二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

狐のお嫁は笑うのか?【妖怪松】
日時: 2017/07/22 23:19
名前: 真珠を売る星 ◆xlDLNzYf9o (ID: 9E/MipmP)

 はじめまして、真珠を売る星と申します。
 
 小説初挑戦となります、よろしくお願いします!
 

注意!


・おそ松さん落ち夢小説です。
・人間の六つ子は出てきません(妖怪松が出てきます)。
・主人公があの末っ子よりドライです。
・舞台が名も無き東北のど田舎です。
・ほとんどオリキャラです。
・最終的に恋愛小説ではなくなってしまう恐れがあります(作者の好みの問題)。
・キャラ崩壊の可能性大いにあり!「いや、こいつはこんなんじゃねえよ!」と思った方はご指摘していただけると作者が泣いて喜びながら修正します。
・長男、四男多めです。
・後半に行くにつれ、主人公が変態と化していく恐れがあります。
・作者がものすごくメンタルが弱いため、途中で止めてしまうかもしれません。

 古いパソコンを使っているため、唐突に消えたり、いきなり話が飛んだりするかもしれませんが、そんなときは生温かく見守っていてください。
 
 コメントを頂けるととても嬉しいです。

 亀更新になってしまうと思いますが、よろしくお願いします。

ぜろ ( No.1 )
日時: 2017/01/06 12:47
名前: 真珠を売る星 ◆xlDLNzYf9o (ID: 9E/MipmP)

 私は小さい頃、お祖母ちゃんの言付を破って『御社』に一度だけ行ったことがある。
 
 そこは暗い森の中にあって、とてもじゃないが「良い雰囲気」とは言えないところだ。森の暗がりは真昼でも底知れなくて、小学校に入ってからもしばらくは里帰りして、散歩だったり何かあってその近くを通る度に泣いていた。
 
 それに、そこに行くまでの道もほとんど獣道のようなものにもかかわらず、何故か手入れだけはしっかりと行届いていて、幼いながらも違和感を抱いたことは鮮明に記憶している。
 その時、何があったのかは覚えていないけれど。また同様に、どうやってそこに私が———どうして、森の暗がりを「怖い」と泣いたこともあった私が———たどり着いたのか、全く覚えていないのだけれど。
 だが、『違和感』と同じく、もう一つ明らかに覚えているものがある。
 

 『赤い着物』———。
 

 私は、確かにあの時、『赤い着物』を着た何某かと出会っているのだ。……覚えていないけれど。ただ、男性だった気がする。
 あやふやだけれど。
 その時のことはきっと、私の人生において何か大きなことだった———気が、する。






「その時が来たらまたここにおいで。約束を果たす為に——俺と■■する為に。
忘れたら……駄目だからね。
若しそうなったら、             迎えに行くから」

いち ( No.2 )
日時: 2017/01/06 12:46
名前: 真珠を売る星 ◆xlDLNzYf9o (ID: 9E/MipmP)

 8月上旬。
 私はただ一人、実家へと向かう路線バスへと乗り込んだ。バスの中はぎゅうぎゅうに押し込められた人と熱気で咽返りそうなほどに蒸れている。
 バス酔いを避ける為か、前の席はほぼ埋まっていたため、仕方無く私は後ろから三番目の進行方向から右の窓側の席に着いた。しばらくするとバスは満員になり、発車した。
 
 私の左には大学生くらいの、赤いパーカーを着た男性が座っている。
「お嬢ちゃん、旅行?」
 不意に男性が私に向かって話しかけてきた。バスの中は押しつぶされそうなほど静かなため、かなり小さな声ではあったが。

「ええ、まあ……。旅行というか、帰省なんですが」
「へえ、どこまで?」

 答えようか一瞬悩んだが、どうせ降りるときに分かるだろうし、何よりもその男性の人懐っこい笑顔に押し負けて、私は行き先を告げた。

「ふうん。俺と同じとこで降りるのか」
「そう、なんですか?」
「うん、大学での研究でね」
「大学では何の研究をされてるんですか?」
「言っても、引かない?」
 男性が一瞬嫌そうに顔を顰める。
「別に、聞くだけですから」
「そう。……俺ね、地方の土着信仰を……簡単に言うと、その土地その土地で信仰されてる神様とか、それに伴う習慣についていろいろと調べてんの」
「……神様、ですか」
「そ。神様。
……?何、心当たりでもあるの?」
「ああ、家。別に、そういうものかはわからないんですけど……」

 私は一瞬口籠った。これを、言ってもいいのだろうか。あの、『御社』のことを。

 ……、いや。

 止めておいたほうが良いだろう。
 素人・・・・・というか、何も知らない私が変に口を挟んでもいけない(と、思う)し、そもそも……。そもそも、あそこについて語るのは私の中でタブーになっているのだ。
 あんな、気味の悪い所を紹介する訳にもいかないし——。
 半ば強引に自分を納得させて、次に続く言葉を探す。

「そう……ですね、えっと——
実家の近くにはあんまり神社とか祠とか、そんな感じのは見かけませんね。まあ、私が無知なだけかも知れませんけど」
「ふうん、そう……?」
 なんか、勘付かれてしまっただろうか。
「でもさあ、そっちら辺のこと調べてたら変なの見つけてね」
「……変なの、ですか」
「うん。ほら、これこれ」

 差し出されたコピー用紙には梟をキャラクター化したようなイラストと、その生物に関する逸話が乗っていた。

「あ、これ道の駅で見たことあります。上半身梟で下半身人間の神様ですよね」
「そーそー。あれ、知ってたんだ」
「神社とかさっぱり見たことなかったので、すっかり忘れてました」
 そういえば、こんなのもあったなあ、とイラストを改めて見る。
「キメラみたいですよね」
「……キメラ?」
「えっと……合成生物のことなんですけど」
「ごうせいせいぶつ……」
 もしかして、解らないのだろうか。
「あの、RPGゲームとかやったことあります?」
「あーるぴーじー?」

 何、それ?って感じの顔だ。RPGを知らないのだろうか。

「んーっと、俺ね、こう見えて結構世間に疎いほうなんだよね。だからちょっと……わかんないや」
「んじゃあ、“鵺(ぬえ)”って知ってますか?」
「ああ、あれなら知ってる。“夜の鳥”って書いて“鵺”。トラツグミの声でなくやつでしょ?」

 鵺とは、簡単に言うと色んな動物がつながったような体を持つ妖怪だ。
さすが、神様とやらについて調べているだけはある。これでやっと話が通じそうだ。

「そう、それです。頭が猿で体が虎で尻尾が……えっと」
「蛇?」
「ああ、そうでした。海外には“キマイラ”っていう伝説の怪獣がいるんですけど、こういう妖怪とか神様ってなんで違う動物がくっついた形にされちゃうことがあるんでしょうね」
「さあねえ。大方、『色んな動物ごちゃごちゃにしときゃそれっぽい怪物できるんじゃないか』とか、そんな風に考えたんじゃない?」
「ああ、なるほど……?でも、人間と何かの動物を合わせたような妖怪とか神様もいますよね」
「……——あー、烏天狗とか」
「後はやっぱり、人の姿がデフォルメされたリ、一部分を減らしたり増やしたりしたような……」
「大入道とか、一つ目小僧とかか」
「はい。一見して動物の姿の神様や妖怪って多いようですけど、実は人の姿をしたものも結構多いですよね」
「それはやっぱり人が考え出したもの、だからじゃないかなあ。そしてやっぱり、人が一番恐れを抱くものが“人”そのものだから」

 何時の時代でも、一番怖いものは自然の中に潜む未知の者たちではなくて、よくよく知っているからこそ自分の周りの人々。
 よくよく知って理解しているつもりだからこそ、どんな一面が眠っているか解らない。獣達は何を考えているか解らないから”怖い”けれど、人は他の人に何をされたら如何思うか自分たちで理解している分、自分から枷が外れた時に“怖い”と——“恐怖”を抱く。

 報復を恐れる。
 嫉妬を恐れる。
 怒りを恐れる。
 悲しみを恐れる。
 憎しみを恐れる。
 暴動を恐れる。
 狂気を恐れる。
 裏切りを恐れる。
 愛を恐れる。
 痛みを恐れる。

 時にはそれは他人ではなく、自らの内側に発せられる恐怖だろう。
 例えば——お酒を飲んでいた時の記憶が曖昧になったり、寝ているときの自分の言動や行動だったり、何かのきっかけによって枷が外れてしまったり。

 ——無自覚。

「怖いよねえ、人って。自分の記憶と現在にしか頼ってしか生きていけないから」

 記憶。
 人にとってそれは生きていくうえで最も重要なものだ。例え、それその物がすっぽりと欠落していたとしても。
 欠落。覚えて——いないということ。


「——っ、すみません……ちょっと寝させていいですか、昨日寝ていなかったもので」
「えっ?本当?御免な、こんな変な話につき合わせちまって」
「いいえ、面白かったです、有難う御座いました」
「良いって、俺の研究の話に付き合ってもらったんだから、お礼を言うのは俺の方だって」
「気にしないで下さい……面白かったですから」
「ん〜、まあ、そういうことなら……  じゃあ、お休み」
「はい。お休みなさい……」
 私はポケットに入れていたアイマスクを取り出し、すぐにつけた。眠りに入るまでにそう時間はかからなかった。どうやら、これでも私は疲労していたらしい。




 ふと目を覚ますと、ずいぶんとおしゃべりな隣人は寝入ってしまっていた。
 バスは、目的地まであと30分のところまで来ていた。随分と長く寝てしまったらしい。
 話し相手を失った……というか、話し相手が寝てしまった私は、仕方なく背負ってきたお気に入りの赤いバッグの中から思わずジャケ買いした有名な文豪の有名な作品の文庫版を取り出した。
 “暗い”だの“憂鬱”だのとよく評価される作品だ。私はそうは思わないけれど。

 主人公が心中を図ろうとした場面で、目的地まであと少しになってしまった。仕方なく、隣で実に気持ちよさそうに寝息を立てる赤い青年を起こすことにした。

「お兄さん、そろそろ降りますよ」
「んんぁ?ええっと……?あ、ああ。そっか、バスか、ここ」
「何寝ぼけてるんですか、降りる準備しましょう。私と同じところで降りるんですよね?」
「ああ、そうだった……いっけね」

 寝起きが悪い様だ。暫くしてバスが目的地に着いたことを知らせ、慌てて降車のボタンを押す。

「そういえば、お兄さんは何処に泊まるんですか」
「ん?ああ、近くの宿泊施設に予約とってるから、心配しなくていいよ」
 この近くに宿泊施設なんてあったけか、と首を傾げる。まあ、一部の歴史好きには名の知れた観光地ではある(と、思う)ので無い訳では無いのだろうけど。
「ああ、そうだ。良かったら今度の夏祭り、一緒に来ない?」
「夏祭り、ですか?」
「ホラ、あれ」

 お兄さんが指差したのは、道の駅の周りに掲げてあったのぼり旗だ。幾度となく使い古されたであろう、汚れの目立つそれには『夏祭り開催!!』と、大きく書かれている。

「開催期間、書いてないですね」
「ついでに言うと、場所もね」
「……ああそうだ」
「?」
「きっと防災無線ですよ」
「防災無線?」

 此処では……この、へんぴな田舎では何か村を上げてイベントを行うとなると必ず防災無線で放送されるのだ。ザ・田舎あるある。唯、防災無線ってエコーが洒落にならない位もの凄くかかっていることが大抵なので、聞き取りにくいのが難点だ。

「あー、うん。なるほど?」
「あっ、でもあそこの看板に書いてありますよ」
「ホントだ。何で旗にかかねーんだよ」
「さあ?」

 田舎とは、本当に良く分からない所だ。だけどまあ、そこが良いんだけど。人も少ないし。
 道の駅の入り口に申し訳程度に掲げられた看板によると、夏祭りは明日の夜5時から開催するそうだ。

「そう言えばお嬢ちゃんの名前聞くの忘れてたな。なんていうんだ?」
「豊受葛葉と言います。お兄さんは?」
「俺の名前?松野おそ松って言うんだ。変わってるだろ?」
「葛葉よりまだいいと思いますけど。あだ名、クズ女ですからね。何にも悪いことした覚え無いのに」
「そりゃあひでえな。でも俺も、お粗末だからなあ……。それなりに酷いっちゃあ酷いんだよな」

 お互い、名前では苦労しているようである。なんか少し親近感を抱いてしまった。

「じゃ、明日の17時、ここで待ち合わせってことで」
「そうですね。じゃあ、私はこのまま祖母の家へ行きますので。ついて来ないで下さいよ?」
「あったりまえだろ!これでもいい大人なんだからな!」

 まあ、あなたがロリコンで無ければついてきたりなんてしませんよね。口には出しませんけど。
 なんて思いつつ。
 私は、大好きなおばあちゃんとちょっと苦手なおじいちゃんのいるあの家に向かって夕日の中、歩き出した。


Page:1 2 3 4 5 6



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。