二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター外伝 幻のXワード
- 日時: 2015/02/14 09:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
どうも、タクです。今作は気分転換というか、息抜きの感じで前に連載していた作品のリメイクを行うことにしました。”ポケットモンスターBW2 幻のクロスワード”が元ですが、これは見ないほうが良いです。読み返してみましたが、黒歴史そのもの。後、BW2とか言っておきながら時系列はその2年後なんですよね。いや、BWの2年後なんじゃなくてBW2の2年後。
そして、登場人物の関係や設定が多少変わっていたり、使用ポケモンが変更されていたり、などなど正しくリメイクに相応しい内容になる……ように頑張ります。
ストーリーの流れ的には、前作を要約してその分分かりにくかった設定等を明確にしていこうと思っています。
さらに、ストーリーの改変もところどころに入れております。
また、今作は1人視点で基本進めていく方針です。1人視点の練習も兼ねて、これを連載するに至ったんですね。
それでは、タクの新しい(のか?)物語の始まりです!
ソウリュウシティ氷結事件、そしてプラズマ団の完全なる壊滅から2年後。大都会、イッシュ地方には新たな影が迫っていた。幻のポケモンを追い続ける少年、そして幻のアイテムを狙う謎の組織! さらに、新たなるポケモンの進化の謎に今、迫る!
Act1:始まりはいつも突然--イッシュ地方南の孤島
>>01 >>04 >>05 >>10 >>11
Act2:動き出す古代の偶像--ヤーコンロード
>>13 >>15 >>16 >>17 >>18 >>23 >>24 >>25
Act3:悪夢三度--ストレンジャーハウス
>>26
お知らせ記事
11/8:ページのレイアウト大幅変更・ピース10シナリオ変更
- 作者の第一回あとがき ( No.12 )
- 日時: 2014/11/08 19:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
どうも、タクです。今作ではこういった感じに物語が1段落したところであとがきを書いていこうと思います。
今作の幻のクロスワードですが、時系列的にはポケットモンスターBW2の更に2年後となっております。何でXYの御時世にまたまたこれをリメイクすることにしたのか、と言いますと長くなるのですが、まずは第六世代で出た新しい要素をここでも使いたいな、と思ったのとストーリーはお気に入りだったのに、当時の自分の文力が酷くて上手く書き表せなかったのが心残りでした。
そこで出てきたメガシンカ情報。ここまでメガシンカが判明したポケモンの中には当然ながらBW2の新イッシュ図鑑に載っているものもあるのですが、ルカリオも例外ではありません。ライガの相棒はルカリオ。これはもう書くしかねえな、と。
コルニと丸被りなのが気になりますが。
さて、今回は最初の戦場となるイッシュ南の孤島編でしたが、悪役の黒き翼団。リメイク前はフウタというライバルが登場していたのを差し替えたものです。そしてリメイク前には完全に警備組織を被った悪の組織だったセキュリティー・イッシュが何か普通の警備組織になってるし、黒き翼軍って何よ。中二臭ッ! と感じた方も多いのではないでしょうか。あの駄文をものともせず、リメイク前を読んだ方々には。後P・ユニオンって何? IPQじゃないの? とか。
今作はリメイク前のややこしい要素を排除して分かりやすく作ろうとした結果、こうなったわけです。
後はP・ユニオンも元はIPQという名前だったのですがこちらに変えました。
また、今作ではやや試験的にポケモンのデータを載せてみました。ステータスのデータはいわゆる種族値と呼ばれるものを参考にしています。分からない人はぐぐってみてください。さて、この基準ですが、実はそれぞれのステータスごとに違ったりします。
一言でまとめれば、根っから幻のクロスワードという作品を考え直したのがこの幻のXワードなのです。
さて、次回予告ですが、リメイク前は何をトチ狂ったかここでポケウッドに行くというものでしたが、ここから間を少し挟んですぐにヤーコンロード編です。あの伝説ポケモンが出現します。お楽しみに。
というわけでこれからもこの作品をよろしくお願いします。それでは。
- ピース6:ガートと最初の3匹 ( No.13 )
- 日時: 2014/10/19 17:59
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
セキュリティー・イッシュのビルはヒウンシティの北大通りに位置している。頭を包帯でぐるぐるにした俺とミオは早速そのビルの前にやってきた。
セキュリティー・イッシュはかつてのイッシュ警察がさらに他の機関を飲み込んで、あらゆるマルチ犯罪に対応した強大な組織らしい。イッシュの生態系を調査し守る役割を持つP・ユニオンと同盟を組んだのは、やはりプラズマ団などの犯罪組織にはポケモンと密接に関わっているものもあるため、それらが使うポケモンの調査をすることでより連中と戦いやすくすることが目的らしい。連中はお上から配られたポケモンを使っているからだ。中には、他の地方から密輸ルートで取引されたものも混じっているという。
そのためか、さっきミオに「翼軍の隊員が何のポケモン使ってたか覚えてる?」と聞かれた。
モロバレル、と答えたら「ふーん、まあ珍しくはないわね」と返された。
だが、現在指名手配されている2人の幹部はアゲハもそうだったように、それぞれのタイプのエキスパートで、並のポケモンでは歯が立たないらしい。なるほど、俺のルカリオは並レベルってことか。悔しいね。
尚、アゲハの指名手配情報を見て「虫ポケモン使いが他にもいて感極まるね、ファンタスティック」とかほざいてていたジムリーダーが居たらしい。
「で、何で俺まで結局来るんだ?」
「チョーカーよ。あのガブリアス、連中が作ったチョーカーで暴走してたんでしょ。あれがどんな感じだったか、技術部の人に教えてほしいと」
「そんな大したことは教えられないと思うんだけど。ん、待てよ。それじゃあ俺だけ行けばいいんじゃ」
「ふぇ!?」
それを言った途端、彼女の挙動が急に変わった。
「い、いや、そ、それは……ね、とにかく何でもいいでしょ、レッツゴー!!」
「えー」
こいつ、絶対何か隠してやがる。
ビルに入ると、警備用なのか多くのコイルやギアルといった鋼タイプのポケモンがうろついていた。
「ったくシュールな光景だな」
「侵入者が来ても電気技ですぐに捕まえられるようにしてるの。待ち合わせの部屋は5階らしいから行くわよ」
彼女がそういってエレベーターに早足で乗り込むので俺も後に続いた。
***
案内された部屋にはいると、そこにはもう人がいた。白衣に身を包み、黒髪を背中まで長く伸ばした長身の男だった。
それと、研究員らしき人が辺りに何人かいる。
「どうも、これはこれは。よくここまで来てくださりました」
男の顔はなかなか美麗だった。横でミオのやつが目を輝かせ……あ、もう何でこいつが着いて来たがったのか分かった。
「ああ〜、相変わらずガートさんは研究員なのに身なりにも気を使っててしかもイケメンで良いわ〜」
「こいつ」
「え、いや何も言ってないわよ、私」
ゴホン、と目の前の男が咳払いをしたので俺は前を向いた。
「初めまして、ライガ君。僕はセキュリティー・イッシュ技術・情報部のガートという物です」
「あ、ああ。こちらこそ、ライガです。よろしくお願いします」
ふふ、とガートさんは微笑んだ。研究員になるのが勿体無いくらいのイケメンだ、羨ましい。
「黒き翼軍が使っていたチョーカー。実はそういったものを連中が使っているのを見るのは初めてなのです。奴らはチョーカーに付いて何か言っていませんでしたか」
と聞いてきたので、とりあえずポケモンを洗脳してさらに強化するものと連中が言っていた、と伝えた。
「邪道な……道具でポケモンの意識を奪い、さらに無理矢理力を引き出すなんて!! そして幹部のアゲハと戦ったようですね」
「あ、はい。やつのカイロスにこっ酷くやられて、この頭ですよ」
「それは大変でしたね。お大事にしてください」
その後も幾つかの質問をされて返す、というのを繰り返し、とりあえず帰して貰うことになった。
が、その際に。
「そうですね、後はライガ君。実は貴方に渡したいものがあるのですよ」
「へ?」
「モンスターボールです。中にはポケモンが入っています」
そういってガートさんは箱のようなものを取り出して中からボールを3つ取り出した。
「あれ、何でこれを俺に?」
「P・ユニオンに入った人はポケモン研究者の一員である私がイッシュ地方最初のポケモンを渡すことになっているのです。まあ、アララギ博士からポケモンを貰っている方もいるのですが、そういった方にももう1匹……というわけです。貴方は違うようですがね」
確かに。俺は幼馴染のリオを連れて旅に出たからアララギ博士から最初のポケモン貰ったりとかは無かったんだよな。
「一種のサポートのようなものですよ。イッシュだけに」
「それじゃあ、選ばせてください。どーれーにーしーよーうーかーなー」
「私の渾身のギャグはスルーですか」
寒いんだよ、北極にでも行ってくれ。とりあえず、どれにしようか迷う。
そこにミオが割って入ってきた。
「あ、そうそう。あたしが渡した端末だけど、あれはエキスパンションナビ、略して『E・ナビ』。ポケモン図鑑の機能も付いていて使うたびに拡張されていく最新型のもので、これもP・ユニオンの上層部からの支援みたいなものだから大事にしてよ」
ふーむ。便利な世の中になったもんだぜ。とりあえず、ボールの中の3匹をこれで調べてみるか。
『ポケモンDETA
ツタージャ:蔦蛇ポケモン
概要:知能が高くて冷静。多くの動物型草ポケモンの例に違わず、細胞に葉緑体があるため、光をたっぷり浴びると動きがすばやくなる。
体力:D 攻撃力:D 防御:D 特攻:D 素早さ:C
要注意技:はっぱカッター、蔓の鞭
危険度:1』
能力は見たところ、素早さが高いのが目立つな。なんにせよ、火力は少々厳しそうだ。
『ポケモンDETA
ポカブ:火豚ポケモン
概要:焼いた木の実を食べるのが大好き。だが興奮すると炎が高ぶって焦がしてしまうこともしばしば。感情によって炎の強さが変わる。
体力:C 攻撃力:C 防御:D 特攻:D 素早さ:D
要注意技:火の粉、体当たり
危険度:2』
うん、なかなか進化前にしては前線向けっぽい。だけど役割がリオと被りそうだな。
尚、危険度が2なのは一応”炎”ポケモンだかららしい。大人しいのだが、やっぱ火って危ないよね。別に俺はそこまで気にしないけど、良い子の皆も火には気をつけよう。
『ポケモンDETA
ミジュマル:ラッコポケモン
概要:お腹のホタチで戦う。攻撃を受け止めてからすかさず切り込む戦法を得意とし、真っ向から相手に勇敢に立ち向かう。
体力:D 攻撃力:D 防御:D 特攻:C 特防:D 素早さ:D
要注意技:水鉄砲、シェルブレード
危険度:1』
あ、こいつ良くないか。丁度水タイプ欲しいな、と思ってたところだし。リオとエモの弱点の火・地面・氷・岩をカバーしてくれる。
それに何かこいつ愛嬌っていうのかな、そういうのが伝わってくるし。
「俺、ミジュマルにします」
「ふーん。ちなみにあたしはツタージャにしてたの。今はジャノビーに進化してるわ」
「へぇ。それじゃあガートさん、色々ありがとうございました」
「ああ、旅の無事を祈ってるよ」
とにかく、新しい手持ちもゲットして、俺のメンバーは3体か。もうちょいスタメンに入りそうなポケモンを探していきたいところだな。
***
---------深夜、ホドエモシティ。
「おいおい、何だありゃ」
ヤーコンロードを見回る警備員はふと走ってきたワゴン車らしきものに目を留めた。
中から何人かの人が降りてくる。
そのうちの1人は頭を丸めた坊主のようで、スキンヘッドのヤンキーかと思っていた。
全く迷惑な……と声をかけに行こうとしたそのときだった。
突如、警備員は何かに締め付けられる感覚を覚えた。
それも自分の体を覆うほどの大きな何かだ。
「うごあああ、何だ、何だこれはァァァ! ポケモンか、ポケモンなのかッ!?」
ぐぎぎぎ、と体の骨が砕かれていくような感覚だ。
「うぼぁっ!!」
血反吐を吐き散らし、ガンガン、と自分の体を締め付けるものを拳でたたいた。すると、感触は岩のようだった。サラサラ、と少し砕けて砂になる。
しかし、痛みに堪えかねてついには意識を手放し、そのまま倒れた。
「ガッハッハ、イワークの速度は60キロ。図体の割に速いのだよ。ククク。いや、もう聞こえていないか」
動かない警備員を見て男は笑うと、他の面子を連れてそのままヤーコンロードの闇へ消えた-----------
- キャラクターファイル1:ライガ ( No.14 )
- 日時: 2015/02/10 15:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「いーや別に。ただ、アンタもついでにブチのめせねえかなぁーってな!!」
ライガ 男 14歳
容姿:逆立った黒い前髪にゴーグルを掛けており、黒の地に黄色の雷が迸ったようなデザインのパーカーを着用している。しかし目は常に気だるさが見え隠れているため、やる気が感じられなかったりする。
性格:自己中心的なところを見せるが表面的なものであり、仲間やポケモンに対する思いはとても熱い。ただ、人間(特に敵サイド)相手に対しては少々ぞんざいなところあり。P・ユニオンに所属しているのは、いつかは幻のポケモンに会えるかもしれない、ということを信じているからである。また、根は前向きなためか、バトルにおいてもヒット&アウェイ、ラン&ガンのスタイルをとる。そして、頭脳戦も決して不得意ではなく、むしろメインはこちら。いかに相手を欺き、そして出し抜くか、だ。面倒なものは先に片付けるタイプ。後、結構根に持ちやすい。
解説:幻のポケモンに会うことを夢見て日々、旅を続けている。ジムに挑戦して周っているわけでもないため、ポケモン達はあくまでも用心棒と本人は言っている。が、幼いころにトレーナーである父親に鍛えられた所為か勝負の勘、育成の方法が身に付いており、無意識ではあるが手持ちのポケモンはある程度強力に育っている。
一人称:俺
二人称:お前、アンタ
ルカリオ:リオ♂
技:シャドークロー、はっけい、真空波、メタルクロー
特性:不屈の心
性格:意地っ張り、血の気が多い
経緯:最初から居る幼馴染のポケモン。
解説:肉弾戦を得意とする強力なアタッカー。さらに遠くの相手へ真空波を食らわせることもできる。不屈の魂でどんな攻撃を食らってもすぐに起き上がって反撃に転じる。また、普段こそ大人しいが、強い攻撃を食らうとキレて一気に相手へ襲い掛かる。
備考:よくすっとぼけた言動をするライガに突っ込みという名の鉄拳を食らわせるなど、非常にしっかりしている。
エモンガ:エモ♀
技:10万ボルト、エレキボール、電磁波、放電
特性:静電気
性格:臆病、物音に敏感
経緯:物語開始以前に野生で手に入れた。
解説:速攻やデバフ播きを得意とする嫌がらせ要員。そのスピードからのエレキボールはかなりの威力を誇る。また、数の多いだけの雑魚を放電で一掃する役割も持つ。
備考:ライガのお気に入りでいつも愛でられている。
ミジュマル♂
技:シェルブレード、水鉄砲、リベンジ、?
特性:激流
性格:うっかりや、イタズラが好き
経緯:P・ユニオンに入会した記念にガートから貰った。
解説:ライガが構想するラン&ガン戦法に最も適しているポケモンといえる。ジャブの要領で小さい攻撃を次々に当てていき、怯んだところに止めの一撃を食らわせる。飛び道具から近接攻撃まで何でもできる。また、素早さはそこまで高い訳ではないため、速攻を得意とする敵に対しては後手に回ることを予測し、敵に攻撃された後に使うと威力の上がるリベンジで畳み掛ける。
備考:?
- ピース7:ヤーコンロードに潜む者 ( No.15 )
- 日時: 2014/10/19 23:10
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
***
次の日。だいぶ怪我もよくなった。縫合した場所も治りがよく、明日には抜糸できるとのことだ。
ヤーコンロードの警備をしていた警備員が瀕死で見つかった、という事件は言うまでもがな、早くイッシュ中を騒がせていた。かなりの重傷で助かるかどうか分からないらしい。怖いね。
それだけならばまだしも、セキュリティー・イッシュの捜査員が入ったところ岩蛇ポケモン・イワークに追い出されてしまったらしい。全く情けない。あんなの弱点の水タイプ・草タイプ突けば簡単に倒せるのに。
問題はあの中に徹夜で作業していた作業員の安否もあるよね。
「やったのは恐らく黒き翼軍の連中よ。あそこを占拠して一体何を考えているのかしら」
「知らねーよ。というかいつまでお前着いて来るんだよ」
「あれよあれ。一応怪我させちゃった責任もあるしね。ただ、組んでた相方------ほら前言ったじゃない。ガブリアスと戦って怪我して入院していたのが」
「ああ」
ほんとお空のスターミーになってなくて良かったぜ。俺もそいつも。
「で、そいつがどうかしたのか」
「それが、もうすぐ退院するからね。上からは今度からはこの3人で組みなさいとのことよ。安心したわ」
「何か上手く合わせられた気がするな」
「話戻すわよ。で、イワークで嫌な予感がするのは、これよ」
そう言って彼女は俺に紙を1枚見せてきた。写真が貼られている。どうやら指名手配書らしかった。
名前は……カシワか。
「カシワってどんなやつなんだ?」
「見ての通りの凶悪犯で、幹部の中では岩タイプのポケモン使いよ。それらのパワフルな怪力を使った列車強盗や破壊工作を担当しているの」
「けっ、脳筋かよ。安心したぜ」
「ただの脳筋と見縊る無かれ。やつは同時に狡猾でもあるわ」
まあそこは流石悪党と言ったところか。
「とりあえず、今度の仕事からエリートの私の足を引っ張らないように。いいわね?」
「お前、むしろ逆に引っ張ってなかったっけ?」
バキッ
とりあえず殴られたけど、ライガは泣かないもん!
***
「ぐあああッ」
作業員は悲鳴を上げた。体をイワークに締め付けられて動けないのだ。
「お前ら、黒き翼軍だなァァァ!! ぐええ、何でこんなところにィィィ!! ポケモンや、俺達に、こんなことをして許されると思っているのかぁぁぁ!!」
作業員が指差した先にはボロボロに傷ついたポケモン達の姿があった。なかにはイワークの巨体に押しつぶされて凄惨な姿になっているものもいた。
「探し物だよ、探し物。上から探し物をすることを強いられているのだよ」
「法がッ、ぐはぁ!! 法が必ず貴様らを裁く……だろう、ぐはっ」
そう言い残して作業員は倒れて動かなくなった。
「我らが法律だよ」
カシワは嫌な笑みを浮かべた。
作業員を適当に放るとイワークは岸壁に向かって突進した。ガラガラ、と岩が崩れ落ちる。
カシワは白い柔道着に黒い袴を穿いたスキンヘッドの男だった。
何も意味も無くここら一帯を破壊しているわけではない。さっきも言ったとおり、上から指示された探し物に来たのだった。
「さあ、行けイワーク! 貴様はこの道を掘り進むことを強いられているんだッ!!」
しばらく経っただろうか。そこには妙な石像があった。土に埋もれてその全貌こそ分からなかったが、顔の部分にはデンチュラの単眼のようなものが付いていた。
「カシワ様。もうすぐ例の反応が近づいてきますが!」
しかし、カシワは部下の報告など気にせずに顎に手を当ててぶつぶつ呟いていた。
「この石像……どこかで見たような……」
そのとき、何かに気づいたのか叫んだ。
「進め!!」
イワークが自慢の石頭で石像に体当たりしたそのときだった。
石像の目らしきものが光る。
ピコーン、ピッピッピッピッ、ピロロロ……
奇妙な電子音が周辺に響いたこの瞬間、石像は大きな震えとともに動き出したのだった。
「うわあああ!?」
「ふむ、やはりポケモンであったか。それもただのポケモンではない」
彼は野心と確信に満ちた目を石像-----否ポケモンに向けると言った。
「これは伝説のポケモンだ!!」
***
ヒウンシティ・ポケモンセンター。E・ナビのワンセグ機能で俺は珍しくニュースを見ていた。
『現在、ホドエモシティ近辺で震度5の地震が発生しております。周辺地域にお住まいの方は---------』
地震、か。黒き翼軍の連中がやってきたとすれば、それが原因でこの地震が起こっているのか?
何にせよ、だ。体が疼いて仕方が無い。もしこれが連中の仕業なら、今度こそブチのめしてやらないと腹の虫が収まらないってもんだ。
とか言ってる間にミオがやってくる。
「任務よ。それも私達にね」
「おっ、マジか!」
「E・ナビを確認して。データはもう送ってあるわ」
画面にはこんなメッセージが送られてきていた。
『任務:ヤーコンロードの調査
ヤーコンロード周辺で原因不明の地震が発生している。黒き翼軍の仕業である可能性が現時点では最も高い。従って、チーム・ミオにはヤーコンロードへ出向き、直接調査を行っていただきたい。尚、もしも黒き翼軍が関与していると判明したらただちにセキュリティー・イッシュへ連絡をしてほしい。
諸君らの健闘を祈る。』
「そうとくりゃ、早く行こうぜ」
「そうそう。私がさっき言ってた”あいつ”も退院手続きが終わり次第駆けつけるらしいわ。無理してほしくはないんだけどね」
「何なら心強いぜ!」
「外に出るわよ。私のスワンナを貸すから」
そういって彼女は一足先にセンターを出ると、ボールを投げる。中からは美しい白い羽毛を持った鳥ポケモンが現れた。
『ポケモンDETA
スワンナ:白鳥ポケモン
概要:夜明けとともに踊り始める。真ん中で踊るスワンナが群れのリーダー。また、優雅な見かけによらず、力強く羽ばたくことで数千キロを飛び続けられる。
体力:B 攻撃力:B 防御:C 特攻:B 素早さ:B
要注意技:暴風、がむしゃら
危険度:4』
それに飛び乗って、ミオは言った。
「あ、あんたは足に掴まってね?」
マジすか。
と思いきや流石に冗談だったのか乗せてくれた。早く空を飛べるポケモンが欲しいぜ。
***
ヤーコンロード。入り口には何人もの人が入り乱れた後があった。そしてビニールシートに血痕。事件現場である。
例の警備員だが結局助かったらしい。しかし中にいるという作業員も心配だ。早く行かねば。
はやる気持ちが抑え切れず、俺は中に入った。ミオも慌てて後に続く。
洞窟の中は涼しかった。ひんやりとした空気が頬を撫でる。
「見たところ、何も居なさそうだけど……」
そう言ってミオが辺りを見回したそのときだった。
俺の正面から少し先に岩が崩れて落ちてきた。
とっさによける。
しかし、それがただの岩ではないことに気づく。
「イワークか……!」
E・ナビでスキャンすると確かにそう出てきた。
そしてあからさまな敵意を向けてくる辺り、どうやら野生ポケモンではないらしい。
ここは戦う以外道はなさそうだ。
『ポケモンDETA
イワーク:岩蛇ポケモン
概要:時速80キロもの速さで大きな口を開き土を飲み込みながら地中を掘り進める。また、このときに飲み込んだ鉱物がそのまま自分の体となる。成長すると岩の体はダイヤモンドのように硬くなる。
体力:D 攻撃力:D 防御:SS 特攻:D 特防:D 素早さ:B
要注意技:締め付ける、岩落とし
危険度:5』
- ピース8:切り裂く刃 ( No.16 )
- 日時: 2014/10/26 15:39
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
イワークは突然咆哮をあげると吼えて襲い掛かってきた。すぐさま、頭突きを避けて岩陰に隠れる。
小石が飛び散って顔に当たった。痛い。
「そーだ、ギャラドス出せば良いじゃんお前」
「馬鹿ね、こんな天然のステルスロックのたまり場なんかに体が大きいギャラドスを出したら、すぐに傷だらけになっておしまいよ! それにイワークはとても防御力が高いから、物理攻撃が主体のギャラドスじゃどの道返り討ち!」
「仕方ねーな、また俺がやんのか?」
「私もそこまで薄情じゃないわよ」
そういってミオはボールを放った。中からは直立歩行のカナヘビのようなポケモンが現れた。
それも先ほど見たばかりのツタージャより一回り大きい。
『ポケモンDETA
ジャノビー:草蛇ポケモン
概要:地面をすべるように走る。素早さは一級品で、相手を翻弄し、攻撃を次々に当てていき、確実にしとめる。体が汚れると光合成ができなくなるため、綺麗好き。
体力:C 攻撃力:C 防御:B 特攻:C 特防:B 素早さ:B
要注意技:蔓の鞭、グラスミキサー
危険度:3』
「島での借りはこれで返させて貰うわよ! ジャノビー、グラスミキサー!」
おお、これはすげぇ。ジャノビーが体を回転させてエネルギーによって作った木の葉を飛ばしていく。
イワークにこれが炸裂。
まあ、一撃必殺だよな----------と思ったそのときだった。
「グォォォォ!!」
あれ、まだ動いてる。どゆこと。
草タイプの技はイワークにとっては致命傷なんじゃないの?
「あ、あはは……イワークの特性って確か石頭と……頑丈だった気がする」
いや、笑い事じゃないよね。頑丈って確か、どんな攻撃食らっても絶対に一度は耐える特性じゃありませんでしたっけ?
何かヤバい。イワークの体が突然ボロボロと崩れ落ちたと思えば、無駄な角が取れて綺麗になって-------つまりロックカット--------すごい動きが機敏になってるし。
んでもってイワークの尻尾が銀色に輝いているし。洞窟の壁を抉り取るついでにジャノビーへそれをぶつけた。吹っ飛びます。ホームラン。
ああ、こりゃジャノビー戦闘不能だね、うん。
「ロックカットで素早さを底上げした状態からのアイアンテール、だな。今の」
「うう〜、ジャノビー戻って!」
「何晒してんだお前。てっきりこのまま勝つ流れかと思ったじゃねえかよ。一面ボスに手間取ってる暇じゃねえんだけど?」
「んなこと言ったって、今のあたしの手持ちはギャラドス、スワンナ、ジャノビーの3匹だけだし!」
「何その編成、偏りまくりじゃねえか! 岩と電気がぶっ刺さりだよ!」
「っさいわね! そのためのジャノビーだったの! たった今やられちゃったけど」
ああ、とりあえずリオを投げれば倒せる……けどあいつはロックカットでさらに速くなっている上に地面タイプだ。真空波を撃とうとしても障害物だらけのこのヤーコンロードで当たるか分からんし、地面に潜られたらアウト。
なら、こっちも新入りを使わせてもらおうか!
「ミルマ! お前の出番だぜ!」
ミルマ、そう昨日貰ったミジュマルに付けた名前だ。ミジュマルからジュを抜いて並び替えただけだな、うん。
それはさておき、この戦線。こいつで勝たせて貰うぜ。
「頼むわよ。ここでアンタまでやられたら洒落にならないわ」
「バーロー、こいつなんかリオの手を煩わせる程でもねえってことだ」
本当は地面技が怖くてチキっただけなんだけどな。
「つーわけでミルマ! 水鉄砲だ!」
口から高圧の水を噴出し、イワークへぶつけようとするも、とても速い動きで地面に潜り、そのまま足元から再び現れる。
流石、元々地中に生息してるだけあって地面の中に潜る速さはガブリアスの比じゃないな。
けど、甘い!
「ミルマ、シェルブレード!」
相手は頑丈でぎりぎり耐え残っているだけ。
だが、ミジュマルの体内のカルシウムでできた貝状の武器、その名もホタチ! この切れ味は並の岩くらいすぐに通しちまう、つまり体のどこでもいいからこれをブチ当てれば良いってことだ!
水を纏ったホタチがイワークの胴を切り裂く! いや、もう本当に言葉通り。スパン、と斬れました。
ホタチから溶け出した成分が研磨剤となっているからシェルブレードの威力は申し分ない。
この通り、岩はおろか鋼でも切断できるとな。
バランスを崩した巨体が転げ落ちて、頭を地面にぶつけたかと思うと動かなくなった。
ま、気絶してるだけだし、岩食ったら体を再生させるらしいからとっとと行くか。
「一丁あがり、と」
「うぐぐ、また借りができちゃったわね」
「馬鹿いうな、俺らは仲間だぜ? 迷惑掛けあうもんだろーが」
お、我ながら良いこと言った?
……あれ、ミオさんもう先に行っちゃったぽい? 待ってくれー、道に迷うから。
おーい、ちょっと待って、おーい。
***
「これは……」
ミオは思わず声を上げた。それは何とも酷い惨状だった。作業員たちはうつぶせになって何人も倒れており、ポケモン達も怪我をして倒れていた。
ああ、酷い。本当に酷いとしか言い様が無い。ふつふつと怒りさえ沸いてくる。
こんなこと、一体全体誰がやったんだって話だが、目の前に後から掘られたと思われる穴があること、そして----------
「おいおいガキ共、何しに来た?」
「まさか入り口のイワークぶっ倒してここまで来たんじゃあるまいね」
男女だ。それも見覚えのある服装に、黒い翼のエンブレム。
直感したね、こいつら黒き翼軍の面子だって。
「それはこっちの台詞よ。大の大人が揃いも揃って探検ごっこしに来たんじゃないわよね」
「ああ? こちとら仕事で来てんだよ、バーロー! んでもって、我らがボスの崇高な目的をてめぇら雑魚に教えるまでもねえってこった!」
男が吐き捨てるように言った後、モンスターボールを投げた。
ああ、またこれですか。まあそうなるよね。
中からはポケモンが現れる。
「やっちまいな、マクノシタ!」
「出番よ。ラクライ!」
中から現れたのは確か……根性ポケモンのマクノシタ、そして稲妻ポケモンのラクライだった。どっかの本で見たことがある。
俺の記憶が正しければ、2匹とも、このイッシュ地方には生息していないポケモンだ。
しかし、E・ナビは今までのポケモン図鑑と一線を超えるのは、インターネットを使うことによってさまざまな地方のポケモンも調べられることらしい。
即座に目の前の2匹をスキャンして情報を集める。すると---------
『ポケモンDETA
マクノシタ:根性ポケモン
概要:どんな稽古にでも耐える不屈の精神を持つ。大木にぶつかって、鋼のように丈夫な肉体を作り上げていく。筋肉は分厚い脂肪に覆われている。
体力:C 攻撃力:C 防御:E 特攻:E 特防:E 素早さ:E
危険度:3
要注意技:突っ張り、当て身投げ』
『ポケモンDETA
ラクライ:稲妻ポケモン
概要:長い体毛に電気をためている。電流で足の筋肉を刺激して、爆発的な瞬発力を生む。
体力:D 攻撃力:D 防御力:D 特攻:C 特防:D 素早さ:C
危険度:3
要注意技:電気ショック、電光石火』
おー、出てきた。流石、文明の利器ってのは凄いね。惚れ惚れするよ。どうやら電波を感知する範囲がとても広いらしい。
さて、ぱっと見、能力だけならマクノシタが見劣りしている。だが、特性云々を考えると何してくるか分からんからな。
「外の地方から密輸されたポケモン……か」
見ればミオも既に臨戦態勢に入っていた。ここはもうやるしかないだろう。
「頼むぜ、ミルマ! もう一回、出番だ!」
「今度こそ頼むわよ、ジャノビー!」
2対2のタッグバトルという構図。やつらが何を考えているか知らねえが、こいつらと幹部とやらをぶっ飛ばして今度こそ目にモン見せてやる!