二次創作小説(紙ほか)

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響け、僕らの北宇治サウンド【響け!ユーフォニアム】
日時: 2017/12/29 10:38
名前: Asterisk (ID: XgzuKyCp)


『響け!ユーフォニアム』の二次創作小説です。

中3の夏にこの作品を手に取って以来好きなシリーズだったので、
二次創作を書いてみたいと考え投稿に至りました

この小説の視点は2年生のオリジナルキャラ
ユーフォ担当の 朝倉司/あさくらつかさ で進行します。

方向性はまだ未定ですが、
彼と同学年で同じパート所属の誰かを好きになる
……というのも考えています

話を書くにあたって、
不自然な関西弁表記がある可能性があります(関東在住なので)。
「何ですか、これ」な書き方を見つけたらそっと教えてください。

吹奏楽わからない人向けに
用語まとめも作っていきたいと思います(吹奏楽を少しやっていました)

それでは長くなりましたが、どうぞお楽しみください


>>1-17 (第1章)

1-13 ( No.13 )
日時: 2017/12/28 11:47
名前: Asterisk (ID: nPUiXc5e)

先輩が言うにはここからは第一希望を外れた子達が回ってくるのを待つだけらしい。外れた人をチューバにするのかと聞かれた。

「しゃあないやん、希望する子がおらんねんもん。チューバとかユーフォは毎年こうなっちゃうんねんなあ……なんでかなあ、こんなカッコいいのに」

トランペットの方では、初心者らしき子が「あー、音が出えへん!」と不満そうに頬を膨らませ、

香織先輩が励ましているのが見えた。その子が息を吹き込んでもトランペットからは息が出るばかりだった。

金管楽器はマウスピースを当て唇を震わせて音を出す楽器なのだが、これが初心者には難しい。多分あの子が音を出せるようになるには時間がかかる。

話の話題はトランペットのパートリーダー、香織先輩についてになった。吹部のマドンナといわれる香織先輩は、この部の9割以上を占める女子、吉川さんを筆頭に熱烈な支持を受けている。

逆に男子はというと、悲しいことに男にすらみなされていないので支持なんてものは無い。

「田中先輩も……人気者ですけどね」

突然卓也が喋り出したので後輩達は驚いて体を仰け反らせた。

「田中先輩、この子、ユーフォ確定ですか?」

「そうやで?」

何だかんだあって、あのあとチューバ担当として、中学時代はテニス部だったという初心者の加藤さんが入り、今年の低音パートの人員募集は締切となった。

1-14 ( No.14 )
日時: 2017/12/28 22:39
名前: Asterisk (ID: QYM4d7FG)

1年生全員の楽器決めが終わったのは初めてから1時間経ってからだった。

低音パートには僕達2、3年生と入ってくれた黄前さん、川島さん、加藤さんの8人がいる。

中学の時はホルンだったはずの秀一君はトロンボーンにいて、高坂さんは言うまでもなくトランペットだった。

「楽器も無事決まったんで、これから部活の方針について決めていきたいと思います」

晴香先輩が音楽室を見回す。周りは気だるげな様子で雑談をしていて、騒がしかった。

「ちょっと静かにー、ミーティングですよー!」

先輩がなだめているところで、音楽室の扉が開かれた。

「おや、皆さんもう揃っていましたか」

やっぱり僕の予想は的中した。滝昇。この人が今年顧問を務めるらしい。

物腰が柔らかそうで爽やかな印象を与える先生に、女子の目は釘付けだ。

「おお、今年はたくさん新入生が入ったんですね。30人くらいですか?」

「28人です」

「では抜けていた楽器も揃いますね。助かります」

そう言って先生は目を細めた。

「まずは、自己紹介ですね。

始業式でも挨拶させていただきましたので、私のことを知っている人も多いと思いますけど。

私は今年からこの学校にやってきた滝昇という者です。音楽教師をしています。

本来ならばこちらの吹奏楽部で長く顧問をされていた松本先生が顧問になるべきだと思ったのですが、

本人立っての希望で私が顧問になりました。これからよろしくお願いします」

1-15 ( No.15 )
日時: 2017/12/29 10:15
名前: Asterisk (ID: XgzuKyCp)

「毎年この時期に、生徒の皆さんにお願いしていることがあります」

先生は、黒板に「全国大会出場」とパソコンに打ち出したような字で書いた。

「私は、生徒の自主性を重んじるというのをモットーにしています。

今年一年間を通して指導していくにあたって、まずは皆さんに今年度の目標を決めてほしいと思います。

これが昨年度の皆さんの目標でしたよね?」

去年掲げた全国大会出場。あんなのは嘘っぱちだ。少なくとも、この雰囲気が消えるまでのあいだ、全国なんて程遠い。

「いやあの先生……それは、スローガンというか……」

「ほう、なるほど。では、これはなかったことにしましょう」

滝先生はチョークを手を持ち「全国大会出場」という文字を消した。まっすぐで歪みのない線が文字の上に重ねられる。

「ですが、そういうのは困りますね。達成する気のない目標ほど無駄なものはありませんよ」

サックスの席に座る先輩が人の勝手だみたいなことを言ったが、滝先生には届いていなかったらしく先生は何事もなかったかのように喋るのを続ける。

「私は、目標を決めた以上、それに従って動きます。

もしも皆さんが本気で全国に行きたいと思うのならば当然練習も厳しくなりますし、

反対に出場して楽しい思い出を作るだけで充分だと思うなら、ハードな練習もいりません。

私自身はどちらでもいいと考えていますので自分たちの意思で決めてください」

「私達で決めていいんですか?」

1-16 ( No.16 )
日時: 2017/12/29 10:18
名前: Asterisk (ID: XgzuKyCp)

「しゃあないし、うちが書記したるわ」

「でも、目標ってどうやって決めたらええんやろ」

「あれでいいんちゃう? 多数決で」

あすか先輩は怪しく笑い、対照的に晴香先輩の方はというと、心配そうな顔をしている。

「えー、じゃあ今から多数決を取りまーす」

「集計はうちに任せて!」

何故か自身に満ち溢れた表情のあすか先輩。

「どちらを今年の目標にするか、自分の希望に手を上げてください。

全国大会に行くか、のんびり大会に出るだけで満足か、です。ではまず、全国大会を目標にする、を希望の人。挙手してください」

その言葉に部員の大半が手があがる。低音パートの全員がこちらに手を上げた。

それよりも、他のパートの先輩の爪がやけに色鮮やかなのが目に入った。よく楽器が吹けるなと思うし、第一楽器に傷がついてしまうとか思わないのだろうか。

さすがのあすか先輩でもこの人数を数えるのはイヤになったようで黒板に物を書くのを諦めたようだった。

「では次に、京都大会で満足な人」

そんな空気の中ポツリと手が上がった。

1-17 ( No.17 )
日時: 2017/12/29 10:19
名前: Asterisk (ID: XgzuKyCp)

手を上げたのはサックスパートの三年生、斎藤先輩だった。葵だけねとあすか先輩が文字を黒板へと書き込む。

「多数決の結果、全国大会を目標に練習に励むことになりました」

部長の言葉に拍手が起こる。先生はというと、穏やかな顔で拍手を送っていた。先生は立ち上がってあすか先輩を制すると教室を見回した。

「今決めた目標は、皆さんが自身の手で決めたものです。反対の人もいましたし、

内心で反対している人もいるかもしれません。しかしこれはみなさんが決めたことです。

私は皆さんの目標が達成できるように尽力しますが、私ができることはただ皆さんに支持することだけです。

それを忘れないでください。皆さん自信が努力しなくては、決して夢は叶わないのです。わかりましたか?」

『……はい』

控えめに僕はそれに返事を返す。僕以外に返事を返す人はいなかった。
決めたことなのになんで何も言わないんだろう? もどかしそうにする1年生がチラホラいた。

気まずそうな空気が流れ始めた時、先生が手を叩いた。

「何をぼーっとしているんです? 返事は?」

もう1度僕は返事をし直した。それでもまだまばらな返事しか返ってこない。

おそらく、1年生はこれで思っただろう。この部活は顧問へ返事を返すことも出来ないのかと。

「返事が遅いですよ、もう一度言います。……皆さん、わかりましたか」

3回目でようやく、部員全員が返事を返したのだった。

今日はこれで終了です、お疲れ様でした。

部長の声を合図にその日の部活は終わった。元気よく挨拶をした加藤さんや、

そのあとに続いた川島さんに挨拶を返して見送ったあと、椅子を片付けて僕も帰ることにした。

その帰り、黄前さんと一緒になったのだが、あすか先輩になにか吹き込んだのかと言われ、

何度も謝ることになったことは先輩に秘密にしておこう。

──── 第1章 完


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