二次創作小説(紙ほか)
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- 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower
- 日時: 2017/01/20 21:42
- 名前: プチシュークリーム ◆IVDmJcZSj6 (ID: IGUMQS4O)
- プロフ: http://www.pixiv.net/member_illust.php
【鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower / めいさのしろ 】
それは、人間と妖怪の新しい関係だった—————————
【注意】
・この小説は東方project及び秘封倶楽部の二次小説です。一切オリキャラは登場しませんが、ご留意ください。
・一部不適切な表現がございますが、現代の人々の倫理観とは異なる観点に基付く為、リアリティを追求する為用いているものです。
・秘封倶楽部ストーリーを準えた内容となります。卯酉東海道以降もございますが、こちらは有料となっております。お手数お掛けしますが、例大祭等の東方オンリーイベントでお買い求めください(500円)
・半分キャラ崩壊しています。申し訳ございません。
【舞台背景】
この物語は、とことん未来の地球が舞台。
1900年代半ばから続く環境破壊と紛争は、地球の温暖化現象を加速させ、温暖化からくる水位の上昇は、大陸の沿岸にある多くの国を侵食していた。
世界規模の海岸線の変更は新たな領土問題を孕み、各国間の戦争が勃発するのに、そう時間は掛からなかった。
幾多の大地が人工の神の齎した審判の炎に晒されても、人々を護ってきた大いなる膜壁が切り裂かれようとも、尚、人々を包んでいた憎しみは途絶える事なく、数百年、数千年の間、闘いを繰り返した。
————ある時、誰かが気付いた。取り返しの付かない事をしていたのだと。我々は手を取り合って生きていくべきだと。
気付けば人類は、その手で地球に本来生息していた植物のほとんどを絶滅させていたのだ。
荒涼とした大地にて、過酷な環境に順応し、進化を続けた植物があった。サボテンだ。
このままでは人類は滅んでしまう…。生き残りをかけ、カクタスカンパニーはサボテンから何としてでも有益な情報を取り出す研究を進めていった。
長い実験の果てに生まれた不安定な力、サボテンエネルギー。原子力さえもはるかに凌駕し、怖ろしき力を唯一制御する事に成功したカンパニーは全世界から恐れられ、権力の殆どを掌中に納めるほどの大企業にのし上がった…。
サボテンに未来を夢見てか、カンパニーへの心酔か。エネルギーが生まれて直ぐに、人類は再び平和と繁栄を取り戻し、技術革新を繰り返していった。
しかしその平和も束の間、サボテンエネルギーは各地のプラントで暴走を繰り返し、環境は更に激変した。度重なる地殻変動、大気の汚染、土壌の汚染、pH度数2の酸性雨。 最早地球は人の住める場所ではなくなっていた・・・
その結果、多くの都市の空調、温度、湿度、天候を自由自在シェルターで覆わねばならぬくらい深刻な被害を与えた。
それから数十年、酉京精神科学大学に通う、宇佐見蓮子は、誰も訪れる事の無い廃棄された旧校舎の隅に或る倉庫で、実験に没頭していた。
彼女の正体は歴史の闇で暗躍してきた秘密結社『秘封倶楽部』の後継者で、宇佐見の名を冠する最後の1人だ。
誰も見向きもしない旧校舎に、少女の幻影に誘われて駆け込む異国の少女、マエリベリー・ハーン。
彼女は遥か西方の、変化の少ないアルティハイトの港町から、刺激的な生活を求めて密航してきたアテラン(士官育成学校)の卒業生である。
この邂逅は、偶然か、将又必然か。
奇妙なふたりが織り成す物語が、ここに始まる。
———————————————
>>40-53 鳴砂の記憶
>>54-65 「あなた」との出会いは偶然とは思えなくて
>>66-82 蓮台野夜行 〜 Ghostly Field Club
>>83-89 鳥船遺跡 〜 Trojan Green Asteroid その1
>>90-92 深く、そして重い水の奥底で
>>93-109 鳥船遺跡 〜 Trojan Green Asteroid その2
>>110-127 伊弉諾物質 〜 Neo-traditionalism of Japan.
>>143-194 卯酉東海道 〜 Retrospective 53 minutes
- Re: 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower ( No.121 )
- 日時: 2016/12/08 19:10
- 名前: ぷちしゅ ◆IVDmJcZSj6 (ID: .uCwXdh9)
「な、何言ってるの? やっぱり善光寺の古めかしい大気とサナトリウムの不快になるような気に晒されて、おかしくなっちゃったのかしら?」
蓮子の言葉もまぁ頷けると言ったら頷ける。如何せん、2500万年も前に、自然が人の手に掛かったように見える物質をどう構成したんだって話だ。
私は神の領域に再び身を投げ出す事が出来たのだ。廃衛星も、冥界も、直接神と対面できるチャンスでは無かった。飽く迄、神の御膝元へと至るステップであると私は考えていたんだ。
この鉤…伊弉諾の(・)断片は私達を、神の傍へと誘おうとしているのだとすれば、これ以上のチャンスは到来しないものと考えてよいのだ。
神に問う質問のリストだとか、様々な宗教に関する断片的なイメージを、蜘蛛が巣を尻から捻り出した糸で織り成すように、結び付けていくことにした。
蓮子は、なんだか私から距離を置いているような気がしてならない。私、何かしたのかしら?
- Re: 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower ( No.122 )
- 日時: 2016/12/08 19:11
- 名前: ぷちしゅ ◆IVDmJcZSj6 (ID: .uCwXdh9)
**
そう言えば最近、メリーの能力が、何かの弾みに徐々に高まっている様に感じるわ。
最初の頃は、ただ不思議な世界が見られると言うだけでダイヴしていただけなのに、今では訪れた世界から、何か珍しい物を持ってくる事も自在という。
夢の世界だと言うのに、物を現世に持ち込めるというのだから、きっとその異世界は私にとっては夢なんだろうけど、世界にとっては現実で、もしかしたら同じ世界かも知れないのね。
不思議な世界では先日私達を食らおうとしたような、キマイラのような怪物に出くわす事もあるそうだ。私にとっては、それはただの幻像でヴィジョンに過ぎないのであるが、メリーにとっては現実で、命を脅かす事も有り得るのだ。
うん、異世界と呑み込まれつつ、と言うよりかは徐々に一体化しつつある、メリーがそのキマイラと同じレベルにいると思えてならないかな。
しかし現と夢の境目に生きる人間かぁ。異世界にとっては、彼女の存在はインベーダーかも知れないけど、彼女の欲求が高まれば彼女も異世界になってしまうのかしら?
心配でならないけど、まだ別れの日は、遠い気がした。私も彼女も、互いを必要としているのだからね。そう、違ったとしても信じてしまいたいわ。
「ふーん、メリーが持っているその石が……メタンハイドレート遺跡から出土した石とイコールであるって訳?」
異世界との接点は建造物であったり、据え置かれたオブジェだったりするんだけど、彼女はもっと小さい、この石を媒介に異世界を見ていたらしい。
それも、この善光寺を訪れてからというものの、石の放つ夢のエネルギー波がどうも強くなっているみたいね。
その形は、釣り針とも、鍵とも言いがたい形容しがたい形をしていた。報道されていたものに確かに似ているが、どう見ても人工物である。磨製石器か何かじゃないのかしら?本当は。
「これがイザナギプレートから見つかった人工物、伊弉諾物質と何か関係あるんじゃないかと睨んだわ。」
「んー、なんでそう言い切れるのかしら?どう見てもなんか人が作った感じがするわよ」
まぁ、メリーが言うのだから、この石にはただならぬ妖気があるのだろう。持ち帰ってまた詳細に調べ上げてサンプルにでもしてやらなきゃいけないと思う。
- Re: 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower ( No.123 )
- 日時: 2016/12/08 19:12
- 名前: ぷちしゅ ◆IVDmJcZSj6 (ID: .uCwXdh9)
「現にこれは神々の世界から持ち出したものよ。鳥船遺跡や冥界のような、異世界に実際にダイヴしたときに拾い上げた、紛れも無いマジックアイテムだもの。」
「でも、やっぱりそれって夢の世界の道具じゃあないの?」
だから私が異世界の幻影の話よ。さっきからそういってるじゃないの…、でも、夢の話なのに、何でその夢の中の物が現実に出てくるの?おかしくない?
なんで鳥船で猛獣に肉体にキズを付けられたのかしら?やはりこれも、現実の世界なんじゃ…行き場のない疑問は、単なる質問へと変遷した。
「だから、貴方に相談してるのよ。でも、私には見えてるの。2500万年前、伊弉諾が捏ね上げた日本の姿が、確かに」
メリーは伊弉諾物質を投げたり振ったりして陽気な様子だ。
何だか普段の落ち着きのあるメリーらしくないわ。不気味な石だけど、そんな不可思議な力を秘めているってのも、まぁ彼女の様子を見る限り、嘘臭くはない気がしてきた。
「今日のメリーは、いつもにも増して妄想プロデュースしてくれるわね。デムパとでも呼んであげようかしら?旧時代風に。うふふ」
異世界を次から次へと思い浮かべられるメリーを羨ましく感じるわ。纏め上げる事は得意でも、イメージする事は苦手かもね。
「何とでも言いなさいっての、今は新しい映像が次々と電波塔みたいに入り込んてきて、絶好調になっちゃったんだからねー。」
サナトリウムから戻ってきて、メリーは一段と、その感性が先を削り上げた竹槍のように鋭利になった様に感じた。蓮子は異世界を独り占めするメリーを羨ましく思うと共に、
何とかして自分もその映像を眺め、我が物にするべきだと思った。
- Re: 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower ( No.124 )
- 日時: 2016/12/08 19:13
- 名前: ぷちしゅ ◆IVDmJcZSj6 (ID: .uCwXdh9)
「ねえ、私にも見せてよー。その映像。焼け焦げた世界でさ、デミナンディのステーキでも作って口に運んでやりたいわ」
「えぇ、それは勘弁しておくわ。せめて飛騨牛のヒレでお願い」
善光寺を照らす人工の夕焼けは、修羅の住まう世界の様に変貌した世の中にも、まだまだ希望の光が、確かに存在せしめる事を伝えているかのように、私の眼に映ったわ。
それと、また私達の、善光寺で展開された小さな物語の終わりを告げるサインでもあったのかもね。
もしもこの、人の手に掛かって最適化され、光の向きや温度も的確に決められた、完璧な人工の夕焼けを、何の情報も無しに貴方の二つのまなこ(・・・)に向けて映写されたならば、きっと貴方は本物の夕焼けと判断することだろう。その時、いったい何が心の器の中で生み出され、そしてどのような思考や印象へと転じさせるだろうか。
少なくとも、私は判り切った、この偽物の映像を眺めても、感動するだなんてことはなかったけど、一つだけ思い浮かぶことがあったの。
「こんな眩しい偽りの光で大地を照らさなくても、日本中の不思議を集める私達にとっての光…、暴かれる事なく長らく眠り続けた、僅かな幻想が、もっともっと露顕して、人々の心を照らすことが出来たらいいのにね」
**
人類はいつから、世界中に溢れ返っている不思議や、妄想を受け入れなくなったのだろう。いつから、はっきりとした物に囚われ出すことになったのだろう。
古来は闇夜に小さな火球がぽかんと佇んでいれば、死者の無念が濃縮されて生まれた霊魂だとか、狐が人を騙す時に生ずるエネルギー体だとか言ったものだった。
そこには、多くの人達の、深い想像力があった。未知の何かを証明する為に、人々の思いだとか、知識が総動員されたのだ。
総動員された知識に、それを断定する証拠は必要とされず、人々の記憶に焼き付くだけのインパクト、だけが求められていたのだ。無論、科学が進歩したところで、発想やアイデアが重要なのは変わらなかった。科学の大半を構造しているのは、人々の想像だ。
哲学なんかは大半が客観的な事実によるもので、結果はまず優遇される事はなかったのだ。見えない未来を予測する為に、既存のデェタに囚われる必要はないからだ。
しかし、人々は逸話や神話を否定しだした。宗教的な建造物は、あくまで形だけの芸術や、政府の売名の道具として姿を変えてしまったのである。
科学こそが、人々の胸に生きる神に成り出した。人類は、支配される側ではなく、いつの間にか、支配する側のサイドに摩り替ってしまったといえようか。
地球環境は疎か、月のクレーターや、遥か数万光年離れた星にすら、名前を付けだすようになった今、人類に、自分ら以外の敵は無い。
文明の進展に伴って、研究者達は地球上に存在する、既知の不思議について、何かと理由を付け出した。理由がない、存在を立証できないものは全て虚構であると認識するようになった。
科学において、あくまで幻想に縛られるだけ、と言うことは決して認められなくなった。非科学的なままではこの大地に根付くことが出来ないのだ。
- Re: 鳴砂の楼閣 〜Ringing Sandtower ( No.125 )
- 日時: 2016/12/08 19:13
- 名前: ぷちしゅ ◆IVDmJcZSj6 (ID: .uCwXdh9)
例えば火の玉は狐の妖気などではなく、人体を構成しているリンが自然発火しただとか、メタンガスの燃える光だとか、プラズマだとか、挙句の果てには不安や恐怖といった脳の反射作用で起こる、錯覚だとかだと想像した。
証明できるものならば、まだ、幻想の名を失っても、「証明されたもの」として、人々の記憶の中で生き永らえる事が、確かにできた。
しかし、情報化社会が更に進むと想像力は死滅した。情報の海を潜りさえすれば、誰にでも、情報が平等に与えられる物になった時代に、個々の想像の余地など、無かった。
火の玉の正体は与えられた、立証された情報の海の中に必ず答えがある。
無ければ、何かの間違いや虚構であるで片付ければ良い、と。人は答えのある不思議を娯楽として楽しみ、答えの無い、誰の回答も得られなくなった不思議の一切を否定した。
挙句の果てにデマゴーグでさえも、客観的事実として認めるようになってしまったのだ。その瞬間、人々の心から、事実と虚構のボーダーラインである炎は消え、人々は完全に嘘の束縛から解き放たれたのだ。
それからだ。誰かが誰かを欺く事に、何の躊躇もなくなり、それが生活のスタンスとして認められるようになったのは。
忌まわしきスパイラルは、この国から、神様はおろか、幽霊も、河童もいなくなり、急速に偽りの生態系が蔓延ることになった理由といえる。今はもう、日本中が見捨てられた不思議と幻想の墓場と化している。
**
「メリー! この場所、見た事があるよ!何か大きな槍みたいなのが山に刺さってる光景!」
凹凸の激しい山々の岩の間に、巨大な石の槍が突き刺さっている。傍から見ればただのモニュメントに、無駄過ぎる警備が敷かれているようにしか見えないのだが。
「この逆さに刺さった鉾は、神子島にある高千穂峰って山々に突き刺さっているという、 天沼矛ってアーティファクトね。伊弉諾命と伊弉冉命が混沌とした海を掻き雑ぜて、日本列島を生み出したという鉾よ。基督を突き刺した、ロンギヌスの槍みたいな立ち位置にあるわ。」
神子島とは、本土から海を隔てて離れて存在する、日本列島を構成している島のひとつである。島の真下を四万十層が走っており、島の大半を険しい地形が覆っている。
神子島の中心に聳え立つ、阿蘇の霊峰は、古くから火を噴き大地を枯れさせる憤怒の山として恐れられてきた。
数百、数千年の時を経て、阿蘇の霊峰は爆発的噴火を引き起こすことがないように形を変えられ、制御された。その結果、旧時代にこの地に住んでいた人々以外にも、大勢の人々がこの地へと移り住んだ。
他にも四国や法戒道、劉球などの旧時代、日本国の主要都市が存在し、栄えた島々があるが、いずれも日本の各地に点在する要点を結ぶ、七道鉄道で結ばれていないので、今日、この地を訪れる者は殆ど居ない。
これらの三つの島々へと赴いて、歴史の闇の中に隠された謎を暴くことが、今の二人の目標だ。道中で多くのミュータントや改造生物が彼女の命を狙うだろうが、そんなことは二人にとって、無関係である。きっと宇佐見の一家の隠し持っているマジックアイテムが、私達の冒険を助けてくれるだろう。
メリーはヴィジョンを共有する際に、蓮子の目に手を当てる。こうする事で、不安定だが、メリーの見ているヴィジョンを他人に共有する事が出来るのだ。
近くに何か大きな、異世界との媒介となるものがあれば、衛星トリフネや冥界のような遠く離れた大地にも、飛び込むことができるようだ。
「それもね、高千穂峰の山頂に実物が刺さっているのよ。もの凄く不思議で、謎めいているのに、誰もまともに研究しようとしないの。保護だけなぜか為されているけど・・・」
メリーを取り囲んでいた不安の雨は晴れ、そこには確信だけが残った。自分が見た地底の光景は地獄なんかじゃ無くて、現実に存在する、神々の領域の映像なんだ、という確信だ。
「きっとその天沼矛も本物ね。この伊弉諾物質と同じ石で出来て居ると思うわ。確かめに行きましょう?神子西海道なら、確か酉京都駅から乗れたはずだし。」
「あと、鎌倉にでも日帰り旅行でも行かない?大仏でも観にさ」
伊弉諾物質を蓮子の手に渡すと、私は帰りの葛飾21号の客室内で一人で神々の世界の映像を、小さなキャンバスに映写してやった。
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