当てていた。ぼやけた視界に、泣いていたんだと気付く。

その視界の中で、靴のつま先に当たった——白黒が、ぼんやりと。

狩屋「!?」

驚いて顔を上げると、同じくしゃがんでいる彼女が、そこにいた。

狩屋「何っ……」
月乃『サッカー見せて下さい。』

ずい、と突き付けられたメモ帳。近すぎる上に、まだ涙で良く見えない。
服の袖で1回思い切りこすると、それがよく見えた。見えた。
……意味が分からない。

狩屋「ハァ?」

思わず、そんな言葉が出てしまった。さっきから失敗ばっかじゃね?
歯を食いしばっている間に、彼女はサラサラとメモ帳に何かを書いた。

月乃『サッカーをおもいだしたいんです』

手早く書く為に、平仮名ばかりな文章だ。
やっぱり、意味は良くわかんないけど。


狩屋「……お前も付き合うっていうなら、やっても良いけど。」


ああ、認めたくない。
でも、認めざるを得ない。
————やっぱり、1人のサッカーは嫌いなんだ。



彼女がメモ帳を畳んだ時初めて、その顔をハッキリと見る事が出来た。
深い青の目に、白い肌。少し疲れているからか出来たクマが、目立っていた。

月乃とは次の日も次の日も、一緒にサッカーをした。外で目があったら、ボールを当たり前のように俺に蹴って来たから。
彼女の動きは段々よくなっていって、その動きを少しマネしてみたら、俺のプレーも良くなったような気がする。
翔萌と歌海もよく一緒にして、いつからかサッカー教室みたいになっていったけど。ああ、勿論指導するのは俺か月乃。

翔萌「つ、月乃さん上手すぎっ……!」
歌海「サッカーも出来るなんて、すごいですね。」
月乃『マサキさんには負けます』
狩屋「いやそんな事無いって!」

2人共謙虚ー、と笑う翔萌を睨んでも効果は無い。
歌海もくすくす笑ってて、何だかふわふわした感覚が生まれている。


——そのサッカーで出来た充実した日々が、サッカーによって崩れるなんて、その時は思ってもいなかったんだ。

**


月乃「ッ……、」

月明かりが、カーテンの隙間から差し込んでいる部屋。
がばりと体を起こした月乃の呼吸は、乱れていた。
汗で髪がへばりつく気持ち悪さを感じながら、彼女は耐えられずに咳込む。

歌海「……月乃、さん?」
翔萌「大丈夫? 悪い夢?」

両隣で寝ていた2人が、咳の音に目を覚ました。
歌海が素早くコップに水を入れに行く間に、翔萌が月乃の背中をさする。

歌海「水飲んで、落ちついて。」

大丈夫だから、という歌海の言葉に、月乃は小さく頷く。
コップ1杯の水を飲み干して、再び体を横にする。


時計の音が響く部屋。
月乃は手に掴めるだけの掛け布団を握り締めて、夜明けを待ち続けた。

————眠る事も、出来ないまま。


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