二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」
- 日時: 2012/03/28 10:34
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: blFCHlg4)
【副管理人よりスレ主様へ
直接の書込み失礼します。
この小説は、著作権元に掲載許可をとっておられますか?著作者人格権を侵害する可能性高いので、急で申し訳ないですが、3日後の3月31日(土)までに許可をとったことがわかる文面を管理人あてメールアドレス(上記リンク参照)までお知らせください。お知らせが無い場合は、このスレッドごと削除させていただきますので、お手数ですがどうぞよろしくお願いします。(2012.3.28)】
第一話 「Breaking dreams」
日本国は千葉県浦安市。
埋立地に作られたコンドミニアムは東京湾の反射光でそのガラス窓一つ一つを輝かせる。
スーツ姿の人々が街を行き交い、集合住宅の合間で木々がそよ風にふぁ、とその緑を靡かせた。
潮の音が反響し、車のエンジン音と交じり合うと、まるで全ての喧騒が中和され海風に回帰していくようだった。
街は今日も平和である。
さて
首都東京に隣接するその町は1つの独裁国家を保有していた。
民主主義でも社会主義でもない。
「夢の国」というある種抽象的な看板を掲げるその国の実を知るものはそうはいない。
全ての人間達を下等生物と見下し、ディズニー亡き今、ディズニー社の全てを握る人間は彼1人だった。
否、人間というのにはいささか語弊がある。
彼はもはや人ではなかった。
闇夜のような漆黒の肌に、鮮血のような紅の服。
不敵な笑みとその挑発的な大きな耳。
ディズニーランドは一匹の傲慢なネズミの絶対支配下に置かれていたのだ。
彼、ミッキーマウスの・・・
- Re: 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」 ( No.3 )
- 日時: 2012/02/03 23:29
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: GWqmywU4)
第四話 「A hard day's night」
夜になると、赤や黄色の欺瞞の光で夢の国は輝きだした。
エレクトリカルパレードの空元気な音色が国中に響く。
油でギトギトのチキンをほうばる若者達。
ここぞとばかりに抱き合うカップル。
あまりにもよく見る光景である。なんのことはない。
ネズミはその中、傲慢にも光り輝く大きな車で国を凱旋した。
その光はどちらかといえば歓楽街のネオンサインであった。
それでも嫌悪感を抱くどころか、その凱旋パレードに人々は喚起し、声を上げた。
ネズミは笑っていた。大きな耳に負けないほど大きな口をあけて。
何が面白かったのかといえば、自分を考えもなしに崇める頭の悪い金づるたちのことである。
くだらない。
ネズミもネズミだが、あまりに阿呆で個性のない若者達にはもはやかける言葉もない。
彼らの抱擁に愛は果たしてあるのか。
おそらく恋する自分に恋をしているのだろう。
みやげ物の食料も、どうせイトーヨーカドーで買えば100円もしまい。
腹に入れば皆同じである。
彼らはもしくは、その土産にかける数千円を、偽りの夢なんぞにでなくアホ面をした自らを見つめなおすための手鏡にでも使ったほうが幾分か実用的だ。(まあそれでもどうせ彼らは表面的な自己の判断しか出来ないだろうから鏡と共にくだらない化粧道具などを取り出すのが関の山であるが)
とにもかくにも
せっかくの星空はその偽りの光でかき消されたようだった。
- Re: 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」 ( No.4 )
- 日時: 2012/02/05 20:08
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: GWqmywU4)
第五話 「purple haze」
嘘だらけの凱旋が終わり、人々は舞浜駅へと歩いていく。
そうして国の一日はいつもどおり終わるのである。
人の波は、舞浜駅に飲み込まれ、そして跡形もなく消える。
駅に残るのは用済みの電光板と蛍光灯の明かり。
空虚な打上げ花火も闇色の空の下で朽ちた。
そうして夢の国は誰も知らない現実を取り戻した。
静寂と常闇のなかに聳えるシンデレラ城の下で、ミッキーは1人佇んでいた。
ここで現実へと帰ったディズニーランドを静観するのが彼の数少ない楽しみだった。
夜の夢の国に抱かれながら、彼はマルボロを取り出した。
おもむろに一本口にくわえると、ライターで火をつけた。
かちっ、という火打石の音と共に漆黒の中に一点の橙がともる。
紫煙は淡く闇に溶けた。
「ふぅ・・・」
彼はとろんとした表情で闇に混じる紫煙越しに、空を見上げた。
星空は、やはりそこにあった。
- Re: 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」 ( No.5 )
- 日時: 2012/02/08 21:10
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: GWqmywU4)
第六話 「visitor」
「相変わらずじゃな。」
突然、夜空の下に低い声が響いた。
ミッキーが驚いて振り返ると、誰もいないはずの国に、1人の老人が立っていた。
老人は静かに立っていた。
表情は暗くてよく見えない。
頭には高級そうな薄茶色の帽子を被っていた。
そして服はこれまた高級そうなスーツ。
どれも年季の入ったもののようであった。
「はは、誰だい。」
ミッキーは自分だけのもののはずの夜の夢の国への突然の来訪者に動揺しながらも笑って尋ねた。
彼はそれを無視して、夜空を見上げた。
真冬の空にベテルギウスが光る。
「夢の国とはよく言ったものだな。魔法が解ければ、潮風匂う、ただの湾奥の埋立地だ。」
暗がりの中で、老人はまるで詩を読むように呟いた。
潮風が耳をなでた。
ミッキーはその大きな耳を揺らしなら、黙って老人を見つめた。
「夢の国のネズミも、魔法がなければただの薄汚い傍若無人の王よ。」
老人はミッキーのほうを振り返った。
老人の鋭い眼光が、ミッキーを射抜いた。
星空に照らされ、海風に揺れる帽子の下で、うっすらと彼の顔が見えた。
その顔に、ミッキーは見覚えがあった。
- Re: 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」 ( No.6 )
- 日時: 2012/02/11 23:47
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: GWqmywU4)
第七話 「My father」
その鷹のような鋭い目
整ったすっきりとした顔立ち
薄暗くてはっきりとは見えない。
また彼の記憶のものとは随分と代わってはいたが、それでも間違いはなかった
「お前・・・
ウォルトディズニー・・・」
そこにいたのは紛れもなくディズニー社の創始者、そしてミッキーの生みの親である、ウォルトディズニーであった。
その類まれなる芸術的才能により、ディズニー社をここまで有名にした人物。
彼は自らの父の登場に、驚きを隠せなかった。
「親の顔も思いだせんとは・・・とんだどら息子だな・・・」
ディズニーは少しにやりとした。
ミッキーはたじろぐ。
彼のほうを、汗が伝った。黒ずんだ彼の肌を、汗腺から首筋まで、星空の光を浴びて一筋の淡い線が浮かび上がる。
ミッキーが驚くのは無理もなかった。
彼は・・・ウォルトディズニーは、既に死んだはずだったから。
- Re: 「ミッキーは今日をもちまして夢の国をリストラですw」 ( No.7 )
- 日時: 2012/02/16 20:14
- 名前: 鏡 ◆onXZCzuPrg (ID: GWqmywU4)
第八話 「Eyes are on fire」
「何故・・・君はウォルトディズニーじゃないか・・・。」
ミッキーは震えた声をだした。
声だけでなく自分の体もこわばり、がたがたいっているのがわかった。
こんなところにいるなんて・・・もしや・・・
「安心せよ、亡霊ではない。」
ネズミの心を読むようにディズニーは言う。
ミッキーは、それでますます動揺した。
ぎらつくディズニーの眼。
「ねぇ・・・じゃあ何で君は生きているのさ・・・。」
ミッキーは震える唇でたずねた。
暗闇の中のディズニーは亡霊ではなくてもまるでこの世のものではないような禍々しい雰囲気の中にあった。
ディズニーは微笑と共に、全てを語りだした。
「私は、病に犯されていた。おぬしもよく知っているな。」
「うん、君はその病気で死んだんだ。」
そう、ディズニーは死んだ。
なのに何故・・・
「当時の技術では私の病気は治すことができなかった。だが・・・
私の体を未来へ送ることは出来た。自らの体を冷凍し、仮死状態に置くことでな。」
「!?」
ミッキーは言葉を失う。
この夢の国の現実の中には最初から1人と一匹。
二人が黙ると周囲が凍りつくように静まり返った。