二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター外伝 幻のXワード
- 日時: 2015/02/14 09:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
どうも、タクです。今作は気分転換というか、息抜きの感じで前に連載していた作品のリメイクを行うことにしました。”ポケットモンスターBW2 幻のクロスワード”が元ですが、これは見ないほうが良いです。読み返してみましたが、黒歴史そのもの。後、BW2とか言っておきながら時系列はその2年後なんですよね。いや、BWの2年後なんじゃなくてBW2の2年後。
そして、登場人物の関係や設定が多少変わっていたり、使用ポケモンが変更されていたり、などなど正しくリメイクに相応しい内容になる……ように頑張ります。
ストーリーの流れ的には、前作を要約してその分分かりにくかった設定等を明確にしていこうと思っています。
さらに、ストーリーの改変もところどころに入れております。
また、今作は1人視点で基本進めていく方針です。1人視点の練習も兼ねて、これを連載するに至ったんですね。
それでは、タクの新しい(のか?)物語の始まりです!
ソウリュウシティ氷結事件、そしてプラズマ団の完全なる壊滅から2年後。大都会、イッシュ地方には新たな影が迫っていた。幻のポケモンを追い続ける少年、そして幻のアイテムを狙う謎の組織! さらに、新たなるポケモンの進化の謎に今、迫る!
Act1:始まりはいつも突然--イッシュ地方南の孤島
>>01 >>04 >>05 >>10 >>11
Act2:動き出す古代の偶像--ヤーコンロード
>>13 >>15 >>16 >>17 >>18 >>23 >>24 >>25
Act3:悪夢三度--ストレンジャーハウス
>>26
お知らせ記事
11/8:ページのレイアウト大幅変更・ピース10シナリオ変更
- Re: ポケットモンスター外伝 幻のXワード ( No.7 )
- 日時: 2014/09/15 16:40
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
>>06
お久しぶりです! また来てくれるとは思いませんでしたよ。忘れた頃にちょいちょい更新することになりそうですが、自分が書きたい場面に入ったらどんどん進むと思うのでお楽しみに。
今作はオリキャラ募集はしない方針なんですよ。結構、他のポケモンの被りなんかが目立ったので。ラウルのポジションにも別のキャラを入れるつもりなんです。ごめんなさい。本当は入れても良かったのですが、作者と言う立場上、オリキャラ1人だけを贔屓にするわけにもいかないのです。
それでも応援していただければ幸いです。
それでは、また。
- Re: ポケットモンスター外伝 幻のXワード ( No.8 )
- 日時: 2014/09/15 20:53
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)
予告通り参りました、もういちいちハンネ変えるのも面倒なのでモノクロです。
雑談板でも仰っていましたが、ポケモンのデータを作中の特色を出しつつ挟むのはいいですね。こういう演出は結構好きです。
さて、正直な話、リメイク前のXワードを完全に記憶しているわけではないというか、リアルタイムで更新していた時に読んでいたわけではないのでいまいち以前の話の流れをよく覚えていませんが、今のところはわりと順当に進んでいますね。
ガブリアスという分かりやすく強いポケモンを最初の関門に置いてあるのも、わりとモノクロ好みだったり。
ふむ、久々に作品にコメントを残したので、なんと言ったらいいのやら……ともあれ、無理しない程度に更新頑張ってください。
……と、自分が言えたことではないのですが。
- Re: ポケットモンスター外伝 幻のXワード ( No.9 )
- 日時: 2014/09/16 01:42
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
>>08
コメントありがとうございます。これでも結構改変しているんですよ、シナリオは。本来ならここでフウタを出して対峙させるのを、謎の男たちに変えていますから。
だから完全な新作として楽しんだほうが良いかもしれません。リメイクリメイクとは言っていますが。
そして今日は対戦ありがとうございました。それでは、また。
- ピース4:真空波 ( No.10 )
- 日時: 2014/10/14 19:00
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
ガキィィン、とガブリアスの爪とリオの拳がカチ合ったのが見えた。くそっ、砂埃が舞って目に入るぜ。いつもは前髪に掛けているゴーグルを付けるか。
ガブリアスが低く身体を構えた。そして、爪を地面に打ち下ろす。
そして何度も地面を叩き付け始め----------いや、違う。あれは穴を掘るの体勢だ。地面を下に掘り始めたのだ。
「ははは、やっちまえガブリアース! そのガキをぶちのめしちまえ!」
一瞬でガブリアスの姿は土煙に飲まれて見えなくなる。
ちっ、どこに行ったのか分かりゃしねえ。
いや。まだだ。まだ方法はある。
目に見えないなら----------
「リオ、目を閉じろ!」
----------波動で感じるんだ!!
明鏡止水の精神で心を研ぎ澄まし、一瞬のザワ付きを見つける。
それがルカリオという種族の戦い方だ!
ガタガタ、と地面が揺れた。
そしてどこにヤツがいるのかが分かる。揺れる木の枝のごとく、どこにいるのかはっきり分かる。
リオの眼がカッと開いた。
俺も確かに感じた。敵の気配が。
「リオ、足元に来るぞ! シャドークロー!」
次の瞬間、俺の指示通りリオは飛び上がっていた。そして足元へ飛び出してきたガブリアスは攻撃が掠りもしなかったことに驚いたのだろうか。動きが鈍る。そこに影の爪を叩き込んだ。
さらにそこへ蹴りを加えて、止めの体勢に入った。
と、そのときだった。
ガブリアスの様子がおかしい。まるで狂ったかのように腕を叩き付け始めたのだ。
「ひゃはは、チョーカーの力がようやく”完全”に効いてきたか!」
「あ?」
「やっちまえ、ガブリアス!」
バチバチ、と黒い電流を身に纏ったガブリアスがじりじりと近づいてくる。
ふと、ミオの声が聞こえた。
「ふにゃあ……あたしは何やって……ってライガ君!? んでもって”黒き翼軍”の隊員!?」
どうやら目が覚めたらしい。さらにガブリアスを目に留めて叫ぶ。
「しかもガブリアスがライガ君のルカリオと戦っている!?」
「おーい、目ェ覚めたか。このガブリアスはなあ、ヤツの作ったチョーカーで操られていたんだ! というか、”黒き翼軍”って何だよ」
「知らないの!? 今、イッシュ地方を騒がせているテロリストグループよ! ポケモンの強奪から改造、その他諸々! 考えられる悪事なら全てやる、まさに悪党よ!」
「悪い、自分から聞いてなんだが、おわぁっ!? 今説明聞いてる暇無いんだわ。しかも俺ニュースとか見ないし、おばばば」
ガブリアスの爪が目の前の地面をえぐった。思わず飛びのいた。
石が転がり、砂が舞う。
「止められるもんなら止めてみろぉ、てめぇみたいなガキに止められるもんならよぉ!」
「おいおっさん、俺がこんなヤツ止められると思ったか?」
脚を地面に叩き付け、何とか体勢を整えて叫ぶ。
止めるのは俺じゃない。
「何のためにポケモンがいるんだって、話しだろうがよ! リオ、はっけい!」
「うっぜえええーな、本当によォ! このチョーカーで洗脳したポケモンはより強くなるんだ! ただでさえ強いガブリアスがもっと強くなるんだ、勝てるわけねえだろ、分かるだろうがァァァン!?」
「勝てるよ、って言われた試合じゃねえとやらねえヤツには逆に分からないだろうな。例え勝てないって言われたとしても、絶対にどっかに突破口はあるんだ、ポケモンバトルだって例外じゃねえ!」
リオの転んだ身体がもう一度起き上がった。
まだまだ、行けるよな!
「はっけい!!」
リオの手がはっきりとガブリアスを捉えた。
そして、バチッと気合をエネルギーを貫通させる。
それでも尚、ガブリアスは再び起き上がって吼えた。そして地面を爪で----------叩き割る。
おいおい、こんなに強かったっけ!?
さらに一瞬でリオと間を詰めて頭突きした。怯んだリオを狙い、尻尾で弾き飛ばす。
さっきよりも2割り増しで凶暴になっている気がする。
「ひゃーはっはっは! 突破口があるんじゃなかったのかァ、クソガキィ!」
仕方ない。一か八かの賭けだが、あれを使うしかないか。
「リオ、”あの技”だ。行けるか?」
こくり、とリオは頷いた。
この技はまだ未完成。成功したことが一回もない。
それでも、こうなった以上はやるしかない!
「リオ、まずはヤツを怯ませろ!」
「無駄だって言ってんだろうがぁぁぁ!」
ガブリアスの刃がリオの胸めがけていく。しかし、振り向き様に蹴りを浴びせ、もう一度はっけいを喰らわせる。
それが一瞬の隙となった。
「リオ、今だ! ”真空波”!」
この瞬間、空気の刃がリオの拳から放たれた。それがガブリアスの身体を切り裂いていく。
チョーカーもそのときに切り刻まれ、バラバラになって壊れた。
そしてガブリアスはそこに倒れた。
「な、何で」
「あんなに何度もはっけいを喰らっていて、麻痺状態にならねえ方がおかしいだろ。途中でチョーカーで強化されてたから、微妙に動きが鈍っていたのに気付かなかった、違うか」
「こ、こいつぅぅぅ!!」
倒れたガブリアスと仲間を尻目に隊員は後ずさった。
そのとき、鶴の一声。
洞窟に声が響いた。
「そこまでだ」
声のしたほうを向けば、この部屋の入り口に人が立っていた。
ミオが驚いたように叫ぶ。
「ア、アゲハ!?」
「誰だよ、だから」
「黒き翼軍の幹部の1人……それが何で此処に!?」
アゲハと呼ばれた男の風貌は奇妙なものだった。つーかアゲハとかいう名前の癖して男なのかよ。
筋肉質な身体に黒いコートを羽織っており、額には蝶のタトゥーが入れてある。
瞳は無機質で異様なまでに冷たい。まるでゴミでも見るようにさっきまで叫んでいたおっさんと倒れているもう1人に目を向けた。
「ア、アゲハ様ァ!?」
「我々が求めていたものは此処には無い。にも関わらず、何を遊んでいるのだ?」
「は、ははは……」
「チョーカーの損失の分、貴様ら2人にはきっちり罰を与える」
なーるほどな、ヤツが幹部ってことは--------この場でぶちのめせば黒き翼軍について何か分かるってこったな!
「おい幹部さんよ、随分とまあ弱っちい組織なんだな、黒き翼軍ってのは」
「……なるほど、貴様か。この2人を倒したのは。チョーカーで強化されたガブリアスを相性さえも跳ね除けて伸したのか」
「ガキに負けちゃいけねえとは思わねえのか?」
ちょっと挑発してみる。だけどアゲハって野郎は1mmも表情を変えない。
「私に喧嘩を売っているのか?」
と無表情で威圧してきた。
「いーや別に。ただ、アンタもついでにブチのめせねえかなぁーってな!!」
「む、無茶よライガ君!!」
ミオが止める声なんかガン無視して「行け、リオ!」という俺の声と共にリオがアゲハをめがけて走り出した。
だが、アゲハもモンスターボールをもっている。
それを投げた。
「少しあいてをしてやれ、カイロス!」
中からはクワガタともアリジゴクとも見て取れるような……何だあれ。
まあ良いか、とにかく虫が出てきた。
虫のポケモンが。
「黒き翼軍、幹部。蟲使いのアゲハ。その実力を見せてやろう」
『ポケモンDETA
カイロス:くわがたポケモン
概要:羽根がないので飛ぶことはできないが、腕で木には登れるため、樹上での生活に長けている。とてつもない怪力を持つ上に2本の角はとても強く、一度挟んだが最期、相手がちぎれるまでもう離さない。ただし、寒さには弱いため、冷え込む夜や冬は地中に穴を掘って暮らす。
体力:C 攻撃力:S 防御:A 特攻:D 特防:C 素早さ:B
要注意技:フェイント、シザークロス、はさみギロチン
危険度5』
- ピース5:実力の差 ( No.11 )
- 日時: 2014/10/17 07:00
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
先に動きはじめたのはもちろん、俺達だ。幹部なんざ知ったことあるか。面倒だから一気に決めてやる。
リオの手に気合がこめられた。同時に再び空気の刃ができる。
「リオ、真空波!!」
ぎゅんぎゅん、と刃は音を立ててカイロスへ一直線。効果はいまひとつなのは分かりきっている。だが、本命はそちらに集中を向けさせて本当の一撃を食らわせること!!
リオの影の爪が伸びた。シャドークローで伸してやるぜ!
案の定、真空波は先にカイロスに直撃してリオの爪も遅れて襲い掛かった。
どぉん、と音が響いて砂煙が舞った。
しばらく何も見えなくなる。
「……その程度か?」
目の前のヤツが憫笑したのを見て、俺はカイロスの方を見た。のけぞってもいなければ、攻撃を受けて怯んだ様子も無い。
ガッ、とリオの拳が掴まれた。一瞬、冷や汗が伝う。シャドークローはカイロスの身体に到達する寸前にその腕で掴まれているというハプニング。
こいつ虫だよね? 虫が格闘ポケモン相手に圧倒的な実力見せちゃダメだよね?
「カイロス、ヤツを拘束しろ」
刹那、カイロスの2本の角がリオを挟んだ。棘が付いた角にとらわれたら、もう逃れられないってナビにあったが、これは相当ヤバい状況だよね。
「からの--------馬鹿力」
本能でこれはまずいと察した。筋肉が一気に膨張したカイロスがドゴッ、ドゴッ、とリオに拳をぶつける。
さらに、このときに角の拘束を解いていた。
ボールに戻す暇なんか無かった。
吹っ飛んで来たリオが俺の身体に襲い掛かる。そのまま俺も一緒に押されて後ろにあった固い物に頭をぶつけた。
このめり込んでいく感じ、そして生暖かいものが首を伝って流れていく。
あ……れ、これって岩だ。洞窟の壁だ。我ながらやってしまったらしい。
目の前の視界がぼやけてくる。
「これで少しは痛い目を見ただろう。おい小娘」
アゲハはどうやらミオの方を向いて喋っているようだ。
意識が朦朧としている所為かだんだん切れ切れにしか聞こえなくなってくる。
「さて、このまま私……戦って手持ち……失い、イッシュに帰る手段も失うか、それとも大人しく逃げ……か」
「くや……けど、後者を……ぶわ」
「賢明……だ。だが……用は無い。私はこいつら……違って、子供を攫う趣味は……ない。さっさと消……ろ」
「言われな……も」
どうやら見逃して貰ったらしい。けど、もう何も考えられないや……。
意識が闇に……落ちていく----------
***
「……しっ……さいよ!!」
あれ? 何か聞こえる。
女の声だ。
光だ。目の前に光が……。
「起きろォーッ!!」
「だぁー!! うるせ痛たたた」
怒鳴った直後に後頭部に痛みが走った。
頭の中に響く感じだ。
目の前にいたのはミオだった。頭に何か巻かれているのに気付く。
えーっと、何だっけ……。そうそうアゲハってヤローのカイロスにリオがぶっ飛ばされて、俺もそれに巻き込まれて------ああ思い出した、壁にごつんしてそのまま気絶してたのか。
なるほど、包帯で丁寧に巻かれている。応急手当はばっちりってか。
「悪かったわよ。でも起きてくれなきゃ、あたしの腕力じゃあんたを岸まで運べないから。でも、黒き翼軍の幹部に挑むなんて随分とまあ無茶してくれたじゃない」
さっきまで人に無茶させてたヤツが言いますか。
「あー、そうかよ。で、ガブリアスは?」
「野生に帰化していたみたいだから、捕獲したわ」
「じゃ一応は任務完了、か」
「それと……助けてくれてありがと」
それを聞いて少し感心した。
自分勝手なヤツだとは思うが、一応礼は言えるのな。
「まさか、あのガブリアスが連中の手に掛かっていたなんてね。あんなチョーカーは初めて見たから」
「あのチョーカーをつけると、ポケモンの力が通常の倍近く強化される上にチョーカーのコントローラーへ従順になるって変なおっさんが言ってた」
「早速連絡ね。”セキュリティー・イッシュ”にも伝えて動いて貰わないと」
そう言ってミオはライブキャスターに着信を掛けた。
「もしもし、ミオです。はい、ガブリアスは捕獲しました。ただし、ガブリアスは黒き翼軍が開発したと思われるチョーカーで連中の下っ端に操られていた模様。さらに幹部のアゲハの乱入に合い、負傷者が1人。それが勧誘していたトレーナーで……。ただ、命に別状は無いです。……はい……はい、了解です。すぐに向かいます」
「どうだった」
ミオは複雑そうな顔でこちらを向いた。
「すぐにセキュリティー・イッシュの本部に来い、だって。ヒウンシティに行くわよ」
セキュリティー・イッシュ……イッシュ地方の今の警察組織か。ニュースとか見ねえから全然分からないけど。
「P・ユニオンはセキュリティー・イッシュと同盟を組んでいるの。あの黒き翼軍を倒すためにね」
「ああ、そうかよ」
「……ただ」
湿っぽくあいつは言った。
「あんた、このままP・ユニオンに入る覚悟はある?」
「何だって?」
聞き返すと、彼女は申し訳なさげに言った。
「こういう仕事をやっていると、今回みたいな怪我をする可能性もあったりするってこと。そして最悪、黒の翼軍に狙われて事件に巻き込まれるってことも在り得るわ」
「おいおい、バカ言うな」
俺は言った。確かに傷は痛いし、今日はビビってばっかだった。
だけど、
「一回乗りかかった船だ。もう降りる訳にはいかねえよ。それに、あのアゲハっていういけ好かない野郎にもリベンジしねえとな」
やられてばっか、てのは嫌いな人種なんだ俺は。
そういって笑ってみせてやった。
「それによ、元はと言えば誘ったのはてめーだろうが。今更辞めろだなんてブラック企業みてーな真似すんじゃねえ」
「……悪かったわね」
覚悟だなんておこがましいけど、後にはもう退けないと思うんだ。
幻のポケモンのことも奴らを追っていれば分かるかもしれない。
「行こうぜ、セキュリティー・イッシュの本部とやらに!」
「分かってるわよ」
彼女は少しむっとして返すと、ギャラドスを出した。そして2人ともそれに乗る。
ぶっちゃけると面倒なことに巻き込まれたとは思う。
だけど、俺の追ってる幻のポケモンに近づけるチャンスだし、何よりぶっ飛ばしたい相手が出来た。
まずは目的が出来たんだ。どんな任務が来ようが、全部やりきってやる!
「でも、その前にアンタは病院行かないとね」
あ、俺怪我人だったの忘れてた。そして打った頭がずきん、と痛んだ。
***
「ただいま戻りました」
アゲハはローブに身を包んだ男------背丈だけならば少年のものだが----------の前で跪き、頭をもたれた。
「……奴らの処分はしっかりと下しておきました。減給・降格、その他諸々」
「新しいチョーカーを持ち出した上に勝手に使ったんだからね。当然だろう。君の部下に対する管理責任は--------今回は問わないでおくか。あれは仕方がないよ」
「申し訳ありません」
「それと------」とアゲハは言葉をつなぐ。
「やつらを倒したのは少年とそのルカリオですが、歯向かってきたので少し痛い目に合わせてやりました」
「ほーう、大の大人であるアンタに突っかかるとは、随分血気盛んなようだ」
男は言った。
「まあ、そういうやつって結構危険なんだよね。案外アンタ、今度戦ったら負けるかもしれないぜ」
「いえ、心配は無用」
アゲハは自信の右耳に付けているインカムを指差して言った。いや、正確に言えばそこに嵌めこまれている虹色に輝く石だ。
「進化を超える進化。あの少年はそれを使うまでもありませんでした。よって我らを脅かすには至りません」
ふむ、と男は言った。
「男子3日会わざれば括目して見よ……ランセ地方に伝わる格言だけど、案外そのとおりかもしれないよ」
男は続けた。
「もしかすれば、すごい成長スピードを見せてくれるかも、だね……!」
狂喜に満ちた笑みにアゲハの背中が泡立った。
彼はこれから自らの組織に襲い掛かるかもしれない脅威に期待すら抱いているのだった。
「それと、気になることが。あの少年は妙な腕輪を所持していまして、それに嵌め込まれていた石が我らの持つそれに似ている気がするのです」
「それは流石にありえないさ。入手ルートは? 普通のイッシュ人がこれを手に入れるだなんて無理だよ。たぶん、それを模した観光グッズなら幾らでも見るし」
「はあ」
「ああ、そうそう。”破片”の場所が分かったらしい。既に”カシワ”に頼んで捜索に向かわせたよ」
男は電子マップを展開して得意げに言う。
「場所は---------ヤーコンロードだ」