二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- NARUTО 木の葉の里の大食い少女
- 日時: 2012/07/28 22:52
- 名前: わたあめ (ID: tdVIpBZU)
九尾襲撃以前に餓死した狐者異一族の生き残り、「狐者異マナ」が木の葉にて暴れる話。主に食卓の上で。
アンチ・ハーレム・チートはなしの方向で。
1.荒らし・中傷・パクリにきたという方はバックプリーズ
2.この小説はにじファンにて載せたことがあります
3.原作批判・過度な原作キャラマンセー及びキャラアンチはお断り
4.残酷な描写が一部に見られます、ご注意を
5.亀☆更☆新
それでもいいというかたはどうぞ
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第一章 純粋すぎるのもまた罪。
∟アカデミー編 >>1-5
∟班分けと鈴取り編 >>6-11
∟巻き物奪還任務編 >>12-20>>28
∟お見舞い編 >>21-27
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
∟第一試験編 >>29-33
∟第二試験編 >>34-48
∟第三試験予選編 >>
∟第三試験本戦編 >>
- 第二十六話 木の葉の間諜、三代目に報告し、手駒二人を餌付けす ( No.25 )
- 日時: 2012/07/12 11:04
- 名前: わたあめ (ID: mwHMOji8)
「わあ、去っていったなあの人達」
「げほっ、げほ」
僅かの間咳きこんでから、何しに来たんだとマナを睨みつける。見舞いだよ見舞い、さきもいったでしょーと彼女は軽い調子で返してきた。
「ヒアシさんってさ、ネジ先輩と血ィ繋がってんですか? なんか未来形ネジ先輩って感じがします」
「……それは大人になった俺がヒアシ様のようになる、ということか?」
マナの発言に怪訝そうな顔をして問いかけると、マナはうーん、と首を傾げた。
「——というよりも、ヒアシさんがネジ先輩のような少年だったんじゃねえのかなあ……? うーんと、未来形ネジ先輩ってか寧ろネジ先輩が過去形ヒアシさん、ってな感じ?」
「……はあ? ……まあ、血は繋がっている。俺の伯父だ」
宗家とか言ってましたよね、つことはあの人達日向宗家なんすか! あーあ、さっさとぼったくっとけばよかったのに、アタシってば惜しいことしたなあ。ぐちぐち呟きだすマナを睨みつけて、淹れたばかりのお茶を飲んだ。喉がひりひりとする。お茶を飲むと逆にそれが強調されるようで気持ち悪い。
「ネジ先輩って、あの人たち嫌いじゃないんですか」
図星をつかれてドキッとした。なんで、と思わずそんな言葉を零す。
部外者のマナに、食以外に興味を持たないマナに気付かれるほど、自分はあからさまだっただろうか。
「だってネジ先輩の顔、苦手な食べ物を目の前にして、でも食べたくないって言えない顔でしたもん」
「・・・・・・はぁ?」
相変らず食べ物を用いたその表現に呆れつつ、しかしそれは納得できた。確かに自分は彼等が嫌いで、でも嫌いとはいえない。言える立場ではないし、自分の生死は彼等に握られているのだから。
「ねー、ネジ先輩」
「何だ?」
地面に寝転がって煎餅を頬張りながら、マナが黒い目をこちらに向けてきた。眉を僅かにあげると、目尻の切れ込んでいる目が少しばかり大きくなったかのように見える。傍で困り顔の紅丸もこちらに視線を向けてきた。
「アタシの両親って、どんな人だったと思う?」
ひどく真剣にその後輩は問いかけてくる。黒い目はまるで、ネジが彼女より一年早く生まれたからマナよりもずっとずっと多くのことを知っているとでもいうようで。勿論脳味噌が胃にあるようなマナに比べればネジが知っていることはずっと多い。けれどマナの目はまるで、——一年早く生まれたネジが彼女の母を見知っているのではないかと。そんな期待とも言えない空想があった。
その頃は物心もついていなかったさ。馬鹿じゃないのか、お前。そう返そうとしてやめた。そうだな、と目を瞑る。適当に答えて適当に夢を壊しておこうか。
「お前の両親だから、背は高くなかったんだろうな。それで、どちらかがきっとお前みたいな髪の色してたんだろう」
マナをまじまじと見ながら、とりあえずマナの容姿を並べ立て、そしてその前に(お前みたいな)と付け加えれば意外に簡単なもんである。マナもまともな答えをもらえるとは期待していないらしい、ネジがでっちあげた両親の容姿を黙って聞いている。
「それでお前の両親だから、お前みたいになんでも食べるんだろうな。そして白眼使いに点穴をつかれでもしていたんだろう」
「おー。そんで?」
「それで、髪は天然パーマだな。目は黒。頭は空っぽ。脳味噌は胃の中、それで、それで……まあ、そんな感じだろう」
「ありがとうございます、ネジ先輩」
ネジ先輩って、家族のこと大好きだったでしょう。そう言ってマナは軽く笑って見せた。ああそうだ、大好きだったさ。ネジは静かにそう答えた。気まずい沈黙が続き、お前はさっさと出て行けとネジはマナを睨んだ。へいへいと笑いながらマナと紅丸の足音が遠ざかっていく。
ゆっくりと目を瞑ると、浮んできたのは疲れで——ネジはそのまま寝ることにした。
「火影さまぁ、ハッカとガイとその生徒たちの合同任務、なんで私もご一緒させてくれなかったですー?」
悲鳴じみた声を上げて飛び込んできた彼女は、ハッカとガイと同班だったくノ一、ユナトだ。現在は火影邸の使用人になっている。一応中忍で、もうちょっと仕事を与えてやってもいいのだが……、本人が雑用好きでまたそれに向いていることもあり、だからいつまでたっても雑用である。敬語もちょいとおかしい。
「余りにも突然のことでなあ……わしも対応できんかった」
「火影さまうそつきです! きっと私がいくと事態がややこしくなるって思って行かせなかったです!」
火影を人差し指で指しつつ悲鳴のように嘘つきと喚くユナトもユナトだが、ヒルゼンがこのやり取りを楽しいと思っているのは事実だ。
「まあ……な」
「こっ、肯定するだなんて!」
肯定したらしたでやはり悲鳴じみた声をあげるユナト。その片腕は日に焼け、片腕は妙に白い。——そう、それこそが上忍シソ・ハッカが一番愛した女の腕。そしてガイとハッカとユナトの担当だった女の腕だ。
「まあ、もう過ぎたことじゃろう?」
「でも今日ハッカとガイが音の国の奴等について調べるです。火影さまはそのことも教えてくれなかったです」
少しは落ち着いてきたのだろうか、声が比較的悲鳴っぽくなくなった。唇を尖らせながら子供のように火影を睨むユナトに、三代目も失笑を禁じえない。
「……まあ無駄話はこれくらいにしようかの。本当の目的はこれを文句しにきたわけじゃないじゃろう?」
「はいです。えとですね。上層部にて、いとめユヅルの解剖計画が進んでるです。犬神は通常雲隠れに多いです。木の葉に出てくるのはこれが最初です。これとない解剖の機会です。実をいうと、私もちょっと興味あるです」
「……何じゃと?」
「で一方、ダンゾウさまはいとめユヅルを暗部にいれようと考えてるです。こちらの方が少しマシかもですけど、でも暗部になる前に死んじゃう可能性もあるです」
ユナトは火影邸の使用人であると同時に、その中に三代目が潜ませた間諜でもあった。喉を鳴らす猫のように嬉しそうな笑顔、身に纏う和やかな雰囲気。決して高貴であるとは言えなくとも、その精一杯の努力と優しさが見て取れる何気ない仕草、そして軽薄そうに見えながら口を割らないその点で、彼女は木の葉の上層部全般に於ける信頼を持ち、木の葉の上層部に放つ間諜としては正に最適だった。
その上彼女はかつての担当上忍、御座敷童子から受け継いだ左手の持つ幻術と、ガイやハッカなどと組み手をする内に覚えた体術、そして会得しているいくつかの忍術でそれなりに腕が利く。しかも彼女は右腕を移植させられて後、若くして忍びを辞めてしまっていた為に、今ではその実力を知る者も数人ほどしかいないのだった。
敬語は拙くとも彼女は聡明であり、相手から様々な言葉を引き出すことに長けていた。また、一時期その能力を買われ、志村ダンゾウの下で暗部としての修行を積んでいた為、ダンゾウでからすらもさまざまな情報を引き出し、またある時には三代目とダンゾウのパイプ役ともなってくれるのだった。
「うーむ、どうしたことかのう……ユナト、どう思う?」
そう問いかけてみれば、待ってましたとばかりにユナトは目を輝かせた。言いたくてうずうずしていた様子である。まあ、三代目をそれをわかって問いかけてみたのだが。
「私の知り合いに、いとめユヅルの知り合いの子がいるです。その子ならいとめユヅルも警戒しないはずです。その上狐者異マナの監視も出来て一石二鳥なのです、——それからハッカも、です」
「よく考えれば、七班も九班も危険因子ばかりじゃのう」
七班を構成するは、三忍の名すら霞ませる天才忍者・はたけサクモを父に持ち、写輪眼有するコピー忍者。一族と両親を敬愛する兄に殺されてしまったうちは一族の最後の生き残りたるアカデミー首席。四代目火影を父に持ち、悪戯好きで人々の頭を悩ませる落ち零れ人柱力、及び抜きん出た座学の恋するくノ一だ。
そして九班を構成するは、記憶を封印された、かつての担当上忍に狂ったまでに恋をしている担当上忍。女物の服を着せられる、姉の人形となったアカデミー次席。餓死して滅びた狐者異一族の生き残りたる恐ろしいまでの大食い少女に、犬神を宿したいじめられっ子だ。
どの班にだって一風変わった風景を持つ曲者や、担当上忍の頭を悩ませるクソガキはいるもんだが、こうも危険因子ばかりを一つの班に詰め込むのはどうかという考えも首を擡げはじめるがしかし、これも彼等を信頼している証拠だ。
決して他班の担当上忍である夕日紅や猿飛アスマを信頼しているというわけではない。だが紅は上忍に成り立てであるし、アスマは我が子だ。我が子を贔屓してはならぬと自分に厳しくする余りのこともあるし、猪鹿蝶の班を纏めるのには猿飛の血を継ぐ彼が相応しいと判断したのもある。
しかしハッカを只でさえ問題児の多い班に入れたのはどうだっただろうかと今更ながら思う。
「とりあえず、万事任せてくださいです。実は今日その子と会う約束があるです」
「あ、……ああ、わかった。任せたぞ」
使用人にしては割りと好きに行動できているユナトだが、元々色んなところをうろちょろしているような女なのでいなくても怪しまれることは滅多にない。
口笛を歌いながら彼女が向かったのは森の中で、暫く歩くと、樹上にお団子を食べる少女と中性的な顔をした茶髪の少年が二人腰掛け、ちらちらとお互いに向かって視線を馳せていた。
- Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.26 )
- 日時: 2012/07/12 11:11
- 名前: わたあめ (ID: mwHMOji8)
うちは一族のような悲劇が二度と起こらないように。
彼女は彼女の手下たちを使って各一族内部の情報収集や監視などを続けていた。
無花果もそんなユナトの手下の一人で、餓死しかけていたところをユナトに拾われたのだ。それからその体に基本的な体術や足音の消し方などを学び、今では一文字家にてはじめや当主一矢の信頼を勝ち得るに至っている。
テンテンと出会ったのは彼女が忍具店でかなりの値段がつく巻き物を買うか買わないか迷っていた時に、それを買って彼女にあげたのが始まりだった。以来ユナトとテンテンのことを調べ始め、テンテンの忍具の狙いの的確さ——いざとなれば相手の急所をついて一撃で殺せることも出来る——に目をつけたのだ。
「テンテンちゃん、こっちの子は無花果くん、一文字家に仕えてるんだ。で、無花果くん、こっちがテンテンちゃん。可愛いでしょう」
「よ、よろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
おずおずと頭を下げるテンテンに対し、無花果は堂々とした態度である。
テンテンは全く理解が出来なかった。何故自分が呼ばれたのだろう。それにこの一文字家に仕えているという少年は一体何者なのだろう?
「……ユナト様、貴女が私を及びしたのはお見合いの真似事でもするためでしょうか?」
いつまでも本題に入らないことに苛々したかのように口を開く無花果に、ユナトは目を丸くしてみせる。
「やだぁ、無花果くん、お見合いだと思ってたのー? それともテンテンちゃんに興味が出ちゃった?」
「違います! ——っとにかく、早く話を進めてください!!」
「やだ、そんなに声を荒げなくたっていいのにー。テンテンちゃん、無花果くんは優しくふわふわしてる女の子みたいに見えて実はすっごく怖いんだよー」
肩を抱かれ、あからさまなひそひそ声で話しかけられたテンテンは思わず体を強張らせた。無花果の殺気が増す。そんなテンテンにニコニコしながらユナトは言う。
「さあて、そろそろ本題に入ろ?」
「私の名前はユナト、白腕のユナト。白腕って呼ばれてるのはこの右腕の所為なんだけど。で、ところで無花果くん、テンテンちゃんはくノ一なんだ」
「く、くノ一!?」
無花果の驚いたような顔に、ユナトは満足げに笑う。ユナトの何人もいる手下は殆どがユナトに簡単な体術などを教わった百姓や一般人、孤児などで、その殆どが召使いなどとして様々な場所にもぐりこんでいる。ユナトが忍を手下にするというのは始めてだ。
「別にテンテンちゃんじゃなくてもよかったんだけど、やっぱ知り合いの子のほうが私としてもやりやすいから」
無花果は知っている。ユナトは本当に、別にテンテンじゃなくてもよかったのだろう。彼女と交流があるのは概ね上層部、上忍、特別上忍に一般人などで、だから下忍や中忍のことをそれほどよく把握はしていないのだろう。もし相手から情報を引き出し、それをそっくりそのままユナトに教えられるような下忍で、尚且つ九班に近しい下忍であれば誰でもよかったはずだ。
無花果もまた然り。ユナトは孤児の無花果を拾った。そして彼を拾い、懐いてきた無花果を自分の手下とした。もし無花果じゃないどこかの孤児が同じように路頭で彷徨っていて、もしその子の方が無花果より有能そうならユナトはそちらを選んでいたかもしれないのだ。
ユナトは無花果を愛してくれている。これは自惚れではない。ユナトは無花果を弟みたいに可愛がった。でもそれだけだ。他の子でもユナトはきっと弟妹のように可愛がっただろう。
無花果もテンテンも。つまり使いやすそうだと思われたからだろう。
しかしユナトに任務内容を説明されたテンテンの答えは予想外のものだった。
「——私には出来ません」
「え?」
「忍具買ってもらったのに恩を仇で返すようで悪いんですけど、マナやユヅルは確かに危険因子かもしれないし、マナと笑尾喇はすっごく厄介かもしれない。でも私、それでもマナやユヅルたちのこと気に入ってるんです。だから……私には私の気に入ってる後輩を監視して情報を取り出すなんてとても出来ないんです。本当にごめんなさい。……他を当たってくれますか」
お団子のお代と、この間の忍具のお金です。そう言ってお金をおくと、踵を翻して彼女は去っていく。
ぽかあん、という顔で、間抜け面を晒しつつユナトは座っていたが——、じゃあ仕方ないね、他を当たるかといいつつ肩を竦めた。
「貴女にしては諦めがいいですね、珍しく。……ところで疑問に思っていたのですが、いとめユヅルと狐者異マナの監視なら、はじめ様にお任せすればよいのではないでしょうか」
「んー、無理無理。初さんが無花果くんのことあんまよく思ってないって知ってるでしょ? それにはじめくんなんて初さんに虐待されたらころんと寝返りそうだし、拷問されたら色々白状しちゃうかもだし。あの脅威な姉がいなければそれなりに使えるんだけどねー」
面白いなあ、とユナトは呟きながら、テンテンが去っていった先を視線で追う。
「私の手駒になってくれなかったのはきみが始めてだよ、テンテンちゃん。ますます興味が湧いてきたなあ」
少なくとも、力ずくでキミを手なずけたいと思うほどには。
慌てて出てきたらしいはじめは服装こそいつものもので顔の化粧も落とされていたけれど、口紅を落とすのだけは忘れたらしい。ほんのりとした赤の口紅がはじめの顔の女らしさを倍にし、傍目に見たらはじめの双子の姉妹かとでも思いそうな風情だった。
「マナ、……お前、どうして姉姫様にやり返さないのかと聞いたことがあったな」
「おー、あったな」
「……それは私が、六年間決して彼女に逆らわないという誓いを立てたからだ」
はじめには一つ下の弟がいた。
双子だと間違えられるほどに顔の似たその弟は、一文字ひとつと言い、はじめよりも顔の輪郭が柔らかく、はじめより尚女らしく、そして病弱だった。
修行も出来ず、アカデミーにも通えないほどに脆弱な弟とはじめとを二人一緒に女装させていた初は、取り分けひとつがお気に入りだった。アカデミーに入る前は父一矢との修行、アカデミーに入ってからは修行と宿題、予習などの口実を遣って、はじめは度々初から逃れていた。
すると自然、初の矛先はひとつに向いた。もとより気に入っていたひとつ。アカデミーにもいけず修行も出来ない彼は初の手から逃れることが出来ない。初にとってひとつは恰好の獲物となった。
そしてひとつは八歳になったその年に、首を括って自殺した。
その時のはじめはひどく後悔した。もし自分も一緒にいれば、ひとつだって自殺しなかったかもしれない。苦しみを分担できる相手がいれば、ひとつもここまでされなかったかもしれない。ひとつが死んだのは私の所為のようなものだ。
後悔していたはじめの耳に入ってきたのは女中達の話し声だった。彼女たちの会話の内容によると、初の女装遊びが始まったのははじめが三歳、ひとつが二歳の頃の話。ひとつが死んだのは八歳、つまりひとつは六年間苦しみ続けたことになる。
だからはじめは、それから六年間姉のいうこと何一つに逆らわないことにした。
「……そっか。お前のオネエサーマもすげえな」
苦手なものから逃げ出して、無意識であったにせよなかったにせよひとつにすべてを押し付けてしまったはじめが悪くないとは言えないけれど、でもそれが人間だ。苦手なそれが逃れられるものなら、そして逃れていいものなら逃れだそうとする。それが人間なのだ。マナだってなんでも食べる割にグルメなのだからゴミ箱漁りは嫌である。
弟を一人自殺させといてそれでも懲りない初も初だとは思うが。
「誓いをたてたのが九歳だから……今は折り返し地点だ」
「……忍耐強いなあ、お前も」
そう溜息をつくと、はじめの灰色の目が笑ってるみたいに僅かに輝いた。
口元も僅かだが緩んでいる。はじめが笑うのをあまり見たことはないが、笑ったらきっとかわいいんだろうなと思った。
「あーっ、マナじゃない! あれ、誰それ? はじめの姉妹か何か?」
明るい声が聞えた方向へと視線を馳せると、いのがにこにこ笑顔で手を振っていた。その隣には相変らずめんどくさそうな顔つきのシカマルと、ポテチを頬張るチョウジの姿がある。
「えーっと、いや、私、はじめ・・・・・・むぐっ」
「はじめのいもーとだよ! 似てるだろー?」
はじめ本人だ、と言いかけたはじめの口を塞ぎ、笑顔で言ってみせると、へーっ、妹さん? すっごい似てるのねー! といのが目を輝かせた。
「ま、そのままいつまで隠し通せるか頑張ってろよ、“特に無い”はじめくん」
にたっと嫌味たっぷりに笑い、自分の傍から駆け去っていくマナに、暫くあんぐりとしていたはじめだが、すぐさまその唖然とした目付きは恨めしげなものへと変じる。
「名前はなんていうの? ほーんとかわいいのねー」
「えっと、一文字はじ……じゃなくて、はつ」
「はっちゃん? 可愛いわね!」
きゃあきゃあ笑ういのに、はじめは改めて恨めしげな視線を去っていったマナの方に注ぐのだった。
- 大食い少女と犬神少年、女装っ娘少年と素早いミント。 ( No.27 )
- 日時: 2012/07/12 14:08
- 名前: わたあめ (ID: q7aBjbFX)
狐者異 マナ — こわい まな
性別:女
誕生日:3月6日、13歳、うお座。 誕生花はルピナス、花言葉は“貪欲”
身長:129.8cm。 体重:19kg。
好きなもの:一杯食べられること 嫌いなもの:食べられないこと
好きな言葉:棚からボタ餅 特技:早食い 趣味:食べること
容姿:淡い空色の髪を低めのところでツインテール。赤い玉が二つついている髪飾りをしている。黒い切れ長の目。年の割りには大人びた顔つきだが、身長などで未就学と思われがち。浅黒い肌をしている。
服装:濃紺の短パンに、青と黄色のラインが走る白いジャージ。右足にホルスターを結び付けている。ジャージのファスナーは開け放たれていることが多く、下には白無地のTシャツを着ている。基本的に服装には拘らないタイプ。額当てはホルスターの上に巻いている。
性格:食べることに非常に純粋であり、食べることのためなら猪突猛進。無銭飲食だって拾い食いだってなんでもする。また、そのような性格の為か周りにドン引きされてしまう。屁理屈を捏ねたりクラスメートを脅したりと、食関係だと馬鹿っぽい面が目立つが、物事をかなり客観的に見ることが出来る。
詳細:狐者異ネリネと狐者異ビワの娘であり、狐者異一族の最後の生き残り。狐者異一族に多く見られる驚異的な大食いであり、それでいて背が伸びもしなければ太りもしない。容姿はネリネ譲り。うずまきナルトに並ぶドベであり問題児で、度々サボりや無銭飲食を繰り返す。
家族構成:なし
必殺技:トラップ攻撃、及び食遁。
食遁・チャクラ弾 — しょくとん・ちゃくらだん
∟他人の放った攻撃を口の中に収めて相手に向かって噴射する術。真正面から放たれた攻撃でないと使用不可能な上に、水陣壁など範囲の大きすぎるものには使用出来ない。
食遁・唾液弾 — しょくとん・だえきだん
∟チャクラを込めた唾液を発射し対象物を消化する術。唾液弾といえば聞こえはいいが、実質ただのチャクラをいれた唾をかけているだけ。連射が難しく燃費も悪い。
紅丸 — べにまる
赤丸と同腹の兄弟であり、青くパッチリした目以外は赤丸にそっくり。主人であるマナに忠実である。
誕生日:7月7日、3歳、かに座。
好きなもの:犬塚家で食べるドッグフード
必殺技:
獣人分身 — じゅうじんぶんしん
∟赤丸の獣人分身と基本は同じだが、こちらは紅丸だけが変化する。
いとめ ユヅル — いとめ ゆづる
性別:男
誕生日:6月20日、十二歳、ふたご座。 誕生花はべにちがや、花言葉は“守護神”。
身長:146cm 体重:32kg
好きなもの:一人の時間 嫌いなもの:威張る人、いじめっ子
好きな言葉:なし 特技:不明 趣味:不明
容姿:長い白髪を黄色いカチューシャで纏めており、赤い目をしている。やや白っぽい肌で、アカデミー時代は傷を沢山負っていた。
服装:黒い長袖のTシャツの上から白い半そでのTシャツを着ている。額当ては首に巻いており、ホルスターは腰に巻いている。左利き。
性格:ドジっ子といじめられっ子気質を持つ苦労人かつ常識人。身に宿す犬神の為、やや弱気で自分に自信がもてないことがある。常識がない他三人に突っ込む役。心根が優しくおっとりしているが、損な役回りになってしまうことが多い。基本的に無欲だが、犬神に憑かれた為かやや嫉妬深いところも見られる。
詳細:いとめヤジリといとめユギの息子。犬神持ちの少年で、その力で既に六人の兄、姉、及び実の母に危害を及ぼしており、妹には避けられ、父親には疫病神と詰られていた。幼少の頃、木の葉の上忍に目をつけられアカデミーに就学する。傀儡師の才能があり、チャクラコントロールを得意とする。
家族構成:いとめヤジリ、いとめユヅル、いとめヤバネ
必殺技:チャクラ糸、チャクラ網の操縦。
笑尾喇 — えびら
ユヅルの中に宿っている犬神であり、ユヅルの左胸から出てくる。四足で戦闘することもあれば、二足歩行になり白装束を纏って扇子を持った姿になることも。傲慢かつ自己中。
一文字 はじめ — いちもんじ はじめ
性別:男
誕生日:9月22日、十二歳、おとめ座。 誕生花はみせばや、花言葉は“静穏”。
身長:154cm 体重:43kg
好きなもの:不明 嫌いなもの:女装
好きな言葉:特に無い(笑) 特技:演技、女装 趣味:不明
容姿:あやめ色の髪をボブカット。天然パーマでふわっとしている。紫を帯びた灰色の目で、あまり表情を表に出さない。女顔。
服装:だぼっとした濃紺のパーカー、膝丈までの黒のズボン。額当ては腰に緩く巻いており、ホルスターは右足。
性格:基本的には無表情で無愛想だが、天然かつ単純なところも見られ、また些か世間知らずで語彙足らず、その上人を疑うことを知らず何でも鵜呑みにする習慣がある。そこら辺をつけこまれてマナに可笑しな知識を色々植えつけられているが、ハッカもユヅルも愉しんでいるので訂正はしない。生真面目で堅苦しい。一人称は「私」。
詳細:姉の一文字初に女装させられ、家では女として振舞うよう要求されている。その上初には虐待を受けているが、弟・ひとつが一人ぼっちで姉の虐待を受けた挙句自殺してしまったことから、六年間決して姉には逆らわないという誓いを立てている。また、一文字一族はほぼ女顔である。母は早くに亡くしている。
家族構成:一文字一矢、一文字初、一文字はじめ
必殺技:水遁、剣術、蹴り技。
水遁・水球 — すいとん・すいきゅう
∟チャクラを練りこんだ水を球状にしてぶつける技。
水遁・水車輪 — すいとん・すいしゃりん
∟はじめがもっとも好んで使う技。手裏剣にチャクラの練りこまれた水を纏わせる。
一文字流・声東撃西 — いちもんじりゅう・せいとうげきせい
∟東に声して西を撃つ。一方を攻撃すると見せかけもう一方を攻撃するフェイント攻撃。
口寄せ・似之真絵 — くちよせ・にのまえ
∟二の前=一。刀を口寄せする術。
シソ・ハッカ — しそ・はっか
性別:男
誕生日:3月16日、26歳、うお座。 誕生花ははっか、花言葉は“美徳”。
身長:199.9cm 体重:68.9kg
好きなもの:ミントの匂い 嫌いなもの:怠慢、百合の花粉
好きな言葉:勤勉、美徳 特技:潜水 趣味:ハーブの育成
容姿:青白い顔に黒い長髪をポニーテール、背の高い美丈夫。手足が細く痩せており、鼻筋も通っている。本人はあと0.1cm欲しいらしい。
服装:赤いシャツに黒いズボンで、ミントの匂いをぷんぷんさせている。ホルスターは右足の太腿と左足の膝上に一つずつ、両利き。額当ては加工して布の部分を眺めにし、ペンダントかなにかのように首から引っさげている。
性格:熱血かつテンションが高く、非常にノリがいい性格をしている。一人称は「私」、二人称は「貴様」。何事においてもスピード重視であり、言海でも一時間あれば読みきれる。ガイに同じく何かと無茶なことを言い、時間に厳しいというよりは細かい。待ち合わせ時間の一時間か二時間以上も前からそこにいる。
詳細:マイト・ガイと同班だった少年で、以前は大人しい読書好きの少年だったが、ガイに感化されてこのように。“木の葉の速いミント”やら“木の葉最速のハーブ”などという可笑しな綽名がついている。下忍当時の担当上忍・御座敷童子に惚れており、彼女の死後はずっとそのことを引きずっていたが、ユナトによって記憶を消される。別名“赤シャツ”、もしくは“ミント野郎”。
家族構成:不明
必殺技:幻術、水遁、体術を得意とし、火と雷の性質変化を使用する。
水遁・水牙弾の術
水遁・水龍弾の術
以上の二つはウィキペディアなどを参照されたし。
水遁・水波刀
∟ハッカオリジナルの術であり、チャクラを練りこんだ水に刀の形状を取らさせる。
水遁・水凶刃
∟水車輪をクナイや忍刀に適用したバージョン。
口寄せ:
音々 — ねね
∟巨大なオニヤンマ♀。機械的に喋る。ミントに惚れているっぽい。
迅 — じん
∟ヒョウ。♂。荒々しい口調で喋り、音々とは犬猿の仲。
光 — ひかる
∟巨大なエビ♂。綺麗好きな潔癖症。迅と音々の仲裁役。
一応これで第一章は終わりです。
- Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.28 )
- 日時: 2012/07/12 14:12
- 名前: わたあめ (ID: q7aBjbFX)
二十一話をにじファンから移すの忘れた…orz
「うるぁあああ!」
飛んできた拳を間一髪交わすと、地面にぴしりと皹が入った。赤頭なら地面を軽くぶち割りそうだが、怪我している右手だからしょうがないだろう。——怪我している右手? 何故彼女は怪我した手で、
それがフェイクだと気付くのに大した時間はいらない。距離をとろうとする間もなく、サンカは右手で地面を弾いて空に跳ね上がる。空中で体を捩り、左足で延髄蹴りを放った。地面に墜落しかけるリーだが、しかし彼も伊達に体術の訓練をしていたわけではない。右手で着地し、素早く木の葉旋風を放つ。空中にいたサンカは上段の蹴りにも見事はまってくれた。吹っ飛んだサンカは悔しそうに歯噛みしつつ印を結んで、髪を解く。
途端にその髪が赤みを増してぎらぎらと輝く。
「……どこからでもかかってきてくださいっ!」
「いったね!」
構えをとったリーに向かってにやりと笑顔を見せると、サンカは右腕を時計回りに回した。その顔はいままでの好戦的な表情とは違い、穏やかで、けれど勝ち誇っているようにも見える顔だ。
ふんわりと、赤い霞が周りに蔓延り始めた。
「私にこれを使わせたのはあんたが始めてよ……光栄に思うことね。秘術・紅霞(べにかすみ)の術」
霧隠れの術の色違いバージョンか? とも思ったが、違う。この霞は彼女のチャクラなのだ。霞のように形を換えたチャクラ。
そしてリーは突如その危険さをしった。
「なっ、」
「紅炎圧掌(こうえんあっしょう)!」
サンカの声が聞えたかと思いきや、チャクラの霞がぐうっとリーを地面に押し付けた。紅色の霞が掌のような形になっている。
術者たるサンカのチャクラを外に向かって放出し、相手を取り囲む。そして自らのチャクラを操作して相手を攻撃する——なるほど秘術といわれるだけのことはある。なんとも恐ろしい技だ。
「っぐ……!」
そのあまりの圧力に捻り潰されそうになる。体を捩って必死に抵抗するリーだが、真っ赤な掌は力を緩めようとはしない。
ただその威力はまだサンカが素手で殴りかかってきたほどのものではない。もしサンカのチャクラコントロールが完璧なものならこれはかなりの脅威だろうが、サンカはチャクラコントロールを余り得意としていないようだ。素手の彼女の方がまだこれより強いのがその証拠だし、それにこの術には致命的な欠点がある。
それはチャクラを霞に変換して随時外に放出しているということだ。サンカの疲れも並みではないし、これはクゥの槍ノ雨よりも更に体力を消耗する技だろう。
「っまけま……っせんよ、!」
「強がってんじゃねーよオカッパ!」
クゥもサンカも、スタミナやチャクラ量などには構わず力ゴリ押しするタイプらしい。相手を倒す為ならチャクラの節約も技の出し惜しみもせずに、破壊力と威力を重視してつっかかってくる。
「赤丹縄(あかになわ)!」
チャクラの霞が縄のようにリーの手足を掴んだ。成る程こういうやりかたもあったか。がつんと腹にサンカの拳をもろに喰らって血を吐き出す。
そうもたないはずだ。チャクラ量がさして多いわけでもないし、このような使い方は消耗がかなり激しいはずだから。
〈何の用だ、小娘。——いや、小僧、か?〉
ケイを相手に扇子を振るいつつ問いかけてきたのは犬神笑尾喇だった。笑尾喇の後ろに立ち、はじめはクゥとカイに向かって印を結んだ。
「お前が傷付けられた所為でユヅルが傷付けられないないようにだ。——水遁・水車輪!」
幸いクゥの方はかなり消耗しているようだ。カイも全く消耗していないというわけではないだろう。なら、ほぼ(情けないことだが)ネジを盾代わりにしていた為に攻撃を受けていないはじめの方が優勢とも言えるかもしれない。いや、盾代わりにした為に柔拳を一発受けていたのだが。
「雷槍!」
水車輪を相殺され、手裏剣が地面に落下する。更に数本がはじめを襲ったが、はじめはそれを体を捻って交わすなり、起爆札を貼り付けた手裏剣を投擲する。普通はクナイを使用するのが相場だが、あえて手裏剣にしたのはなんとなくクナイがいやだったからだ。そしてそれがいやだったのは多分——姉に、一文字初に焼いたクナイを押し付けられたからだろう。思い出すだけで背がちりっと痛んだ。
「なんだよカイナとケイはちゃんとやってたの!? コイツ体力満タンじゃん!」
「……先輩のお陰でな」
喚くクゥに向かって小声で呟きつつ、水球をぶっ放した。集中雨槍の所為で相殺されかけるが、チャクラを更に行使して雨槍を乗り込み、クゥのチャクラを取り込んで更に巨大化した水球をぶつける。な、と驚きの声をあげるクゥに向かって思い切り水球をぶつけ、そしてカイの目の前に回りこんだ。くるか、とカイが構え、クゥが援護の槍ノ雨を使用するも——
「一文字流・声東撃西(せいとうげきせい)——口寄せ・似之真絵!」
親指の皮膚を噛み切って地面に当てる。途端に地面から現れた一本の刀——「似之真絵(にのまえ)」を振り回して、そしてそれをサンカの左腕めがけて振り下ろした。
「っ、うわああああああ!」
紅色の霞が霧散し、リーが地面に着地する。泣き叫びながら地面に蹲るサンカとあくまで無表情なはじめを驚いた顔で見比べながら、「はじめくん……?」と恐る恐る問いかけた。
視線の先に、地面に落ちたサンカの左腕。血がぼたぼたと流れ、サンカの顔は汗と涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「っ、サンカぁ!」
クゥがサンカに飛びつき、その体をゆすった。はあはあと喘ぎながら、サンカは立ち上がった。ぼたぼたと血が垂れる。足がガクガクと震え、そしてサンカはクゥによりかかった。
「……あたし、やっぱ、向いてなかった、の、かなあ……っぐ……!」
だめよ忍者なんて。
音隠れ? そんなのやめなさい。
そんな両親の反対を押し切って音隠れに赴いたのは他でもないサンカだった。最初は「サンカちゃんは凄いね」くらいで済まされていた怪力が、「バケモノ」にかわったのはいつのことだろう。
岩隠れを出たことについては後悔していない。何故ならその後間もなくサンカの住んでいた地帯で爆発が起こったからだ。両親と離れたことについての後悔はしたけれど、サンカは音に逃れたお陰で死なずにすんだのだ。
だから大蛇丸に従うと決めたけれど、所詮自分は呪印すら与えてもらえない下っ端だ。いつだって捨てられる、だからこそ頑張ってきた、つもりだったのに。
「先生!」
「っくそ!」
ガイの攻撃を振り切って、蓮助が走ってきた。蓮助を追おうとするガイを、ミソラが相手する。ばっと掌をサンカに押し付ける。ぼん、と音がして煙りが立ち、サンカの姿が消えた。お前は帰ってサンカの傍にいろ、とついでにクゥにも掌をあてる。どうやらサンカとクゥは恋人か、もしくはそれに近い関係であるらしい。
「——っ木の葉旋風!」
呆然としていたカイに攻撃を放つ。しかし木の葉旋風を既に数回目撃していたカイはその手にははまらなかった。上段をしゃがんでかわし、そして素早く右手だけで逆立ちの状態になる。下段の蹴りが迫ったその瞬間に右手を離し、左手を地につける。そして間髪いれず、回し蹴り。
両腕でそれを受け止めながら、リーの足が僅かに地面を抉った。しかしそんなカイの背後に、はじめの助走をつけたドロップキックがクリーンヒットする。思い切り吹き飛ばされたカイはカイナに激突し、カイにカイナと同じく「カイ」も二文字を持つ者同士、仲良く地面に倒れこんだ。
「げほっ、がほっ!」
カイが咳きこみ始め、カイナは元々腕に刺さっていたクナイが更に食い込んだのだろうか、痛そうに顔をゆがめていた。その二人に向かって手を伸ばす蓮助に、ハッカが追撃をかける。
「巻き物はマナの腹の中だ。もう消化されているかもしれん。さっさと撤収しろ——この、“死んでいる”恋人を連れてな」
「……ハッカよ、彼女はまだ生きているぞ?」
ハッカに片足で捻じ伏せられているレミがもがくのを見ながらガイが言うが、違う、とハッカは静かに首を振る。
「術で縛った鬼火を死んだ人間の意識の容器とする、鬼の国における穢土転生モドキさ。ただこちらは死ぬ前の能力の半分しか再生できない。その上、記憶の再生も不可能だ。本人には死んでいるという意識すらない」
書物で読んだことがある、穢土転生という術を模倣したものだ。その威力は穢土転生ほどに強くはないが、穢土転生のように白目の部分が黒くなるということもなく、術を使っての蘇生であるということが露見しにくい。
「十数える内に撤収しないと、この女の術を解くぞ」
懐から取り出した札をちらつかせる。僅かの間躊躇ってから、蓮助はレミの方へと差し伸べた。
途端、レミが鬼火の塊となって分解し、するすると蓮助の掌へと向かっていく。そしてそれらは蓮助の掌に吸い込まれて消えた。
蓮助がケイとカイに触れると、二人も一陣の煙りとなって消えうせた。ミソラもまた、蓮助の掌で煙りとなって空を漂う。撤収しよう、と静かにいってから蓮助もまた撤収する。
あっけないほどに彼らは去っていった。最後の一抹の煙りが宙にとけて消えると、リーが膝から崩れ落ちた。
- Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.29 )
- 日時: 2012/07/14 11:33
- 名前: わたあめ (ID: RMd4mwvD)
「どうしたどうした、もっと動け! 私に追いつけるようにならないと任務量を十、追加するぞ!!」
「無茶ゆーなミント野郎!」
「……どうせ追いつけてもつけなくても追加するんでしょう……」
びしびしびしびしびしびしびし。
素晴らしいスピードでハッカが泥まみれになりつつ田んぼに植えているのは苗だった。緑色の苗が猛スピードで、しかも一直線に等間隔をあけて植えられている。等間隔に、そして一直線に植えるのは中々難しく、マナもはじめもユヅルも悪戦苦闘している。三人の相談の結果、ユヅルはチャクラ網を放出し、その縦線と横線が交差する地点にマナとはじめが苗を植えていくということに落ち着いている。マナとしてはユヅルのチャクラ網を出せる能力は羨ましくてしかたないし、こんな苗育つまで待たなくてもそのまま食べちゃえばいいのにみたいな感じだ。
この分配はなんだか不公平な気もしたが、ユヅルは病み上がりなのでいいということにしよう。
今回の任務は田んぼに苗を植えるというもので、自分でやれよみたいな気もしないではなかったが、任務は任務だし、概ねハッカがこなしてくれるので問題ない。
「よし、完成だな!」
「え? もう?」
始まって十分で終わるとか、“木の葉の速いミント”の異名はやっぱり伊達じゃない。顔を引き攣らせる生徒三人に、さあ任務追加だ追加! と叫んで口寄せする。
口寄せで出てきたのは一匹の巨大なオニヤンマだ。すらすらっと走り書きしたメモをオニヤンマに持たせると、「火影邸の三代目火影さまによろしくな」と伝えた。こっくんと頷くなり、オニヤンマは瞬く間に飛び去っていった。
そして三分たったかたたないかのうちに、一枚の紙を抱きしめたオニヤンマが戻ってきた。さすがはハッカの口寄せ蟲、スピードすらハッカ譲りだ。
「因みに他にはヒョウやエビなどがいるぞ」
誇らしげにハッカが笑い、紅丸も素早くなるための訓練をするか? と問いかけた。あ、いいです、とマナと紅丸は人語と犬語でそれぞれ同時に答える。
「……ん? 音々、どうかしたか?」
「ね、音々?」
「ゴ主人。三代目カラ、中忍試験ノコトニツキ、即刻火影邸ニ来ラレタシトノコト」
でっかい複眼のオニヤンマには凡そ似合わない音々という名にドン引きする生徒達には構わず、ハッカは音々の無機質な言葉を聞き取り、了解だと爽やかな笑顔で告げる。
「では行ってくるから、お前たち三人は修行でもしていろ、怠るんじゃないぞ!」
素晴らしい勢いで屋根の上に跳ね上がったハッカに、「ゴ主人、ワタクシガゴ主人ヲオ連レシマス」とオニヤンマの癖に若干顔を赤くしながらハッカに擦り寄り、ハッカをその肢で掴み上げ、羽をぶんぶん鳴らしながら火影邸へ向かって突進していった。
「何あのオニヤンマパネェ」
「ぱねぇ……?」
「あー、パネェってのはな、えっとそのなんだ、半端ないお姉さんって意味だ。因みにパネェの術ってのは、ナルトのおいろけの術みてーな奴だ。撹乱にはもってこいの術だぞ、ちゃんと覚えとけ。お前があれつかってもっと女らしく変化してみせりゃ、他の奴等もお前が女顔とは思わなくなるかもしれねえし」
「……しょ、承知した……。パネェの術……」
最後の一言が効を奏したらしい、はじめはぶつぶつと呟きながら修行を始める気満々だ。指先で小さく変化の印を結んでみたりしている。なんかいつか凄く大恥かきそうな気がするが、はじめをいじくるのも楽しいのでこのままにしておこう。
「シソ・ハッカ率いる第九班、一文字はじめ、狐者異マナ及びいとめユヅルを推薦する!!」
オニヤンマ共々窓から火影邸に突入したハッカの高らかな宣言に、そこにいた何十人もの担当上忍達が一瞬で硬直した。
「……イルカよ……カカシの班のことはカカシに任せておけ」
「……はい」
イルカとカカシ及び三代目のやり取りは継続され、完璧にスルーされるハッカだった。
「……とりあえず、ハッカ上忍、それには賛成しかねますね」
「……え?」
歩みでたのは日向ヒルマだった。彼は担当上忍ではないが、推薦された下忍の健康状況などの評価を努めるのは彼だ。
「皆さんも、ユヅル君が犬神を用いた戦闘を行ったことは承知の上と存知ます」
全体を見回して話しかけると、ざわざわと上忍たちの間で話し声がした。そのことは既に噂になって広まっていたが、多くの上忍は、所詮噂は噂と半信半疑であった。それがヒルマの言葉によって真実だと言われ、驚くのは当然なのかもしれない。
「ハッカ、あの噂は本当だったのか……!?」
「犬神持ちが木の葉に現れるなんてな……」
「いとめユヅル……成る程、あの子が……」
アスマ、カカシ、紅もそれぞれ視線をハッカに向けてくる。ヒルマが右手を上げた。数秒して、沈黙。それを見たヒルマは満足そうに笑い、次いで言う。
「それにより重傷を負ったため、病院に入院させていましたが……彼のチャクラが時折ひどく不安定になることに気付きました。また、犬神は犬神持ちの妬みや羨望などの感情以外にも、チャクラが不安定な時にも出てきやすくなります。もし犬神が試験中に出てきてしまったら、最悪の場合彼は一撃でも死ねます。彼を試験に参加させるのは些か不適切かと、一人の医療忍者として忠告します」
ハッカはそんなヒルマに向き直り、臨戦態勢に入った。
「ヒルマ殿、貴様が私の愛弟子を治療してくださったことには大変感謝しているが……彼等は私の部下だ。確かにユヅルにはそのような危険性があるかもしれないが、だからといって永遠に下忍でいさせるわけにはいかない。彼は傀儡師の才能を持っている、あのままにしておくのはもったいないし、犬神の力も使いようだ。上手く利用出来れば彼は素晴らしい忍びになれる」
ヒルマも負けじとハッカを睨み返した。
「だからといってなんなんです? その前に彼が忍びになれなくなったり、死んでしまったりしたら貴方はどうするんですか? 犬神の力を上手く利用できなかったら? 生徒の無事を想うのも教師の務めです。あの犬神は本当に命取りになります。犬神の心臓を貫かれたら、即ちそれはユヅル君の死を意味しています。それに彼のあの不安定なチャクラ。あのままでは……! せめてあと一年待ってください!」
途中からヒルマの顔は、不安と焦燥、恐怖の入り混じった顔つきになった。口調も嘆願するものへと変じている。
「わたくしの母は、犬神持ちに殺されたんです」
ぞっとするような声がヒルマの喉から搾り出された。白い目がぎらぎらと異様なまでの光を放つ。
「ユヅル君が試験の間、他の試験生を殺されないと言い切れますか? 試験官達に影響を及ぼさないと言い切れますか? ねえ、ハッカ上忍。ユヅル君のあの不安定なチャクラはいつかきっと他人に害を齎します! ……火影さま、どうか……!」
「それでも私は彼を試験に参加させます。私は彼には十分その能力があると信じている」
ハッカはあくまで冷静だった。やめてください、とヒルマが首を横に振る。マナさんやはじめ君だって被害に合いかねないのに! 悲痛な叫びをあげるヒルマに、三代目がトドメをさした。
「……よかろう」
「三代目!!」
「……ただし試験官には、その力が発揮された場合、即座にいとめユヅルを殺す許可を下す」
ハッカとヒルマは目を見開いた。言った三代目の顔も沈痛だ。彼とて木の葉の、輝かしい将来を持っているであろう下忍の死を望んではいないのだろう。ただ彼が里の脅威になるなら、彼は他の者達を優先せねばならない。数秒してから、落ち着き払ってハッカが言った。
「了解しました」
暫くしてから躊躇いがちに、ヒルマが口を開いた。
「……わたくしも了解致しました。……三代目、一つお願いがあります」
「言うてみよ」
火影に促され、ヒルマはキッと顔をあげる。その目には決意の光が閃いていた。
「わたくしに、いとめユヅルに封印術を施す許可を」
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