二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【銀魂】 泡沫の花
日時: 2012/08/15 15:55
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

初めまして、無雲(なぐも)と申します。
今回は銀魂の二次創作を書いていきます。

つたない文章ですが、どうぞよろしくお願いします!
次話は設定(というか必読というか……)


目次

 設定・注意  >>01 第零幕 色の浸食 >>02

第一幕 青藍《せいらん》>>03 第二幕 白銀《はくぎん》>>04

第三幕 濃紅《こきくれない》>>05 第四幕 漆黒之壱《しっこくのいち》>>06

第四幕 漆黒之弐《しっこくのに》>>08 第五幕 鳶《とび》>>15

第六幕 黄《き》>>16 第七幕 橙《だいだい》>>17

第八幕 暗緑《あんりょく》>>18 第九幕 蘇芳《すおう》>>19

第十幕 山吹《やまぶき》>>20 第十一幕 朽葉《くちば》>>21

第十二幕 鈍《にび》>>22第十三幕 桃《もも》>>23

第十四幕 鳥の子《とりのこ》>>24 第十五幕 桧皮《ひわだ》>>25

第十六幕 舛花《ますはな》>>26 第十七幕 臙脂《えんじ》>>27

第十八幕 花緑青《はなろくしょう》>>28 第十九幕 水浅葱《みずあさぎ》>>29

第二十幕 焦香《こがれこう》>>30 第二十一幕 甚三紅《じんざもみ》>>31

第二十二幕 石竹《せきちく》>>32 第二十三幕 千歳緑《ちとせみどり》>>33

お知らせ>>34

*駄文に付き合ってくれている神のような方々
 ・ARISA様 ・鯨様


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第十六幕 舛花《ますはな》 ( No.26 )
日時: 2012/07/08 21:28
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

「あああ゛ぁぁあ゛あ゛!!」

突然聞こえてきた叫び声に、自室で新薬実験をしていた緒方はビーカーを取り落した。

緒方は足元で割れるビーカーには目もくれず、叫び声の聞こえた方向———台所へと全速力で向かう。
彼の耳が正しければ、あの声は部下である新岡のものだ。
青嵐隊随一の実力を持つ彼に叫び声を上げさせるなど、並の人間ができることではない。
なにか、彼にも予想できないような事態が起こったのだろうか。


「紅葉!」
台所にたどり着いた緒方が見たもの。
それは———、

「緒方先生・・・。」

手に日本茶の葉の入った缶を持ち、こちらに涙で潤んだ目を向ける新岡の姿だった。

「日本茶の・・・葉っぱが、切れましたぁ!」



時計の秒針が丸々一回回まわったころ、緒方は白衣の内ポケットから試験管を取り出し、親指で栓を押し上げた。
                     ***
「失礼します。」

月華隊と銀時のいる部屋の襖が開かれ、緒方と何故かぼろぼろの新岡が現れた。二人の手には湯呑やティーカップの乗った盆がある。
新岡の作務衣は酸で溶かされたかのようにあちこち穴だらけだったが、誰もそれに触れることはなかった。

「なあ総、さっきすげぇ声しなかったか?」
盆を受け取った銀時が緒方に尋ねる。
緒方は新岡をちらりと一瞥いちべつし、薄く微笑んだ。
「ただの野良鼬のらいたちの遠吠えです。」
「・・・あ、そう。」
それ以上の追及を打ち切り、銀時は手にした盆を見下ろす。
茶が入っているのかと思いきや、その七割はコーヒーだった。
「すいません、茶の葉が無くなってしまって。湯呑も足りなかったのでティーカップも混じってますけど。」
「や、それはいいんだけどさ、コーヒーを湯呑にいれるのはどーよ。」
銀時の言う通り湯呑にコーヒーが入っていたり、逆にティーカップに茶が入っていたりと和と洋がない交ぜになっている。
何というか・・・合わない。
「大丈夫ですよ。坂田隊長のコーヒーには予め砂糖を入れてあります。」
「おい、話が噛み合ってねぇんだけど。」
言いつつ銀時は湯呑の一つを手に取る。中のコーヒーには程よい甘みがあった。

他の隊士達には新岡が配って回っていた。
「ほら、なっちゃんの分。」
新岡が棗にティーカップを手渡す。
それにより千風の説教から逃れた彼は、ほっとした表情でそれを受け取る。
そしておもむろに懐に手を入れ、白い紙袋を取り出した。
袋を開け、中に指を入れる。やがて出てきたのは白いサイコロ状のもの。
「・・・一応聞いとく、なにそれ。」
「角砂糖だが?」
棗はさも当たり前のように言う。だが、成人男性の懐から角砂糖が出てくるのはどう考えてもおかしい。
「コーヒーにはもう砂糖入れてるぞ。」
「足りん。」
一言そう返すと、棗はコーヒーの中に角砂糖を投入した。
しかも五つ。
「ちょっ、入れ過ぎだろ!」
慌てる新岡を無視し、棗はティーカップに口をつける。
しばしその味を楽しんでから、残っていた角砂糖をかじった。
「その上単品で食うのかよ!」
「先程からうるさいぞ。口を閉じろ。」
新岡を軽く睨んで角砂糖を一気に口の中へと放り込む。
「お、いいもん持ってるじゃねぇか。それくれ。」
「いいですよ。」
「坂田さんまで・・・。」
角砂糖をもらって上機嫌な銀時に、新岡は肩を落とし、棗は顔をほころばせた。


オリキャラNO・6
室井千風むろいちかぜ
髪色・黒
目色・紺
月華隊・二番隊隊士
長髪を横でポニーテールにしている。
攘夷戦争が終わってからは幕臣となり、(そのほうが銀時を探すのに都合がよかったから)その有能さから高官の地位にくい込んでいる。
佐柳とは親友。
体中に無数の暗器を隠し持つ。
好きなものは歌や和歌。
嫌いなものは雑音。

第十七幕 臙脂《えんじ》 ( No.27 )
日時: 2012/07/15 22:56
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

『○月×日(曇り)
  旦那みたいなふざけた髪の色した奴に職質。
  俺が話しかけてもシカトしてきたので、バズーカを発射。
  向かいにあったファミレス半壊。』

「総悟おぉぉぉおお!!」
真選組屯所に土方の怒号が響き渡った。
自室で惰眠だみんを貪っていた沖田は、突然の騒音につけていたアイマスクを持ち上げた。
暗闇から一転、暖かな日光が視界に眩しい。
その視界のなかに、彼がこの世で最も毛嫌いする人物が入り込んでいた。
「何ですかぃ土方さん。んな大声出したら血圧上がりますぜ。つーか高血圧で死ね土方コノヤロー。」
「誰のせいで血圧上がってると思ってんだ!それより、こいつぁ何だ!」
土方の手に握られているのは一冊のノート。表紙には黒マジックで『真選組活動日誌』
と書かれている。
「今日のお前の記録何だ!テメーは俺に厄介事の後処理させるために巡回行ってんのか!?」
「まあ、七割はそうですねィ。」
「七割もかよ!!」
怒鳴り散らす土方に鬱陶しそうな視線を投げると、沖田はアイマスクを完全にとった。
「土方さん、俺が何で職質かけたかわかりやすか。」
いつになく真剣な様子の沖田に、土方は閉口する。
そんな土方を見据える臙脂えんじ色の瞳が鋭い光を帯びた。
「そいつ、血の匂いがしたんでさァ。」


オリキャラNO・7
森川聖もりかわひじり
髪色・緑がかった黒
目色・金

月華隊二番隊隊長
前髪が長く、それが目を完全に隠している。
昔、わけあって失明してからずっとそんな感じ。ちょい根暗で落ち込むと立ち直らせるのが大変。
武器は持たず、体術で戦う。
好きなものはカードゲーム。嫌いなものは強風(前髪がなびいて目が見えてしまうから)

第十八幕 花緑青《はなろくしょう》 ( No.28 )
日時: 2012/07/15 22:57
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

*この章は、快援隊がもっさんについていくことに決めた後です。
この章から快援隊は基本、黒柱隊と表記します。


「ゆっき———!!」

盛大な音を立てて佐柳の私室の扉が開かれた。
弓の手入れをしていた佐柳は驚いて手を止め、部屋の入り口で息を切らせている自身の上司をキョトンとした顔で見つめた。
「どしたんですか辰馬隊長。そんなに急いで。」
言いつつ佐柳は弓の手入れを再開する。長年しまい込んでいた黒塗りの弓は大分傷んでおり、薄く埃が積もっていた。
締めなおしたつるの張り具合を確かめるため、佐柳の右手がそれにかかる。
と、その腕が別の手に掴まれた。
「真選組と一戦交えたっちゅうのは本当がか!?」
「はぁ!?」
佐柳は素っ頓狂な声を上げた。
そんな彼の様子に構わず、坂本は勝手に話を進めていく。
「どっか怪我とかしとらんか?うちの船員に手ェば出すような馬鹿べこのかあはどこのどいつじゃ!女に傷つけた罪は重いぜよ!!」
「ちょ、ちょお落ち着いてくださいよ!」
「落ち着いてられるかよ!そのクソ野郎ここに連れて来い。真選組の秘密全部吐かせてやらぁ!!」
部屋の中の喧騒が一瞬にしてかき消えた。
佐柳は懐から拳銃を取り出し、安全装置を外した。ガチャリという物騒な金属音が静寂に響く。
「何故におる。」
「ごめんなさいすいませんほんと反省してます。だから銃下ろしてください。」
額に銃口を突き付けられた新岡は、真っ青な顔でそう懇願した。
                    ***
そのころ、鬼兵隊艦内では隊士たちがあわただしく動き回っていた。
この状況を第三者がみれば、『これからクーデターでも起こすのか』と震えあがることだろう。
だが、実際はそんなことをしているのではない。
そうこれは———
「総督———!これどこ運びます?」
「ちょっと誰か机の端持って!」
「あっ、皿割れた!」
———引っ越しなのである。
                    ***
「……要するに、青嵐が黒柱の船に拠点移したっちゅうことか?」
「そーなんですよ。鬼兵隊の方には月華が居候?するそうです。というかもう許して、腕痛い。」
ずっとホールドアップしたままの新岡が苦しそうに言う。
佐柳が拳銃を下ろすと、ホウと息をついて壁に寄り掛かった。
「で、ゆっちゃん、本当に大丈夫だったか?」
「?何のことな。」
「真選組のほう。」
佐柳は少しの間の後、ああ、と思い出したように呟いた。どうやら新岡の登場で完璧に忘れていたようだ。
「別にうたわけじゃない。職質かけられて、めんどかったけん無視したらいきなりバズーカぶっ放されただけじゃ。」
「マジでか!!/そうなんか!?」
佐柳は、いきり立つ男二人をジロリと睨んで黙らせる。
「真選組……、バズーカ……」
ぶつぶつ言いながら、新岡が扉の方へ向かう。
その朱色の瞳は完全に据わっていた。
「紅、行くがか。」
妙に真剣な声音の坂本。佐柳には何が何だか訳が分からない。
新岡は、扉の近くで足を止め二人に背を向けたまま言った。
「シメてきます。」
「待たんかあぁぁぁぁあああ!!!」
佐柳の絶叫が船内に響き渡った。


オリキャラNO.8
浜田朝露はまだあさつゆ
髪色・赤茶
目色・青

月華隊 三番隊隊長
長髪を首の後ろで括っている。結い紐の色は紫紺しこん
居合の達人で、雨だれが地に落ちるまでに四、五回は抜刀と収刀を繰り返せる。居合以外の剣術は割と普通(それでも土方くらい)。
極度の昆虫オタクで、部屋は虫かごだらけ。昆虫が嫌いな緒方をよくからかうが後に手痛いしっぺ返しにあうことが多い。
単純で、嘘と本当の判断がつかない。
得物は刀一本。
好きなものは虫ともこもこしたもの。苦手なものは緒方の薬品。

第十九幕 水浅葱《みずあさぎ》 ( No.29 )
日時: 2012/07/15 22:57
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

「だー重てぇなチクショー。」
銀時はそう愚痴りながら鬼兵隊船内を歩いていた。
その腕には段ボール箱が二つ積まれており、わずかな隙間からは白い食器が見え隠れしていた。
「つーか広すぎだろこの船。どこに何があんのか分からねぇじゃねーか。」
どうやら荷物を運んでいるうちに迷子になってしまったらしい。道を訊こうにも皆忙しそうに動き回っているし、以前戦争ドンパチをやらかしたこともあってどことなく尋ねづらい。
(クソッ、後で晋助殴る。)
すさまじく理不尽なことを考えながら、苛立った表情を隠そうともしない銀時。
その表情のせいで人が彼を避け、ますます道を尋ねづらい状況となっているのだが彼はそれに気づいていない。
と、その時、銀時の肩が軽く叩かれた。
「あ゛あ゛!?」
不機嫌丸出しで振り返ると、彼とは対極の表情を浮かべた顔が視界に映った。
「お久しぶりです、銀時さん。」
銀時の肩を叩いたのは忍服に身を包んだ人物だった。
浅葱色の髪を高い位置で結い、その翡翠色の瞳は優しげに細められている。男とも女ともつかぬ中性的な顔立ちをしているが、腰にはおおよそ女性は持たないであろう二本のさいを差していた。

銀時は数度瞬きをし、やがて口を開いた。
「すいませんがどこの御嬢おじょうさんですか?」
「……クスクスクス。」
不気味な笑い声を上げ、その人物は腰帯から釵を抜きはらう。銀色に鈍く光る先端に、銀時は目に見えてうろたえた。
「や、今のは冗談だから。本気で言ったんじゃないから!お前が男だってこと銀さん分かってる!」
必死の弁解に、釵が腰帯に戻される。銀時は落としかけた箱を抱えなおすと懐かしむような視線を彼に向けた。
「にしても変わらねぇな。せん。」
鬼兵隊副総督 宮下みやした閃は、心からの笑顔を銀時に向けた。


オリキャラNO・9
宮下閃みやしたせん
髪色・浅葱色
目色・翡翠

鬼兵隊副総督
髪はお妙くらいの長さのポ二テ。結い紐は黒。すさまじい女顔。
普段は優しく、人当たりもよいが重度の戦闘狂。戦えれば弱かろうが強かろうがどっちでもいい。
常に敬語を使うが、幕臣に対しては口汚くなる。棗とは犬猿の仲。
攘夷党一の副音声使い。 機械音痴。
得物は二本の釵。
好きなものは戦闘。嫌いなものは幕府。

第二十幕 焦香《こがれこう》 ( No.30 )
日時: 2012/07/15 22:58
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

「月詠姐!」
見回りに行こうとしていた月詠は幼い子供の声に呼び止められた。
首だけを後ろに向ければ、鳶色の髪をした少年が襖の影から顔をのぞかせている。
「どうしたんじゃ晴太。」
鳶色の髪の少年———晴太は隠れていた手をあらわにし、そこに持っていたものを月詠に見せた。
「電話だよ!」

———あ、月詠さんですか?新八です。
受話器の奥から聞こえてきたのは月詠のよく知る地味な少年の声だった。
「よお、何か用でもありんすか。」
そう返すと新八はすいません突然、と謝罪し声のトーンを少し落とした。
———あの、銀さん来てませんか?もう三日近く万事屋に戻ってきてなくて……。
「三日もか?」

坂田銀時という男はダメな大人の見本のような人物である。
しかし、今まで朝帰りすることはあっても二日以上家を空けることはなかった。
もちろん仕事の時は別だが。
月詠は嫌な予感がして、知らず知らずのうちに電話のコードを握りしめていた。
「わっちの知る限り銀時は吉原ここに来ておらん。もし見かけたら連絡しよう。」
平静を装いつつも、月詠の声には抑えきれない緊張が含まれていた。
                   ***
新八は受話器を置いた。
カチャリ、という安っぽいプラスチックの音が耳につく。いつもなら気にも留めない音がよく聞こえるのは、この店の主人が不在であるためだ。
「ツッキーのとこもダメだったアルか。」
いつもは彼と共に大騒ぎしている神楽も、今はソファーの上で膝を抱えている。
新八はそんな彼女の向かい側のソファーに座った。
「どこふらついてるアルかあの天パ。三日も帰らないなんて、そんな子に育てた覚えはないネ。だからいつまでたってもマダオなんだヨ。」
その毒舌にもいつものような覇気はきがない。
新八は膝に顔を埋める神楽を見て、意を決したように口を開いた。
「神楽ちゃん、明日真選組に行こう」
「!本気アルか!?嫌ヨ、あんなチンピラ共頼るなんて!」
真選組、という単語を訊いた途端、神楽は早口でまくしたてる。しかし新八は毅然きぜんとした態度を崩さない。
「神楽ちゃん、」
いつになく静かな声音に、神楽の口からこぼれていた不平不満がピタリと止まる。
「銀さんを見つけるには真選組に相談するのが一番だと思うんだ。」
そう言うと、新八は弱々しく微笑んだ。
「銀さんをぶん殴るんでしょ?」

神楽は顔を伏せ、わずかに首を縦に動かした。
それを見た新八はソファーから立ち上がり、まっすぐに台所へと向かう。
置いておったエプロンを身に着け、いまだ膝を抱えたままの神楽に明るい笑顔を向けた。
「さ、夕ご飯作ろっか。神楽ちゃんも手伝って!」
そしてすぐに台所の奥に引っ込む。

残された神楽は、目じりに浮かんだ液体を拭うと新八の後を追った。



やっとこさツッキー登場。長かった……。


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