二次創作小説(紙ほか)
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- 【文豪ストレイドッグス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー
- 日時: 2017/06/21 21:10
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
どうも、トーストと申します!
このスレを立てた経緯は最近スレ主が文スト沼にはまってしまいまして小説を書こうということになって今に至るという次第でございます。
このスレはスレ主が自己満足の為だけに貸していただいた場ですのでそれを皆様にも観覧していただけたらなと思い投稿しております。
スレ主は普段観覧者ですが、今回初めて小説を投稿する故いろいろと至らないところもあると思いますが暖かい目で見ていただければなと思っております。
普段は長編の小説を連載していこうと思いますがたまに番外編という形で短編、長編小説を連載しようと思いますので本編についてのことが分かりにくくなる時があると思いますがご了承ください。
短編集へのリクエストがある方はなるべくお答えしようと思います。
注意!
・この作品にはスレ主が現役作家、有名作家から引用したオリジナルキャラという本編には出てこないキャラクターが登場します。
・この作品はあくまでスレ主の自己満足小説ですので不快に感じた方は見ないことをお勧めします。
・この作品について意見、要望、アドバイス、感想を書きたい方は他の観覧者、またはスレ主が不快にならないような文面でお願いいたします。
上記のことをご理解いただけた方はどうぞ楽しんでいってくださいませ。
この作品はフィクションです。実際の人物への関わりは一切ありません。
- Re: 【文豪ストレイドックス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー ( No.10 )
- 日時: 2017/06/17 17:38
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
#7
ーーーさっきのかなえさん一体、どうしたんだろう?
小林泰三は考えていた、自分の相棒である湊かなえの事を。何故彼女があの探偵の様な双眸をして居る青年を見た瞬間に様子が可笑しくなったのかを。もしかしたらあの青年は本当に彼女と過去に何か関わりがあるのかもしれない。そう、思ってしまった。
ーーなんでだろう…?なんか、悔しい…。
彼女が自分が見たこと無い表情を、あの青年の前では見せることが悔しいかった。同時に胸が苦しかった。まるで、締め付けられているかの様に。これが嫉妬、と云うものなんだろうか?嗚呼、そうか。自分は嫉妬して居るのか…名前も知らないあの青年に。なんだか彼女を取られた様な気がして、自分が寂しい男になった様な気がして、嫉妬して居るのか…。例えこの感情が“好意”では無く“憧れ”だとしても、自分はーー
ーーあ、不味い…意識が…__
気づいた時には自分の身体は傾いて居た。視界がぐにゃりと歪む。意識が遠のく。地面が近くなる。まるでコマ撮り動画の様に世界が進んでいく。しかし、自分の意識がシャットダウンする寸前に感じた感触は冷たいコンクリートでは無く、着物の感触にしっかりと抱き留められる感覚。其れを感じた次の瞬間には、もう意識を手放して居た。
‾‾‾‾‾‾‾‾‾
「青年、大丈夫か?」
福沢諭吉は驚いていた。しかしその反面、冷静でもあった。数分前まで近所の公園で猫に餌やりをしていた福沢は帰りの途中途方に暮れた様に歩いている一人の青年を見つけた。思い詰めている様な表情で歩いている青年の後を、福沢は尾行していた。尾行を始めてから数分経った頃だろうか。青年の様子が変わり始めた。足取りはおぼつかない様子でフラついている。次の瞬間には青年はコンクリートに向かって倒れていた。間一髪福沢が抱き留めたから善いものを青年は既に意識を失い浅く呼吸を繰り返していた。
ーー与謝野に見せた方が善いか…一度探偵社に…__
福沢は青年を担ぐと武装探偵社へと足を進めた。
‾‾‾‾‾‾‾‾
「そう云えば!社長は何処行ったのさ」
皆がみゆきちゃんで着せ替えを始め丁度次で三着目と云う頃、乱歩さんがそう云った。誰に云った訳でも無いだろうがその問いに一番早く答えたのは矢張り国木田さんだった。
「社長なら乱歩さん達が出てから直ぐに近くの公園へ猫に餌やりをしに行きましたよ」
「じゃあもうそろそろ帰って来るンじゃないかィ?社長大体何時もこの時間帯だろう?」
腕を組み乍そう凛とした声で云うのはこの武装探偵社の医師、与謝野晶子女医だ。その時だった、探偵社の扉が開く音がした。振り返ると其処には皆が思った通りこの武装探偵社の社長である福沢諭吉が其処に立って居た。
「噂をすればじゃないかっ!私も丁度太宰さ…あー、お、叔父さんの職場の社長に会って見たかったんだぁ!」
「ちょっとかなえちゃん!?叔父さんだなんて!私はまだ22歳だよぉっ!其れならお兄さんって呼んでくれ給え!」
そんな事を云っている太宰さんは置いといてまた社長に向き直る。其処で気が付いた。社長が誰かを担いで居る事に。
「与謝野、ちょっと診て貰えるか?」
「患者かィ?善いよ、妾に任せな」
社長がそう云い、奥の医務室へその誰かを連れて行くのと同時に与謝野さんも医務室へ向かう。
「あれ?其の人って…」
社長が連れて来た人はさっきまでかなえちゃんと一緒に居たーー
「小林君!?何故こんな処に!?」
随分と取り乱して居るであろうかなえはそう云うと小林君と呼ばれた青年を追う様に医務室へと消えて行った。
- Re: 【文豪ストレイドックス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー ( No.11 )
- 日時: 2017/06/21 21:09
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
6月19日は太宰さんの誕生日でしたねっ!大遅刻は承知の上ですが太宰さん生誕を祝い短編小説を書こうと思います!
注意!
・これは現在連載している小説とは一切関係ないのでとばして頂いても構いません。
・少し太宰さんの過去が原作と違う処があります。
上記のことをご理解頂けた方はどうぞっ!
ー太宰治が幸せになった話ー
私の名は太宰治、自殺を趣味に今を生きる齢22の男だ。さて、これから君達には私がまだ幸せでは無かった頃の話をするよ。あ、幸せじゃ無かったって云ってもしっかり幸せだった時も勿論あったよ。まぁ、こんな雑談をするよりも語ってしまった方が早いからね。
これはまだ私が幸せでは無かった頃の話…____
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‾‾‾‾
最初はきっとこんな感じでは無かったと思う。しかし、何時からか私の日常は毎日誰かの血で汚れていた。誰の血だったかなんて、覚えてない。だけどきっと其の血は、私が原因で溢れているんだろうな、とだけ何時もぼんやりと考えていた。血生臭い鉄の匂いが離れずに頭の中でぐるぐる回って気持ち悪くて、最初はきっと怖くて恐くて、人一人殺すのにも相当躊躇したんだと思う。だけどそんな恐怖も、自分も、幼い頃にはもう支配出来ていたんだろう。中也と初めて会った時も丁度其の位の時だったかな。まだ銃だってまともに握ったことのない中也に無理矢理握らせてさあんまりにも中也が人を殺すのを怖がっていたから私が一発、男の頭部を撃ち抜いて「ほら中也、簡単でしょ?人間って案外容易く死んじゃうんだよ」と云って笑って見せると、自分から銃の安全バーを外した中也は其の時初めて人を殺したんだ。あれは本当に感激ものだったなぁ。
其れから時が経って中也と私のことを“双黒”って呼ぶ人達が増えて来て、比例する様に私達に怯える人達も増えて来て、私は組織の最小年幹部となった。私には其の頃ね、織田作と云う組織の人間の癖に人を殺さず、孤児を拾っては其の孤児を養うと云う変わり者の友達が居たんだよ。まぁ、其の話はまた別の機会に。
立ち止まって、振り返った、誰かに聞かれた“今まで自分の人生は幸せだったか?”と、考えたことも無かった。幼い頃から、もっと云えば生まれた時から組織の為に、と育てられ人をも殺してきた自分がそんなものを望んで善いはずがないと云うことはわかっていた。では、自分にとって幸せとは一体何なのか。この日常が続くこと?誰かを愛し、愛されること?全て自分の思い通りにいくこと?いや、どれも違う様な気がする。ねぇ、其の時私が望んでた幸せがなんだったのか分かる?
私は組織を辞めた。相棒は、止めてくれなかった。組織の人間に後ろ指を指され、裏切り者呼ばわりされても私の心は動かなかった。ある日、私は居酒屋で一人酒を飲んでいた。これからどうやって生きていこうだとか、もういっそ死んでしまおうだとか考えていた時、目の端に其の人物は映った。私は気付けば其の人物の机に自然と座っていて、酒を酌み交わしていたらしい。其の時のことはぼんやりとしか覚えていないがどうやら其の人物こそ異能特務課の種田さんと云う偉い人だったらしく種田さんに職の紹介をしてもらった処、紹介された其の職場が〈武装探偵社〉と云う職場だった。こうして私は武装探偵社へと入り、この2年程探偵社でお世話になっているんだ。其れでね、聞いてよ。今日は私の誕生日だって云うのに皆祝ってくれないのだよ。そりゃあ皆依頼で忙しいのは私だって分かるよ?だけどさ、一年に一回だけ私が自分が生きていることを祝える日なのに、結局、組織を辞めても人を殺すことをやめても私が幸せを望むことは許されな_____
「太宰さんっ!」
え?敦君の声?
「太宰ィ!ここで死ぬなんて俺が許さんぞ!」
国木田君まで…どうしちゃったのさ。
「太宰っ!」「太宰さん!」「太宰っ…!」「太宰さん!!」「太宰さん…」
なんで?なんで私を呼ぶの?私は、幸せを望んじゃいけないのに…どうして君達は______
________________
ザアアア__ァァァ_________………
助けて___苦しい ___こんな最期は厭だ___
誰か ___お願い ___一人で死ぬのは怖い___
なんで ___こんなことに___ 私は唯___
寒い ___皆 ___私は此処に居るよ___
助けて助けて助けて助けて助けて助けて誰か助けてお願い苦しい助けて助けて助けて誰か
誰かっ!
_______________
嗚呼、思い出した。そっか…私、流れが早い時の川で入水自殺図ったんだっけ…。真逆死の淵に立たされるなんて思ってもみなかったな、普段の私ならきっと…嗚呼、これでやっと死ねるって思うんだろうけど、“今日だけ”は死にたく無かったんだけどなぁ。最期に…おめでとうだけでも皆に云って欲しかったな。私が目を瞑ろうとした時聞き覚えのある声が聞こえた。もう、何年も聞いていなかった声なのに…声を聞いた途端に涙が出そうになった。
「太宰、此処はまだお前の来る処じゃ無いぞ」
其の声は、
「お前の居るべき処はお前を必要としている仲間達が居る処は、彼方だぞ」
待って、行かないで、お願い、一人にしないで、彼方へ行っても私は、どうせ幸せにはなれない!
「そんなこと無いさ。だってお前は、もう…_________」
________________
私…は_________…
「太宰…さん…?い、息を吹き返しました!直ぐに医師をっ!」
此処は何処だろう?まぁこの消毒の匂いからして指図病院だろうな。私は生きて居るのか?この声は…敦君?この手を強く握ってるのは国木田君かな?私の手に痣が出来てしまうよ。いやこれは本当に骨が軋んでる音がするもん。泣き声が聞こえる。谷崎君と賢治君と鏡花ちゃんって処かな?乱歩さんと与謝野さんは何もなし?いや、この息を殺してすすり泣いているのがそうかな?二人共変な処でプライド高いから。
「………皆…心配を掛けてすまなかったね…でももうだいじょぶぅって痛いっ!」
大丈夫と云おうとしたら皆同時に私にチョップをかましてきた。賢治君のチョップ本当に痛い。あ、これ頭蓋骨割れたかもしれないよ!?
「莫迦っ!!!」
其の場の全員にそう云われた。何か莫迦らしいことをしたか検討が付かない。
「私が何かしたかな?国木田君はともかく乱歩さんや与謝野さんまでには何も…」
「俺はってどう云うことだこの唐変木!」
「ま、まぁ云いたかったこと云えたし善いんじゃ無いんですか?」
「これが太宰さんですからねっ!」
「其れもそうだな、太宰が元々こう云う性格だと云うことは分かりきっていることだしな!」
「そんなこと云って乱歩さんさっき泣いてた癖にィ」
「其れ思いっきり泣いてた僕達の前で云わないでくださいよぉ与謝野さん」
「…早く、云おう…」
ん?さっきから皆私のこと無視してるけどなんのこと?
「あっ、其れもそうだね……其れじゃあ、太宰さん!お誕生日!」
「おめでとうございますっ!!!」
病室に大声が響き渡った。しかし敦君達が後で看護師さんに叱られるのはまた別の話。
ねぇ、皆…あの時、皆が私の誕生日を祝ってくれた時…私は皆のお陰で気付けたんだ…あの時あの人が云ってた言葉の意味を。
お前はもう、____幸せ者さ。
ー太宰治が幸せだった話ー
- Re: 【文豪ストレイドッグス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー ( No.12 )
- 日時: 2017/06/24 09:31
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
#8
消毒液の匂いが辺りを漂っている。仄かに女性が身につける様な香水の香りもする。そんな中自分の意識は覚醒した。
ーー此処は何処だろう?確か歩いてたら意識が急に遠くなって…。
先刻まで歩いていた自分は急に意識が遠のく感覚になり、恐らく其の後意識を失ったのだろう。ベッドに寝かせられていると云うことは誰かが自分を介抱し、此処まで運んでくれたと思うのが普通だろう。しかし、一体誰が…。
「目を覚ましたかィ?軽い貧血だからもう少しは安静にしてな」
「小林君、大丈夫か?」
重々しい瞼を開くと最初に写ったのは蝶の髪飾りをした女性と其の女性の後ろにいる赤いジャージのーー
「かなえさん!?どうしているんですか!?もしかして運んでくれたのはかなえさんですか?あ、いやいや、かなえさんの体で運べるわけ無いか…」
「おい、小林君。今さらっと僕が傷つくことを云ってきたな」
「俺は事実しか述べてませんよ。でも、かなえさんじゃ無いとすると一体誰が…」
かなえさんが此処に居て、正直驚いた。出来れば今は会いたく無いと思ってた。でも、いざ会ってみると矢っ張り自分にはこの人が必要なんだなって痛感するんだ。
「其れは妾達の社長だよ。後で礼でも云っときな」
蝶の髪飾りをした女性がそう云う。どうやら自分を助けてくれたのは其の社長さんと云う人物らしい。助けてもらった身、しっかりお礼をせねば自分の気も収まらない。
「えっとぉ…其の社長さんは何処に?此処は病院じゃ無いんですか?」
「小林君、此処は病院では無い。此処はーー
「ーー武装探偵社だ。青年、体に異常は無いか?」
かなえさんの言葉を塞ぐ様な其の声は凛としていて、そして何よりも力強かった。声の主は着物を着た男性で刀の様な鋭い目付きで自分を見つめている。そして、今この男性は此処が武装探偵社だと云った。昔、友人から聞いたことがある。警察でも手に負えない仕事を引き受けると云う武装集団。真逆、其の社長がこの人。となるとこの女性も社員なのだろうか?どうしよう、驚きで口から声が出てこない。
「えーっと、小林君は少し人見知りなんだ。ほら、小林君ちゃんとお礼を云ったらどうだ?」
「あ、は、はいっ…えっと、先程は俺を助けて頂いて本当に有り難うございました。お陰様で体に異常はありません」
かなえさんのフォローもあってなんとかお礼は云うことが出来たが矢っ張りまだ心臓が高鳴っている。これからどうしようと考えている処でかなえさんが口を開いた。
「どうせなら小林君も武装探偵社の見学をして行ったらどうだ?僕も叔父さんに見学に誘われて此処にいる様なものだ」
叔父さん?見学?何を云ってるんだこの人は。まぁ、大方自分がいない間にまた要らん事に口を出して変な設定を任されているんだろう。別にかなえさんに誘われて断る理由は無いので了承して仕舞ったが、本当に見学だけで終わるのだろうか?其れからは其の何かが起こらぬ様に自分はずっと神頼みをしていた。
しかしそんな自分の願いもチリと化し探偵社の扉が特務課によって開かれるまであと10秒ーー
……………扉は開いた。
- Re: 【文豪ストレイドッグス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー ( No.13 )
- 日時: 2017/06/28 20:10
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
#9
「おーっ!此処が武装探偵社!あ、お邪魔しまぁーすっ!」
武装探偵社の扉が開いた。他の社員か事務の人だと思ったが其の声を聞く限り依頼人のようだ。まず最初に見えたのは金髪の女性だ。外国人だろうか?日本語は随分とペラペラだが顔立ちは以下にも外国人と云う様な双眸だ。隣には太宰さんの様なロングコートを羽織っている女性が居て、後ろにはもう一人、男性が居るのが伺える。
「おや、依頼人かな?」
太宰さんがそう云い乍扉をじっくりと見つめた後微笑む。
「そう、依頼だよっ!おっと、云い忘れてた…私達は警察署特務課。今日は折り入って武装探偵社に依頼があって参った次第だよ」
金髪の女性はそう淡々とし乍早口気味に云い、目を細めにっこりと笑って見せた。
「警察署特務課、ねぇ…僕も聞いたことが有るけど、確か異能力者で結成されてるんだったっけ?」
「おおっ!探偵君其の通りっ!あ、私の名前はルイス・キャロル、ルイスって呼んでね!」
乱歩さんがそう云ったことに対し、金髪の女性がそう答える。名前からして矢張り外国人だったようだ。
「アーサー・コナン・ドイルだ。宜しく頼む」
「フランツ・カフカです。どうぞ宜しく」
ルイスさんに続き隣の女性と後ろの男性も自己紹介をした。警察署特務課は全員外国人なのだろうか?乱歩さんが云うには特務課は異能力者で結成されているらしいが一体どんな異能を使うのだろうか。
「其れで?依頼って云うのは一体どんなものなンだィ?」
逸れた話題を元に戻す様に与謝野さんが口を開く。
「其れも云い忘れてたね。率直に云って、貴方達には“ある一人の怪盗を捕まえて欲しいの”!」
「怪盗、ですか?なんでまたそんなこと武装探偵社に…」
ルイスさんが云うにはある怪盗を捕まえて欲しいとの事だった。怪盗を捕まえるだなんて依頼、異能力者が集まっている特務課なら簡単に解決出来そうだが…。
「其れはだね、其の怪盗は如何やら異能力者らしくて軍警では手に負えないみたいでさぁー其れで特務課に回ってきたんだけどぉ残念な事に私達には異能力の使用が許可されていない者がいてね、今の処連帯責任みたいな感じで私達は異能力に関わる仕事をしちゃいけないんだよぉー理不尽でしょっ!?」
そうルイスさんは長々と早口言葉の様にスラスラと理由を細かく説明し、仕事への不満なのか最後には僕の肩を掴み勢い良く揺さぶった。気が済んだのか其の後は清々しい顔をしていたが、カフカさんと云ったか…其の人に怒られていた。
「だから我々に其の怪盗を捕まえろと?」
「物分りが善いね眼鏡君っ!つまりはそう云うこと!報酬は後で払いに来るから宜しくっ!」
眼鏡君呼ばわりされた国木田さんは少し青筋が見えたけど抑えてくれた様で安心した。処でーー
「其の怪盗、名はなんと云うんだ?」
かなえちゃんが口を開いた。云おうとした事は正に僕が今聞こうとしていたことだったので少し驚く。ルイスさんはもう用が済んだので武装探偵社から立ち去る処だったが、かなえちゃんの言葉でルイスさんは思い出したかの様に立ち止まり____そう云った。
「あ、ごめん忘れてたっ!えっとねぇー確か、“怪盗エース”だったかなぁー…じゃあまたね、武装探偵社の皆さん!」
怪盗エース…其の言葉を残してルイスさん達、特務課は警察署へと帰って行った。
「……怪盗エース…待っていろ、俺が絶対お前を捕まえてやるっ…!」
そう云ったかなえちゃんは決意をしたかの様に不敵にしかし、何処か強がる様にーー嗤っていた。
_______________
其の日の夜、ヨコハマのとあるビルの屋上では____
「ねぇ、一寸推理遊戯をしようよ。とある怪盗がとある建物に忍び込み、宝石を盗んで逃げ去った。100名にものぼる警備隊と最新型の防犯カメラ、赤外線センサーを付けたにも関わらず怪盗は誰の瞳に姿を写すことなく宝石を持ち出し消え去った。さて、怪盗はどんな手を使ったでしょうか?」
「答えは簡単、最早推理遊戯にもなら無いね。怪盗は瞬間移動が出来たんだよ。其れも、誰にも見つかることなく、ね」
「___________名探偵、貴方は私を捕まえられる?」
そう、闇夜に浮かぶ其奴の顔はこの街を眺め乍嗤ってたんだ。
- Re: 【文豪ストレイドッグス】ー夜ノ街二聳エル貴方ヲ想フー ( No.14 )
- 日時: 2017/07/01 14:35
- 名前: トースト (ID: jxbxTUdV)
#10
「じゃあ、此処でエースを追い込んで捕まえるって云うのは如何だ?」
かなえちゃんが云う。先程警察署特務課から依頼を貰った僕達は早速、計画を練ることにした。今回任務に参加するのは僕と太宰さんと国木田さんと与謝野さん。そして、作戦係の乱歩さん。
何故この状況でかなえちゃんが作戦会議に参加しているのかを云うと、如何やらかなえちゃんと怪盗エースの間には因縁があるらしく、如何してもエースを捕まえる任務に参加させて欲しいと云ってきた。勿論国木田さんは駄目だと云ったのだがかなえちゃんが“断罪探偵”だと分かると渋々許可していた。とまぁこんな流れで僕達の『絶対怪盗捕まえるぞ計画』は始まった。因みに計画名を付けたのは太宰さんだ。
「其れも善いけど、これでも袋小路に出来るよ」
「む、流石に乱歩さんには敵いませんね」
そんな会話を楽しそうにする名探偵達。横から太宰さんが参加したりと計画はより年蜜に作られていく。
「処で、アンタと怪盗エースの間にはどんな因縁があるんだィ?」
与謝野さんが口を開いた。内容からしてかなえちゃんに尋ねているんだろう。
「あ、嗚呼…其れを話していなかったな。彼奴は、私が探偵に成り立ての頃に初めて私が断罪出来なかった奴なんだ」
“断罪出来なかった”…断罪探偵とも呼ばれるかなえちゃんが断罪出来なかった怪盗を僕等が捕まえることが出来るだろうか?乱歩さんとかなえちゃんが考えた作戦にいちゃもんを付けるわけではないが、少し、不安になった。
「まぁ、大丈夫だっ!僕も彼奴との付き合いは長いしもしものことがあったら殺してくれて結構だ」
爽やかな笑顔でさらりと云うかなえちゃん。かなえちゃんととって、怪盗エースは本当に因縁深い相手の様だ。
「た、頼りにしてます…あはははは」
ぎこちない笑い声が口から零れる。不安だ。
「怪盗エースは明日宝石を盗むと予告状を軍警に送りつけている。早い処計画を確認するぞ」
国木田さんが眉を顰め乍手帳を捲る。如何やら不安と云う気持ちは国木田さんも一緒の様だ。しかし、乱歩さんが口を開いた。
「じゃあ計画は各々確認しといて!僕は駄菓子を買いに行く。敦君、着いて来て!其れじゃあ解散っ!」
半ば強引にそう云った乱歩さん。僕は乱歩さんに返事をする間も無く乱歩さんに連れられて行った。国木田さんは唖然と云う表情をして太宰は楽しそうに国木田さんを見て笑っているのが伺えた。明日、大丈夫だろうか?不安だ。
其の後、国木田さんは自分を笑い者にした太宰さんを説教し、かなえちゃんは小林さんと明日また来ると言伝を残し自分の探偵社へと帰って行ったらしい。
怪盗エース、神出鬼没な異能を持った怪盗。一体どの様な異能の持ち主なのだろうか?僕がそう考えて居ると乱歩さんが大声で僕を呼んだ。先刻まで自分の頭にあった疑念は、そんなことで吹き飛んでしまった。
_______________
其の日の夜、私立探偵社では___
「おい、其処にいるのは分かるんだぞ。出て来たら如何だ、有栖」
湊かなえは事務机に肘をつきココアの入ったマグカップを持ち乍に感情のこもっていない声色でそう云った。
「わぁお、其の感情のこもってない感じ、昔のカナエみたいだね」
何処からか声がし、いつの間にか其の女は其処に立っていた。
「有栖、一体如何云うつもりだ。外国に行ってたんじゃなかったのか?」
声色を変えること無く女にそう聞き返す。
「厭だなぁ、外国ではもう沢山盗ったから、日本に戻って来ただけだよ。あ、半分はカナエの為だけどね?」
女は悪びれも無く嗤っている。
「お前は昔から変わらなさ過ぎだ。其の気色が悪い言動は止めろと云った筈だが」
かなえは呆れた様にそう云い、女を睨みつけた。
「まぁ、久し振りの再会でしょ?もっと楽しもうよ。断罪探偵…?」
「お前は私が断罪してやる。お前の其の深い、深い強欲の罪、罪人、怪盗エース‥いや、有栖川有栖…覚悟しろ」
かなえは力のこもった鋭い深紅の瞳に女を移して云った。
「ふふ、そう云う処も好きだよ、カナエ。善いよ、楽しみにしてる。明日、また会おうね。探偵さん」
女はかなえを嘲笑うと、次の瞬間には消えていた。
しかし、嗤い声だけが何時迄も部屋を反響している様に聞こえた。